異世界最後のダークエルフとして転生した僕は、神スマートフォンと魔物使いの能力を駆使して生き延びる。

もう書かないって言ったよね?

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第3話

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「そっちに行ったぞ! 逃すんじゃないぞ!」
「出口の方に逃げて行くぞ!」

 街の住民は誰も襲って来ない。追い回すだけで怖くて近づけないようだ。
 砂場で遊んでいた子供達の前に、特大のシャベルを持った外国人の大男が、『退け!』とシャベルを砂場に突き刺して、現れたようなものなんだろう。そりゃー、誰も怖くて近づけない。

 だとしたら好都合だ。
 街の出口を塞ぐ二十人程の大人達に向かって、魔法詠唱を開始した。
 当然魔法は使えない。ハッタリ魔法だ。

「愚か者達め ♪灼熱の炎よ! 我の前に立ち塞がる敵を焼き払え♪ うおおおおおおっ、ファイヤーブレス‼︎」

 走りながら、忍者のように指で印を組んだり、両手をでたらめに動かした後に、出口を塞ぐ住民達に向かって、右手をシューバンと薙ぎ払った。

「ぎゃあああッッッ⁉︎」
「いやぁーーー⁉︎」
「お母ちゃーーーん⁉︎」

 住民達は目に見えない攻撃に、目をつぶって震えたり怯えたり、走って逃げたり、その場で倒れたりしてくれる。
 吉本新喜劇ばりにノリの良い住民達で助かった。勝手にバタバタ倒れてくれる。
 でも、そのお陰ですんなりと出口を通って街の外に出る事が出来た。
 あとはこのままひたすら郊外ジョギングだ。

 ♦︎

「ぜぇはぁ、ぜぇはぁ、ここまで逃げればもう安心だ」

 街を脱出した後、しばらく走ると森が見えて来た。
 僕はその森の中に逃げ込んで、今は住民達が追って来ないかとヒヤヒヤしながら隠れている。
 おデブちゃんの時なら、逃げ切れないと分かっていたから逃げなかった。
 でも、今の僕、いや、俺様のケイン・コスギ並みのパーフェクトボディーには誰も追いつけない。

「ねぇ! ねぇ! 女神様! 女神、えーっと……ルミエル様! ルミエル様、聞こえてますかぁー!」

 とりあえず、空に向かって女神様を呼んだ。念じるだけでは、うんともすんとも反応しなかった。

「やっぱりこっちからじゃ駄目なのか。何だよ、間違った街に送ったのなら、もうちょっと責任取れよ」
『……はいはい聞こえてるよ? どうしたの?』
「わぁっ⁉︎ 女神様⁉︎」

 油断していると突然頭の中に女神様の声が聞こえてきた。ビックリしたけど、悪口は聞かれてないよね?

『そうそう女神のルミエル様だよ。どうしたの? 何かあったの?』

 ムカッ! こっちは死に物狂いで逃げて来たのに、テレビを見ながらのような片手間な反応にイラッと来た。
 僕も男だ。言う時は言ってやる。

「どうしたもこうしたもないですよ! ダークエルフが嫌われている街に間違って送らないでくださいよ! お陰で見つかって、殺されそうになったんですよ!」

 街の警備兵は長い棒と左腕に盾を装備していた。
 あんなのに取り囲まれていたら、死ぬまで棒と盾で叩かれまくっていた。
 間違えましたで、許される軽い失敗じゃない。
 
『うぐっ、ひっく、ひっく、ごめんなさいぃぃ~~~‼︎』
「えっ、えっ、女神様? もしかして泣いているんですか?」

 ちょっと怒っただけなのに、突然頭の中で女神様が大声で泣き始めた。
 ちょっとうるさいから静かにして欲しいけど、それは流石に言っちゃ駄目だ。
 僕でも、そのぐらいの空気は読める。

『うええええええん‼︎ だって、だって、エルフもダークエルフも、私が担当している異世界だと絶滅してたんだもん‼︎ でも、でも、エルフが良いって言われたから、ひでぶぅにエルフが良いって言われたから‼︎』
「えっ、えっ、僕の所為なの……すみません」

 確かに女神様は容姿の要望は叶えられるって言った。
 種族変更が駄目なら言ってくれればいいんだよ。

『ひっく、ひっく、もしも駄目だって私が言ったら、きっとひでぶぅは私に酷い事をする。うううん、絶対に酷い事をする。だから、だから……』

 これじゃあ、僕が無理やりエルフに転生させてくれって迫ったみたいだ。
 でも、こういうのは女性の証言が重視されるのは知っている。
 合意があったとしても、そんなの世間の人達には関係ないんだ。
 おデブと女神、世間が信じる方は決まっている。

「すみません。僕が我儘言ったのが悪かったんですよね? 泣かないでください。僕が悪かったんです。僕を踏んづけてください」

 女の子を泣かすなんて、初めての経験だから、どう対処していいのか正直分からない。
 とりあえず、いつものように土下座して謝った。女性を不快にさせた時は、いつも土下座して謝っている。

