【完結】王洞 〜名も無き国の名前を捨てた王様〜

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
7 / 62

第六話☆ 顔見知りの男の犯行

しおりを挟む
「どうですか? 何か手掛かりはありましたか?」

 藤岡を連れて家の二階に上がると、鑑識の冨澤とみざわさんがいた。顔見知りの鑑識で俺よりも年長のベテランだ。空き巣事件以外にも殺人現場にも鑑識作業で出向いているので、新入り藤岡に聞くよりは百倍マシな情報が手に入る。

「ああ、田代か……いつもと同じだ。割って、入って、荒らすだ」

 一通り作業が終わったのか。冨澤さんは別の鑑識と話して、作業漏れがないかチェックしていた。手早く聞かないと仕事の邪魔になると叱られてしまう。

「そうですか。犯人の手掛かりになるようなものは見つかりませんでしたか?」

 指紋が残っていれば、この周辺に住んでいる窃盗の前科者を当たる事になる。他にも髪の毛や体液なども重要な手掛かりになる。
 特に若い女の部屋に入れば、変態男は発情するものだ。パンティーを頭から被って、ベッドの上で布団に包まって馬鹿な事をする奴もいる。

「いいや、手掛かりなしだ。指紋も髪の毛も体液も残っていない。ガラスは散らばらないようにガムテープで割っている。それに家の中には砂粒一つ落ちていない。靴を脱いだんだろうな。綺麗好きの犯人か、顔見知りだろうな」
「やっぱり顔見知りの犯行ですか……」

 だとしたら、思い浮かぶのは近所の住人や家族の友人になる。結婚式に家族の友人は多数参列していただろうから、近所の住人をまずは調べた方がいいかもしれないな。

「その可能性が高いというだけだ。それに顔見知りと言っても、この家にはあまり詳しくないようだ。家のあっちこっちを歩いた後に、目的地のお嬢さんの部屋に入っている」
「娘の藤代明音の部屋ですか。何か盗まれた物はあるんですか?」

 冨澤さんが指差す部屋がおそらく藤代明音の部屋なのだろう。二階は部屋が2部屋ある。もう片方は父親か母親が使っている部屋なのだろう。

「それはお前達、刑事の仕事だろう。住人に聞いて確認するんだな。俺が言える事は、この部屋のあっちこっちを見て回ったという事だけだ。この部屋だけはタンスの引き出しの服の畳み方が違っていた。一度、服を広げて畳み直したんだろうが、女物の下着の畳み方は知らなかったようだな。それっぽく畳み直して戻していた」

 53歳の鑑識の男が、女性物のパンティーの畳み方の違いが分かる方が気になるところだが、とりあえず聞かない方がいい。仕事上、色々と学ぶ事があったのだろう。

「犯人は男ですか……だとしたら、大学の同級生や仕事の同僚も容疑者に加えた方がよさそうですね」
「そういう事は俺に聞かずに刑事同士でやるんだな。俺達鑑識は証拠を集めるのが仕事なんだ。後ろの若造にも仕事をさせるんだな」
「……」

 冨澤さんに言われて背後を振り返ると、藤岡が『早く聞き込み調査に行きましょう』と目で訴えている。確かにこれ以上は現場に手掛かりはなさそうだ。
 とりあえず藤代明音に好意を抱く男の犯行……今のところはこの線で調べるしかない。付近の防犯カメラに怪しい男が映っていれば、藤代明音に顔を確認してもらい、その中に知り合いがいれば、容疑者として調べるのが妥当だろうな。

「藤岡、周辺の防犯カメラの映像を集めるぞ。車の車載カメラの映像もあるんだから、車が止まっていなくても、駐車スペースのある場所はチェックしておけよ」
「分かりました。手の空いている捜査員に協力してもらって、集められるだけ集めてきます!」

 やる気があるのは頼もしいが、俺は階段を急いで降りようとする藤岡を呼び止めた。言っておかないと二度手間になりそうだ。

「おいおい、ちょっと待て! 分かっているとは思うが、映像の提出をお願いするだけじゃなくて、聞き込みも忘れるんじゃないぞ」
「ウッス、了解です」

 本当に分かっているのか疑わしいが、空き巣事件は目撃情報がなければ、ほとんど捜査は進展しない。
 つまり、聞き込みと防犯カメラの映像で怪しい人物が見つからなければ、捜査継続中という形でほぼ終了になる。次の犯行が起こるまでは、新しく起こる窃盗事件を捜査する事になる。犯人が早く見つかるかは運次第だ。

 

 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

処理中です...