異世界最後のダークエルフとして転生した僕は、神スマートフォンと魔物使いの能力を駆使して生き延びる。

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
45 / 63

第45話

しおりを挟む
「少し待っていてください」
「……」
 
 そう言うと、アルアの気配が離れていった。
 このまま放置されるのかと思ったけど、違ったようだ。
 しばらくすると戻って来て、倒れている僕を無理やりに仰向けにすると、透明な瓶を見せてきた。

「お待たせしました。これを飲めば動けるようになりますから、吹き出さないでくださいよ」
「うぐっ⁉︎ うぅっ~~‼︎」

 乱暴に瓶を口の中に垂直に突っ込まれると、中の液体を、ゴボゴボと胃の中に流し込まれていく。
 物凄く苦いけど、我慢できずにアクアの顔面に吹き出したら終わりだ。
 最後の一滴まで我慢して飲んだ。

「どうですか? 動けますか?」
「あっ、はい、なんとか……」
 
 ゆっくりと起き上がると、手足の先を動かしてみる。
 全身麻酔を受けた後に目覚めたような、ちょっとした違和感はあるけど、問題なさそうだ。
 僕の身体は嘘のように動かせるようになっていた。
 流石はHP回復アイテムだ。

「それはよかったですね。蘇生薬の料金は250エルなので、神フォンから引き落としましたよ。お金が盗まれたとか言って、後で騒がないでくださいね」
「はい、ありがとうございます。それにしても、蘇生薬ですか? HP回復アイテムじゃないんですか?」

 ちょっと値段が高かったので、気になって聞いてみた。
 HP回復アイテムは50エルなので、蘇生薬250エルは、ちょっとぼったくりにしか思えなかった。
 まさか、この程度の質問で怒るはずはないとは思うけど……。

「そうですよ。使ったのはHP回復アイテムじゃないです。蘇生薬です。この町では人は死なないと言ったのは、蘇生薬で死んでも生き返らせる事が出来るからです。今朝もダミアさんが串刺しになって死んでいたので、使いましたよ」
「えっ……ハッ! すみません、犯人は僕です‼︎」

 大慌てでアルアに向かって土下座した。
 まさかダミアが死んでいるとは思っていなかった。
 気絶しているだけだと思って、完全に放置していたけど、普通に考えたら、尻を貫かれたら死んでしまう。

「知っています。言いましたよね? この町で魔法が使えるのは、私とあなただけです。どんな理由があったとしても、二度とあんな事をしたら駄目ですよ」
「はい、絶対にしません! 誓います!」

 感謝と謝罪をアルアに繰り返した。
 それに後で食堂に行って、しっかりとダミアにも謝らないといけない。
 しつこく付き纏われたから、殺してしまったなんて言い訳は、日本でも許されない。

「分かればいいんです。それでは残り時間も少ないので、パパッと教えますからね」
「よろしくお願いします」

 アルアに向かって頭を下げながら、僕はしっかりとお願いした。
 まずは目に見える形で、真剣な気持ちがある事を示さないと信用されない。

「あとで分からないと聞いて来ても、絶対に教えないので、キチンと集中して聞いてください」
「はい」
「では、始めます……」

 僕は集中して、アルアの魔法授業を聞き続けた。
 アルアは立ったまま授業をするタイプのようで、一度も地面に座ろうとはしなかった。
 だから、僕も同じように立って授業を受ける事になった。
 当然、重要な部分は神フォンのメモ機能を使って、記録も忘れない。
 そして、普段の椅子と机で受ける学校の授業が、快適で恵まれていた事を痛感した。

「ウィンドアローは真っ直ぐにしか飛びませんが、発射角度を調整すれば、上から下に向かって落とす事が出来ます。壁などの障害物を飛び越えて、当てる事が出来ます。ウィンドアローは弓矢と一緒だと思ってください」
「はい、分かりました」

 初級風魔法『ウィンドアロー』の呪文詠唱は、『吹き抜けろ、風の閃光』で、その威力は身を持って知っている。
 円錐状の鋭い矢を真っ直ぐに発射するという魔法で、ファイヤーボールと違って、攻撃の軌道を途中で曲げる事は出来ないそうだ。
 その代わり四属性の中で一番射程が長く、ファイヤーボールの射程が十八メートルぐらいなのに対して、ウィンドアローは二十八メートルもあるそうだ。
 あくまでも一般的な飛距離なので、熟練度が上がれば飛距離は伸びるそうだ。

 つまりは弓矢を使っているイメージがあるエルフにとっては、基本中の基本魔法なのかもしれない。
 これはエルフとして、頑張って覚えないといけない。

「これで四属性の魔法は使えるはずです」
「ありがとうございました。必ず使えるようになります」
「当然です。初級魔法で苦戦するエルフなんていません。それにまだ授業は終わりじゃありませんよ」
「えっ、そうなんですか?」

 お礼を言って、個人練習を始めようと思っていたけど、まだ何か教える事があるようだ。
 初級の次なら中級魔法しかないから、中級魔法の呪文詠唱を教えてくれるのだろうか?

