異世界最後のダークエルフとして転生した僕は、神スマートフォンと魔物使いの能力を駆使して生き延びる。

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
2 / 63

第2話

しおりを挟む
「んんっ……んっ? ハッ!」

 街の喧騒、人の気配、冷たい石の地面の感触。
 意識を取り戻した僕は急いで飛び起きた。
 どこも痛くはない。階段から転げ落ちたのは覚えている。
 身体が痛くないなら、それはつまりそういう事だ。

「おおっ! おおっ~! 凄い凄い! お腹が凹んでいるし、背も高くなっている! 肌は小麦色だからダークエルフみたいだけど、こっちの方がミステリアスな危険な男の色気が半端ない! よっしゃー! 一生モテ期の始まりだい!」

 建物のガラスに映る顔はまさに褐色の美少年だった。僕は大いに喜んだ。
 エメラルドグリーンの瞳に、特徴的な先端が尖ったエルフ耳、光沢のある薄紫色のサラサラした髪は肩まで届いている。
 身長は百七十センチ以上、体重は五十二、三キロぐらいはありそうだ。
 とにかく身体が軽くて、目も耳も良く見えるし、良く聞こえる。
 もしかすると、この身体なら百メートル七秒台とか出せるかもしれない。

「うーん? どっちらかというと、女っぽい美少年顔だと、年上女性に好かれそうなんだよなぁ~。もうちょっとクールなちょい悪顔の方が、十代の女子が、『今日はめちゃくちゃにしてください』とか言いそうなのに……」

 ちょっとだけ今の顔に不満はあるけど、歳を取れば、そのうちにクールなちょい悪顔になるはずだ。
 それまでは年上のお姉さん達の玩具になるのもアリよりのアリだ。
 とりあえず軽く街を歩いてみよう。
 十分じっぷんも歩けば、「ハァ、ハァ、君! 私のペットにならない!」とか興奮したお姉さん達に壁ドンされるはずだ。
 僕、まだ未成年なのに困っちゃうなぁ~。まあ、異世界なら平気かな?

「でも、迂闊に動かない方がいい。まずはここから街を観察しないと……」

 現在、僕がいるのは街の建物と建物の間の隙間のような場所だ。
 人一人がやっと通れる狭い路地裏といった感じで、四方八方にある建物の隙間から街の様子が良く見える。
 誰にも見られないような場所に天使の少女が転生させてくれたんだろう。

 ここから見える街中を歩く人の髪の色は黒や茶が多く、金髪は少ない。
 顔は西洋人よりも東洋人に近いので、僕としては親近感がある。
 街の中には、エルフやダークエルフっぽい人はいないので、この街に住んでいるのは人間だけのようだ。

「車は無さそうだけど、多分、中世の街レベルの品物ぐらいはあると思う。でも、買うにも、お金が無いんだよな。この世界には、どんな仕事があるんだろう?」

 街の人達の服装は、男も女も海賊が着るような、白いシャツに、赤や青、緑や黄色のブカっとしたズボンを履いている人が多い。
 男はスネ辺りまで、女は膝よりも少し下が一般的なズボンの長さのようだ。

 建物の窓にはガラスが使われていて、木造の骨組みに硬い白土が塗り込まれている。
 街の文明レベルは十七世紀以上で、治安は良いと思う。
 路上にゴミは落ちていないし、着ている服も汚れていない。
 聞こえる言語は日本語で、暮らすには問題ないけど、お金が無い。仕事をする必要がある。

 今、僕が着ている服は街の人達が着ている服と同じような物だ。
 白の長袖シャツに、黒のズボン、靴は焦げ茶色の足首革ブーツを履いている。
 でも、それ以外の持ち物は持っていない。この美しすぎる容姿以外は……。

「ふっ♪ それだけあれば十分という事か。ならば行こう!」

 右手を頭、左手を股間に置いて悩ましげなセクシーポーズを決めると、ガラス窓に映る僕、いや、俺様を見た。
 美しすぎる。もう誰にも、ひでぶぅとは言わせない。
 今の俺様ならば、学校の女教師から女生徒、通学中に出会った幼児から美魔女まで、そのハートを根こそぎ鷲掴みに出来る。
 それだけ、ガラス窓に映る今日の俺様はセクシーだ。

「さあ、記念すべき異世界デビューだ」

 チュッ♡ ガラス窓に映る美しい俺様とキスの練習をした。
 次は街に溢れる子猫ちゃん達との本番が待っている。
 お城をお忍びで抜け出して来たプリンスのような気分で、俺様は暗い路地裏から光溢れる街中に飛び出した。

