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第四十二話☆ 命の値段
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「すみません。警察の者なんですけど、この男を見た事がありませんか?」
「んんっ~? 見た事ないです」
俺は警察手帳と相模陽平の写真を見せて、水着の女性達に話を聞いて回っていた。捜査開始から三日目、8月23日。今のところ、出会ったという証言は、8月17日に山下美聡と松島麻未がナンパされた日だけだ。
当然、性的な映像を相模に撮影されて、聞いて回った水着の女性達が嘘を吐いている可能性もある。けれども、被害者女性が相模が出現する海で泳いだりはしない。相模がアダルト映像目的で女性に声をかけている線はかなり薄い。
「これだと、本当にただ金を使ってナンパしているだけなんじゃないのか?」
田代さんの言う、女子高生失踪事件は当てずっぽな感じがする。確かに女子高校生の大塚南、17歳が行方不明になって、もう三ヶ月になる。コンビニで買い物できるようなお金しか持っていないのに、三ヶ月も暮らす事は出来ない。誰かの世話になっているか、殺されているか、自殺している可能性が高い。
宗方課長の言う通り、空き巣も猫殺しも相模がやったという証拠はないんだ。相模がやった事は山を挟んで反対側の住吉市のホームセンターと本屋で買い物していただけだ。買い物するだけで犯罪者になるなら、全国民が犯罪者になってしまう。
「ふぅ~、暑いなぁ~。これだと泳ぎながら聞き込みをした方が効率が良いんじゃないのか?」
「海パンで警察手帳見せるんですか? 偽物の警察手帳だと思われるだけですよ。それよりも、相模はやっぱり七月を含めて、この海水浴場に来たのは8月17日の一回だけです」
「こっちも同じだ。それに共犯者もいない。一人で女性達を一時間ほど物色してから、声をかけたのは被害者の山下、松島の二人だけだった」
「百発百中のハンターですか。面倒ですよ」
手分けして海水浴客に聞いて回っていた向井さんと合流すると、お互いの捜査情報を交換した。
住吉署に捜査協力をお願いした結果も合わせると、この周辺の海水浴場、プールも含めて、相模が来たのは8月17日のこの海水浴場だけだと判明した。今は相模の服から新品の服の匂いがしたという山下美聡の証言を元に、田代さんが周辺の服屋と靴屋の聞き込みをしている。空き巣事件もそうだけど、相模が犯罪を犯す時に新品の服を用意する癖があるのならば、九月に犯罪を犯す時に新品の衣服を購入する事になる。
「それにしても、これだけ居場所が判明しないのもおかしいな? それなのに共犯者がいる気配がしない。隠れるのにも金はいるのにどうやって金を集めているんだ? 別名義の預金通帳でも持っているんじゃないのか?」
「共犯者ですが……そいつが隠れ家や車を用意していて、相模は実はただの実行犯の一人に過ぎないとかですか?」
大規模な人身売買組織の犯行や大金持ちのイカれた趣味……田代さんと同じで向井さんも意外と誇大妄想が好きなようだ。考えられない線とは思わない。限りなく薄い線だけどあり得ないとは言えない。
「大金持ちが相模に金を渡して、可愛い女を誘拐して来いとか命令しているのか? ……確かに23歳のアイドル並みの女が、15万円で手に入るなら安いとは思う。相模の成功報酬は一人50万ぐらいか?」
「そんなの聞かれても分かりませんよ。向井さんも、アイドル並みに可愛い23歳の女性の値段なんて分かんないでしょう?」
風俗の値段を参考にして、一日一回、23歳という年齢から、最低でも一年間の補償付きで180万円ぐらいになるとは思う。おそらく、その半分以下が相模の成功報酬にはなるとは思う。だとしたら、百人近くを連れて行けば、一億円近い金額になる可能性がある。それが許されるならばだ。
「分からんが、もしも、お前にそういう趣味があり、そういうオークションにお前が参加した場合、松島麻未が商品として出店された場合、いくらまでなら買いたいと思う?」
「答えないとダメですか? えっ…と、最高で75万ぐらいです。それ以上は無理です」
「真面目に答えるとは変態だな。俺なら120万ぐらいだ。つまり、あるとしても、一般人が参加できない裏の裏のオークションだ」
俺より金額が高いのは見栄を張りたいだけだとしても、一般的な給料の人間が毎日のように風俗に通えるはずがない。貯金を使い果たす覚悟でも、せいぜい出せるのは100万円前後になる。
