35 / 63
第35話
しおりを挟む
「おーい、大丈夫か? 傷は浅いぞ」
「うぅっ、痛い」
意識を取り戻すと、顔を覗き込んでいる、赤髪の鍛治屋と水色髪のアクセサリー屋の女性二人と目が合った。
地面に落下すると同時に、気絶してしまったようだ。
出来れば、弾力のある膝枕状態で目覚めたかったけど、硬い地面に寝かされていた。
まあ、放置されずに心配されるだけマシだと思うしかない。
「トオルさん、大丈夫ですか?」
「ええっ、まあ、大丈夫です。それにしても、レクシーさんは強いですね。あっはは……全然相手になりませんでした」
心配してくれる優しいアルアさんに向かって軽く微笑むと、次に無表情なレクシーに力なく微笑んだ。
きっと予想以上の僕の弱さに、ガッカリしているんだろうな。
「……さんはいい。筋は悪くはなかった。召喚魔法に水魔法、それに相手の裏をかく、右手での魔法攻撃には感心した。そこに剣術を加えれば、さらに強くなれるはずだぞ」
あれ? 負けたからレクシーの好感度が下がっていると思ったけど、予想以上の高評価だ。
「何言ってるんですか? トオルさんの魔法の才能を伸ばす方が、強くなる近道です。私も教えられる魔法が少しはありますから、一緒に魔法の修業をしましょうね♪」
おおぅ! こっちも高評価だ。
それに念願の魔法の師匠ゲットだぜ。
同じエルフとして、魔法以外にも色々と教えてくれるかもしれないぞ。
こりゃー、アクセサリー屋に住み込みで、弟子入りするしかない。
「何を言っている? 得意分野を伸ばしても意味はない。苦手な分野を克服してこそ、強くなる近道だ」
「それこそ時間の無駄です。トオルさんは世界最強を目指している訳じゃないんですよ。ある程度の実力を身につければ、満足なんですよ」
へっ⁉︎ えっ⁉︎ まさかの僕の取り合いが始まってしまった。
確かに世界最強はレベル30までしか上がらないので、目指してませんけど、別に弱くていいとは思っていませんよ。
悪い神に命を狙われているので、そこそこ強くならないと、ヤバイらしいんです。
それにこれでも、向上心は結構ある方なんですよ。
「トオルは私と修業したいんだ。お前は指輪でも磨いていろ!」
「いいえ、トオルさんは私と修業したいはずです。レクシーさんこそ、鉄の塊でも打ていればいいじゃないですか!」
「何だと!」
「何ですか!」
「「ぐっぬぬぬぬ‼︎」」
「えっーと、えっーと……」
まさかのモテ期到来だけど、僕の修業方針を巡って、二人の女性が激しく言い争っている。
「やめてぇ! 僕の為に争わないでぇ!」と叫んでみたいけど、多分、喧嘩は止まるけど、言ったら二人にキモいと思われて、引かれてしまう。
恋愛未経験者の僕でも、そのぐらいは分かっている。
正直言って、剣術の修業は痛そうだからやりたくない。
出来れば魔法の修業だけやりたい。
でも、そんな事を言ってしまったら、レクシーが怒って、二度と武器と防具を売ってくれないかもしれない。
二股をかけるつもりはないけど、出来れば二人との関係は良好なままで維持したい。
ならば、やる事は決まっている。
「あのぉ~、剣と魔法の両方を修業したら駄目ですか?」
「両方だと?」
「両方ですか?」
そこまで本気で修業するつもりはないので、一日一時間の修業ぐらいならば、二つやっても問題ないはずだ。
ちょっと疲れるけど、それで良好な関係が維持できるならば、安い犠牲だと思うしかない。
「……駄目じゃないが、それだと、トオルが倒した魔物の素材の取り分が半分になってしまう」
「私も出来れば、魔物の素材は独り占めしたいです。半分はちょっと……」
まあ、分かっていたけど、僕が冒険者だから取り合いになっているんだ。
そして、その原因が勘違いであるのも分かっている。
多分、お世辞が多少はあるとは思うけど、二人は僕の能力を恐ろしく過大評価している。
ここはハッキリと弱いと言っておかないと、期待以下の結果を見せた時に、非常にガッカリさせる事になってしまう。ここはハッキリと弱いと主張しないと駄目だ。
