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問題です。3時間に1回分裂するスライムを洞窟に閉じ込めて、18時間後に洞窟を訪れて、経験値とお金を荒稼ぎしようとした少年はどうなりますか?
第1話・大人の1日の平均賃金は8000ゴールド。スライムを1匹倒せば4ゴールド落とします。
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『酒、博打、女』とこれが男の三大欲求です。すなわち、これさえ満たされれば男は幸せだという事です。
酒を飲んで、博打で勝って、女を抱く。こんな単純な事で幸せになれるのです。
でも、それが可能なのは一部の金持ちだけです。そう、現実はいつも努力ではどうする事も出来ない大きな壁があるのです。
「幸せな人生だったのだろうか?」
60歳で退職。貯金は3000万円を超えて、一軒屋に1人で暮らしていた80歳の男は、畳の上で静かな生涯を終えます。
酒にも、ギャンブルにも、女にも狂った事がない、真面目で堅実的で浮き沈みのない人生だった。
誰かに迷惑をかけた事も、誰かを幸せにした事もない平凡な人生ではあった。
『不幸だったか?』と問われたら、『不幸ではなかった』と答えるだろう。
では、『幸せだったか?』と問われたら、『苦労した事はない』と答えるだろう。
我ながら曖昧で、はっきりとしない答えだ。人生とは、案外こんなものかもしれない。幸せか、不幸か、そんな事は最後の瞬間でさえも分からなかった。
死後の世界というものがあるのならば、今度は馬鹿みたいな人生を送って、胸を張って幸せだった言ってみたいものだ。
男の瞳からはゆっくりと光が消えて、闇が訪れていく。永遠に続く闇である。死後の世界がないのなら、永遠に………。
♦︎
「ヤァ!」と棍棒(攻撃力+7)をフルスイングして、15歳のクロム少年は今日もスライムを倒していました。
スライムのステータスはHP『8』、攻撃力『1』と最弱です。少年のか弱い腕力でも何とか倒す事が出来る唯一のモンスターです。
「よし、今度こそ当たれよ……」
クロム少年の手にはサイコロが握られています。モンスターと戦闘する時に必ず出現する魔法のサイコロです。
①薬草 ②ハズレ ③薬草 ④ハズレ ⑤薬草 ⑥薬草
サイコロは①~⑥までの目があり、①と③と⑤と⑥が出れば、薬草を手に入れる事が出来ます。それ以外はハズレで、何も手に入れる事は出来ません。
クロムはサイコロを振りました。出た目は………『④』です。ハズレです。
「くそっ! 6分の4の確率で手に入るのに、ツイてないなぁ~」
そんな事を言いながらも、地面に落ちている銅貨を拾います。スライムを倒せば、『4ゴールド』と『経験値2』を得る事が出来ます。
経験値は100貯まれば、レベル2になれます。レベルが上がれば、HPと攻撃力がアップします。
けれども、大人の1日の平均賃金が『8000ゴールド』なので、一日中、スライムを探し回って倒すよりは、普通に働いた方が楽に稼げます。
「あ~あ、さすがにストレスが溜まるよ」
攻撃もほとんどハズレます。サイコロを振って、①の目が出ないと攻撃は当たりません。
何とか、町の道具屋で安くて攻撃力のある棍棒を買った事で、スライムを一撃で倒せるようになりましたが、それでも面倒なのは変わりません。
『⑥』『⑤』『②』『④』『③』『⑥』『①』と7回目でやっと攻撃が当たりました。当たれば一撃で倒せるものの、その間にスライムの攻撃を6回も喰らってしまいました。ダメージは合計で6になります。
クロムの現在のステータスはレベル1で、HP『20』の攻撃力『1』です。あと27匹のスライムを倒せば、レベルが2に上がります。
昨日の夏休みから始めたスライム倒しは、今ので27匹目です。倒したスライムが落としたお金を集めても、たったの『108ゴールド』です。これではマンガ本の1冊も買えません。
草原を見渡してみても、他にスライムを倒している人はいません。たまに、他の強そうなモンスターがスライムを倒しているぐらいです。
さっさと家に帰ってゲームでもしていた方がマシかもしれません。
「んんっ? なんか、あのスライムだけ様子が変だな。何で横に伸びてるんだ?」
クロムより少し離れた場所で、丸いはずのスライムが横に伸びて、楕円形になっています。変な形のスライムです。
「暑さで溶けたのか?」
夏といっても、そんなに暑くはありません。いくら何でもこの程度の暑さでスライムが溶ける事はないでしょう。
しばらく様子を見ていると、いきなりドロッ! とスライムが2つに分裂しました。
「えっ! 嘘⁉︎ 分裂するの!」
はい、分裂します。小学校4年生の理科の授業で習ったはずです。
クロム少年は授業中、「どうせ、こんな知識、社会に出たら何の役に立たない」と思いながら、とっくに忘れていたようです。
「もしかして………………ハッ!」
永遠に分裂を繰り返すのならば、1匹のスライムが2匹に、2匹のスライムが4匹になる。これをドンドン繰り返していけば………8、16、32、64、128、256、512、1024、2048匹と、とんでもない数のスライムになるぞ!
