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第2章
第29話②インサイティング・イベント
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「ぐぅ……ぐぅ……」
ドンドン。ドンドン。
「すみません。どなたかいらっしゃいませんか?」
「んあっ?」
川の字で四人で気持ち良く寝ていたのに、扉を叩く音で目が覚めてしまった。
「誰だよ、こんな時間に……?」
朝から頑張ったからもうクタクタだ。今は夜だから寝る時間だ。
別の意味で朝から三人と寝ていたけど、今は本当に眠いから寝たい。
だから、絶対に起きたくない。
「すみません。どなたかいらっしゃいませんか?」
「ふぁ~……仕方ないなぁ」
丁寧な男の声だけど、扉を叩く音が止まらない。これ、絶対に出てくるまで帰らないヤツだ。
仕方ないのでうつ伏せの妹を身体の上から退かせると、ベッドから起き上がった。
流石に裸のままはマズイので、上着とズボンを着て、靴を履いた。
念の為に状態異常魔法の杖を手に持った。
「はい、何ですか?」
用心の為に扉を開けずに声をかけた。
夜にやって来るのは緊急事態か、強盗のどっちかと決まっている。
宗教関係は昼間しか来ない。
「夜分遅くにすみません。わたくし、【ストロベリアス家】で執事をしているエドワードと申します。こちらにヨハネお嬢様はいらっしゃいますでしょうか?」
「はぅ⁉︎」
ヤバイ、緊急事態の方だった。ヨハネの知り合いが探しに来た。
「……いえ、全然来てないです」
もちろん嘘を吐くに決まっている。
貴族令嬢に手を出して、生きていられる自信はない。
「そうですか……いえ、お嬢様は定期的に手紙でご実家にご連絡をなさるのですが、もう一ヶ月も届いてないのですよ。お嬢様のお仲間のフィリアさんなら、居場所を知っていると思い来てみたものの、これは困りましたなぁ……」
「そうでしたか。すみません、お力になれずに」
執事が困っているけど、こっちはもっと困っている。
手紙は俺が書くから、早く帰ってほしい。
「ああ! フィリアさんはご在宅ですか?」
「はい⁉︎」
帰ってほしいのに、執事が思い出したように聞いてきた。
もっと俺を困らせたいみたいだ。
「よろしければ、お話をお伺いたいのですが……」
「いえ、妹もいません! アイツ、一度家を出ると何ヶ月も帰って来ないんですよ! 冒険者なら一ヶ月ぐらい普通に帰って来ないと思いますよ!」
もちろん妹もいないに決まっている。早口でしばらく帰って来ないと宣言した。
これでもう用事は済んだはずだ。お願いだから帰ってほしい。
「そうですか、普通ですか……では、馬小屋にあるお嬢様の馬と馬車も普通の事なんでしょうか?」
「は、はい⁉︎」
この執事、ヤバ過ぎる。他人の家の馬小屋を勝手に調べるなんて犯罪者のする事だ。
「失礼ですが、扉を開けて話をしませんか? お互いの顔を見て話をしましょう。どうもその方がいい気がします」
「いえ、いいです! こんな時間に見ず知らずの人を家に入れる事は出来ません! 無理に入って来るなら攻撃します!」
杖を扉に向かって構えると執事に警告した。というかもう絶対に帰さない。
馬鹿馬と一緒に何処かのダンジョンに放置して処分する。
秘密を知られたからには生きては帰さない。
「……どうやらここで間違いないようですね。もう一度だけ言いましょう。扉を開けてください。この家はストロベリアス家の私兵で完全に包囲しています。逃げ場は何処にもありませんよ」
「はぁはぁ! はぁはぁ!」
しまった。この執事一人じゃなかった。
確かに耳を澄ませ分かる。鎧の音、馬の蹄の音、人の話し声が聞こえる。
外に大勢の人の気配がする。執事の話が本当だという証拠だ。
「ご、ごくり……!」
外に何人いるか分からないけど、助かりたいならやるしかない。
睡眠魔法の乱れ撃ちで私兵を倒して、馬を奪って逃げるしかない。
そして、三人の事は忘れて、何処かの小さな村でひっそり暮らそう。
前にも同じような事を考えた事あるけど、生き残る方法はこれしかない。
「わ、分かりました。今開けます」
右手に持つ杖に魔力を溜めながら、そっと左手で扉の鍵を開けていく。
扉を開けた瞬間が勝負だ。もしも勝てそうな人数なら全員眠らせる。
そして、馬車に三人と荷物を詰め込んで、何処かの小さな村で幸せに暮らす。
よし、だったら20~30人ぐらいなら意地でも倒そう。
三人と俺の幸せの為にも死ぬ気で頑張るんだ。
「あっ……」
駄目だ。0が一個足りなかった。
扉を開けるとハの字の口髭をした灰色髪の初老の執事が立っていた。
その執事の後ろに200人ぐらいの鎧の戦士達が武器を構えて立っていた。
「デカイな。あれが【重戦士LV125】か?」
「確かに見た感じ勝てそうにないな」
こっちを睨み付ける、火を使わない魔法の松明を持った戦士達の声が聞こえてきた。
絶対に人違いの家違いだ。俺はLV100超えの戦士じゃない。
何処にでもいる普通の僧侶さんだ。
「こんばんわ。お嬢様、いらっしゃいますね?」
「はい。そういえば、いらっしゃいました」
執事が笑顔で聞いてきたので、正直に答えた。
今すぐに死にたくないなら、もう嘘は吐かない方がいい。
「では、失礼」
「おふっ……!」
