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宝くじで『10億円』を当てた日に、車にも当たりました。一度は地獄に落とされたけど、女神の力で幸運MAX『999』で異世界再スタート!

第5話・地獄から異世界へ

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 アルビジアは白鳥居しろとりいの間を抜けて、反対側に出たと思ったら、そこには地獄の赤い地面はなく、真っ白な石床と見渡す限りの青空が広がっていました。

「この場所はあの時の…」

「ハァ~~、まったく。一度地獄に落とした人間を連れ戻すなんて、『エロ・エロリーナ・エロン・エロエロ・エロン三世』以来の事ですよ。折角、チャンスを上げたのに信じられませんね」

 アルビジアの耳に女性の声が久し振りに入ってきました。けれども、聞こえてきたのは、長めの溜め息に、ちょっとした愚痴です。恐る恐る背後を振り返ります。

 今日の女神は白いチャイナドレスを着ています。前回もそうでしたが、白い髪に白い服と、絵に描いたような清廉潔白です。そんなに主張しなくても、誰も腹黒だなんて思っていませんよ。

(まさか、ここに通じているなんて。地獄から女神の部屋までの直通ルートがあっていいのか? 危ないだろう)

「その心配は必要ありません。あの鳥居は飾りのようなものです。ここへは私の力で連れて来ました。アナタをあのまま地獄に置いていては、世界の歯車に僅かばかりの支障が出てしまいますからね」

(やっぱり心の中を読めるんだ。嘘は通用しない訳だ)

 なんだかんだでここまで来てしまいましたが、ここからは先はノープランです。ただ地獄から出たかっただけで、アルビジアは次は何をすればいいのか分かりません。

「チャンスって、何だよ! 地獄にいきなり落として、不幸の洗浄? そういうのは金持ちか、政治家とか、生きてる時に楽しんだ奴らがやるべき仕事だろう。俺みたいに可哀想な人生を送った人間にやらせる事じゃない。分かったら、さっさと天国に連れて行ってくださいよ!」

「それは出来ません」

「ですよねぇ~」

 当然そうなります。強くお願いするだけで天国に行けるのなら、誰だってお願いすると思います。天国に行くにはそれなりの資格が必要なのです。

「別に意地悪している訳ではありませんよ。天国に行けるのは幸福な人だけです。逆に地獄に行けるのは不幸な人だけです。あなたは不幸な人です。不幸な人は地獄に行くしかないのです。そうする事で世界の幸運と不運を循環させる事が出来るのです」

「幸運と不運の循環? 意味が分からない。世界にとって、循環させる事が重要な事だとしても、あんな場所地獄で無理矢理にモップがけさせる必要があるとは、まったく思えない。あんなのは意味のない、ただの罰だ!」
 
「そうですね。確かにアレだけ見れば罰です。けれども、キチンと地獄で不幸の洗浄を終えた人には、私の力で来世に幸運を与える事になっています。あなたが宝くじに当たったのは、以前地獄に落ちた時に、キチンと不幸の洗浄をやり遂げたからです。まあ、事故死したのは、あなたの不注意ですけどね」

 女神は淡々と世界の仕組みを話します。この話しを聞いた後に地獄に落とすと、大抵の人は頑張って、モップがけをします。

 でも、心に欲を持った状態で、そんな事をしても意味がないと、女神は言います。ただ無心に、無欲にやる事で初めて、不幸の洗浄が出来るらしいのです。

「ようするに綺麗なコップに綺麗な水を入れれば、水は綺麗なままでいられる。逆に汚れたコップに綺麗な水を入れたら、水は汚れてしまう。つまりはそういう事か?」

「んんっ~~、ほぼほぼ正解ですね。不幸という汚れが付いたコップは地獄で洗い落として、幸福という汚れが付いたコップは天国で洗い落とします。キチンと分けないと混ざると面倒ですからね。そして、幸福は再利用が可能なのですが、不幸はそうはいきません。地獄の赤い地面はその不幸が蓄積したものです。不幸の最終埋め立て処分場といった所でしょうか」

「なるほど、なるほど」と、アルビジアが本当に理解しているのかは女神にしか分かりませんが、本当に聞きたい事は幸福とか、不幸とかの話しではなく、この後、どうなるのかです。

「あなたの場合は選択肢はありません。このまま異世界に行ってもらいます。そこで死ぬまで暮らしてもらう事になりますが、それは通常の場合です。あなたの場合は一度地獄に落ちました。そして、問題を起こして、地獄に多少なりとも被害を出しました。その損害分を異世界で補填してもらう事になります」

(えぇ~、そんな面倒な事はしたくないよ。異世界に行けるなら、異世界人、特に猫耳亜人ちゃんとのラブラブ生活しかしたくないよぉ~)

 アルビジアは心の中ではそう思っていますが、女神には全部筒抜けです。『断るなら、男だらけのマッチョな異世界に飛ばしますよ』と、説得されれば、引き受けるしかありません。

「フッフフ、素直に引き受けてくれて助かります。やる事は簡単ですよ。困っている人や、不幸な人を見つけたら、積極的に助けてあげてください。そうする事で、地獄に落ちる人が少しは減る事になります」

