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第8章 町の発展とみょんちゃん母さん〔大樹の視点〕
69 第8章第6話 盆踊りの出会い
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次の日の夕方、光のお父さんがうちに駆け込んで来た。
「おい! 建造さん、聞いたぞ! 選挙に出るんだってな……」
「ああ……もうわかったのかい」
いつものように、お父さんは仕事が終わって、家で晩ご飯を食べようとしていた。
「そうだ、万ちゃんも一緒に晩ご飯食べていかないかい? みよちゃんいいだろう?」
「もちろんよ! 上杉君、入ってちょうだい、今日は、ジャガイモの天ぷらよ、豚肉も挟んでみました。たくさん作ってどうしようか困ってたのよ。ちょうどよかったわ」
「おおー、そりゃよかった、これで、お酒もあるといいんだけどなー」
「もちろんありますよーー、冷えた日本酒がね」
「さすが、みょんちゃん、気がきくねーー……じゃあなくってさ……今日はびっくりしたんだよ!」
「あら、上杉さん、お酒は要らないのかしら?」
「……いやいや……いただきますよ……もちろん!」
「じゃあ、中に入ってよ。ゆっくり、晩ご飯食べながら、お話でも、何でも、晩酌でも…………どうぞ」
光のお父さんは、最初はすごく慌てた様子だったが、あっという間に、いつもの電器屋のおじさんに戻っていた。
「なあ、本気なのか?」
光のお父さんは、うちのお父さんより1つ年下だが、仲がよくいつも家に遊びに来たり、行ったりしている。お互いの相談などもよくしているし、困ったときは助けてもくれる。
上杉のおじさんはとても器用で、不思議な機械をたくさん作ってくれるんだ。この虹空町で使っている電気を作る発電所は、ほとんど光のお父さんが作ったものだそうだ。
しかも、他の町では油を燃やしてモーターを回して電気を作るんだけど、光のお父さんの発明は、太陽の光を電気に変えるんだそうだ。
それで、子どもにも『光』って名前を付けたって聞いた。それが、光の自慢で、いつも言っている。しかも、太陽の光は、無限とは言わないけど、ずうっともつし、無料なので、この太陽の光を電気に変える機械さえもっていれば、電気をただで手に入れられんだっていつも光は言っている。
この機械を安く、たくさん作ることができるように、光は勉強するんだって頑張っているんだ。
「ああ、本気だよ。でも、町長になりたい訳じゃないんだ」
「え? どういうことだい?」
「僕たちは、虹ヶ丘に開拓に入ったときは、まだ子供だったんだ。でも、あの頃、一緒に仕事をしたり、学んだり、歌を歌ったりしたことを覚えているだろう?」
「もちろん、覚えているさ。だから、頑張れたんじゃないか。あの時だって、自分達は東京へ、仲間達はここで頑張ったんだ」
「虹の木で誓ったんだ。今でも忘れないよ。……見てくれ、大樹が10歳になったんだ」
「そうか、10年も経つのか……」
「僕たちが目指した虹ヶ丘をもう一度確かめたかったんだ……」
「そうだな……」
「100年先の虹空を考えておこうと思ってな……」
「それで、町長選挙か。また、思いきったことを考えたな」
「みよちゃんに言われたよ、『別に町長にならなくてもいいでしょ』ってね。何とか、みんなに100年後の虹空を考えておいてもらいたくてね…」
「わかったよ………。……【ググッー】……あれっ? 100年後もいいけど、今はお腹が鳴っちゃってるぞ!」
「そうそう、今はこのおいしい天ぷらをどうぞ召し上がれ!」
お母さんがてんこ盛りの天ぷらを大皿に盛って運んできたら、食卓がまたにぎやかになった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「みょんちゃん……まだー」
「はーい、今行くわよー」
「あれ? 盆踊りに、それ、持っていくの?」
「うん、これは、毎年持って行っているわよ!」
「そうだよな、これ、みよちゃんの十八番だもんな。みんなも知ってるから、必ず『あれ、やって!』ってせがまれるしね」
