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リル・スタットレイ 〜小さな町の小さな家に住む生命の錬金術師〜
第10話・リルvs勇者①
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ここは人間達が多く暮らす街です。『きゃあああ~~!』『助けてくれぇ~~!』と大騒ぎしています。
「Wee~aaa!!」「Meow!!」と、灰色の翼のグリフィンと、黒い翼のキメラが街の人間達を襲いまくっています。やっぱり、空に逃げられたようです。あれほど、リルが空に逃さないように言ったのに駄目な冒険者達です。
「クソぉ~、魔王軍の奴らが本格的に攻めてきた!」
「どういう事じゃ? 何百年も戦争をせずに、お互い不干渉を続けてきたのに、何故なんじゃ?」
血気盛んな若者は怒り、老人は魔王軍にとって意味のないに攻撃に首を傾げています。それはそうです。魔王軍は何もしていません。
「おい! 新しいのが来たぞ! クソぉ~、魔王軍の奴ら、俺達を皆殺しにするつもりだ!」
バサバサ、バサバサと別のグリフィンとキメラが街にやって来たした。リルがまた作って、また冒険者達が倒す前に逃してしまったのでしょう。本当に困った冒険者達です。晩ご飯のデカチュウのステーキは御預けですね。
パラッパッパ~~♬ とこのラッパの音は、国王軍の突撃を知らせる音です。街で暴れる2匹のグリフィンと2匹のキメラを討伐しに来たようです。
「民間人は家に急いで避難しろ! 負傷した者、動けぬ負傷者を知っている者は、治癒士の元に集まれ! 戦える者は国王アントワーズ6世陛下の地を穢す魔物に正義の鉄槌を振り下ろせ! 突撃~~~!!!」
「ヤァッ~~~!!!!」と、立派な白銀の鎧を纏った騎士団長の号令によって、総勢100人を超える騎士や冒険者達が各々の武器を持って、4匹の魔物に立ち向かっていきました。
♦︎
街を襲った魔物4匹は討伐されたものの、被害は甚大でした。魔物の飛んで来た方角を徹底的に調査した結果、調査隊はある小さな町に行き着きました。
「陛下、魔物の発生場所がようやく分かりました」
「やっとか。して、魔王軍との関わりはありそうか?」
長い白髭モジャモジャの国王アントワーズ6世の前に跪いて、調査隊の隊長が最近街を襲ったグリフィンとキメラの出現場所を報告しています。
「ベリーズの町から南下して、フォン大森林に入り、南西に向かった先に小さな町がありました。その町では半獣人の住民達が1人の少女の指示の下に行動しているようです」
「少女? それはおかしな事だ。魔王はアークデーモンと呼ばれる悪魔の突然変異種だと歴史書には書かれている。その少女は魔王軍とは関係ないのではないか?」
「陛下、少女と言っても見た目だけです。町の調査をしていた冒険者を捕まえては、平気で撲殺するような血も涙もない異常者です。おそらくこの町は魔物の兵器工場で、少女は魔王軍の幹部といったところでしょう。第一級勇者《アルフレッド・マーシー》を召還し、この町の破壊を命じられるべきだと進言します」
勇者と呼ばれる者達はいるものの、温厚派の魔王を下手に刺激する事は得策ではないと、勇者達は今まで何世代も国の要人として何不自由なく暮らしていました。今こそ、その力を発揮してもらう時です。
「フム……よかろう。第一級勇者アルフレッド・マーシー、及び、騎士団の精鋭300名を連れて魔物兵器工場を破壊せよ! もし、この町から魔王との関わりがある証拠が発見された場合は、直ちに魔王軍との全面戦争を開始する!」
「オオォォォ!!!」と謁見の間に集まった貴族、兵士達の歓声が上がります。遂に待ちに待った魔王討伐の時が来たのです。
未開の地である魔王領には、未知の鉱石、植物、魔物が手付かずで存在しているだけでなく、自分達の文明を遥かに超えた知識と技術があると伝えられています。
不朽不滅の金属オリハルコンに、何百年も生き続けられる謎の装置など、喉から手が出るほど欲しいアイテムが山のようにあるのです。
国王アントワーズ6世は今まで、ずっと欲しい物を、遠くから見ているだけで我慢してきましたが、戦争を起こしていい理由があれば国民も納得してくれます。これで多少の犠牲者や被害者が出て、一部の戦争反対派が反対しても、力で黙らせる事が出来ます。
