みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~

根 九里尾

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第7章 虹ヶ丘小学校とみょんちゃん先生の幸せ〔あーちゃんの視点・他〕 

56 第7章第8話 集まる願い

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 〔建造けんぞうの視点〕



 今日も外は雪が降ってる。1月も中を過ぎると本格的な冬だもんな。

 僕は、桜山建造さくらやま けんぞう。冬でも、僕の会社は家を建ててるんだ。だから、外にいることが多いのでやっぱり晴れている方がいいと思う。
 特に冬は、雪が積もるだけではなく、地面が凍ったり、材料がシバレたりするので厄介なんだよな。今までだったら、冬に家など建てたりはしないんだ。少なくとも雪が溶けてから建て始める。
 でも、今回の図書館建設は、普通じゃなかったんだ。



 設計図を描き始めたのは夏だった。基礎を作り始めたのは、10月でまだ雪など降っていなかった。あれから、もうすぐ3か月経とうというのに、半分も出来上がっていないんだ。

 うちの桜山建設も今では大きくなり、あの時東京から一緒に仲間に加わった10人はもちろん、その他にも40数人が加わっている。


「社長、今日は少し暖かいなー」
「東京育ちのゲンちゃんでも、そんなふうに感じるのかい?」

 建物の柱をノコギリで切っていた源太郎は、東京で一緒に仕事をした仲間で、建造を慕ってこの北の大地に最初に来た1人なんだ。


「だって、この間までは、風もあってとても寒かったんだ。今日は雪が少し降ってるけど、綿あめみたいな雪が、ゆっくり落ちてくるんだよな。なんか気持ちがほんわかするよ」

「いやあ、ゲンちゃんは、ただ、ノコギリ使ってるだけで、それで暖かいんだアハハ」

 これまた、仲間の桐雄きりおに茶化されていた。

「……ところで、社長、あやさんが来てますよ。今日は、雪が降っているので、屋根が完成している西側の方に案内しておきましたよ」

「ありがとう、きりさん。いつも、彩ちゃんのお世話してくれてありがとうな」

「何言ってんです。彩さんは、とっても熱心な人ですよ。特に、私達にも図書館のことを詳しく教えてくれます。詳しいだけじゃないんだ。説明の仕方を聞いていれば、どれだけ本が好きなんだかよくわかるんですよ。彩さんは、決して自分達に立派な図書館を作れなんて言わないもんなー。いつも、体を大切にとか、ケガしないようにとか、気をつけてとか、人のことばかり気にしてるんだよ。……だから、思うんだよな、ゲン」

「ああ、そうさ、かっこいい図書館でなくていいんだ。きちんとした図書館を作ろうってなー」

「最初に、社長が言ってくれたもんなー。見栄えより、中身を考えて、普通の図書館を作ればいいって……」

「……確かに……そうは言ったけどな、お前たち、この図書館……そんなに普通じゃないぞ……」


 なぜか、50人の仲間たちは、彩ちゃんの虜にされてしまったようだった。虹ヶ丘小学校から歩いて20分ほど離れた場所に、この町の図書館を建てているんだ。周りは、まだ何もない草原だけど、きっとそのうちに、公園か何かになっていくと思うんだ。今は、まだ何も計画はないけど……。
 
 図書館は、3階建ての予定だ。もう半分ほど屋根はできているが、半分は骨組みだけ。雪が降っているので、シートはかけてあるが、風が吹くと飛ばないようにするのが大変なんだ。シートを縛ってあるけど、紐が切れないように、いつも見回りをしなければならない。



「やあ、彩ちゃん、いつもご苦労さま。こんな日は、現場に来なくてもいいんだよ」

「おはようございます。建造さん。……すみません、私なんか、何のお役にも立てなくて。でも、この図書館が少しずつ出来上がっていくのが、とてもうれしくて、家でじっとしていられないんです」

「何言ってんの、彩ちゃん。いつも、働いている人にお茶入れてくれたり、仕事場掃除してくれたり、たくさんお手伝いしてくれてるじゃないか」

「だって、みなさんが、こんなに立派な図書館を建ててくださっているんですもの」


 彩ちゃんは、本が好きだ。それは、誰が見てもわかるんだ。昔から図書館を作りたいと思っていただけのことはある。虹ヶ丘小学校を卒業した後、虹ヶ丘を離れて上の学校に進学したのも、本当に本が好きだったということが動機だったみたいだ。
 
 この頃は、小学校を卒業した後、上の学校に進学するのは珍しかったんだ。それも、図書館について学ぶためだったらしい。3年後、上の学校を卒業して虹ヶ丘に戻ってきたんだ。そして、役場に就職したら、本が好きだということが町長に認められ、この図書館建設に携わることになった。
 そして、ついには初代図書館長に任命されたんだ。
 

 昔、美代乃みよのにだっこされて、あーちゃん、あーちゃんと言いながら、お話を聞いていたあの幼い彩子あやこは、笑うとまだどこかにあどけなさが残っているような気がする。
 ただ、図書館建設に携わる彩子は、学校作りを決めた当時の美代乃にも感じが似ていると、僕は思った。
 

「彩ちゃん、設計図を持って来たんだ、内装の話をしよう。図書館といっても、本を置くだけじゃないんだ。会議をしたり、本を読んだりする図書室じゃない部屋も必要になる。それをどういう造りにするか決めなければならないよね」


