異世界最後のダークエルフとして転生した僕は、神スマートフォンと魔物使いの能力を駆使して生き延びる。

もう書かないって言ったよね?

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第43話

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「クラーケン退治かよ。面倒だなぁ~。ちっ……これもあれも全部ダミアの所為だ。変なそば食わせやがって」

 食堂の中にいるだろうダミアに向かって、僕は苛立ちを打つけた。
 どう考えても、クラーケンは海に生息している魔物だ。
 しかも深海とかだったら、僕は攻撃する手段もない。
 簡単な魔法の習得が、ダミアの所為で巨大イカ退治になってしまった。

「とりあえず、虎蜂のレベル上げは続けるとして、水中呼吸がある魔物を見つけないとな」

 広場に残された僕は驚異的な灰色の頭脳を駆使して、素早く結論を出した。
 よし、水中戦が出来る魔物を探そう!
 当然と言えば、当然の答えだ。
 虎蜂レベル30を四匹育てて、空から攻撃させても、海の底に逃げられれば倒せない。
 錆びた剣を装備している魚人のサーディンとか、この近くならば、森カエルンとかを育てた方がいい。

「すみません、マニアさん。水中戦が得意な、強い魔物を探しているんですけど、知りませんか?」

 冒険者ギルドに向かうと、カウンター越しに、金の刺繍が施された黒のジャケットと、膝丈上のショートパンツを身に纏った、薄紫髪の女性に聞いてみた。
 相変わらず眠そうな目で、テーブルに座って書類の束を捲っていた。

「んっ? おはよう。水中戦……ちょっと待ってて」

 マニアはテーブルから面倒そうに立ち上がると、棚に置かれている書類の束を手に持っては、パラパラと捲っている。
 ほとんど速読だけど、あれで本当に調べられているのだろうか?

「あっ、ヤバイかも……」

 マニアに聞いた後、冒険者ギルドに来た後に気づいても遅いけど、昨日の夕方に、出来るだけ来ないように言われていた。
 出来れば、ノイジーの森に行ってから、虎蜂三匹に倒された魔物達を回収した後が、良かったかもしれない。

「お待たせ。水中戦が出来るのは森カエルンだけだよ」
「えっ、それだけなんですか⁉︎」

 二分程待っていると、マニアがカウンターにやって来て、そう報告した。
 流石に一種類だけはない。思わず聞き返してしまった。
 調べるのが面倒だから、とりあえず、近場にいるのを教えた感じがする。

「そっ。国境にある砦を越える事が出来れば、まだ何匹かいるけど、レベル30以上だからスキルは使えない。あとは十日ぐらいかけて海を越えて、北の大陸にいるのを見つけるしかないかな」
「うっ……そうなんですか」

 あれで調べられるんだから、ある意味凄い。
 まあ、森カエルン一択でも悪くはないかもしれない。
 どれにしようか悩む必要はないんだから……。

「それと、アルアとの会話を聞いていたけど、クラーケンを倒すなら船があるから、水中戦が出来る魔物なんていらないかもしれないよ」
「えっ、そうなんですか?」

 船があると言われて、ちょっとだけ期待してしまったけど、頭の中にパッと浮かんだのは、小さな小舟だった。
 殺すつもりか!
 
「んっ、これはトオル専用クエストだけど、異世界の町で実際にクエストとして依頼されているから、協力者が沢山いるよ」
「へぇー……」

 じゃあ、駄目じゃん。ダークエルフに協力してくれるような人間はいない。
 結局は大型船が用意されてあったとしても、ダークエルフは乗船拒否される。
 そして、クラーケン退治が何故だかダークエルフ退治に変わってしまう。
 船だけに、そんな流れしか僕には見えて来ない。

「でも、ダークエルフじゃ無理ですよね。異世界断トツの嫌われ者ですから」
「んっ? それなら大丈夫。ズッーと顔を隠していれば、絶対にバレないから問題ない」

 顔を隠すなんて、僕が前に考えた方法と一緒だった。
 そんな頼りない方法はあまり試したくはない。

「いやいや、めちゃくちゃ心配ですよ! 防具を取られたら終わりじゃないですか!」
「心配し過ぎ。大丈夫、騙されたと思ってやってみた方がいい。やらずに後悔するより、やって後悔した方がいいから」
「……」

 のぞき魔をやって後悔している最中なのに、やって後悔した方が言われても、ちょっと考えてしまう。
 それでも、美少女エルフのお風呂場の音を拝借する行為は、後悔する価値はあった。
 何も聞こえなかったけど、心は満足している。

「んんっ~~、分かりました。じゃあ、やってみます」
「んっ、その粋だよ。手続きはしておくから、戦う用意が出来たら、森の北側にある港に行ってみて。クラーケンのレベルは24だから、レベルと装備、魔法の準備は重要だよ」
「はい、分かりました。ありがとうございます」

 レベル24は強敵だけど、レベル50とか無茶苦茶に強い魔物じゃない。
 一応は倒せる魔物で助かった。
 僕はマニアにお礼を言うと、対策を考えようと家に帰ろうとした。
 でも、それだけでは済まなかった。