「えっ、えっ、嘘⁉︎ なんで、嘘よ……きゃああああッッッ‼︎」

 たった三秒……ちぇっ。やれやれ、もう子猫ちゃんに見つかっちまったぜ。
 鼓膜を突き破るような女子の大絶叫がすぐに聞こえてきた。
 これだから俺様は城から出たくなかったんだよ。

「おい! ダークエルフが現れたぞ!」
「誰か街の警備兵を急いで呼べ!」
「女子供は家に隠れていろ!」
「きゃああああっ! いやぁッッッ! まだ死にたくないッッッ!」
「……えっ?」

 街の住民達が悲鳴を上げながら建物の中に逃げ込んで行く。
 僕はなぜか屈強な身体をガクブルさせて、ファイティングポーズを取る男六人に囲まれてしまった。

『プルルルル♪ プルルルル♪ 女神様からの電話だよ♪ プルルルル♪ プルルルル♪ 女神様からの電話だよ♪』

 突然頭の中に天使の少女の可愛らしい声が聞こえて来た。
 でも、今は電話で話している余裕はない。それに通話ボタンが見つかりません。

「まだダークエルフが生き残っていやがったのか! 俺達の街を絶対に破壊させないからな!」
「ダークエルフは首だけでも生きられるらしいぞ。徹底的に叩き潰してやる!」
「一言でも喋らせたら魔法が飛んで来る。一気に殺さないと、一気に殺さないと」
「⁉︎」

 僕を囲む六人から凄い殺意を感じる。
 話し合いをしようと「あ」の一言でも喋ろうとしたら、六人全員が絶対に襲い掛かって来る。
 そうだ! ジェスチャーなら……駄目だ! ジェスチャーは何かやりそうな動きにしか見えない。

『ガチャン……あっ、もしもし? 私、女神のルミエルだよ。ごめんね。間違ってダークエルフを敵対視している街に送っちゃった。まだ街の人に見つかっていないなら、急いで街の外に逃げてね。殺されるから。じゃあ。ガチャン。ツゥツゥツゥ』
「⁉︎」

 通話ボタンを押してないのに、天使の少女が一方的に話して、一方的に電話を切った。
 ハァ、ハァ、ハァ、この状況どうすればいいんですか? もう見つかっちゃいましたけど……。

 六人の男は睨むだけで自分達から積極的に動こうとはしない。ツゥーッと嫌な汗が額から流れ落ちて来る。
 おそらく警備兵とは警察官のような人達の事だ。その人達が来るまで僕を見張るか牽制したいだけだ。
 剣か槍か知らないけど、武器を持った人達がやって来たら逃げられない。逃げるなら、今しかない!
 
「シャアアッ!」
「ええっ⁉︎ おい、ダークエルフが逃げたぞ!」
「逃すんじゃない!」
「追え追え! 殺せ殺せ!」

 全速力で路地裏に飛び込んで、狭い道を疾走する。
 捕まったら殺されるなら全力で逃げないと駄目だ。
 僕のあとを男達が追いかけて来るけど、ジョギングでペース配分は分かっている。
 それに身体が風のように軽い。これなら行ける。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

男女比1:50の世界に転生したけど、前世の感覚で普通に接してたら幼馴染も姉妹もお嬢様もみんな沼にハマっていった件 ~ダンジョンにも潜ります〜

ベリーブルー
ファンタジー
男女比1:50――この世界で男は、守られ、大切にされ、穏やかに生きることを求められる存在。 だけど蓮は違った。 前世の記憶を持つ彼には、「男だから」という枷がない。女の子にも男の子にも同じように笑いかけ、距離を詰め、気負いなく手を差し伸べる。本人にとってはただの"普通"。でもこの世界では、その普通が劇薬だった。 幼馴染は気づけば目で追っていた。姉は守りたい感情の正体に戸惑い始めた。名家のお嬢様は、初めて「対等」に扱われたことが忘れられなくなった。 そして蓮はと言えば――。 「ダンジョン潜りてえなあ!」 誰も見たことのない深淵にロマンを見出し、周囲の心配をよそに、未知の世界へ飛び込もうとしている。 自覚なき最強のタラシが、命懸けの冒険と恋の沼を同時に生み出す、現代ダンジョンファンタジー。 カクヨムさんの方で先行公開しております。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...