「私、それなら1つだけ、もう決めてあります。特別閲覧室とくべつえつらんしつという部屋で、もう絵も描いてきています」

「え? 特別閲覧室? 何、その部屋?」

「実は、この間から何度も夢に見るんです。間取りも、机や椅子の配置、戸棚や壁の位置、入り口の戸の様子まで……これです」

 きれいに色鉛筆で書かれた室内の写生画は、まるで写真のようだった。僕は、この絵を見た瞬間、前にも見たことがあると感じてしまった。何かの本で読んだことがある『既視感』というものかと思ったが、まぎれもなく以前に見たことがあると確信できた。証拠は無かったのだが……。

「わかった。これにしよう」

 僕は、即座に決めたんだ。そして、現場のみんなを集めて、作業の説明をした。


「建造さん、本当にありがとうございます。今回の図書館建設については、我儘わがままばかり言って」
 彩ちゃんは、とっても嬉しそうだった。
 
「そんなことはないよ。僕だって、いつかはこの虹ヶ丘に図書館を作ろうと思っていたんだからね」

「本当?」

「忘れたのかい? 彩ちゃんが、虹ヶ丘小学校の卒業式で言ったことを」
「覚えています。でも、そんなに簡単にできるとも思っていませんでした」
「でもね、みよと一緒にいた者たちは、みんなあきらめないんだよ……どんなことがあってもね」

「じゃあ、他のところも、どうするかそうだんしよう」
「はい、お願いします」



 建設途中の図書館の中をあちこち歩きながら、僕は彩ちゃんと細かな打ち合わせを繰り返した。そんな時、外から楽し気で、今にも歌でも歌いそうな声が聞こえてきた。

「わーー、おっきーーなあーー。けんちゃんーー、どこにいるのーー?」
「あ、奥さん! いらっしゃい、お久しぶり」

「あら、ゲンさん。今日は、日曜日よー、もーみんな日曜日も仕事するから、大変よね」
「そっか? いっけねー、忘れてたーあはは」

「もー、少しは、お休みしてねー」


「おーい、みよー、こっちーだよ」
「あ、いた、いた。あら、あーちゃんも、大変ね。日曜日なのに」

「どうした?」
「どうした、じゃないわよ。はい、お弁当!」

「あ、そっか。すまんな。」
「ちゃんと、あーちゃんの分もあるわよ。いっぱい作って来たから」
「お、すまんな。じゃ、みんなでお昼を食べることにしようか」


「わー、何か遠足みたいね。雪が降っているけど」
「ところで、滑らなかったか?」
「大丈夫よ。長靴はいてきたし」

「いやあ、もし、転びでもしたら、大変だからな」
「もう、そんなに心配しないでよね」

「あのう、今日の雪はそんなに積もっていませんし、気温も高くはないので、滑らないから、そんなに危険ではないと思いますよ……」

「いや……それが……ただの体じゃないから……気を…つけないと…危ないんだ…」


 思わず、ニコッと笑みがこぼれてしまうので、言葉とは逆になってしまい、彩ちゃんは少し不思議な顔になってしまったな。


「いや、だから、その、危ないから、1人で歩くときは……」と、焦って説明しようとすると、余計におかしな空気を醸し出してしまった。

「あのね、赤ちゃんができたの」

 みよが、いつものニコニコ笑顔で即座に言ったんだ。

「え! 赤ちゃんですか!……それは、おめでとうございます。だから、危ないんですね」

「そう、でも、大丈夫よ」
「あはははは……」

 僕は、笑って、頭を掻くしかなかった。



「それにしても、立派な図書館ね。派手ではないようだけど、なんか大きくて、しっかりしている感じがするわ」

「そうなんです。建造さん達、会社のみんなが、力を合わせて作ってくれています。私の願いだった『たくさんの本を長い間保管できる図書館にしたい』を叶えてくれているんです」

「素敵な願いだわ。それ、どうやって実現させるの?」

「はい! この図書館をすべて『木』にするんです」
「え? 図書館を木に? どういうことなの?」

「本は、紙でできています。紙を長持ちさせるには、紙の原料である木材と仲良くさせるんだそうです。湿度や温度、その他、人間にはわからない様々な相性の関係で、紙を守るのは、木なんだそうです。だから、釘は1本も使わないで作るんだそうです」

「え? 釘を使わないの?」

「はい。木を組み合わせて繋ぐか、木や竹を釘に加工して使っているんですって」

「なんてすごいことを考えるのかしら」
「私も、びっくりしました」

「いや、みんなのお陰さ。木を組み合わせるは、昔から大工さん達はやっていたことさ。竹や木を釘に加工するのも、昔もあったんだけど、耐久性は弱かったんだ。でも、上杉の機械なら、下手な釘より丈夫なものができたんだよ。しかも錆びないときた。本当にみんなのお陰さ」



「それに、あーちゃん、聞いたわよ。初代図書館長になるんですって」

「はい。でも、私1人じゃあ、この図書館は、運営できません。きちんと一緒に図書館を運営してくれる図書館司書やスタッフを集めました。これから本を集めたり、町の人達に本を楽しんでもらうための工夫をしたり、たくさんのお仕事があります」

「うん、あーちゃんも、あーちゃんの仲間達と一生懸命にがんばってね」

 

 そうして、みんなで建てかけの図書館の中でお弁当を食べ終わり、美代乃は家に帰ることになった。

「くれぐれも、気をつけて帰るんだぞ」
「分かってますって、それじゃあね」

 まだ、雪が落ちて来る空に向かい、美代乃は、冬はあまり使うことのない番傘をさして歩いて帰って行ったんだ。美代乃は、寒さから自分と赤ちゃんを守るために、厚手のズボン、厚手の上着に手袋、雪除けの毛糸の帽子を身につけていたんだ。


 後姿を見守る僕には、まるで幸せを運んで来る雪のダルマに見えたんだ。



(つづく)
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