「すみません、ちょっといいですか。僕はレクシーとアルアさんが期待するような、凄い冒険者じゃないです。弱い魔物しか倒せないし、大した素材も手に入らないと思います。それに水魔法しか使えないんです。全然弱い冒険者なんです。ごめんなさい」
「「⁇」」
睨み合っている二人の間に割り込むと、僕は正直に話した。
これで不毛な言い争いは終わってくれるはずだ。
でも、すぐに僕の予想を裏切る反応が、レクシーとアルアから返って来た。
「んっ? それがどうした? 弱いのは分かっている。だから、鍛えて使いものになる冒険者にしようとしているんだ」
「そうです。一目見れば、雑魚か強者かは分かります。雑魚だから、伸び代があるんです。だからこそ、ちょっと鍛えただけで感謝されるんですよ」
「……」
二人とも真顔で僕を弱い弱いと連呼している。
ああっ、そうか。そういう事か。弱いからこそ欲しいのか。
ちょっと複雑な気持ちだけど、二人の狙いは分かった。
でも、状況は変わらない。片方を選べば、片方に嫌われてしまう。
二人を満足させる方法を提案しないと、片方を犠牲にするしかなくなってしまう。
「トオルが剣を持っているのは、小さい頃から剣士になるのに、憧れているからなんだぞ!」
「今日、初めて会ったのに、なんでそんな事が分かるんですか! 嘘を吐かないくださいよ!」
「「ぐっぬぬぬぬ‼︎」」
「……」
考えるんだ。なんとか二人をキープする最高の手を……。
僕の灰色の脳細胞なら、思いつく事が出来るはずだ。
考えるな……感じるんだ。なんとか二股をキープする方法があるはずだ。
落ち着いて考えれば、答えは見えるはずだ。
今二人は僕を巡って争っている。そして、僕は確実に一人はゲットできる状態だ……。
ピキーン♪ 閃いたぞ‼︎
「あのぉ、ちょっといいですか?」
「何だ?」
「どうしたんですか?」
「どっちの修業をしていいのか決められないので、一週間だけ、修業のお試し期間が欲しいんです。それで僕に合っている方を決めさせてください」
「「んんっ?」」
ムフフ。作戦はこうだ。
僕を取り合っている二人には、僕に選んでもらえるように、色々とサービスという接待をしてもらう。
当然、色仕掛けという女の武器を使うのも、本人の気持ち次第だ。
でも、僕は頑張りをしっかりと評価する男だから、僕の家に来て、風呂に入って、一夜を過ごせば、どっちを選ぶかは、ほぼ決まったようなものだ。
そう。二人の喧嘩を止めるよりは、喧嘩のエネルギーを僕に向けさせるという賢い作戦だ。
僕に気に入られようと、修業なんてそっちのけで、あんな事やこんな事をしてくれるはずだ。
いやぁ~、これだと一日一時間の修業時間じゃ足りませんなぁ~。二時間に延長しようかな?
「一週間のお試し期間か……確かに悪くはないな。それだけあれば、伸び代も大体分かりそうだ。私はいいぞ」
「私も構いませんよ。すでに選ばれるのは、決まっているようなものですが、ハッキリと至らない点がある事を自覚した方が、レクシーさんの為ですからね」
「言っていろ。修業時間は一人一日二時間だ。先攻後攻、好きな方を選べ」
「じゃあ、先攻にしますね。レクシーさんにボコボコにされた後で教えても、頭には入らないでしょうから」
二人はどうやら大賛成のようだ。
お試し期間一週間が採用された。
いつもは見えざる力が働いたように、おかしな方向に向かって行くけど、今回は問題なさそうだ。
「では、今日は他の住民の方達にも挨拶をしたいので、修業は明日からお願いします」
「分かった。修業は明日からだな。それとその破れている服を貸してみろ。引っ越し祝いだ。無料で修理してやる。他にも修理して欲しいのがあったら、一品10エルで修理するからな」
「本当ですか! ありがとうございます。意外と家庭的なんですね」
「むうう、ちょっと買収なんてズルいですよ!」
「ズルじゃない。商売しているだけでじゃないか。言い掛かりはやめて欲しいな」
「白々しい……」
やれやれ、もうサービス合戦が始まってしまった。
悔しそうにしているアルアには悪いけど、レクシーにまずは一ポイントだ。
僕はレクシーに着ていた白シャツを脱いで渡すと、ついでに伸び切った白パンティー二枚を渡した。