(グッフフフ、永遠の生命を手にする事が出来れば、世はこの世でただ1人の絶対の王になれる。いや、もはや王ではなく、神か。ハッハハハハ、証拠など無くても、魔物が街を襲ったのだ。それだけで戦う理由は十分だ。さて、まずは世の街を襲った馬鹿共に血の制裁を下してやるか。グゥハハハハ~~)
アントワーズ6世は表では公明正大な国王を演じていますが、心の中はドロドロの汚らしい欲で一杯のようです。まあ、無理もありません。すぐ近くの魔王領に、不老不死の方法が実際に存在しているのです。死に近づく老いた国王には刺激が強過ぎます。
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「まったく、やっとマトモに倒せるようになったんですか! こっちは20人もいるのに、2匹の魔物も簡単に倒せないなんて弱過ぎです! もっと鍛えてください!」
「ぐぅぬぬぬぬ!」と傷だらけの女冒険者達が怒りを堪えています。来る日も来る日もグリフィンとキメラと戦わされ続けられました。2回も逃した罰として、100%倒せるようになるまで特訓させられているのです。
そのお陰で、もう1対1でリルと正々堂々と戦えるチャンスがあれば、全員が倒せるという自信があります。
でも、そうしないのは、リルが死ぬと首輪爆弾のスイッチが入るので出来ないのです。リルが死ぬ時は自分達全員が死ぬ時です。一蓮托生の困った関係です。
「フッフフ、地上にはケルベロスと獅子熊、空にはグリフィンとキメラです。この町の防衛は完璧ですね」
やれやれ、一体誰から町を守るつもりなのでしょう? この町を襲う馬鹿な野盗はいません。捕まったら最後、動物と強制的に錬金術で合体させられるだけです。
「リル様、もう町の中も森の中も魔物だらけです。最近では怖がって誰もこの辺りの森に近づく者はいません。町の修復もほとんど終わりました。これ以上はやる事がないと思いますよ」
要するにこの猫耳女冒険者が言いたい事は、『やる事がないから、町から出してください!』です。
「何を言ってるんですか! 町は全然修復出来ていません。フッフ、これから、お店屋さんを沢山作るんですよ♬ そしたら、観光客も一杯来てくれますよ。可愛い動物さんも沢山いますからね」
その可愛い動物というか、魔物さん達は人間を襲っては、リルに届けて無理矢理に観光客から町の住民という名の奴隷にするのに手を貸しています。
「さて、私がグリフィンとキメラを作ったのは、お店屋さんに必要な素材を色々と集めてもらう為です。この辺にはない素材がこれから、ドンドン手に入るので腕が鳴りますよ!」
その多くの素材は、近隣の町で『きゃあああ!』『助けてくれぇ!』と住民達が泣き叫ぶ中、魔物がお店を襲って奪い取ってきたものです。金も払わずにです。
「こんな魔物だらけの町に買い物に来る奴なんて、人間にも魔族にもいないだろう。観光客を呼びたいなら、まずは町の中と森の中の魔物を全部処分しないと無理だな。俺ならそうする」
「マ~ちゃんの言う事にも一理ありますが、魔物達を馬の代用品とした方が私はいいと思いますよ。人間を襲わないように徹底すれば、珍しいので評判になると思いますよ」
魔法使いと僧侶が町を発展させる方法を話し合っています。
「なるほど、なるほど。人間を襲わないようにするんですね。何の為に? 人間は一度殺して、強化しないと駄目ですよ。その為に殺しているんですから」
「はい?」「えっ?」
どうやら、リルの目的が町の修復と発展だと勘違いしているようです。リルの目的は新しい生物を作る事です。優れた生物による優れた世界を作る事が世界の為になるのです。
「殺して、直して、強くする。そうする事で世界は成長を続けるのです。これは世界を良くする為に必要な事なのですよ」
「………」と誰もリルの言葉の意味を理解する事が出来ないようです。それは仕方ありません。だって、リルはマッドサイエンティストです。理解したら終わりです。リルと同じ側に立ったら人間として、もう終わりなんです。
「リル様~~! リル様~~! 敵襲です~~! 多分、あの旗は国王軍の奴らです!」
囚われし冒険者達が待ちに待った瞬間がやって来ました。敵襲を知らせにきた、犬の冒険者は顔は怖がっているように見えますが、尻尾をブンブンと嬉しそうに振っています。何とか、国王軍と協力してリルを殺さずに捕まえる事が出来れば、全員が助かります。
でも、今までリルを騙し討ち、闇討ちしようとした者は例外なく返り討ちに遭って殺されています。意外とリルは隙がありません。今度こそ失敗は絶対に許されないのです。