どうやら、木からリンゴが落ちた瞬間を見て、地球に重力がある事に気づいたニュートンのように、クロム少年もとんでもない事に気づいたようです。
「ヒッヒッヒッ♬ スライムを1匹捕まえて、何処か逃げられない場所で飼えば、すぐに金持ちになるんじゃねぇ」
分裂したスライムを倒さずにクロム少年は観察し続けます。そして、待っていた瞬間がやってきました。
ドロッ! とスライムが分裂しました。
「2時間56分か。約3時間だな」
辛抱強くスライムを観察する事、約3時間。先程、分裂したスライムがまた2つに分裂しました。
クロム少年は分裂したばかりのスライムを、脱いだ上着でグルグル巻きにして捕まえると、友達と見つけた秘密の洞窟に連れていきました。
ポイっ! とスライムを洞窟の奥に放り投げると、家に帰っていきました。18時間後には、この1匹のスライムが『64』匹に増えているはずです。
「4ゴールド×64匹で256ゴールドか。これなら2日で1冊はマンガ本が買えるな。ヒッヒッヒッ♬ 明日が楽しみだぜ!」
こんなに簡単に、お金を稼げる方法を見つけてしまった自分の頭脳が怖いと、クロム少年は身震いしながら自宅に帰っていきました。
酒を飲んで、博打で勝って、女を抱く。こんな単純な事で幸せになれるのです。
でも、それが可能なのは一部の金持ちだけです。そう、現実はいつも努力ではどうする事も出来ない大きな壁があるのです。
「幸せな人生だったのだろうか?」
60歳で退職。貯金は3000万円を超えて、一軒屋に1人で暮らしていた80歳の男は、畳の上で静かな生涯を終えます。
酒にも、ギャンブルにも、女にも狂った事がない、真面目で堅実的で浮き沈みのない人生だった。
誰かに迷惑をかけた事も、誰かを幸せにした事もない平凡な人生ではあった。
『不幸だったか?』と問われたら、『不幸ではなかった』と答えるだろう。
では、『幸せだったか?』と問われたら、『苦労した事はない』と答えるだろう。
我ながら曖昧で、はっきりとしない答えだ。人生とは、案外こんなものかもしれない。幸せか、不幸か、そんな事は最後の瞬間でさえも分からなかった。
死後の世界というものがあるのならば、今度は馬鹿みたいな人生を送って、胸を張って幸せだった言ってみたいものだ。
男の瞳からはゆっくりと光が消えて、闇が訪れていく。永遠に続く闇である。死後の世界がないのなら、永遠に………。
♦︎
「ヤァ!」と棍棒(攻撃力+7)をフルスイングして、15歳のクロム少年は今日もスライムを倒していました。
スライムのステータスはHP『8』、攻撃力『1』と最弱です。少年のか弱い腕力でも何とか倒す事が出来る唯一のモンスターです。
「よし、今度こそ当たれよ……」
クロム少年の手にはサイコロが握られています。モンスターと戦闘する時に必ず出現する魔法のサイコロです。
①薬草 ②ハズレ ③薬草 ④ハズレ ⑤薬草 ⑥薬草
サイコロは①~⑥までの目があり、①と③と⑤と⑥が出れば、薬草を手に入れる事が出来ます。それ以外はハズレで、何も手に入れる事は出来ません。
クロムはサイコロを振りました。出た目は………『④』です。ハズレです。
「くそっ! 6分の4の確率で手に入るのに、ツイてないなぁ~」
そんな事を言いながらも、地面に落ちている銅貨を拾います。スライムを倒せば、『4ゴールド』と『経験値2』を得る事が出来ます。
経験値は100貯まれば、レベル2になれます。レベルが上がれば、HPと攻撃力がアップします。
