みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~

根 九里尾

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第7章 虹ヶ丘小学校とみょんちゃん先生の幸せ〔あーちゃんの視点・他〕 

62 第7章第14話 救え虹の女神を

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 〔建造の視点〕




 僕は、現場にいたんだ。虹ヶ丘地区内だったこともあり、急いで走ってきたんだ。図書館のロビーには、あーちゃんにしっかり手を握られて横になっている美代みよの姿が見えた。
 すぐに飛び込んで、あーちゃんから静かにその手を受け取った。

「みよー、みよー、しっかりー!」

 9月の末とはいえ、晴れていて温かったせいもあり、現場から全力で走った僕は、もの凄い汗をかいていたんだと思う。そう、僕はまだ自分のことなど気に掛ける余裕などかなったんだ。

「……だ、だい、じょう、ぶよ……けんちゃん……」


 力なく返事をした彼女だったが、僕の手だけはしっかりと握り返してくれたんだ。その手の力を感じて少し安心した僕は、額からたれ落ちる自分の汗に気づいて、慌てて袖でぬぐった。

 次に、北野きたの君が、学校から担架をもってやって来た。トウちゃんや数人の職員も連れて来てくれた。

「静かに、この担架に乗せて運ぶぞ!」
 北野君が、連れて来た職員にそういうのを聞いて、僕は焦って止めたんだ。

「待ってくれ北野君、ここからだと少し遠くないか?」
 心配そうに僕は尋ねた。

「大丈夫、今、ばんちゃん達がこちらに向かっているから……とにかく準備をしよう」
 落ち着いて自信ありげにそういう北野君の言葉を信じて、僕も美代を担架に乗せるのを手伝った。毛布で包み固定して待って待っていると、表に馬車が来たのが分かった。



 僕は、また、不安になった。

「馬車か……。でも、馬車は揺れるぞ、この状態で、馬車の揺れは、危険じゃないのか?」

 ところが、馬車の御者台から降りたのは上杉うえすぎ君と一太いちた君だったんだ。

建造けんぞう先輩、心配ご無用! この馬車は、万ちゃんご用達の揺れ防止の専用馬車だから、絶対に揺れないんだ!」
「なーに、ただのバネが特製なだけさ、さあ、早く乗って乗って」

 ちょっとお道化た一太君だったけど、返ってなんだか安心したんだ。

 この馬車は、バネが特製なんだ。タイヤがバネの上に乗っているのに加えて、4輪になっているんだ。また、タイヤは自転車と同じようにゴム製で、中にチューブが入っている。空気で膨らむようになっているので、道のデコボコを吸収するって一太君は自慢してた。
 
 担架に乗せられた美代は、4人の男たちに運ばれ、静かに馬車に乗せられた。上杉君と一太君が前に乗り馬を操り、僕と北野君が美代を担架ごと抑えたんだ。


 馬車が走り出した。


「おお! 全然、揺れないな! さすがだね。万ちゃん!」

 北野君は、改めて上杉君を褒めたんだ。僕も、この揺れない馬車には、驚いてしまった。

「こんなのは、大したことはないよ。ところで、建造先輩、あそこは完成しましたか?」
「ああ、もちろん。お望みの機械も組み込んでおいたよ、後は……」
「大丈夫さ……絶対……間に合うはずさ……」

 どこまでも北野君は、自信のある態度だった。不安でどうしようもない僕なんかに比べて、美代の傍でずっと仕事をしてきた彼は、それだけ美代のことも信頼してたんだと感じた。
 馬車は、商店街の外れにある真新しい建物の前で止まった。小さくはないが、個人の住宅にしては、少し大きい感じがする。
 玄関横の壁に何か看板らしきものが縦に掛かっている。しかし、そこには何も書かれていなく、真っ白い地の色だけがやけに目立っていた。


「さあ、静かに降ろすぞ。ゆっくりとな……」
 北野君の合図で、作業は滞りなく進んでいる。続けて彼は、確認した。
「女の人のお手伝いは、お願いしてあるのかい?」

 すると、脇を固める一太君が素早く反応した。
「ああ、うちの母ちゃん、それに彩ちゃんと図書館の人にも声を掛けてきた」

「よし、これで準備は整ったな…………大丈夫、絶対大丈夫だ!」

 建物に入ると、玄関の横は、広い部屋になっていた。クリーム色の壁にクリーム色の床材は、清潔感のある感じだ。奥は、小部屋がいくつかある。その1つに担架を運び入れ用意されたベッドに美代を寝かせた。ベッドは、比較的床からの高さがあり、布団などはなく、病院の診察台になっていた。

 部屋の中央には、明るい大きな電灯が設置されていた。壁には、薬品や真新しい機械の類がたくさん並んでいた。


「建造先輩が、ここ作ったんですか?」
「ああ、ここの設計だけは、芯さんがやったんだけどね。機械類は、すべて万ちゃんにお願いしたんだ。専門の機械は、僕じゃちっともわかない。東京から送ってもらったものもあるんだけど、万ちゃんに作ってもらったものもあるんだ」

「やっぱり、凄いな万ちゃんは……」
「ふん! 褒めても何も出ないからね…………後は……待つだけさ……」





 そうこうしているうちに、一太君の奥さんが虹ヶ丘にいる産婆さんばさんを連れて来たんだ。歳をとったおばあさんだが、何人も赤ちゃんを取り上げているらしい。


「さあ、赤ちゃんが生まれそうだよ、みんな準備をするよ……」
 と言って、その産婆さんはいろいろな準備を指示し出した。合わせて、美代の様子を見ながらも元気づける言葉を掛けてくれた。

「さあ、頑張って、もう少しだからね……」

 息苦しそうに、目を瞑って呼吸してしている美代の様子は、傍で見ているだけでも可哀そうだった。お産の苦しみだけではなく、きっと心臓も苦しいんだろうと思ったんだ。でも、僕にはどうすることもできない。



「男の人達は、ここから出てね……」

 そう産婆さんに声を掛けられ、男達は部屋から出された。でも、落ち着くわけもなく、みんなあちこち歩きまわるだけだった。
 そして、時々聞こえる美代のうめき声に、自分も心臓が押しつぶされそうだった。


 そんな時間がしばらく過ぎ、太陽も沈みかけた頃、美代の声が聞こえてこなくなったんだ。耳を澄ませても、気配すら感じない気がしてきた。

 すると産婆さんが、部屋から飛び出して来て泣きそうになりながら僕達に訴えたんだ。


「ケンさん、大変だ! このままだと奥さん、大変だよ……」
「どうしたんですか?」
「耐えられないんだ……心臓が。……お産が出来ないよう……何とかしないと、わしじゃだめだ、……何とか……」


 産婆さんに泣きながら縋られたが、僕にだって出来ることはもう無いんだ。僕は、黙って天を仰いで祈るしかなかった……頼む……



(つづく)
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