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第6章 虹ヶ丘小学校、その歴史のはじまり〔美代乃の視点〕
43 第6章第5話 自分のできること
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====登場人物紹介====
音無 美代乃(おとなし みよの)19歳
桜山 建造(さくらやま けんぞう)19歳
上杉 万作(うえすぎ まんさく)18歳
岡崎 芯也(おかざき しんや)18歳
中村 一太(なかむら いちた)17歳
北野 大空(きたの おおぞら)17歳
多田野 等(ただの ひとし)17歳
本田 彩子(ほんだ あやこ)5歳
==============
〔美代乃の視点に戻る〕
いつものように、虹ヶ丘小学校には子供達が集まっていた。小さな教室には、小さな机がいくつか並べられているの。1つ1つ木で作られたもので、もちろん村人の手作りよ。多少大きさは違ってるけど、本を読んだり字を書いたりするには、十分なの。
まあ、教室といっても黒板などそれらしい備品などはないのよね。かろうじて窓から入る光の他に、天井から明るさを取る裸電球がいくつかぶら下がってはいるの。
それでも子供達は、楽しそうに本を読んだり、絵を描いたり、そろばんをしたり、文字を書いたりしているわ。
私は、これでも満足してるのよ。私は、いつものように子供達に交じって、乞われれば何でも教え、それ以外は優しく見守っているやり方なの。
肩までの長い髪を後ろにまとめ、紺色の厚い生地で体になじんだオーバーオールは、とっても動き易くて大好きよ。お気に入りの水色の縞のシャツなので、今日はなんだか鼻歌も出るくらい陽気なの。きっと天気もいいからかしら。
「……じゃあ、そろそろ今日はこのくらいで、終わりにしましょうか。みんな、気を付けて帰るのよ」
いつものように、私は、昼近くになると子供達を教室から送り出したの。ただ、今日は、気になることが1つあったわ。
あの人達、とうとう来なかったわね……。こんなに天気がいいのに。
私がそんなことを考えていると、1人教室に入って来る人がいたの。
「みんなは、帰ったかな?」
「あれ、けんちゃん? 今頃、どうしたの?」
「いや、ちょっと……、みーに話があってね」
すると、また1人、教室に入って来る人がいた。
「こんにちは、桜山さん。……このタイミングでよかったですか?」
「ああ、岡崎、上出来だ」
そして、次から次ぎへと、人が集まってきたの。
「……建造さん、来ましたよ」
「上杉、こっちだ」
「……先輩~、先輩~」
「一太、北野、多田野、すまんなー、こっちだー」
「えっ、何、みんなで、遅れて来たの? どうしたっていうの?」
私は、びっくりして彼らを見回したの。
「聞いてくださいよ、美代乃先生。これには深い訳がありまして。桜山先輩が……」
「あー、中村君、君はしゃべらなくていいから、少し黙ってなさい。ここは、大事なところだから桜山さんが言うから」
「……ああ、うん。まあ、昨日、君が困っているという話をここにいるみんなにしたんだよ……」
「え? そんなこと言ったの? もー。あれは、大丈夫よ。何とかするから……」
「あ、いや、すまん。何とか力になれないかなと思って……」
「あのー、美代乃先生! 美代乃先生なら大丈夫かもしれませんが、僕達だって、あの時、美代乃先生が学校を作ると決めた時、手伝うと決めたんですよ!!」
岡崎が、力を込めて言い切った。
「岡崎君、……そうだったわね。あの時のみんなの言葉があったから、私も頑張ろうと思ったんだったわ!」
「そうですよ、美代乃先生! だからお手伝いさせてください。昨日僕達で何ができるか考えたんです。そしたら、いっぱいできることが浮かんだんですよ。じゃあ、言いますよ。言いますよ。いいですか?」
「あああ、一太、煩いよ。少し静かにしないか」
「はい、すみません。岡崎先輩」
「……じゃあいいかな、昨日相談したんだが、まず、この校舎をもう少し広くするのは、僕が手伝えると思うんだ」
