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第6章 虹ヶ丘小学校、その歴史のはじまり〔美代乃の視点〕
42 第6章第4話 僕達の決意!
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〔建造の視点〕
7月の上旬、ここ北の大地では、1年で1番日が長くなる。だから、夕飯を食べる時刻も遅くなることが多いんだ。その分、畑仕事などははかどるけど、疲れは貯まる一方なので、夕食後にそのまま寝てしまうことも多くなるんだ。
ただ、今日だけは、僕達何人かの若者がいつもより少し早めに仕事を切り上げ、夕食を済ませたんだ。きっと今頃、みんなは僕の家を目指しているはずだ。
「今晩は……。建造さん居ますか?」
「ああ、上杉君か、こっちだ、入ってくれ」
「おじゃまします。おうちの人はお出かけですか?」
「ああ、隣の村で建前があってな。父ちゃんも母ちゃんもお呼ばれしてて、今日は帰りが遅いんだ」
「そうですか。そういえば、お父さんは大工さんでしたもんね」
「いやあ、大工の仕事は時々しかなくて、普段は畑仕事ばかりなんだけどな」
そのうちに、上杉と同い年の岡崎がやってきた。
「上杉、お前も自転車で来たにしては早かったな。確か、俺が家を出ようとした時、ちょうど目の前を通ったと思ったんだけどな」
「ああ、俺の自転車な、駆動輪に歯車を少し付け足して、変速機を作ったんだ。少ない力で早いスピードが出せるんだぞ!」
「また、お前は自転車も改造しちまったのか? まったく、機械いじりが得意だなあ……」
「機械だけじゃないぜ、電気だってまかせなさい!」
「あーはいはい」
「桜山先輩ー、お邪魔しまーす」
僕の2歳下、岡崎と上杉の1歳下の中村、北野、多田野が来た。
「それにしても、桜山先輩の家は、自分の部屋があるなんてすごいですね」
「そうそう、開拓に入った家で、自由に家を作れるのは、大工さんの家くらいですよね」
「おいおい中村君、あんまり人聞きの悪いことを言わないでほしいな。なんか大工が自分勝手に好きな家を建てているみたいじゃないかい」
「あ! すみません。でも、好きなように立てられないですか?」
「うちだって、最初はこの部屋は無かったんだよ。この部屋はね、僕が設計の勉強のために自分で作ったんだ」
「え? 桜山先輩が自分で設計して、自分で作ったんですか?」
「そうだよ。僕は、将来設計師、建築士になりたいんだ。そして、できれば虹ヶ丘小学校を作りたいんだ……」
「……ああ、なるほどね……。だからですか!」
歳は1つ下だが、いつも沈着冷静で、先を見通して行動する岡崎は、納得顔で僕の顔を覗き込んできた。
「何が、なるほどだよ」
少しドギマギしながら言い返すと、すかさず2歳下の北野が閃き顔で答えた。
「わかった! 美代乃先生の役に立ちたいんだ! そうでしょう?」
他のみんなは、『そんなことは、もうわかっている』とは言わずに、ただ『ニコッ』と微笑むだけだった。
でも、僕はは少し焦ってしまったんだ。
「……まあ、……ああ……、……今日は、……その話の……ためなんだ。みーに、あ、いや、美代乃さんに聞いたんだ。今、何に困っているかを…………」
僕は、学校でみーから聞いた学校申請の話をした。校舎増築のこと、教員のこと、児童確保のことなど、みーが頭を抱えていることに手助けできることはないか相談することにしたんだ。
「……あの時、僕達は約束したよね。美代乃さん……みょんちゃんが作りたい学校を作るために何でも協力するって。それは、自分が勉強する姿を見せることで、他のみんなに『これが学校だ』というものを知ってもらうという協力だって約束もしたんだ」
「そうだ、中村君の言う通りだ。だから僕は、建物を作るための勉強をしたんだ。自分で設計もできるようになった。自分は、学校を作るという強力をするよ。申請に間に合うくらいの学校にして見せる……」
「お願いします。桜山先輩」
