異世界最後のダークエルフとして転生した僕は、神スマートフォンと魔物使いの能力を駆使して生き延びる。

もう書かないって言ったよね?

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第35話

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「おーい、大丈夫か? 傷は浅いぞ」
「うぅっ、痛い」

 意識を取り戻すと、顔を覗き込んでいる、赤髪の鍛治屋と水色髪のアクセサリー屋の女性二人と目が合った。
 地面に落下すると同時に、気絶してしまったようだ。
 出来れば、弾力のある膝枕状態で目覚めたかったけど、硬い地面に寝かされていた。
 まあ、放置されずに心配されるだけマシだと思うしかない。

「トオルさん、大丈夫ですか?」
「ええっ、まあ、大丈夫です。それにしても、レクシーさんは強いですね。あっはは……全然相手になりませんでした」

 心配してくれる優しいアルアさんに向かって軽く微笑むと、次に無表情なレクシーに力なく微笑んだ。
 きっと予想以上の僕の弱さに、ガッカリしているんだろうな。

「……さんはいい。筋は悪くはなかった。召喚魔法に水魔法、それに相手の裏をかく、右手での魔法攻撃には感心した。そこに剣術を加えれば、さらに強くなれるはずだぞ」

 あれ? 負けたからレクシーの好感度が下がっていると思ったけど、予想以上の高評価だ。
 
「何言ってるんですか? トオルさんの魔法の才能を伸ばす方が、強くなる近道です。私も教えられる魔法が少しはありますから、一緒に魔法の修業をしましょうね♪」

 おおぅ! こっちも高評価だ。
 それに念願の魔法の師匠ゲットだぜ。
 同じエルフとして、魔法以外にも色々と教えてくれるかもしれないぞ。
 こりゃー、アクセサリー屋に住み込みで、弟子入りするしかない。
 
「何を言っている? 得意分野を伸ばしても意味はない。苦手な分野を克服してこそ、強くなる近道だ」
「それこそ時間の無駄です。トオルさんは世界最強を目指している訳じゃないんですよ。ある程度の実力を身につければ、満足なんですよ」

 へっ⁉︎ えっ⁉︎ まさかの僕の取り合いが始まってしまった。
 確かに世界最強はレベル30までしか上がらないので、目指してませんけど、別に弱くていいとは思っていませんよ。
 悪い神に命を狙われているので、そこそこ強くならないと、ヤバイらしいんです。
 それにこれでも、向上心は結構ある方なんですよ。

「トオルは私と修業したいんだ。お前は指輪でも磨いていろ!」
「いいえ、トオルさんは私と修業したいはずです。レクシーさんこそ、鉄の塊でも打ていればいいじゃないですか!」
「何だと!」
「何ですか!」
「「ぐっぬぬぬぬ‼︎」」
「えっーと、えっーと……」

 まさかのモテ期到来だけど、僕の修業方針を巡って、二人の女性が激しく言い争っている。
「やめてぇ! 僕の為に争わないでぇ!」と叫んでみたいけど、多分、喧嘩は止まるけど、言ったら二人にキモいと思われて、引かれてしまう。
 恋愛未経験者の僕でも、そのぐらいは分かっている。

 正直言って、剣術の修業は痛そうだからやりたくない。
 出来れば魔法の修業だけやりたい。
 でも、そんな事を言ってしまったら、レクシーが怒って、二度と武器と防具を売ってくれないかもしれない。
 二股をかけるつもりはないけど、出来れば二人との関係は良好なままで維持したい。
 ならば、やる事は決まっている。

「あのぉ~、剣と魔法の両方を修業したら駄目ですか?」
「両方だと?」
「両方ですか?」

 そこまで本気で修業するつもりはないので、一日一時間の修業ぐらいならば、二つやっても問題ないはずだ。
 ちょっと疲れるけど、それで良好な関係が維持できるならば、安い犠牲だと思うしかない。

「……駄目じゃないが、それだと、トオルが倒した魔物の素材の取り分が半分になってしまう」
「私も出来れば、魔物の素材は独り占めしたいです。半分はちょっと……」

 まあ、分かっていたけど、僕が冒険者だから取り合いになっているんだ。
 そして、その原因が勘違いであるのも分かっている。
 多分、お世辞が多少はあるとは思うけど、二人は僕の能力を恐ろしく過大評価している。
 ここはハッキリと弱いと言っておかないと、期待以下の結果を見せた時に、非常にガッカリさせる事になってしまう。ここはハッキリと弱いと主張しないと駄目だ。

「すみません、ちょっといいですか。僕はレクシーとアルアさんが期待するような、凄い冒険者じゃないです。弱い魔物しか倒せないし、大した素材も手に入らないと思います。それに水魔法しか使えないんです。全然弱い冒険者なんです。ごめんなさい」
「「⁇」」

 睨み合っている二人の間に割り込むと、僕は正直に話した。
 これで不毛な言い争いは終わってくれるはずだ。
 でも、すぐに僕の予想を裏切る反応が、レクシーとアルアから返って来た。

「んっ? それがどうした? 弱いのは分かっている。だから、鍛えて使いものになる冒険者にしようとしているんだ」
「そうです。一目見れば、雑魚か強者かは分かります。雑魚だから、伸び代があるんです。だからこそ、ちょっと鍛えただけで感謝されるんですよ」
「……」