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「Wee~aaa!!」「Meow!!」と、灰色の翼のグリフィンと、黒い翼のキメラが街の人間達を襲いまくっています。やっぱり、空に逃げられたようです。あれほど、リルが空に逃さないように言ったのに駄目な冒険者達です。
「クソぉ~、魔王軍の奴らが本格的に攻めてきた!」
「どういう事じゃ? 何百年も戦争をせずに、お互い不干渉を続けてきたのに、何故なんじゃ?」
血気盛んな若者は怒り、老人は魔王軍にとって意味のないに攻撃に首を傾げています。それはそうです。魔王軍は何もしていません。
「おい! 新しいのが来たぞ! クソぉ~、魔王軍の奴ら、俺達を皆殺しにするつもりだ!」
バサバサ、バサバサと別のグリフィンとキメラが街にやって来たした。リルがまた作って、また冒険者達が倒す前に逃してしまったのでしょう。本当に困った冒険者達です。晩ご飯のデカチュウのステーキは御預けですね。
パラッパッパ~~♬ とこのラッパの音は、国王軍の突撃を知らせる音です。街で暴れる2匹のグリフィンと2匹のキメラを討伐しに来たようです。
「民間人は家に急いで避難しろ! 負傷した者、動けぬ負傷者を知っている者は、治癒士の元に集まれ! 戦える者は国王アントワーズ6世陛下の地を穢す魔物に正義の鉄槌を振り下ろせ! 突撃~~~!!!」
「ヤァッ~~~!!!!」と、立派な白銀の鎧を纏った騎士団長の号令によって、総勢100人を超える騎士や冒険者達が各々の武器を持って、4匹の魔物に立ち向かっていきました。
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街を襲った魔物4匹は討伐されたものの、被害は甚大でした。魔物の飛んで来た方角を徹底的に調査した結果、調査隊はある小さな町に行き着きました。
「陛下、魔物の発生場所がようやく分かりました」
「やっとか。して、魔王軍との関わりはありそうか?」
長い白髭モジャモジャの国王アントワーズ6世の前に跪いて、調査隊の隊長が最近街を襲ったグリフィンとキメラの出現場所を報告しています。
「ベリーズの町から南下して、フォン大森林に入り、南西に向かった先に小さな町がありました。その町では半獣人の住民達が1人の少女の指示の下に行動しているようです」
「少女? それはおかしな事だ。魔王はアークデーモンと呼ばれる悪魔の突然変異種だと歴史書には書かれている。その少女は魔王軍とは関係ないのではないか?」
「陛下、少女と言っても見た目だけです。町の調査をしていた冒険者を捕まえては、平気で撲殺するような血も涙もない異常者です。おそらくこの町は魔物の兵器工場で、少女は魔王軍の幹部といったところでしょう。第一級勇者《アルフレッド・マーシー》を召還し、この町の破壊を命じられるべきだと進言します」
勇者と呼ばれる者達はいるものの、温厚派の魔王を下手に刺激する事は得策ではないと、勇者達は今まで何世代も国の要人として何不自由なく暮らしていました。今こそ、その力を発揮してもらう時です。
「フム……よかろう。第一級勇者アルフレッド・マーシー、及び、騎士団の精鋭300名を連れて魔物兵器工場を破壊せよ! もし、この町から魔王との関わりがある証拠が発見された場合は、直ちに魔王軍との全面戦争を開始する!」
「オオォォォ!!!」と謁見の間に集まった貴族、兵士達の歓声が上がります。遂に待ちに待った魔王討伐の時が来たのです。
未開の地である魔王領には、未知の鉱石、植物、魔物が手付かずで存在しているだけでなく、自分達の文明を遥かに超えた知識と技術があると伝えられています。
不朽不滅の金属オリハルコンに、何百年も生き続けられる謎の装置など、喉から手が出るほど欲しいアイテムが山のようにあるのです。
国王アントワーズ6世は今まで、ずっと欲しい物を、遠くから見ているだけで我慢してきましたが、戦争を起こしていい理由があれば国民も納得してくれます。これで多少の犠牲者や被害者が出て、一部の戦争反対派が反対しても、力で黙らせる事が出来ます。
(グッフフフ、永遠の生命を手にする事が出来れば、世はこの世でただ1人の絶対の王になれる。いや、もはや王ではなく、神か。ハッハハハハ、証拠など無くても、魔物が街を襲ったのだ。それだけで戦う理由は十分だ。さて、まずは世の街を襲った馬鹿共に血の制裁を下してやるか。グゥハハハハ~~)
