異世界最後のダークエルフとして転生した僕は、神スマートフォンと魔物使いの能力を駆使して生き延びる。

もう書かないって言ったよね?

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第44話

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「……何で写真を撮っているですか?」

 カシャカシャ♪ とローアングルから撮影していると、明らかに不快な表情でアルアが聞いてきた。
 カメラで撮られるのは嫌なようだけど、これは必要な事だから仕方ない。
 あっ、でも、動画機能もあるから、そっちでも良いかもしれない。

「参考用にです。僕、魔法の素人ですし、今日一回しか教えてくれないのなら、アルアさんの完璧な魔法を記憶にも記録にも残すのは当然です」
「そうですか……でも、足ばかり撮っているように見えますけど、手は撮らなくていいんですか?」

 それは僕が足フェチだから仕方ないです。
 そして、二つの足が交差する場所に、神が宿るのです。

「大丈夫です。手は撮りました。今は全体的な撮影をしているところです」
「そ、そうですか……では、説明を続けますね。魔法を待機させるのは、簡単そうに見えますが、待機状態の魔法は、手から全力で離れようと動いている状態です。力を抜けば、手から離れていきますから、注意してくださいね」
「ほわぁ⁉︎」

 僕の誠意というか、熱意が伝わったと思ったけど、やっぱり無理があった。
 クルッと家から僕の方に方向転換したアルアは、炎球と風矢を待機された両手手のひらを、カメラ小僧の僕に向けて来た。
 不快な表情から、もう本気で発射する三秒前なのは間違いない。

「待機状態の魔法は指で掴んでいる感じです。指を離せば飛んで行きますからね」
「はひぃ⁉︎ 分かりました! よく分かりましたから、それを僕に向けないでください!」
「どうしたんですかぁ~? よ~~~く撮れるように、正面を向いた方が良いじゃないですか? フッフフフ。このまま発射するので、しっかり撮っていてくださいね♪」
「ひぃぃ‼︎」

 アクアは妖艶な微笑みを浮かべて、僕に二つの魔法を向けてくる。
 でも、その笑顔には恐怖しか感じられない。
 突きつけられる炎球と風矢の過激なサービスショットに、僕の心臓は、ドキドキと恐怖で高鳴るけど、求めているのは恐怖ではなく、喜びです。

「もぉ~~~、大丈夫です‼︎ ありがとうございました。撮れ高バッチリです! 写真撮影終わりまぁ~~~す!」

 僕は急いで神フォンをズボンに仕舞って、参加者一人の美少女エルフ撮影会を強制終了させた。
 これ以上の写真撮影は命の危険がある。
 生足チラリズムに、戦場カメラマンのように命は懸けられない。
 
「そうですか……でも、それはそれです。エイッ♪」
「ぎゃああああっ~~⁉︎ 熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛ぁ~~~い⁉︎」

 可愛い声と同時に、左右の手から炎と風の魔法が僕に向かって発射された。
 ドォーン‼︎ と顔面に炸裂したファイヤーボールは、僕の綺麗な顔を火だるまにして、ドォスン‼︎ と土手っ腹に突き刺さったウィンドアローは、僕を地面にのたうち回わらせた。

「フッフフフ。まさに身を持って知るですね。絶対に忘れないように、しっかりと記憶と身体に、痛みを刻み込んでくださいね」
「ぎゃああああっ~⁉︎ 助けて、助けて、もうしません‼︎ 絶対にしません‼︎ 許してください‼︎」
「のぞき魔の嘘吐きの言う事なんて信じません。のぞきの次は盗撮ですか? 本当は魔法なんて覚えるつもりはなかったんですよね? 私の写真を撮るのが、目的だったんじゃないですか?」

 熱い、痛い。違うけど、違わない。
 でも、ここで否定しても、もう僕の信用度は完全にゼロだ。
 それに本当の事を言っても、嘘を言っても、信じてくれないのも分かっている。

「すみません! アルアさんの事が同じエルフとして好きなんです! こんな愛情表現しか出来ない恋愛初心者ですみません!」
「そうですか。〝吹き荒れろ、水流の嵐。アクアストーム〟」
「ぎゃああああっ~~~⁉︎」

