【完結】王洞 〜名も無き国の名前を捨てた王様〜

もう書かないって言ったよね?

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第五話☆ 捜査三課

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「幸先の悪い結婚だなぁ……」

 割れた窓を見て思わずそう呟いてしまった。空き巣事件は珍しくはない。葬式や結婚式とか、そういう家の住人が出払っている時を狙う泥棒はいる。これもそれと同じようなものだ。

「田代さん、遅いじゃないですか! 何やってたんですか!」

 今年、捜査三課に入った新米刑事の藤岡が、遅れて現場にやって来た俺に文句があるようだ。どうせ、何をやったらいいか分からなくて、現場をウロウロしていただけだろう。

「馬鹿野郎。張り切って現場に早くやって来ても、手掛かりなんて見つかんねぇんだよ。ある程度、鑑識作業や住人が落ち着いた頃にやって来るのがベテラン刑事というものなんだよ」
「へぇ~、そうなんですか……じゃあ、俺も今度から真似します」
「馬鹿野郎! 新入りは鑑識作業まで全部見て覚えるんだよ! 犯人が来る前に事件現場にやって来い!」
「そんなの無理ですよぉ~」

 まったく最近の若いのは馴れ馴れしいというか……どうも友達感覚で接してくるからめんどくせい。まあ、それを一から育てさせるつもりで、上の連中はベテラン刑事とコンビを組ませているんだろうがな。

 それじゃあ、刑事生活23年の実戦授業を始めるとしますか。

「藤岡、情報」

 俺は気合いを入れると捜査を開始した。まずは情報が必要だ。藤岡に現在までに入手した情報を聞いた。

「田代さん、俺、Siriじゃないですよ」
「藤岡、情報だ情報! それとも野次馬と一緒に見ていただけなのか?」

 本当に野次馬と同じように見ていただけなら税金泥棒と言われても仕方ない。刑事は好奇心の塊じゃないと向いていない職業だ。事件に興味がない奴はさっさとデスクワークに回った方がいい。

「はいはい、分かりましたよ。犯人は窓ガラスを割って家の中に侵入しています。犯行時刻は午前10時から午後3時の間です。藤代さんご家族は」
「——結婚式に出掛けて留守にしていたんだろう?」
「ええ、そうです。何だ、知ってるじゃないですか」

 藤岡に全部話させるつもりはない。こっちも現場に入る前にやれる事はやって来たからだ。さて、答え合わせの時間だ。

「野次馬のご近所さんがご親切に話してくれるんだよ。家族構成は三人。父親の藤代優作ふじしろゆうさく、47歳。母親の藤代律子ふじしろりつこ、48歳。娘の藤代明音ふじしろあかね、23歳、妊娠中だろ?」
「えっ~と、多分、そうです」
「何だ、その多分は?」

 藤岡の曖昧な答えがどうも気になってしまった。知っているなら、知っている。知らないなら、知らないと、ハッキリ言ってくれないと、こっち側はモヤモヤしてしまう。

「いえ、年齢は確認していなかったので……必要でしたか?」
「はぁ~、必要じゃないかもしれないが、捜査の邪魔になる事はないだろう。どういう情報が手掛かりになって、どういう情報が無駄になるのか誰にも分からねぇ。俺やお前にとっては無駄な情報が、誰か別の刑事には欠かせない手掛かりになる事もあるんだ。自分一人で捜査していると勘違いするなよ。常にチーム行動を意識しろ」
「ウッス、了解です」
「部活じゃないんだ。敬語を使え。被害者の家族にタメ口で話す刑事は信用されないぞ」
「はい、分かりました」

 まったく疲れる。これじゃあ、息子の文春ふみはるを事件現場に連れて来たみたいだ。最近の若いのは疲れる。



 
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