「りょ。あと私のお風呂場を覗いたら、一発追放だから、やって後悔しないようにね」
「あっ、は、はい。二度としません。すみませんでした」
「りょ。さっさと消えて」
「はい……」

 土下座はしなかったけど、頭を二回下げて謝った。
 アクセサリー屋の隣は冒険者ギルドだ。
 建物横でのアルアとの会話を、マニアに聞かれていたとしても不思議はない。
 明日中には町の住人全員に、のぞき魔が引っ越して来たと、伝わっているかもしれないけど、大丈夫。
 信頼も地の底まで落ちたら、あとはもう下がらない。高校生活で、そんな事はもう経験済みだ。

「さてと、船があるなら虎蜂だけでもいいけど、ここは慎重に森カエルンも連れて行くべきだろうな」

 家に帰って、僕はゆっくりと考えてみた。
 実際の戦闘をイメージしたら、虎蜂だけでは不安がある。
 もしもの場合を考えた、友達編成をしないといけない。
 森カエルン一匹だけだと、それが倒されたら終わりだ。

 今友達にしているプチトレントを倒して、虎蜂二匹と森カエルン二匹の組み合わせで戦うとしよう。
 本当は海上からの逃亡用に、ワイルドホーク二匹も欲しいけど、友達枠が足りない。
 森カエルンに頼んで、盾サーフィンでもやるしかない。
 
 あとは僕自身の戦闘能力アップも必要だと思う。
 ダミアの所為で、アルアとの魔法授業がなくなってしまったから、もうレクシーとの剣術修業を頑張るしかないけど……。
 でも、船の上で戦うなら、やっぱり魔法の方が使い勝手がいい。
 何とか魔法の呪文だけでも、アルアに教えてもらおう。
 必要なのは勇気だ。恥をかく勇気さえあれば何でも出来る。
 僕は堂々とアクセサリー屋に向かった。
 さっき怒られたばかりだ。また怒られてもいいじゃないか。

「すみません、アルアさん。お願いがあるんですけど……」
「⁉︎」

 テーブルで作業中の、制服エルフに遠慮がちに声をかけた。
 目が合った瞬間に、『えっ~~、またぁ~?』という嫌そうな顔をされたけど、それでも作業をやめて、カウンターまでやって来てくれた。
 なんだかんだ文句を言いながらも、結局は助けてくれる優しい女性……僕は嫌いじゃないですよ。

「はぁ~、何ですか?」
「お忙しい中、すみません。やっぱり魔法を教えて欲しいんです。お願いします」

 目の前でため息を吐かれて嫌がられている。
 迷惑なクレーマーが、店に五回目の登場をした時の反応だけど、構わずに空気が読めない男として、お願いした。

「はぁ~、分かりました。今日一回だけですよ。もう二度と教えないので、しっかりと見て聞いて、覚えてくださいね」
「もちろんです! ありがとうございます」
「まったく……とりあえず、外に出ますね」

 かなり呆れているけど、目的は達成したようなものだ。
 呪文さえ教えてもらえれば、もう頭を下げる必要もなくなる。

「トオルさんが恥知らずの厚かましい人だと、よ~~~く分かりました。じゃあ、まずは火魔法の『ファイヤーボール』からです。呪文は『燃え盛れ、意思ある炎』です。まずは見本をお見せしますね」
「はい。お願いします」

 アクセサリー屋から出て来たアルア先生は、広場の真ん中で、正座で待機していた僕にそう言った。
 ほとほと愛想が尽きてしまったお馬鹿な生徒に対して、仕方ないと思いながらも、勉強を教える先生のような態度だけど、僕はやれば出来る子です。頑張ります!

「まずは基本の真っ直ぐ飛ばす、ファイヤーボールからです。魔法詠唱で使えるようになると、発射後もある程度は、軌道を曲げる事が出来るので、頑張ってくださいね」
「はい!」
「〝ファイヤーボール〟」

 何故だか僕の家の方向に、右手手のひらを向けて、アルア先生は魔法詠唱でファイヤーボールを発動させた。
 手のひらから十五センチ離れた距離で、ソフトボールよりも少し大きな、赤い球状の炎がメラメラと燃えている。
 魔法詠唱した後も、手のひらで維持する事が出来るみたいだ。
 全然知らなかった。

「トオルさんは詠唱後にすぐに発射するので、あれだと、『飛ばすぞ』と教えているようなものです。実戦なら緩急をつけた方がいいです」
「参考になります。我流で習得したので素人なんです。ごめんなさい」
「そうですか。では、何も知らない人として教えますね。右手にファイヤーボールを維持した状態で、左手で風魔法を発動します。〝ウィンドアロー〟」
「おおぅ! 凄いです!」

 ウィンドアローと魔法詠唱すると、左手手のひらに、緑色の直径八センチの、円錐状の鋭い風の矢が現れた。
 右手にファイヤーボール、左手にウィンドアローと、別々の魔法が待機中だ。
 これは使えそうなテクニックなので、神フォンのカメラで、カシャカシャカシャ♪ と要チェックした。
 魔法美少女エルフゲットだぜぇ♡
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