お支払いは、神フォンから自動で引き落とされるらしい。
修理はすぐに済むらしいので、レクシーと一緒に鍛治屋に向かった。
そして、カウンター越しに僕のシャツとパンティーが、灼熱の炉の中に、ポイッと投げ込まれる瞬間を目撃してしまった。
「ぎゃあああああ~~~‼︎ 戦利品がぁ~~~‼︎」
声にならない声を上げてしまった。
「んっ、どうしたんだ? 大きな声を出して」
「ああっ、ああっ、ああっ、だって、燃えてる……」
「そうだな。確かに燃えているな」
平然とレクシーは、燃えている塊を見て答えた。
これだと涙を流して悲しんでいる、僕の方がおかしいみたいだ。
でも、仕方ない。他人から見たら、ただの布切れだ。
ポモナ村の思い出も、牝鹿乗馬の思い出も、僕だけの大切な思い出なんだから仕方ない。
「うぐっ、ぐすっ、成仏するんだぞ」
炉の中でシャツとパンティーがメラメラと燃えていく。
心の友が火葬されていく姿を、僕は涙を流して見送った。
「よし、そろそろ良いな。修理は終わったぞ」
「へぇっ?」
レクシーは平然とそう言うと、火バサミを右手に持って、炉の中で燃えている物体を挟んで摘み出した。
そして、ブンブンと乱暴に振り回して火を消すと、真っ白なシャツとパンティーを復活させた。
「ほら、少し熱いから火傷するなよ」
「えっ⁉︎ えっ⁉︎ あっ、はい、ありがとうございます?」
手渡されたシャツは、まったく破れていなかった。
二枚のパンティーも、伸びきる前の姿に戻っている。
しかも! フルーツの匂いも消えていなかった。
まさに職人の技だ。
「うぅっ、痛い」
意識を取り戻すと、顔を覗き込んでいる、赤髪の鍛治屋と水色髪のアクセサリー屋の女性二人と目が合った。
地面に落下すると同時に、気絶してしまったようだ。
出来れば、弾力のある膝枕状態で目覚めたかったけど、硬い地面に寝かされていた。
まあ、放置されずに心配されるだけマシだと思うしかない。
「トオルさん、大丈夫ですか?」
「ええっ、まあ、大丈夫です。それにしても、レクシーさんは強いですね。あっはは……全然相手になりませんでした」
心配してくれる優しいアルアさんに向かって軽く微笑むと、次に無表情なレクシーに力なく微笑んだ。
きっと予想以上の僕の弱さに、ガッカリしているんだろうな。
「……さんはいい。筋は悪くはなかった。召喚魔法に水魔法、それに相手の裏をかく、右手での魔法攻撃には感心した。そこに剣術を加えれば、さらに強くなれるはずだぞ」
あれ? 負けたからレクシーの好感度が下がっていると思ったけど、予想以上の高評価だ。
「何言ってるんですか? トオルさんの魔法の才能を伸ばす方が、強くなる近道です。私も教えられる魔法が少しはありますから、一緒に魔法の修業をしましょうね♪」
おおぅ! こっちも高評価だ。
それに念願の魔法の師匠ゲットだぜ。
同じエルフとして、魔法以外にも色々と教えてくれるかもしれないぞ。
こりゃー、アクセサリー屋に住み込みで、弟子入りするしかない。
「何を言っている? 得意分野を伸ばしても意味はない。苦手な分野を克服してこそ、強くなる近道だ」
「それこそ時間の無駄です。トオルさんは世界最強を目指している訳じゃないんですよ。ある程度の実力を身につければ、満足なんですよ」
へっ⁉︎ えっ⁉︎ まさかの僕の取り合いが始まってしまった。
確かに世界最強はレベル30までしか上がらないので、目指してませんけど、別に弱くていいとは思っていませんよ。
悪い神に命を狙われているので、そこそこ強くならないと、ヤバイらしいんです。
それにこれでも、向上心は結構ある方なんですよ。
「トオルは私と修業したいんだ。お前は指輪でも磨いていろ!」
「いいえ、トオルさんは私と修業したいはずです。レクシーさんこそ、鉄の塊でも打ていればいいじゃないですか!」
「何だと!」
「何ですか!」
「「ぐっぬぬぬぬ‼︎」」
「えっーと、えっーと……」
まさかのモテ期到来だけど、僕の修業方針を巡って、二人の女性が激しく言い争っている。
「やめてぇ! 僕の為に争わないでぇ!」と叫んでみたいけど、多分、喧嘩は止まるけど、言ったら二人にキモいと思われて、引かれてしまう。