 地面から発生した純度百パーセントの水の竜巻が、僕を苦しめていた炎を消してくれたけど、状況は全然変わっていない。むしろ、悪化した。

「ぎゃあああああっ⁉︎ 腕が、腕が折れてるぅ~~~⁉︎」

 バキ、バキバキバキ‼︎ グルングルンと回る大型洗濯機に入れられた、スマホのように、水の竜巻の硬い壁に打つけられて、僕の全身は痛めつけられる。
 両手足はとっくに複雑骨折しているのに、右回転、左回転と、骨と肉ごと、両手足をギューッと捻じ切るように、更に絞られ続けた。
 エルフ美少女は怒らせたら絶対に駄目だ。
 それが本当に分かったのは、水の竜巻で宙に投げ出されてから、地面に激しく激突した後だった。

「がはぁっ⁉︎ うぅっ、骨が折れてる、絶対に折れてる、うぅっ……」

 身体がピクリとも動かない。
 首や両手足、背骨を含めて、全身の骨と肉が、雑巾のように絞られたような感覚がする。
 そして、痛すぎると何も感じなくなるみたいだ。
 精神というか、魂は確かにここにあると感じるのに、肉体は遠い何処か別の場所にあるような変な感じがする。

「少しは反省しましたか?」
「うぅっ、ごめんなさい、許してください」

 美少女エルフの冷たい声が、上から聞こえて来るけど、見上げる力も残っていない。

「四回です。この町に来て、トオルさんが死んだ回数ですよ。レクシーさんから一回、私から三回です。もっと真面目に修業してください。女だからといって、油断しないでください。自分が弱いという事をもっと自覚してください。今のままで外に出たら死にますよ」

 まったく容赦がない。死者に鞭打つ行為だ。
 でも、言っている事は正しくて、少しも間違っていない。
 気づけば、僕の緑色の瞳からは涙がこぼれていた。

「うぅっ、ぐすっ、すみません、ごめんなさい、本当にごめんなさい……」

 自分が本当に情けない。
 自分からお願いして.魔法を教えて欲しいとお願いしたのに、神フォンで写真撮影に夢中になっていた。
 僕も同じ事をされたら、馬鹿にされているとしか思えない。
 相手の立場になって、少しも考えていなかった。
 独りよがりで自己中心的な、凄く最低最悪な人間だ。
 剣術はゴミ。魔法も全然ダメ。何一つ取り柄のないダメ人間。ダメエルフだ。

「ごめんなさい、僕は死んでもダメ人間のままでした。何一つ成長していないダメ人間でした。でも、お願いです。もう一度だけチャンスをください。身勝手なお願いなのは分かっています。お願いします、もう一度だけチャンスをください」
「……」

 のぞき魔の嘘吐きが、今更何を言っても信じてくれないのは分かっている。
 分かっているけど、言葉にして伝えないと、何も伝わらないのは分かっている。
 嘘だと思われてもいい。呆れられてもいい。怒ってくれてもいい。
 これは僕自身への決意表明だ。

 四回死んだというのならば、四回生まれ変わっても、僕はダメ人間のままだったという事だ。
 四回も死んだのに、一度もまともな事が出来なかった。一度も変わろうとする努力をしなかった。
 今なら分かる。僕がいじめられていた理由は、おデブだったからじゃない。
 僕がどうしようもなく、他人の気持ちを理解しようともしなかった、心根が腐った変態エロエロ人間だったからだ。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんな」
「——もういいです。ごめんなさいは聞き飽きました」
「ごめんなさい」
「はぁー……もういいですから。本当に最後のチャンスです。やる気がないようなら、一週間も待たずに、すぐに町から追い出します。警告も注意ももうしません。すぐに追い出します」
「うぅっ、ありがとうございます」

 アクアの優しさが心に突き刺さる。
 涙が止まらない。
 こんなクソ最低なゴミ人間にチャンスをくれたんだ。
 今日、おデブ高校生の田中透は完全に死んだ。
 僕はもう田中透じゃない。死んだんだ。生まれ変わろう。
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