「でも、僕は、その先も、この虹ヶ丘小学校と美代乃さんの面倒をずうっと見ていきたいんだ。だからもっと本格的に設計や建設の勉強をしようと思ってる。僕は来年20歳になる。だから、東京の学校に行って早く本物になって帰って来るよ。それまで、この虹ヶ丘をみんなに頼みたいんだ!」
「僕も、機械と電気の勉強をしてきたいと思ってます」
「上杉さんもですか?」
「みんなすまん。その代わり、行く前に、しっかり新虹ヶ丘小学校には、新しい電気を通していくから。きっとこれからは、電気と機械の世の中になるんだ。これに負けないように、技術を身につけて帰ってくる」
「わかりました。それじゃあ、僕たち、居残り組は、先生になります。年齢的にも補助教員の試験が受けられます。今年の夏に美代乃先生と一緒に、この試験に合格できるように猛勉強します」
「岡崎、中村、北野、多田野、頼んだぞ!」
「……みんな、すまん」
「どうした? 岡崎」
次々にみーを助けるための手立てを決め、意気揚々とする中、岡崎だけは段々とうなだれていった。そして、あまり大きくはない、加えて歯切れの悪い、いつもとは違った岡崎の話が、少しずつ始められた。
「……俺は……助けたいんだ。……間に合うか……いや……間に合うように……頑張るから……」
「助ける? 頑張る? 誰をだ?」
不思議そうに尋ねる多田野の言葉を遮って、僕が聞いた。
「お前、知っていたのか?」
「ああ……」
「そうか…………」
僕も体から力が抜けていくのを感じた。他のみんなは、何のことだかわからず、しばらくは沈黙が続いた。そして北野が、もう1度聞いてきた。
「助けるって、誰をですか?」
「……時々、……美代乃さんが倒れたのを……みんなも知ってるよね」
「ええ、でも、あれは仕事をしすぎて疲れがたまったって……」
「自分は、医学に関心があって勉強してるんだ。そして調べたんだ。美代乃さんは、心臓に病気を抱えているに違いないんだ……」
「「「「 ! 」」」」
「だから、僕は1日でも早く医者になって、美代乃さんの健康を取り戻せるようになりたいんだ。だから、僕も…………」
「分かったよ。きっと、君ならできると思う。僕達は、できることをやろう。いや、やりたいと思うことをやろうじゃないか」
(つづく)
7月の上旬、ここ北の大地では、1年で1番日が長くなる。だから、夕飯を食べる時刻も遅くなることが多いんだ。その分、畑仕事などははかどるけど、疲れは貯まる一方なので、夕食後にそのまま寝てしまうことも多くなるんだ。
ただ、今日だけは、僕達何人かの若者がいつもより少し早めに仕事を切り上げ、夕食を済ませたんだ。きっと今頃、みんなは僕の家を目指しているはずだ。
「今晩は……。建造さん居ますか?」
「ああ、上杉君か、こっちだ、入ってくれ」
「おじゃまします。おうちの人はお出かけですか?」
「ああ、隣の村で建前があってな。父ちゃんも母ちゃんもお呼ばれしてて、今日は帰りが遅いんだ」
「そうですか。そういえば、お父さんは大工さんでしたもんね」
「いやあ、大工の仕事は時々しかなくて、普段は畑仕事ばかりなんだけどな」
そのうちに、上杉と同い年の岡崎がやってきた。
「上杉、お前も自転車で来たにしては早かったな。確か、俺が家を出ようとした時、ちょうど目の前を通ったと思ったんだけどな」
「ああ、俺の自転車な、駆動輪に歯車を少し付け足して、変速機を作ったんだ。少ない力で早いスピードが出せるんだぞ!」
「また、お前は自転車も改造しちまったのか? まったく、機械いじりが得意だなあ……」
「機械だけじゃないぜ、電気だってまかせなさい!」
「あーはいはい」
「桜山先輩ー、お邪魔しまーす」
僕の2歳下、岡崎と上杉の1歳下の中村、北野、多田野が来た。
「それにしても、桜山先輩の家は、自分の部屋があるなんてすごいですね」
「そうそう、開拓に入った家で、自由に家を作れるのは、大工さんの家くらいですよね」
「おいおい中村君、あんまり人聞きの悪いことを言わないでほしいな。なんか大工が自分勝手に好きな家を建てているみたいじゃないかい」
「あ! すみません。でも、好きなように立てられないですか?」