 女神は簡単に言ってくれますが、人を助けるのはかなり難しい事です。金に困っている人が必要なのは優しい言葉ではなく、現金です。病気で死にそうな人に、『神に祈れば助かるよ』なんて言っても、助かる保証はありません。必要なのは特効薬です。

「まあ、自分なりの力で少しでも…」

「いえいえ、あなたの力には、まったく期待していません。あなたの力で助ける事が出来る人は、せいぜい2桁程度の人達しかいません。私の力で幸運を最大まで引き上げるので、その力で………そうですね。まずは1万人ぐらいの不幸を取り去ってください。では、いってらっしゃい♬」

「ちょっ⁉︎」
 
 ポチ、ドォン! 女神はこの後、地獄の囚人達の記憶から、アルビジアを消したりと大忙しです。さっさと異世界に落ちてください。

「ああっ~~~」

 女神がリモコンのボタンを押すと、白い石床に穴が空きます。またまた、アルビジアは穴から落ちていきます。今度の場所は死ぬと、本当に死んでしまいます。気をつけて行動してくださいね。

 ♦︎

 ♦︎

 ♦︎

「えっ、あれ? 夢?」

 残念ながら夢ではありません。落ちている途中で突然意識を失いました。そして、意識を取り戻した時には、土の地面の上に倒れていました。どうやら、ここは地獄ではないようです。青空と草と木、爽やかな風が頬を伝います。

「夢じゃないか」

『(ええ、夢ではありませんよ。無事に到着しましたね。私の声は聞こえますか?)』

(えっ! 女神様? どうして?)

 アルビジアの頭の中だけに、女神の声が聞こえてきます。これは監視されているという事でしょうか? だとしたら、あんな事やこんな事は出来ません。絶対に出来ません!

『(この世界にはモンスターがいて、レベルというものが存在します。この世界はゲームの世界を元に作られた世界です。けれども、生きている人達は作り物ではありません。あなたと同じで他所の世界から来た人達です。この世界で長い年月を暮らし、少しずつ人口を増やしていったのです。まずは村か、町を目指してください。あなたに幸福が訪れますように)』

(ちょっと! 女神様⁉︎ お~い! お~い! 駄目か)

「RPGゲームならば、結構得意なんだけど、この状態はヤバいな」

 この状態とは、装備無し、道具無し、食料無し、金無し、とモンスターに出会ったら逃げるしかありません。いきなりのエクストラサバイバルモードからスタートです。

「何か探しながら、歩くしかないよな」

 太陽は1つ。季節は少し肌寒い春といった所でしょうか。地獄で着ていた灰色の囚人服とサンダルのまま、トボトボと歩き続けます。真っ直ぐに歩き続ければ、犬も棒に当たるのです。真っ直ぐ、真っ直ぐに進みます。

 ♦︎

「そっちに行ったぞ!!」「石を拾って、とにかく投げろ!」「ああっ~、倒せねぇ!」「早く倒さないと逃げられるぞ!」

「何だ、何だ⁉︎ お祭りか?」

 男達の騒ぎ声が聞こえてきました。話しの内容から、見つけたモンスターに拾った石を投げつけているようです。石で倒せるモンスターならば、多分雑魚です。危険はなさそうです。

「そこの兄ちゃん!! そっちに行ったぞ! 千年に一度だけ現れると言われている《ゴールドプラチナキングスライム》だ! とにかく石を拾って投げつけろ! 運良くクリティカルヒットすれば倒せるから!」

 村人のような服装の男が、アルビジアに向かって叫びます。確かに白くて巨大なスライムがこっち向かって走ってきます。あの体型と巨体で馬並みの速さです。

「これが女神様の幸運の力か。ようするにこの白いスライムを倒せばいいんだろ」

 アルビジアは地面に落ちている石コロを素早く握れるだけ拾いました。1個1個狙って投げつけるより、散弾銃のように広範囲に一度に石コロをばら撒いた方が効果的です。

(下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるってな)

「そりゃ!」と大量の石コロがゴールドプラチナキングスライムに向かって撃ち出されました。10個当たって、1個でもクリティカルヒットすれば上出来です。

 ガガガガガガガガァーン!!! 

「ギュピィー⁉︎」と、オールクリティカルヒットです! 当たった石コロは全てがクリティカルヒットです。ゴールドプラチナキングスライムへのクリティカルヒットの確率は『1万分の1』です。幸運は幸運でも桁が違いました。

「えっ?? 今ので倒したの?」

 巨大な白いスライムが一瞬で倒されました。アルビジアが手に入れたのは、宝箱と大量の経験値と大量のお金です。石コロを拾って投げただけで、力とお金を一瞬で手に入れてしまいました。何の苦労もしていません。

「こんなのチートだよ。俺のプレイスタイルはのんびり、ゆっくりなのに」

 レベルは今ので『40』を軽く超えました。所持金は10万ゴールドと価値が分かりませんが、安くはないはずです。けれども、幸運はまだまだ終わっていなかったようです。

「兄ちゃん!! もう1匹出たぞ!」

 千年に一度が聞いて呆れます。アルビジアは嫌々ながらも石コロを1個だけ拾いました。もうこれ1個で十分なはずです。

 ガァーン!! とやっぱり十分でした。

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