 二人とも真顔で僕を弱い弱いと連呼している。
 ああっ、そうか。そういう事か。弱いからこそ欲しいのか。
 ちょっと複雑な気持ちだけど、二人の狙いは分かった。
 でも、状況は変わらない。片方を選べば、片方に嫌われてしまう。
 二人を満足させる方法を提案しないと、片方を犠牲にするしかなくなってしまう。

「トオルが剣を持っているのは、小さい頃から剣士になるのに、憧れているからなんだぞ!」
「今日、初めて会ったのに、なんでそんな事が分かるんですか! 嘘を吐かないくださいよ!」
「「ぐっぬぬぬぬ‼︎」」
「……」

 考えるんだ。なんとか二人をキープする最高の手を……。
 僕の灰色の脳細胞知力や思考力なら、思いつく事が出来るはずだ。
 考えるな……感じるんだ。なんとか二股をキープする方法があるはずだ。
 落ち着いて考えれば、答えは見えるはずだ。
 今二人は僕を巡って争っている。そして、僕は確実に一人はゲットできる状態だ……。
 ピキーン♪ 閃いたぞ‼︎

「あのぉ、ちょっといいですか?」
「何だ?」
「どうしたんですか?」
「どっちの修業をしていいのか決められないので、一週間だけ、修業のお試し期間が欲しいんです。それで僕に合っている方を決めさせてください」
「「んんっ?」」

 ムフフ。作戦はこうだ。
 僕を取り合っている二人には、僕に選んでもらえるように、色々とサービスという接待をしてもらう。
 当然、色仕掛けという女の武器を使うのも、本人の気持ち次第だ。
 でも、僕は頑張りをしっかりと評価する男だから、僕の家に来て、風呂に入って、一夜を過ごせば、どっちを選ぶかは、ほぼ決まったようなものだ。

 そう。二人の喧嘩を止めるよりは、喧嘩のエネルギーを僕に向けさせるという賢い作戦だ。
 僕に気に入られようと、修業なんてそっちのけで、あんな事やこんな事をしてくれるはずだ。
 いやぁ~、これだと一日一時間の修業時間じゃ足りませんなぁ~。二時間に延長しようかな?

「一週間のお試し期間か……確かに悪くはないな。それだけあれば、伸び代も大体分かりそうだ。私はいいぞ」
「私も構いませんよ。すでに選ばれるのは、決まっているようなものですが、ハッキリと至らない点がある事を自覚した方が、レクシーさんの為ですからね」
「言っていろ。修業時間は一人一日二時間だ。先攻後攻、好きな方を選べ」
「じゃあ、先攻にしますね。レクシーさんにボコボコにされた後で教えても、頭には入らないでしょうから」

 二人はどうやら大賛成のようだ。
 お試し期間一週間が採用された。
 いつもは見えざる力が働いたように、おかしな方向に向かって行くけど、今回は問題なさそうだ。

「では、今日は他の住民の方達にも挨拶をしたいので、修業は明日からお願いします」
「分かった。修業は明日からだな。それとその破れている服を貸してみろ。引っ越し祝いだ。無料で修理してやる。他にも修理して欲しいのがあったら、一品10エルで修理するからな」
「本当ですか! ありがとうございます。意外と家庭的なんですね」
「むうう、ちょっと買収なんてズルいですよ!」
「ズルじゃない。商売しているだけでじゃないか。言い掛かりはやめて欲しいな」
「白々しい……」

 やれやれ、もうサービス合戦が始まってしまった。
 悔しそうにしているアルアには悪いけど、レクシーにまずは一ポイントだ。
 僕はレクシーに着ていた白シャツを脱いで渡すと、ついでに伸び切った白パンティー二枚を渡した。
 お支払いは、神フォンから自動で引き落とされるらしい。
 修理はすぐに済むらしいので、レクシーと一緒に鍛治屋に向かった。
 そして、カウンター越しに僕のシャツとパンティーが、灼熱の炉の中に、ポイッと投げ込まれる瞬間を目撃してしまった。

「ぎゃあああああ~~~‼︎ 戦利品がぁ~~~‼︎」

 声にならない声を上げてしまった。

「んっ、どうしたんだ? 大きな声を出して」
「ああっ、ああっ、ああっ、だって、燃えてる……」
「そうだな。確かに燃えているな」

 平然とレクシーは、燃えている塊を見て答えた。
 これだと涙を流して悲しんでいる、僕の方がおかしいみたいだ。
 でも、仕方ない。他人から見たら、ただの布切れだ。
 ポモナ村の思い出も、牝鹿乗馬の思い出も、僕だけの大切な思い出なんだから仕方ない。

「うぐっ、ぐすっ、成仏するんだぞ」

 炉の中でシャツとパンティーがメラメラと燃えていく。
 心の友が火葬されていく姿を、僕は涙を流して見送った。

「よし、そろそろ良いな。修理は終わったぞ」
「へぇっ?」

 レクシーは平然とそう言うと、火バサミを右手に持って、炉の中で燃えている物体を挟んで摘み出した。
 そして、ブンブンと乱暴に振り回して火を消すと、真っ白なシャツとパンティーを復活させた。

「ほら、少し熱いから火傷するなよ」
「えっ⁉︎ えっ⁉︎ あっ、はい、ありがとうございます?」

 手渡されたシャツは、まったく破れていなかった。
 二枚のパンティーも、伸びきる前の姿に戻っている。
 しかも! フルーツの匂いも消えていなかった。
 まさに職人の技だ。
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