「うちだって、最初はこの部屋は無かったんだよ。この部屋はね、僕が設計の勉強のために自分で作ったんだ」
「え? 桜山先輩が自分で設計して、自分で作ったんですか?」
「そうだよ。僕は、将来設計師、建築士になりたいんだ。そして、できれば虹ヶ丘小学校を作りたいんだ……」
「……ああ、なるほどね……。だからですか!」
歳は1つ下だが、いつも沈着冷静で、先を見通して行動する岡崎は、納得顔で僕の顔を覗き込んできた。
「何が、なるほどだよ」
少しドギマギしながら言い返すと、すかさず2歳下の北野が閃き顔で答えた。
「わかった! 美代乃先生の役に立ちたいんだ! そうでしょう?」
他のみんなは、『そんなことは、もうわかっている』とは言わずに、ただ『ニコッ』と微笑むだけだった。
でも、僕はは少し焦ってしまったんだ。
「……まあ、……ああ……、……今日は、……その話の……ためなんだ。みーに、あ、いや、美代乃さんに聞いたんだ。今、何に困っているかを…………」
僕は、学校でみーから聞いた学校申請の話をした。校舎増築のこと、教員のこと、児童確保のことなど、みーが頭を抱えていることに手助けできることはないか相談することにしたんだ。
「……あの時、僕達は約束したよね。美代乃さん……みょんちゃんが作りたい学校を作るために何でも協力するって。それは、自分が勉強する姿を見せることで、他のみんなに『これが学校だ』というものを知ってもらうという協力だって約束もしたんだ」
「そうだ、中村君の言う通りだ。だから僕は、建物を作るための勉強をしたんだ。自分で設計もできるようになった。自分は、学校を作るという強力をするよ。申請に間に合うくらいの学校にして見せる……」
「お願いします。桜山先輩」
「でも、僕は、その先も、この虹ヶ丘小学校と美代乃さんの面倒をずうっと見ていきたいんだ。だからもっと本格的に設計や建設の勉強をしようと思ってる。僕は来年20歳になる。だから、東京の学校に行って早く本物になって帰って来るよ。それまで、この虹ヶ丘をみんなに頼みたいんだ!」
「僕も、機械と電気の勉強をしてきたいと思ってます」
「上杉さんもですか?」
「みんなすまん。その代わり、行く前に、しっかり新虹ヶ丘小学校には、新しい電気を通していくから。きっとこれからは、電気と機械の世の中になるんだ。これに負けないように、技術を身につけて帰ってくる」
「わかりました。それじゃあ、僕たち、居残り組は、先生になります。年齢的にも補助教員の試験が受けられます。今年の夏に美代乃先生と一緒に、この試験に合格できるように猛勉強します」
「岡崎、中村、北野、多田野、頼んだぞ!」
「……みんな、すまん」
「どうした? 岡崎」
次々にみーを助けるための手立てを決め、意気揚々とする中、岡崎だけは段々とうなだれていった。そして、あまり大きくはない、加えて歯切れの悪い、いつもとは違った岡崎の話が、少しずつ始められた。
「……俺は……助けたいんだ。……間に合うか……いや……間に合うように……頑張るから……」
「助ける? 頑張る? 誰をだ?」
不思議そうに尋ねる多田野の言葉を遮って、僕が聞いた。
「お前、知っていたのか?」
「ああ……」
「そうか…………」
僕も体から力が抜けていくのを感じた。他のみんなは、何のことだかわからず、しばらくは沈黙が続いた。そして北野が、もう1度聞いてきた。
「助けるって、誰をですか?」
「……時々、……美代乃さんが倒れたのを……みんなも知ってるよね」
「ええ、でも、あれは仕事をしすぎて疲れがたまったって……」
「自分は、医学に関心があって勉強してるんだ。そして調べたんだ。美代乃さんは、心臓に病気を抱えているに違いないんだ……」
「「「「 ! 」」」」
「だから、僕は1日でも早く医者になって、美代乃さんの健康を取り戻せるようになりたいんだ。だから、僕も…………」
「分かったよ。きっと、君ならできると思う。僕達は、できることをやろう。いや、やりたいと思うことをやろうじゃないか」
(つづく)
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