「そっか、今までは、ぼくが、おぶさっているこが多かったから、持てなくて、けんちゃんが持ってたのか」
「そうなのよね、今年は、おんぶはいいの?」
「……もう10歳なの!……大丈夫なの!」
「あはは……はいはい、それじゃあ行くわよ」
今晩は、虹空町の大きな行事の『夏の盆踊り』があるんだ。毎年恒例のお盆の一大イベントだ。
町の中心部にある公園に、大きなやぐらを組んでいる。そこに置く大太鼓を叩き、お囃子の笛や鈴などで盛り上げる。だから、公園に集まって盆踊りをする人達の気分も高まる。薄明るい光を放つ提灯がより雰囲気を高め、屋台の出店もあるので、子供達もたくさん集まるしね。
また、商店街の人達が、思い思いの食べものを提供する。今年は、八百屋中村の笑太が、いろんなお菓子を工夫した『野菜を使った甘いお菓子』のお店を出している。このお菓子は、商店街でも評判が高く、味見の時にすぐ無くなってしまったぐらいだ。
当日は、笑太はもちろん、おじさんやおばさん、笑子も手伝って屋台を出すと張り切っていたな。
会場では、ぼくとお父さんが迷子にならないように、手をつないで屋台を回ったり、踊りを踊ったりしていたが、お母さんはさっそく盆踊りの人に見つかって、舞台の方へ連れていかれた。
たぶん盆踊りの演奏の手伝いをさせられるのはないかと、お父さんは笑っていた。
しばらくしたら、知らない男の人に声をかけられたんだ。
「あのうー、桜山さんですよね」
「はい、そうですが……あなたは?」
お父さんも、知らない人のようだった。それでも、いつものように明るく返事をしていた。
「私、黒岩と申します。実は、今度の町長選挙で、あなたと戦うことになりまして……」
「あーあ、そうなんですか? それは、本当に申し訳ないことをしました。すみませんでした」
「え? 申し訳ないとは、……私が、負けるということですか?」
背は高いが、痩せていて、細っそりとし、あまり力はなさそうな感じの人だった。声も張りがあるとは言えないような少し高めの声なので、『黒岩』という割には、頼りないように思った。
お父さんが申し訳ないと言ったのは、本気で選挙に出た訳ではなく、自分の虹空町に対する考えを言いたかっただけで、町長になりたかった訳ではないと言いたかったんだ。それなのに、相手には、何となく父さんが自信たっぷりで選挙に勝つから大丈夫みたいに聞こえたんだ。
父さんは、少しびっくりして慌てて否定していた。
「違いますよ。とんでもない。私なんかが、選挙に出て、準備も何もせずに本当に失礼だと思っているんですから。増して、選挙に勝とうなんて、これっぽっちも思っていませんからね」
「……おや?……では、なぜ選挙に立候補されたんですか?」
「実は…………私は、この虹ヶ丘開拓の初期の人達の子供なんです。当時は、あまり人数もいませんでした。それでも、いろいろな困難を乗り越え、今の虹ヶ丘に住んでいて良かったなあと思っています。先日、ふと最近の虹ヶ丘を振り返った時、自分の子供に何が残せるのか考えたんです。100年後の虹ヶ丘……いや虹空町はどうなっているだろうか? って想像したら、心配なことがたくさんあったんです」
開拓当初は虹ヶ丘だけだったのに、今は町も大きくなり虹空町になったんだ。お父さんは、きっと虹ヶ丘地区だけでなく、一緒にがんばっている虹空町全部が気になっていると思うんだ。
「そしたら、うちの家内が『家でそんなことを考えてるんだったら、選挙に出て、町のみんなにも聞いてもらえればいいでしょ!』って、言ったんですよ。自分が町長になるとか、ならないとか、そんなのはどうでもいいです。僕にとっては、虹空町の100年後の方が大切なんです」
「そうなんですか……」
「はあ、だから、お恥ずかしい、まじめに町長になりたいとこの選挙に臨んでいるあなたにしてみれば、私なんか、不真面目そのものだ……」
「…………………ご存じの通り、今の町長は、私の父です」
「ああ、黒岩さんって、そうか…………。これは、益々すいません………」