けれども、大人の1日の平均賃金が『8000ゴールド』なので、一日中、スライムを探し回って倒すよりは、普通に働いた方が楽に稼げます。
「あ~あ、さすがにストレスが溜まるよ」
攻撃もほとんどハズレます。サイコロを振って、①の目が出ないと攻撃は当たりません。
何とか、町の道具屋で安くて攻撃力のある棍棒を買った事で、スライムを一撃で倒せるようになりましたが、それでも面倒なのは変わりません。
『⑥』『⑤』『②』『④』『③』『⑥』『①』と7回目でやっと攻撃が当たりました。当たれば一撃で倒せるものの、その間にスライムの攻撃を6回も喰らってしまいました。ダメージは合計で6になります。
クロムの現在のステータスはレベル1で、HP『20』の攻撃力『1』です。あと27匹のスライムを倒せば、レベルが2に上がります。
昨日の夏休みから始めたスライム倒しは、今ので27匹目です。倒したスライムが落としたお金を集めても、たったの『108ゴールド』です。これではマンガ本の1冊も買えません。
草原を見渡してみても、他にスライムを倒している人はいません。たまに、他の強そうなモンスターがスライムを倒しているぐらいです。
さっさと家に帰ってゲームでもしていた方がマシかもしれません。
「んんっ? なんか、あのスライムだけ様子が変だな。何で横に伸びてるんだ?」
クロムより少し離れた場所で、丸いはずのスライムが横に伸びて、楕円形になっています。変な形のスライムです。
「暑さで溶けたのか?」
夏といっても、そんなに暑くはありません。いくら何でもこの程度の暑さでスライムが溶ける事はないでしょう。
しばらく様子を見ていると、いきなりドロッ! とスライムが2つに分裂しました。
「えっ! 嘘⁉︎ 分裂するの!」
はい、分裂します。小学校4年生の理科の授業で習ったはずです。
クロム少年は授業中、「どうせ、こんな知識、社会に出たら何の役に立たない」と思いながら、とっくに忘れていたようです。
「もしかして………………ハッ!」
永遠に分裂を繰り返すのならば、1匹のスライムが2匹に、2匹のスライムが4匹になる。これをドンドン繰り返していけば………8、16、32、64、128、256、512、1024、2048匹と、とんでもない数のスライムになるぞ!
どうやら、木からリンゴが落ちた瞬間を見て、地球に重力がある事に気づいたニュートンのように、クロム少年もとんでもない事に気づいたようです。
「ヒッヒッヒッ♬ スライムを1匹捕まえて、何処か逃げられない場所で飼えば、すぐに金持ちになるんじゃねぇ」
分裂したスライムを倒さずにクロム少年は観察し続けます。そして、待っていた瞬間がやってきました。
ドロッ! とスライムが分裂しました。
「2時間56分か。約3時間だな」
辛抱強くスライムを観察する事、約3時間。先程、分裂したスライムがまた2つに分裂しました。
クロム少年は分裂したばかりのスライムを、脱いだ上着でグルグル巻きにして捕まえると、友達と見つけた秘密の洞窟に連れていきました。
ポイっ! とスライムを洞窟の奥に放り投げると、家に帰っていきました。18時間後には、この1匹のスライムが『64』匹に増えているはずです。
「4ゴールド×64匹で256ゴールドか。これなら2日で1冊はマンガ本が買えるな。ヒッヒッヒッ♬ 明日が楽しみだぜ!」
こんなに簡単に、お金を稼げる方法を見つけてしまった自分の頭脳が怖いと、クロム少年は身震いしながら自宅に帰っていきました。
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