【完結】王洞 〜名も無き国の名前を捨てた王様〜

もう書かないって言ったよね?

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第四十三話★ キラキラ輝く宝石

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「はぁはぁ……本当にこの山の上に別荘があるんですか?」
「私の足で大体三時間ぐらいなんだけど、女の子にはキツかったかもしれないね。大丈夫、いざとなったら肩に担いであげるから」
「そこまでしなくても大丈夫です。あと一時間ぐらいは登れますから」

 私は三日分の食糧を購入して、王国への道を麻未と登っていた。以前にも女性を肩に担いで、この山を登った経験がある。数キログラムしか違わない麻未ならば平気のはずだ。山登りをするという事で麻未には長袖と長ズボンを着てもらっている。綺麗な肌が枝で傷つき、泥で汚れるのはまだ嫌だ。
 ぐびぐびとペットボトルのお茶を麻未は頻繁に飲んでいる。喉が渇き、身体に疲労が溜まっていく。目的地に到着する頃には逃げる体力を随分と消費しているはずだ。
 それに家出の途中で逃げ出したりしないように、携帯電話は預からせてもらっている。目標の最低三日は絶対に洞窟にいてもらうつもりだ。

「それよりも住む場所があるのに、どうして嘘を吐いたんですか? この山に別荘があるなら、そこで寝ればいいじゃないですか。海水浴場からバスで10分程度なんですから」
「嘘を吐いたのは悪かったと思っているよ。それに泳いだ後に三時間の山登りはハード過ぎるよ。それに一夏の思い出も作りたかったしね」
「その夏の思い出が美聡とセックスする事なんですか? だったら風俗に行った方が安上がりでしたよ。5万円も払うなんて……」

 麻未の時折見せる冷たい視線を見れば分かる。お金で女性を抱く男が最低だと思っている。そして、お金で男に抱かれる女も最低だと思っている。
 普段から居酒屋で酔っ払った男性客にホテルにでも誘われているのだろう。尻を触られながら、『1万円、2万円でどうか?』と聞かれている姿が想像できる。不快感をあらわにしているのは普段から断っている証拠だろう。

「……5万円が勿体ないとは思わないよ。麻未ちゃんとなら、20万円出しても勿体ないとは思わないよ。よかったら、三日間で60万円稼いでみない? 仕事を休んだんだから、ここでお仕事してみない?」
「嫌です。美聡として、私として……女なら誰でもいいんですか?」
「そういう訳じゃないけど、必要だと思うから買いたいと思うんじゃないのかな? 20万円で足りないなら、50万円でも私はいいと思っているよ」

 一日50万円でも問題ない。手持ちの金を全部麻未に渡したとしても、全て回収できる。麻未は金を持って、山を降りる事は出来ないのだから……。

「50万円って……私が頑張って、我慢して稼いだ給料の二ヶ月分ですよ! 貧乏人なら、お金をちらつかせれば、何でも言う事を聞くと思っているなら、馬鹿にし過ぎです! 私はそんな事はしませんから」

 頑なに麻未は身体を売る行為を拒絶している。頑張って、我慢して、働いて、他人に決められた月25万円の収入が宝石のようにキラキラと輝いて見えているのだろう。正々堂々、清廉潔白な方法で稼いだお金以外は汚いお金だと信じている。いや、信じ込まされている。
 だとしたら、風俗店で男に抱かれる女性達を汚い方法で汚い金を稼いでいると言っているようなものだ。彼女達は税金を払って、商売として認可されている事をやっている。麻未と同じように頑張って、我慢して、働いている。誰かを馬鹿にしている人間が一番の馬鹿だ。

 麻未の身体には一日50万円以上の価値があるのだ。必要以上に自分を卑下する事はない。僅かな代金で自分を使おうとする人間の言葉を信じるべきではない。

「……この先は少し歩きやすいようになっているよ。もう少しで着くから」
「はぁはぁ……本当にあと少しですか⁉︎ もう歩けませんよ」

 ノコギリで倒木の枝を苦労して切った甲斐があった。この辺の道が荒れていたら、麻未が帰ると言い出していたかもしれない。
 方位磁石と枝の切られた倒木を目印に、洞窟に向かって進んでいく。不用意に枝や木にリボンやマークは付けていない。山の真ん中にある洞窟を見つける事も、そこから逃げ出す事も誰にも不可能だ。その道を知っている私以外には……。

 
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