「そうですね、桜山先輩の部屋を見ましたが、あれを自分で作っちゃうんだからすごいですもんね」
「万ちゃん、おだててもだめだぞ。作るのは、万ちゃんも手伝うんだからね」
「それに、この中村君、北野君、多田野君は、君と一緒に先生の試験を受けてくれるそうだ。年齢的に補助教員だと思うが、立派に虹ヶ丘小学校の先生になってくれるんじゃないだろうか」
「もちろんです。がんばります」
「万ちゃん、いや、上杉万作君は、機械や電気が得意なんだ。この校舎にもきっと明るい電気をつけてくれるよ」
「まかせてとけ!」
「とにかく、みんなでやれることを手伝って、学校の申請がうまくいくようにするから」
「……ほんとうにもう! いつの間に……」
私は、笑ってしまってはいたけど、なんだか目から涙がこぼれているのを感じたの。
「あ、ありがとう、みんな。私は、このことをお父さんにも話して、申請書に書くから、いろいろ明日から準備しましょう」
「さあ、先生の試験を受ける奴は、みっちり勉強だ。試験は、9月、あと2ヶ月しかないからな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〔一太の視点〕
僕達は、美代乃先生と別れ、帰り道についたんだけど、ふと気になることがあった。
「なあ、岡崎さん、どうして医者になるって言わなかったんだい?」
「ん? 医者になるって言ったら、理由を聞かれるだろう?」
「そうだな」
「理由は、どうするんだい?」
「美代乃先生の健康を……」
「美代乃先生の前で言うのかい?」
「そっか! それを言ってしまえば、今、健康でないと言っているのと同じか」
「本人は知っているかもしれないだろうが、わざわざ言う必要も……」
「そうだよな……」
「それに、僕が医者になるためにここを離れると言えば、桜山先輩や万ちゃんもここを離れることが話題になるかもしれないだろう……」
「ああ、そうか」
「いずれはわかるだろうが、まだ先だ……先でいいんだよ……」
「そう……か……そうだよな…………」
僕は、先のことを考えると不安になっている自分を幾分情けないと感じてしまったんだ。
(つづく)
音無 美代乃(おとなし みよの)19歳
桜山 建造(さくらやま けんぞう)19歳
上杉 万作(うえすぎ まんさく)18歳
岡崎 芯也(おかざき しんや)18歳
中村 一太(なかむら いちた)17歳
北野 大空(きたの おおぞら)17歳
多田野 等(ただの ひとし)17歳
本田 彩子(ほんだ あやこ)5歳
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〔美代乃の視点に戻る〕
いつものように、虹ヶ丘小学校には子供達が集まっていた。小さな教室には、小さな机がいくつか並べられているの。1つ1つ木で作られたもので、もちろん村人の手作りよ。多少大きさは違ってるけど、本を読んだり字を書いたりするには、十分なの。
まあ、教室といっても黒板などそれらしい備品などはないのよね。かろうじて窓から入る光の他に、天井から明るさを取る裸電球がいくつかぶら下がってはいるの。
それでも子供達は、楽しそうに本を読んだり、絵を描いたり、そろばんをしたり、文字を書いたりしているわ。
私は、これでも満足してるのよ。私は、いつものように子供達に交じって、乞われれば何でも教え、それ以外は優しく見守っているやり方なの。
肩までの長い髪を後ろにまとめ、紺色の厚い生地で体になじんだオーバーオールは、とっても動き易くて大好きよ。お気に入りの水色の縞のシャツなので、今日はなんだか鼻歌も出るくらい陽気なの。きっと天気もいいからかしら。
「……じゃあ、そろそろ今日はこのくらいで、終わりにしましょうか。みんな、気を付けて帰るのよ」
いつものように、私は、昼近くになると子供達を教室から送り出したの。ただ、今日は、気になることが1つあったわ。
あの人達、とうとう来なかったわね……。こんなに天気がいいのに。
私がそんなことを考えていると、1人教室に入って来る人がいたの。
「みんなは、帰ったかな?」
「あれ、けんちゃん? 今頃、どうしたの?」