『くっすん、うううん、私が悪いの。だからお詫びにスキルと呼ばれるものを一個与えます。それを使って頑張ってください』
「えっ、スキルってあれの事ですよね?」

 女神様が泣き止んだので土下座を解除して地面に体育座りした。
 どうやら、土下座の効果はあったようだ。
 スキルと言えば、異世界転生ではお約束のようなものだ。
 大抵の転生者はそれを使って、チートと呼ばれる凄い力を手に入れる。
 最終的には無双状態、ハーレム状態、成金状態と、お金とおっぱいを転がすウハウハ人生が待っている。

「もうぉ~、許すのは今回だけですよ♪」

 流石の僕もそれなりの常識人だ。
 一千万円で許してくださいと頼まれてたら、「お金の問題じゃないんですよ」とか馬鹿げた綺麗事を言うつもりはない。
 まあ、それを言えば、一千万円が二千万円になりそうなら話は別だけど……。

『はい。ひでぶぅにピッタリのスキルを与えましたよ。ゲームのステータスを見るように、自分の力を見たいと念じてください』
「分かりました。自分の身体を見て念じるんですね」

 とくに何かを感じたり、何かが起こったりしなかったけど、終わったみたいだ。
 女神様の言う通りに、自分のステータスを見たいと念じながら、体育座り状態の首から下の身体を見てみた。
 すると、ゲームのステータス画面に似た透明な表示板が目の前に現れた。

【名前=ひでぶぅ。種族=ダークエルフ(魔物)。
 レベル=1(最大レベル10)。次のレベルまで経験値0/45。
 HP=400/400。MP=110/110。
 腕力=50。体力=38。知性=50。精神=42。
 重さ=軽い。移動速度=少し速い。
 スキル=『魔物友達化(最大友達一人)』】

 名前や種族、レベルの上限とか色々とツッコミたいけど、とりあえず我慢しよう。
 おそらく腕力は物理攻撃力、知性は魔法攻撃力の事で、体力は物理防御力、精神は魔法防御力になると思う。
 重さや移動速度はその種族の平均値より軽いのか、重いのか分からないけど、街の住民達よりは速かった。
 そして、一番気になるのはスキルの魔物友達化だ。
 何だ、これ? 魔物使いやテイマー調教師とは違うのかな?

「あのぉー、このスキルの使い方とか効果はどういうものなんですか? 魔物と友達になれるんですよね?」
『そうそう、そのスキルがあれば、魔物と友達になれるんだよ! ひでぶぅは元いた世界でも、こっちの世界でも誰とも友達になれないと思ったから、それが良いかなって♪』
「……」

 あれ? 僕、凄くイライラしているぞ。これが天然ドジっ子の破壊力なのかな?
 あと、ひでぶぅって三回も呼んだよね? 僕の名前はひでぶぅじゃないですよ。
 あと僕の為を考えてのスキルだと思いますけど、友達ぐらいはいましたよ。
 クラスの同級生は非公開、非公表だったけど、多分、誰かいたはずですよ。そうですよね?

「はぁー、それで使い方はどうすればいいんですか? 教えて欲しいんですけど」

 とりあえず、失礼な女神様の事はもう気にしないようにしよう。
 肝心なのは使えるスキルかどうかだ。

『使い方? それなら、もうすぐ街から魔物が三匹やって来るから、それで実戦してみればいいよ』
「えっ、街から魔物? どういう事ですか!」

 魔物三匹がやって来るに実戦、女神様の口から不吉な言葉が聞こえて来た。
 武器も防具も持っていない丸腰の僕が、どうやって魔物と戦えばいいのか分からない。

『あっはははは! そんなのひでぶぅの追跡に決まっているでしょう。スキルの力で魔物のステータスなら見られるから、HPを十パーセント以下にしてから、『スキル発動』とか言えばいいから。じゃあ。ガチャン。ツゥツゥツゥ』
「また、切った! ガチャンとツゥツゥツゥって口で言ってるよね⁉︎ 女神様⁉︎ 女神様⁉︎」

 何度呼んでも返事が返って来ない。ほとんど過酷な放置プレイだ。
 それでも追跡者は待ってくれないようだ。

『『『ニャアニャア‼︎』』』
「ひぃぃ⁉︎ もう来たの……」

 威圧的な鳴き声に恐る恐る振り返ってみると、小さな豹が三匹いた。
 ちょっと安心したけど、黄色の毛皮の上に、丸い茶色のマダラ模様が散りばめられているその姿は、まさしく豹だ。普通の人間が勝てるはずのない肉食動物だ。

【名前=小豹こひょう。種族=猫獣族。レベル=1。
 HP=1050/1050。MP=106/106。
 腕力=35。体力=67。知性=31。精神=29。
 重さ=普通。移動速度=少し速い】

 素直に今はスキルよりも武器と防具の方が欲しかった。
 とりあえず、腕力と知性は僕の方が高い。殺るか、殺られるかだ。
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