アントワーズ6世は表では公明正大な国王を演じていますが、心の中はドロドロの汚らしい欲で一杯のようです。まあ、無理もありません。すぐ近くの魔王領に、不老不死の方法が実際に存在しているのです。死に近づく老いた国王には刺激が強過ぎます。
♦︎
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「まったく、やっとマトモに倒せるようになったんですか! こっちは20人もいるのに、2匹の魔物も簡単に倒せないなんて弱過ぎです! もっと鍛えてください!」
「ぐぅぬぬぬぬ!」と傷だらけの女冒険者達が怒りを堪えています。来る日も来る日もグリフィンとキメラと戦わされ続けられました。2回も逃した罰として、100%倒せるようになるまで特訓させられているのです。
そのお陰で、もう1対1でリルと正々堂々と戦えるチャンスがあれば、全員が倒せるという自信があります。
でも、そうしないのは、リルが死ぬと首輪爆弾のスイッチが入るので出来ないのです。リルが死ぬ時は自分達全員が死ぬ時です。一蓮托生の困った関係です。
「フッフフ、地上にはケルベロスと獅子熊、空にはグリフィンとキメラです。この町の防衛は完璧ですね」
やれやれ、一体誰から町を守るつもりなのでしょう? この町を襲う馬鹿な野盗はいません。捕まったら最後、動物と強制的に錬金術で合体させられるだけです。
「リル様、もう町の中も森の中も魔物だらけです。最近では怖がって誰もこの辺りの森に近づく者はいません。町の修復もほとんど終わりました。これ以上はやる事がないと思いますよ」
要するにこの猫耳女冒険者が言いたい事は、『やる事がないから、町から出してください!』です。
「何を言ってるんですか! 町は全然修復出来ていません。フッフ、これから、お店屋さんを沢山作るんですよ♬ そしたら、観光客も一杯来てくれますよ。可愛い動物さんも沢山いますからね」
その可愛い動物というか、魔物さん達は人間を襲っては、リルに届けて無理矢理に観光客から町の住民という名の奴隷にするのに手を貸しています。
「さて、私がグリフィンとキメラを作ったのは、お店屋さんに必要な素材を色々と集めてもらう為です。この辺にはない素材がこれから、ドンドン手に入るので腕が鳴りますよ!」
その多くの素材は、近隣の町で『きゃあああ!』『助けてくれぇ!』と住民達が泣き叫ぶ中、魔物がお店を襲って奪い取ってきたものです。金も払わずにです。
「こんな魔物だらけの町に買い物に来る奴なんて、人間にも魔族にもいないだろう。観光客を呼びたいなら、まずは町の中と森の中の魔物を全部処分しないと無理だな。俺ならそうする」
「マ~ちゃんの言う事にも一理ありますが、魔物達を馬の代用品とした方が私はいいと思いますよ。人間を襲わないように徹底すれば、珍しいので評判になると思いますよ」
魔法使いと僧侶が町を発展させる方法を話し合っています。
「なるほど、なるほど。人間を襲わないようにするんですね。何の為に? 人間は一度殺して、強化しないと駄目ですよ。その為に殺しているんですから」
「はい?」「えっ?」
どうやら、リルの目的が町の修復と発展だと勘違いしているようです。リルの目的は新しい生物を作る事です。優れた生物による優れた世界を作る事が世界の為になるのです。
「殺して、直して、強くする。そうする事で世界は成長を続けるのです。これは世界を良くする為に必要な事なのですよ」
「………」と誰もリルの言葉の意味を理解する事が出来ないようです。それは仕方ありません。だって、リルはマッドサイエンティストです。理解したら終わりです。リルと同じ側に立ったら人間として、もう終わりなんです。
「リル様~~! リル様~~! 敵襲です~~! 多分、あの旗は国王軍の奴らです!」
囚われし冒険者達が待ちに待った瞬間がやって来ました。敵襲を知らせにきた、犬の冒険者は顔は怖がっているように見えますが、尻尾をブンブンと嬉しそうに振っています。何とか、国王軍と協力してリルを殺さずに捕まえる事が出来れば、全員が助かります。
でも、今までリルを騙し討ち、闇討ちしようとした者は例外なく返り討ちに遭って殺されています。意外とリルは隙がありません。今度こそ失敗は絶対に許されないのです。
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