「いや、ちょっと……、みーに話があってね」
すると、また1人、教室に入って来る人がいた。
「こんにちは、桜山さん。……このタイミングでよかったですか?」
「ああ、岡崎、上出来だ」
そして、次から次ぎへと、人が集まってきたの。
「……建造さん、来ましたよ」
「上杉、こっちだ」
「……先輩~、先輩~」
「一太、北野、多田野、すまんなー、こっちだー」
「えっ、何、みんなで、遅れて来たの? どうしたっていうの?」
私は、びっくりして彼らを見回したの。
「聞いてくださいよ、美代乃先生。これには深い訳がありまして。桜山先輩が……」
「あー、中村君、君はしゃべらなくていいから、少し黙ってなさい。ここは、大事なところだから桜山さんが言うから」
「……ああ、うん。まあ、昨日、君が困っているという話をここにいるみんなにしたんだよ……」
「え? そんなこと言ったの? もー。あれは、大丈夫よ。何とかするから……」
「あ、いや、すまん。何とか力になれないかなと思って……」
「あのー、美代乃先生! 美代乃先生なら大丈夫かもしれませんが、僕達だって、あの時、美代乃先生が学校を作ると決めた時、手伝うと決めたんですよ!!」
岡崎が、力を込めて言い切った。
「岡崎君、……そうだったわね。あの時のみんなの言葉があったから、私も頑張ろうと思ったんだったわ!」
「そうですよ、美代乃先生! だからお手伝いさせてください。昨日僕達で何ができるか考えたんです。そしたら、いっぱいできることが浮かんだんですよ。じゃあ、言いますよ。言いますよ。いいですか?」
「あああ、一太、煩いよ。少し静かにしないか」
「はい、すみません。岡崎先輩」
「……じゃあいいかな、昨日相談したんだが、まず、この校舎をもう少し広くするのは、僕が手伝えると思うんだ」
「そうですね、桜山先輩の部屋を見ましたが、あれを自分で作っちゃうんだからすごいですもんね」
「万ちゃん、おだててもだめだぞ。作るのは、万ちゃんも手伝うんだからね」
「それに、この中村君、北野君、多田野君は、君と一緒に先生の試験を受けてくれるそうだ。年齢的に補助教員だと思うが、立派に虹ヶ丘小学校の先生になってくれるんじゃないだろうか」
「もちろんです。がんばります」
「万ちゃん、いや、上杉万作君は、機械や電気が得意なんだ。この校舎にもきっと明るい電気をつけてくれるよ」
「まかせてとけ!」
「とにかく、みんなでやれることを手伝って、学校の申請がうまくいくようにするから」
「……ほんとうにもう! いつの間に……」
私は、笑ってしまってはいたけど、なんだか目から涙がこぼれているのを感じたの。
「あ、ありがとう、みんな。私は、このことをお父さんにも話して、申請書に書くから、いろいろ明日から準備しましょう」
「さあ、先生の試験を受ける奴は、みっちり勉強だ。試験は、9月、あと2ヶ月しかないからな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〔一太の視点〕
僕達は、美代乃先生と別れ、帰り道についたんだけど、ふと気になることがあった。
「なあ、岡崎さん、どうして医者になるって言わなかったんだい?」
「ん? 医者になるって言ったら、理由を聞かれるだろう?」
「そうだな」
「理由は、どうするんだい?」
「美代乃先生の健康を……」
「美代乃先生の前で言うのかい?」
「そっか! それを言ってしまえば、今、健康でないと言っているのと同じか」
「本人は知っているかもしれないだろうが、わざわざ言う必要も……」
「そうだよな……」
「それに、僕が医者になるためにここを離れると言えば、桜山先輩や万ちゃんもここを離れることが話題になるかもしれないだろう……」
「ああ、そうか」
「いずれはわかるだろうが、まだ先だ……先でいいんだよ……」
「そう……か……そうだよな…………」
僕は、先のことを考えると不安になっている自分を幾分情けないと感じてしまったんだ。
(つづく)
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