痛い。執事が扉の前に立つ俺にワザと体当たりして脇に突き飛ばした。
やっぱりヨハネの関係者だ。人間を人間扱いしない人だ。
ドンドン。ドンドン。
「すみません。どなたかいらっしゃいませんか?」
「んあっ?」
川の字で四人で気持ち良く寝ていたのに、扉を叩く音で目が覚めてしまった。
「誰だよ、こんな時間に……?」
朝から頑張ったからもうクタクタだ。今は夜だから寝る時間だ。
別の意味で朝から三人と寝ていたけど、今は本当に眠いから寝たい。
だから、絶対に起きたくない。
「すみません。どなたかいらっしゃいませんか?」
「ふぁ~……仕方ないなぁ」
丁寧な男の声だけど、扉を叩く音が止まらない。これ、絶対に出てくるまで帰らないヤツだ。
仕方ないのでうつ伏せの妹を身体の上から退かせると、ベッドから起き上がった。
流石に裸のままはマズイので、上着とズボンを着て、靴を履いた。
念の為に状態異常魔法の杖を手に持った。
「はい、何ですか?」
用心の為に扉を開けずに声をかけた。
夜にやって来るのは緊急事態か、強盗のどっちかと決まっている。
宗教関係は昼間しか来ない。
「夜分遅くにすみません。わたくし、【ストロベリアス家】で執事をしているエドワードと申します。こちらにヨハネお嬢様はいらっしゃいますでしょうか?」
「はぅ⁉︎」
ヤバイ、緊急事態の方だった。ヨハネの知り合いが探しに来た。
「……いえ、全然来てないです」
もちろん嘘を吐くに決まっている。
貴族令嬢に手を出して、生きていられる自信はない。
「そうですか……いえ、お嬢様は定期的に手紙でご実家にご連絡をなさるのですが、もう一ヶ月も届いてないのですよ。お嬢様のお仲間のフィリアさんなら、居場所を知っていると思い来てみたものの、これは困りましたなぁ……」
「そうでしたか。すみません、お力になれずに」
執事が困っているけど、こっちはもっと困っている。
手紙は俺が書くから、早く帰ってほしい。
「ああ! フィリアさんはご在宅ですか?」
「はい⁉︎」
帰ってほしいのに、執事が思い出したように聞いてきた。
もっと俺を困らせたいみたいだ。
「よろしければ、お話をお伺いたいのですが……」
「いえ、妹もいません! アイツ、一度家を出ると何ヶ月も帰って来ないんですよ! 冒険者なら一ヶ月ぐらい普通に帰って来ないと思いますよ!」
もちろん妹もいないに決まっている。早口でしばらく帰って来ないと宣言した。
これでもう用事は済んだはずだ。お願いだから帰ってほしい。
「そうですか、普通ですか……では、馬小屋にあるお嬢様の馬と馬車も普通の事なんでしょうか?」
「は、はい⁉︎」
この執事、ヤバ過ぎる。他人の家の馬小屋を勝手に調べるなんて犯罪者のする事だ。
「失礼ですが、扉を開けて話をしませんか? お互いの顔を見て話をしましょう。どうもその方がいい気がします」
「いえ、いいです! こんな時間に見ず知らずの人を家に入れる事は出来ません! 無理に入って来るなら攻撃します!」
杖を扉に向かって構えると執事に警告した。というかもう絶対に帰さない。
馬鹿馬と一緒に何処かのダンジョンに放置して処分する。
秘密を知られたからには生きては帰さない。
「……どうやらここで間違いないようですね。もう一度だけ言いましょう。扉を開けてください。この家はストロベリアス家の私兵で完全に包囲しています。逃げ場は何処にもありませんよ」
「はぁはぁ! はぁはぁ!」
しまった。この執事一人じゃなかった。
確かに耳を澄ませ分かる。鎧の音、馬の蹄の音、人の話し声が聞こえる。
外に大勢の人の気配がする。執事の話が本当だという証拠だ。
「ご、ごくり……!」
外に何人いるか分からないけど、助かりたいならやるしかない。
睡眠魔法の乱れ撃ちで私兵を倒して、馬を奪って逃げるしかない。
そして、三人の事は忘れて、何処かの小さな村でひっそり暮らそう。
前にも同じような事を考えた事あるけど、生き残る方法はこれしかない。
「わ、分かりました。今開けます」
右手に持つ杖に魔力を溜めながら、そっと左手で扉の鍵を開けていく。
扉を開けた瞬間が勝負だ。もしも勝てそうな人数なら全員眠らせる。
そして、馬車に三人と荷物を詰め込んで、何処かの小さな村で幸せに暮らす。
よし、だったら20~30人ぐらいなら意地でも倒そう。
三人と俺の幸せの為にも死ぬ気で頑張るんだ。
「あっ……」
駄目だ。0が一個足りなかった。
扉を開けるとハの字の口髭をした灰色髪の初老の執事が立っていた。
その執事の後ろに200人ぐらいの鎧の戦士達が武器を構えて立っていた。
「デカイな。あれが【重戦士LV125】か?」
「確かに見た感じ勝てそうにないな」
こっちを睨み付ける、火を使わない魔法の松明を持った戦士達の声が聞こえてきた。
絶対に人違いの家違いだ。俺はLV100超えの戦士じゃない。
何処にでもいる普通の僧侶さんだ。
「こんばんわ。お嬢様、いらっしゃいますね?」
「はい。そういえば、いらっしゃいました」
執事が笑顔で聞いてきたので、正直に答えた。
今すぐに死にたくないなら、もう嘘は吐かない方がいい。
「では、失礼」
「おふっ……!」
痛い。執事が扉の前に立つ俺にワザと体当たりして脇に突き飛ばした。
やっぱりヨハネの関係者だ。人間を人間扱いしない人だ。
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