「いいえ……今回、父がもう年齢的に高齢なもので、町長をやめることにしたんです。そこで、後を継ごうと思い、立候補したのですが、私はあまり人前に出るのは得意じゃないんです。また、町長になったからといって、特にやりたいこともないんです」
黒岩さんは、本当に静かな人で、こんな話をする時も、とても気弱な感じがした。
「虹空町は、今まであまり選挙に相手候補は出ていませんでしたから、何もしなくてもいいと思っていました。でも、今回、あなたが立候補したと聞いて、ちょっと焦ったのです。何か選挙運動をしないと受からないのではないかと思ったのです」
「そうなんですか……」
なぜか、黒岩さんは、心配事を自分のお父さんに相談でもするように、心細そうな目をしながら話していた。うちのお父さんは、やっぱりいつも通りに、何も言わず黙って最後まで話を聞いていたが、だんだんとにこやかな顔になり、声も優しくなるのを感じた。
「黒岩さん、あなたのお仕事は何ですか?」
「私は、父の会社を継いで、土木工事の会社をやっています。道路工事や河川工事などが主なものです」
「できれば、今度の選挙前に2人で討論会が予定されていますよね。その時に、あなたもこの虹ヶ丘の100年後について、考えてみませんか? あなたは、土木のことを生かして、未来の町について考えてみるのはどうでしょうか?」
「…………はい……わかりました。ぜひ、考えさせてください」
「それでは1つ……………………」
父さんと黒岩のおじさんは、2人で打ち合わせを始めた。今度の土曜日、選挙前に行われる討論会の日の打ち合わせのようだった。
その時、盆踊りの会場には、終了を知らせる音楽が流れ出した。その音楽は、お母さんのギターが中心に奏でている。終了の音楽なのに、思い出にあふれ、懐かしく、すがすがしい気持ちがいつでも蘇る気がする。
この音楽は、誰もが知っている。
毎年の盆踊りには流れている。いつから流れるようになったかはわからないが、虹ヶ丘には欠かせない音楽だ。皆、この音楽を聴きながら家路につくんだ。
桜山家だけは、最後にみんなの帰宅を確認して、自前の『みょんちゃん演奏』で帰宅するのが恒例になっているんだ。
(つづく)
「おい! 建造さん、聞いたぞ! 選挙に出るんだってな……」
「ああ……もうわかったのかい」
いつものように、お父さんは仕事が終わって、家で晩ご飯を食べようとしていた。
「そうだ、万ちゃんも一緒に晩ご飯食べていかないかい? みよちゃんいいだろう?」
「もちろんよ! 上杉君、入ってちょうだい、今日は、ジャガイモの天ぷらよ、豚肉も挟んでみました。たくさん作ってどうしようか困ってたのよ。ちょうどよかったわ」
「おおー、そりゃよかった、これで、お酒もあるといいんだけどなー」
「もちろんありますよーー、冷えた日本酒がね」
「さすが、みょんちゃん、気がきくねーー……じゃあなくってさ……今日はびっくりしたんだよ!」
「あら、上杉さん、お酒は要らないのかしら?」
「……いやいや……いただきますよ……もちろん!」
「じゃあ、中に入ってよ。ゆっくり、晩ご飯食べながら、お話でも、何でも、晩酌でも…………どうぞ」
光のお父さんは、最初はすごく慌てた様子だったが、あっという間に、いつもの電器屋のおじさんに戻っていた。
「なあ、本気なのか?」
光のお父さんは、うちのお父さんより1つ年下だが、仲がよくいつも家に遊びに来たり、行ったりしている。お互いの相談などもよくしているし、困ったときは助けてもくれる。
上杉のおじさんはとても器用で、不思議な機械をたくさん作ってくれるんだ。この虹空町で使っている電気を作る発電所は、ほとんど光のお父さんが作ったものだそうだ。
しかも、他の町では油を燃やしてモーターを回して電気を作るんだけど、光のお父さんの発明は、太陽の光を電気に変えるんだそうだ。
それで、子どもにも『光』って名前を付けたって聞いた。それが、光の自慢で、いつも言っている。しかも、太陽の光は、無限とは言わないけど、ずうっともつし、無料なので、この太陽の光を電気に変える機械さえもっていれば、電気をただで手に入れられんだっていつも光は言っている。