つまりそんな大規模な組織が普通の会社員である相模を雇うとは思えない。金に困っている訳でもない相模にとっては、ただのリスクの高い犯罪行為に加担する明確な理由はない。やはり単独犯の可能性が高いと言える。
「んんっ~? 見た事ないです」
俺は警察手帳と相模陽平の写真を見せて、水着の女性達に話を聞いて回っていた。捜査開始から三日目、8月23日。今のところ、出会ったという証言は、8月17日に山下美聡と松島麻未がナンパされた日だけだ。
当然、性的な映像を相模に撮影されて、聞いて回った水着の女性達が嘘を吐いている可能性もある。けれども、被害者女性が相模が出現する海で泳いだりはしない。相模がアダルト映像目的で女性に声をかけている線はかなり薄い。
「これだと、本当にただ金を使ってナンパしているだけなんじゃないのか?」
田代さんの言う、女子高生失踪事件は当てずっぽな感じがする。確かに女子高校生の大塚南、17歳が行方不明になって、もう三ヶ月になる。コンビニで買い物できるようなお金しか持っていないのに、三ヶ月も暮らす事は出来ない。誰かの世話になっているか、殺されているか、自殺している可能性が高い。
宗方課長の言う通り、空き巣も猫殺しも相模がやったという証拠はないんだ。相模がやった事は山を挟んで反対側の住吉市のホームセンターと本屋で買い物していただけだ。買い物するだけで犯罪者になるなら、全国民が犯罪者になってしまう。
「ふぅ~、暑いなぁ~。これだと泳ぎながら聞き込みをした方が効率が良いんじゃないのか?」
「海パンで警察手帳見せるんですか? 偽物の警察手帳だと思われるだけですよ。それよりも、相模はやっぱり七月を含めて、この海水浴場に来たのは8月17日の一回だけです」
「こっちも同じだ。それに共犯者もいない。一人で女性達を一時間ほど物色してから、声をかけたのは被害者の山下、松島の二人だけだった」
「百発百中のハンターですか。面倒ですよ」
手分けして海水浴客に聞いて回っていた向井さんと合流すると、お互いの捜査情報を交換した。
住吉署に捜査協力をお願いした結果も合わせると、この周辺の海水浴場、プールも含めて、相模が来たのは8月17日のこの海水浴場だけだと判明した。今は相模の服から新品の服の匂いがしたという山下美聡の証言を元に、田代さんが周辺の服屋と靴屋の聞き込みをしている。空き巣事件もそうだけど、相模が犯罪を犯す時に新品の服を用意する癖があるのならば、九月に犯罪を犯す時に新品の衣服を購入する事になる。
「それにしても、これだけ居場所が判明しないのもおかしいな? それなのに共犯者がいる気配がしない。隠れるのにも金はいるのにどうやって金を集めているんだ? 別名義の預金通帳でも持っているんじゃないのか?」
「共犯者ですが……そいつが隠れ家や車を用意していて、相模は実はただの実行犯の一人に過ぎないとかですか?」
大規模な人身売買組織の犯行や大金持ちのイカれた趣味……田代さんと同じで向井さんも意外と誇大妄想が好きなようだ。考えられない線とは思わない。限りなく薄い線だけどあり得ないとは言えない。
「大金持ちが相模に金を渡して、可愛い女を誘拐して来いとか命令しているのか? ……確かに23歳のアイドル並みの女が、15万円で手に入るなら安いとは思う。相模の成功報酬は一人50万ぐらいか?」
「そんなの聞かれても分かりませんよ。向井さんも、アイドル並みに可愛い23歳の女性の値段なんて分かんないでしょう?」
風俗の値段を参考にして、一日一回、23歳という年齢から、最低でも一年間の補償付きで180万円ぐらいになるとは思う。おそらく、その半分以下が相模の成功報酬にはなるとは思う。だとしたら、百人近くを連れて行けば、一億円近い金額になる可能性がある。それが許されるならばだ。
「分からんが、もしも、お前にそういう趣味があり、そういうオークションにお前が参加した場合、松島麻未が商品として出店された場合、いくらまでなら買いたいと思う?」
「答えないとダメですか? えっ…と、最高で75万ぐらいです。それ以上は無理です」
「真面目に答えるとは変態だな。俺なら120万ぐらいだ。つまり、あるとしても、一般人が参加できない裏の裏のオークションだ」
俺より金額が高いのは見栄を張りたいだけだとしても、一般的な給料の人間が毎日のように風俗に通えるはずがない。貯金を使い果たす覚悟でも、せいぜい出せるのは100万円前後になる。
つまりそんな大規模な組織が普通の会社員である相模を雇うとは思えない。金に困っている訳でもない相模にとっては、ただのリスクの高い犯罪行為に加担する明確な理由はない。やはり単独犯の可能性が高いと言える。
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