恋愛未経験者の僕でも、そのぐらいは分かっている。
正直言って、剣術の修業は痛そうだからやりたくない。
出来れば魔法の修業だけやりたい。
でも、そんな事を言ってしまったら、レクシーが怒って、二度と武器と防具を売ってくれないかもしれない。
二股をかけるつもりはないけど、出来れば二人との関係は良好なままで維持したい。
ならば、やる事は決まっている。
「あのぉ~、剣と魔法の両方を修業したら駄目ですか?」
「両方だと?」
「両方ですか?」
そこまで本気で修業するつもりはないので、一日一時間の修業ぐらいならば、二つやっても問題ないはずだ。
ちょっと疲れるけど、それで良好な関係が維持できるならば、安い犠牲だと思うしかない。
「……駄目じゃないが、それだと、トオルが倒した魔物の素材の取り分が半分になってしまう」
「私も出来れば、魔物の素材は独り占めしたいです。半分はちょっと……」
まあ、分かっていたけど、僕が冒険者だから取り合いになっているんだ。
そして、その原因が勘違いであるのも分かっている。
多分、お世辞が多少はあるとは思うけど、二人は僕の能力を恐ろしく過大評価している。
ここはハッキリと弱いと言っておかないと、期待以下の結果を見せた時に、非常にガッカリさせる事になってしまう。ここはハッキリと弱いと主張しないと駄目だ。
「すみません、ちょっといいですか。僕はレクシーとアルアさんが期待するような、凄い冒険者じゃないです。弱い魔物しか倒せないし、大した素材も手に入らないと思います。それに水魔法しか使えないんです。全然弱い冒険者なんです。ごめんなさい」
「「⁇」」
睨み合っている二人の間に割り込むと、僕は正直に話した。
これで不毛な言い争いは終わってくれるはずだ。
でも、すぐに僕の予想を裏切る反応が、レクシーとアルアから返って来た。
「んっ? それがどうした? 弱いのは分かっている。だから、鍛えて使いものになる冒険者にしようとしているんだ」
「そうです。一目見れば、雑魚か強者かは分かります。雑魚だから、伸び代があるんです。だからこそ、ちょっと鍛えただけで感謝されるんですよ」
「……」
二人とも真顔で僕を弱い弱いと連呼している。
ああっ、そうか。そういう事か。弱いからこそ欲しいのか。
ちょっと複雑な気持ちだけど、二人の狙いは分かった。
でも、状況は変わらない。片方を選べば、片方に嫌われてしまう。
二人を満足させる方法を提案しないと、片方を犠牲にするしかなくなってしまう。
「トオルが剣を持っているのは、小さい頃から剣士になるのに、憧れているからなんだぞ!」
「今日、初めて会ったのに、なんでそんな事が分かるんですか! 嘘を吐かないくださいよ!」
「「ぐっぬぬぬぬ‼︎」」
「……」
考えるんだ。なんとか二人をキープする最高の手を……。
僕の灰色の脳細胞なら、思いつく事が出来るはずだ。
考えるな……感じるんだ。なんとか二股をキープする方法があるはずだ。
落ち着いて考えれば、答えは見えるはずだ。
今二人は僕を巡って争っている。そして、僕は確実に一人はゲットできる状態だ……。
ピキーン♪ 閃いたぞ‼︎
「あのぉ、ちょっといいですか?」
「何だ?」
「どうしたんですか?」
「どっちの修業をしていいのか決められないので、一週間だけ、修業のお試し期間が欲しいんです。それで僕に合っている方を決めさせてください」
「「んんっ?」」
ムフフ。作戦はこうだ。
僕を取り合っている二人には、僕に選んでもらえるように、色々とサービスという接待をしてもらう。
当然、色仕掛けという女の武器を使うのも、本人の気持ち次第だ。
でも、僕は頑張りをしっかりと評価する男だから、僕の家に来て、風呂に入って、一夜を過ごせば、どっちを選ぶかは、ほぼ決まったようなものだ。
そう。二人の喧嘩を止めるよりは、喧嘩のエネルギーを僕に向けさせるという賢い作戦だ。
僕に気に入られようと、修業なんてそっちのけで、あんな事やこんな事をしてくれるはずだ。
いやぁ~、これだと一日一時間の修業時間じゃ足りませんなぁ~。二時間に延長しようかな?