「初級魔法から少し上の技術になりますが、二つの初級魔法を魔法詠唱で使えるようになると、二つの魔法の特性を合わせた魔法が使えるようになります。まずは見本です。〝ファイヤーアロー〟」
「んっ?」

 ちょっとだけ中級魔法が使えると期待してしまったけど、どうも少し違うようだ。
 アクアの右手手のひらには円錐状の鋭い炎矢が出現している。
 種類的には合成魔法のような感じがする。
 風の矢が、炎の矢に変わっただけのように見えるけど、何か違いでもあるのだろうか?

「消費するMPは二つ分になりますが、ウィンドアローの貫通力、飛距離を持った、炎の矢を発射する事が出来ます」
「あのぉ、威力は変化するんですか?」

 思いきって質問してみた。
 これでダメージが二倍になるなら、是非習得を急いだ方がいいからだ。
 でも、期待していた答えは返って来なかった。

「残念ながら変化はしません。あくまでも初級魔法の変異、亜種と考えるようにしてください。でも、応用が効く技なので覚えておいて損はしませんよ。例えば、アースリージョン、アクアロアー、ファイヤーボールの三つを取得できれば、地面から火柱を上げる事も出来ます」
「なるほど。あれ? でも、その場合は何って言えばいいんですか?」

 二つの呪文の組み合わせならば、僕でも分かるけど、三つだと少し分からなくなる。
 四つだと、もうお手上げ状態だ。

「基本は属性が最初になります。この場合は炎の柱なので、最初がファイヤーになります。あとは咆哮を意味するロアーと、領域を意味するリージョンを付ければ、炎の咆哮の領域となります。順番が違うと発動しないので注意してくださいね。手のひらから炎の柱を出すだけならば、ファイヤーロアーでも出来ますから」

 なるほど。外国人のミドルネームみたいなものかもしれない。
 重要なのは最初と最後の二つだけなんだろう。

「分かりました。つまりは〝ファイヤーロアーリージョン〟になるんですね」
「そう言う事です。技の種類はアイデアと組み合わせ次第です。組み合わせを教えるつもりはないので、自分で見つけてくださいね」
「はい」

 もちろん魔法を三つ使った場合は、消費MPも三つ分になる。そこも注意しないといけない。
 初級魔法四つでも、幅広い戦い方があるのは分かったけど、まずは魔法詠唱が出来るようにならないと駄目だ。

「あと、クラーケンは水属性の魔物なので、水魔法は威力は半減しますが、アクアロアーとアースリージョンが使えるようになれば、アクアリージョンで海中のどの方向からでも、クラーケンを攻撃できるようになれます。使えるのはまだまだ先だと思いますけど、一応は覚えておいてください」
「分かりました。練習しておきます」
「まあ、期待はしていませんが、頑張ってください。これで授業は終わります。質問が無ければ帰ります」

 これで授業は終わりらしい。
 特に聞きたい事はないと思うけど……最初で最後の授業なんだ。
 聞き忘れていた事を、後で思い出したら大変な事になる。
 何かないだろうか? あっ!

「中級魔法の呪文詠唱を教えてもらえないでしょうか?」
「ああっ、それは無理です。中級魔法を扱えるのはレベル31からです。あなたに教えても意味がありません。だからこそ、初級魔法の組み合わせを教えたんです。では、授業は終わりです。あと、お店には来ないでくださいね。必要な物は神フォンで買えるでしょうから。それじゃあ、さようなら」
「あっ、はい……ありがとうございました」

 お店への出入り禁止命令と一緒に、呆気なく、中級魔法が使えない事を、アルアに言い渡されてしまった。
 僕は魔法を教えてくれたアルアに向かって、複雑な気持ちで、お礼を言う事しか出来なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

男女比1:50の世界に転生したけど、前世の感覚で普通に接してたら幼馴染も姉妹もお嬢様もみんな沼にハマっていった件 ~ダンジョンにも潜ります〜

ベリーブルー
ファンタジー
男女比1:50――この世界で男は、守られ、大切にされ、穏やかに生きることを求められる存在。 だけど蓮は違った。 前世の記憶を持つ彼には、「男だから」という枷がない。女の子にも男の子にも同じように笑いかけ、距離を詰め、気負いなく手を差し伸べる。本人にとってはただの"普通"。でもこの世界では、その普通が劇薬だった。 幼馴染は気づけば目で追っていた。姉は守りたい感情の正体に戸惑い始めた。名家のお嬢様は、初めて「対等」に扱われたことが忘れられなくなった。 そして蓮はと言えば――。 「ダンジョン潜りてえなあ!」 誰も見たことのない深淵にロマンを見出し、周囲の心配をよそに、未知の世界へ飛び込もうとしている。 自覚なき最強のタラシが、命懸けの冒険と恋の沼を同時に生み出す、現代ダンジョンファンタジー。 カクヨムさんの方で先行公開しております。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...