みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~

根 九里尾

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第6章 虹ヶ丘小学校、その歴史のはじまり〔美代乃の視点〕

41 第6章第3話 同じ想い

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美代みよちゃん、あんまり夜遅くまで頑張らないでね」
「あ、お母さん。ごめんなさい、明るかった?……今消すからね」

「ううん、大丈夫よ。……そうじゃなくて、あなたの体が心配なのよ」

「平気よ…………今は、学校があるから、気をつけているわ。……じゃ、消すわよ、おやすみなさい」








 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「……美代乃みよのは、なかなか書類ができないようだね」
「あ、お父さん。学校を作る申請書類って、そんなに難しいんですか?」


 隣の部屋で会話するお父さんとお母さんの声が聞こえちゃった。お母さんは、心配性なんだから……。


「そう簡単にはいかんよ。ただ建物を作ればいいってものじゃないんだ。昔の寺子屋を作るのとはわけが違う」

「お父さんが村長なんだから、もっと手伝ってあげなきゃダメなんじゃないの?」
「もちろんやってるさ。でも、学校の内容や細かなことは、実際に校長としてこれから運営していく美代乃が考えたいというんだ。…………任せてやろうよ」


 お父さんも心配なのかな? それでも、私を信じて任せてくれてるの。私が、頑張らないと……。


「そうね……。あれ?……じゃ、まだあの虹ヶ丘小学校は、本当の虹ヶ丘小学校じゃないの?」
「そうだな、政府に申請して、承認されなければ、ただの集会所だな……」









 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 朝の虹ヶ丘小学校は、いつものように過ぎていたの。あーちゃんへのお話し会が終わるころには、たくさんの子供達が集まっていた。特に年齢を定めてはいなかったので、一緒に勉強したい子が集まるだけだったの。
 
 開拓に入ったばかりで、まだまだ子供も大切な労働力として考えられていたので、どうしても子供にも働いてもらってるの。
 でも、この先のことを考えると、きちんと学ばせることも大切だと考えるこの村の人達は、たくさんいたわ。

 だからこそ、自分達の手で、小さいけれどこの虹ヶ丘小学校を建ててくれたのよ。
 
 この建物ができたおかげで、子供達は、労働から解放されることになったわ。例えそれが、学校へ行く午前中だけとはいえ、子供達にとっては大きな変化だったの。
 


 でも、これらすべては、私、音無美代乃おとなし みよのという人間の信頼が元になっているの。私は、この信頼に答えねばならないの。今、学校にいる私にそれだけのことができているのか、いつも不安が頭を過ってしまうの。


「みー! みー! みーってば!」


「……あ? けんちゃん、何?」


「何? じゃないぞ。お前、夕べも仕事してただろう」
「そんなことないよ」
「してた! 目が半分閉じてるぞ、そんな目で、あーちゃんにお話ししても、迫力ないんだぞ」

「そっか、わかるんだ?」
岡崎おかざき達も心配してたぞ。あいつらは、畑の仕事があるからって、すぐ帰ったけど、頼まれたんだよな……」

「頼まれたって? 何をよ……」
「……決まってんだろ、みんな心配してんだよ、……大変なのか?」
「…………………」


 開拓に入った時から、一緒に勉強会を始めた同じ年の桜山建造さくらやま けんぞう君。他にも何歳か歳は違ったが、小さい子供達の様子を見ながらも一生懸命に自分の学びを追い求めて来た仲間なの。

 みんなが帰った教室で、けんちゃんに呼び止められた私は、半分は予想していた質問をぶつけられて、どう答えていいかわからず迷ってしまったの。


「……まあ、そりゃあ大変だよな。何が大変なのかはよく分からないけど、学校を作っちゃったんだもんな……」

「……あ、うん。まあ、……ねえ」
「で、今、どんな、仕事してんのさ」

「うん、政府に、学校を認めてもらう申請書を作ってんの。……これがさ、大変なのよ……」
「うん、うん、……それで……」

「まずね、学校ってね、こんな部屋一つじゃ、ダメなんだってさ。教室もいくつか必要だし、他にも体育館とか、グラウンドとか、いろんなものが必要だって……」

「へー、それから、他には必要なものは、あるのかい?」
「先生が必要だって。私もね、先生になるの。今度、その試験を受けに町に行くの。でもね、私1人じゃ、学校はダメだって」

「そーか、後は、何か必要なものは、あるのかい?」
「それから、学校へ通う小学生だって」
「小学生?」

「そう、私達は虹ヶ丘小学校を作ったの。だから、国に申請するのは小学校なのよ。きちんと年齢を調べて、通うだけの子供がいるかどうか報告しなければならないの」

「そうか、今まで僕たちは年齢に関係なく、ただ自分の学びたいことだけを勉強していたもんな。正式な学校になればそうはいかないか」

「そうなんだけど……、私は、……それがいやで学校を作るのに反対していたのよね。でもあの人達と出会って……」

「みーは、……学校を作ったら、好きなことを勉強できなくしちゃうのかい?」
 けんちゃんは、分かってるくせに、意地悪なことを聞くのよ。

「そんなことはしたくないわ。……絶対に。……何とかしたいの」
 ムキになって、私は反発するけど、自分でもどうしたらいいか確かな方法がわかっていないの。

「そうだろう。だから協力するよ。上杉だって、岡崎おかざきだって、中村なかむらだって、北野きたのだって、多田野ただのだって、あんな小さいあーちゃんだってね。もちろん、僕は僕にできることを全力で協力するから心配するな!」
 けんちゃんは、笑顔で優しく言ってくれたの。

「うん、ありがとう。でも、どうして?」

「そんなこと決まってるじゃないか。ここに来たばかりの時、僕達はどれだけ君の歌に元気をもらったか。あの時聞いた歌、一緒に歌った歌、今でも元気が出るんだぜ」

 狭い教室で、私とけんちゃんは、そんなに昔ではない想い出を一緒に思い出せたことに、なんとなく嬉しさを感じたの。でも、すぐに私は恥ずかしくなって、いそいそと帰り支度を始めちゃった。



(つづく)
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