この機械を安く、たくさん作ることができるように、光は勉強するんだって頑張っているんだ。
「ああ、本気だよ。でも、町長になりたい訳じゃないんだ」
「え? どういうことだい?」
「僕たちは、虹ヶ丘に開拓に入ったときは、まだ子供だったんだ。でも、あの頃、一緒に仕事をしたり、学んだり、歌を歌ったりしたことを覚えているだろう?」
「もちろん、覚えているさ。だから、頑張れたんじゃないか。あの時だって、自分達は東京へ、仲間達はここで頑張ったんだ」
「虹の木で誓ったんだ。今でも忘れないよ。……見てくれ、大樹が10歳になったんだ」
「そうか、10年も経つのか……」
「僕たちが目指した虹ヶ丘をもう一度確かめたかったんだ……」
「そうだな……」
「100年先の虹空を考えておこうと思ってな……」
「それで、町長選挙か。また、思いきったことを考えたな」
「みよちゃんに言われたよ、『別に町長にならなくてもいいでしょ』ってね。何とか、みんなに100年後の虹空を考えておいてもらいたくてね…」
「わかったよ………。……【ググッー】……あれっ? 100年後もいいけど、今はお腹が鳴っちゃってるぞ!」
「そうそう、今はこのおいしい天ぷらをどうぞ召し上がれ!」
お母さんがてんこ盛りの天ぷらを大皿に盛って運んできたら、食卓がまたにぎやかになった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「みょんちゃん……まだー」
「はーい、今行くわよー」
「あれ? 盆踊りに、それ、持っていくの?」
「うん、これは、毎年持って行っているわよ!」
「そうだよな、これ、みよちゃんの十八番だもんな。みんなも知ってるから、必ず『あれ、やって!』ってせがまれるしね」
「そっか、今までは、ぼくが、おぶさっているこが多かったから、持てなくて、けんちゃんが持ってたのか」
「そうなのよね、今年は、おんぶはいいの?」
「……もう10歳なの!……大丈夫なの!」
「あはは……はいはい、それじゃあ行くわよ」
今晩は、虹空町の大きな行事の『夏の盆踊り』があるんだ。毎年恒例のお盆の一大イベントだ。
町の中心部にある公園に、大きなやぐらを組んでいる。そこに置く大太鼓を叩き、お囃子の笛や鈴などで盛り上げる。だから、公園に集まって盆踊りをする人達の気分も高まる。薄明るい光を放つ提灯がより雰囲気を高め、屋台の出店もあるので、子供達もたくさん集まるしね。
また、商店街の人達が、思い思いの食べものを提供する。今年は、八百屋中村の笑太が、いろんなお菓子を工夫した『野菜を使った甘いお菓子』のお店を出している。このお菓子は、商店街でも評判が高く、味見の時にすぐ無くなってしまったぐらいだ。
当日は、笑太はもちろん、おじさんやおばさん、笑子も手伝って屋台を出すと張り切っていたな。
会場では、ぼくとお父さんが迷子にならないように、手をつないで屋台を回ったり、踊りを踊ったりしていたが、お母さんはさっそく盆踊りの人に見つかって、舞台の方へ連れていかれた。
たぶん盆踊りの演奏の手伝いをさせられるのはないかと、お父さんは笑っていた。
しばらくしたら、知らない男の人に声をかけられたんだ。
「あのうー、桜山さんですよね」
「はい、そうですが……あなたは?」
お父さんも、知らない人のようだった。それでも、いつものように明るく返事をしていた。
「私、黒岩と申します。実は、今度の町長選挙で、あなたと戦うことになりまして……」
「あーあ、そうなんですか? それは、本当に申し訳ないことをしました。すみませんでした」
「え? 申し訳ないとは、……私が、負けるということですか?」
背は高いが、痩せていて、細っそりとし、あまり力はなさそうな感じの人だった。声も張りがあるとは言えないような少し高めの声なので、『黒岩』という割には、頼りないように思った。
お父さんが申し訳ないと言ったのは、本気で選挙に出た訳ではなく、自分の虹空町に対する考えを言いたかっただけで、町長になりたかった訳ではないと言いたかったんだ。それなのに、相手には、何となく父さんが自信たっぷりで選挙に勝つから大丈夫みたいに聞こえたんだ。
父さんは、少しびっくりして慌てて否定していた。
「違いますよ。とんでもない。私なんかが、選挙に出て、準備も何もせずに本当に失礼だと思っているんですから。増して、選挙に勝とうなんて、これっぽっちも思っていませんからね」
「……おや?……では、なぜ選挙に立候補されたんですか?」
「実は…………私は、この虹ヶ丘開拓の初期の人達の子供なんです。当時は、あまり人数もいませんでした。それでも、いろいろな困難を乗り越え、今の虹ヶ丘に住んでいて良かったなあと思っています。先日、ふと最近の虹ヶ丘を振り返った時、自分の子供に何が残せるのか考えたんです。100年後の虹ヶ丘……いや虹空町はどうなっているだろうか? って想像したら、心配なことがたくさんあったんです」
開拓当初は虹ヶ丘だけだったのに、今は町も大きくなり虹空町になったんだ。お父さんは、きっと虹ヶ丘地区だけでなく、一緒にがんばっている虹空町全部が気になっていると思うんだ。
「そしたら、うちの家内が『家でそんなことを考えてるんだったら、選挙に出て、町のみんなにも聞いてもらえればいいでしょ!』って、言ったんですよ。自分が町長になるとか、ならないとか、そんなのはどうでもいいです。僕にとっては、虹空町の100年後の方が大切なんです」
「そうなんですか……」
「はあ、だから、お恥ずかしい、まじめに町長になりたいとこの選挙に臨んでいるあなたにしてみれば、私なんか、不真面目そのものだ……」
「…………………ご存じの通り、今の町長は、私の父です」
「ああ、黒岩さんって、そうか…………。これは、益々すいません………」
「いいえ……今回、父がもう年齢的に高齢なもので、町長をやめることにしたんです。そこで、後を継ごうと思い、立候補したのですが、私はあまり人前に出るのは得意じゃないんです。また、町長になったからといって、特にやりたいこともないんです」
黒岩さんは、本当に静かな人で、こんな話をする時も、とても気弱な感じがした。
「虹空町は、今まであまり選挙に相手候補は出ていませんでしたから、何もしなくてもいいと思っていました。でも、今回、あなたが立候補したと聞いて、ちょっと焦ったのです。何か選挙運動をしないと受からないのではないかと思ったのです」
「そうなんですか……」
なぜか、黒岩さんは、心配事を自分のお父さんに相談でもするように、心細そうな目をしながら話していた。うちのお父さんは、やっぱりいつも通りに、何も言わず黙って最後まで話を聞いていたが、だんだんとにこやかな顔になり、声も優しくなるのを感じた。
「黒岩さん、あなたのお仕事は何ですか?」
「私は、父の会社を継いで、土木工事の会社をやっています。道路工事や河川工事などが主なものです」
「できれば、今度の選挙前に2人で討論会が予定されていますよね。その時に、あなたもこの虹ヶ丘の100年後について、考えてみませんか? あなたは、土木のことを生かして、未来の町について考えてみるのはどうでしょうか?」
「…………はい……わかりました。ぜひ、考えさせてください」
「それでは1つ……………………」
父さんと黒岩のおじさんは、2人で打ち合わせを始めた。今度の土曜日、選挙前に行われる討論会の日の打ち合わせのようだった。
その時、盆踊りの会場には、終了を知らせる音楽が流れ出した。その音楽は、お母さんのギターが中心に奏でている。終了の音楽なのに、思い出にあふれ、懐かしく、すがすがしい気持ちがいつでも蘇る気がする。
この音楽は、誰もが知っている。
毎年の盆踊りには流れている。いつから流れるようになったかはわからないが、虹ヶ丘には欠かせない音楽だ。皆、この音楽を聴きながら家路につくんだ。
桜山家だけは、最後にみんなの帰宅を確認して、自前の『みょんちゃん演奏』で帰宅するのが恒例になっているんだ。
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