「一週間のお試し期間か……確かに悪くはないな。それだけあれば、伸び代も大体分かりそうだ。私はいいぞ」
「私も構いませんよ。すでに選ばれるのは、決まっているようなものですが、ハッキリと至らない点がある事を自覚した方が、レクシーさんの為ですからね」
「言っていろ。修業時間は一人一日二時間だ。先攻後攻、好きな方を選べ」
「じゃあ、先攻にしますね。レクシーさんにボコボコにされた後で教えても、頭には入らないでしょうから」
二人はどうやら大賛成のようだ。
お試し期間一週間が採用された。
いつもは見えざる力が働いたように、おかしな方向に向かって行くけど、今回は問題なさそうだ。
「では、今日は他の住民の方達にも挨拶をしたいので、修業は明日からお願いします」
「分かった。修業は明日からだな。それとその破れている服を貸してみろ。引っ越し祝いだ。無料で修理してやる。他にも修理して欲しいのがあったら、一品10エルで修理するからな」
「本当ですか! ありがとうございます。意外と家庭的なんですね」
「むうう、ちょっと買収なんてズルいですよ!」
「ズルじゃない。商売しているだけでじゃないか。言い掛かりはやめて欲しいな」
「白々しい……」
やれやれ、もうサービス合戦が始まってしまった。
悔しそうにしているアルアには悪いけど、レクシーにまずは一ポイントだ。
僕はレクシーに着ていた白シャツを脱いで渡すと、ついでに伸び切った白パンティー二枚を渡した。
お支払いは、神フォンから自動で引き落とされるらしい。
修理はすぐに済むらしいので、レクシーと一緒に鍛治屋に向かった。
そして、カウンター越しに僕のシャツとパンティーが、灼熱の炉の中に、ポイッと投げ込まれる瞬間を目撃してしまった。
「ぎゃあああああ~~~‼︎ 戦利品がぁ~~~‼︎」
声にならない声を上げてしまった。
「んっ、どうしたんだ? 大きな声を出して」
「ああっ、ああっ、ああっ、だって、燃えてる……」
「そうだな。確かに燃えているな」
平然とレクシーは、燃えている塊を見て答えた。
これだと涙を流して悲しんでいる、僕の方がおかしいみたいだ。
でも、仕方ない。他人から見たら、ただの布切れだ。
ポモナ村の思い出も、牝鹿乗馬の思い出も、僕だけの大切な思い出なんだから仕方ない。
「うぐっ、ぐすっ、成仏するんだぞ」
炉の中でシャツとパンティーがメラメラと燃えていく。
心の友が火葬されていく姿を、僕は涙を流して見送った。
「よし、そろそろ良いな。修理は終わったぞ」
「へぇっ?」
レクシーは平然とそう言うと、火バサミを右手に持って、炉の中で燃えている物体を挟んで摘み出した。
そして、ブンブンと乱暴に振り回して火を消すと、真っ白なシャツとパンティーを復活させた。
「ほら、少し熱いから火傷するなよ」
「えっ⁉︎ えっ⁉︎ あっ、はい、ありがとうございます?」
手渡されたシャツは、まったく破れていなかった。
二枚のパンティーも、伸びきる前の姿に戻っている。
しかも! フルーツの匂いも消えていなかった。
まさに職人の技だ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
男女比1:50の世界に転生したけど、前世の感覚で普通に接してたら幼馴染も姉妹もお嬢様もみんな沼にハマっていった件 ~ダンジョンにも潜ります〜
ベリーブルー
ファンタジー
男女比1:50――この世界で男は、守られ、大切にされ、穏やかに生きることを求められる存在。
だけど蓮は違った。
前世の記憶を持つ彼には、「男だから」という枷がない。女の子にも男の子にも同じように笑いかけ、距離を詰め、気負いなく手を差し伸べる。本人にとってはただの"普通"。でもこの世界では、その普通が劇薬だった。
幼馴染は気づけば目で追っていた。姉は守りたい感情の正体に戸惑い始めた。名家のお嬢様は、初めて「対等」に扱われたことが忘れられなくなった。
そして蓮はと言えば――。
「ダンジョン潜りてえなあ!」
誰も見たことのない深淵にロマンを見出し、周囲の心配をよそに、未知の世界へ飛び込もうとしている。
自覚なき最強のタラシが、命懸けの冒険と恋の沼を同時に生み出す、現代ダンジョンファンタジー。
カクヨムさんの方で先行公開しております。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる