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おまけ
36:化けの皮②
しおりを挟む修正:デジィとの対話が抜けていたので追記しました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
場外に家を持つデジィさんは、泊まりがけの時だけ場内の仮眠室で休んでいる。元へ行くと、いつもより顔付きが険しかった。怒っているように見えるが、眠いだけだと知っている。
「ヘルクラス殿、如何なさいました?」
「遅くにすみません」
経緯を説明すると、複雑な感情が入り乱れているのか、デジィさんの表情が強張る。
「セリアスを崇拝……我には到底及ばない発想ですね……」
「それはそうでしょう」
「まぁ、抜けてるところというか……無邪気に笑った顔は、案外幼いですね」
「!」
「昔は魔王然としていたけれど、今では大口開けてケラケラ笑っている……ムカつきますが、不本意ながら可愛いんです」
友にしか見せない一面がやはりあるようだ。
「それから、最近はセクシーな服が弱点だと発覚しました。すかしてる化けの皮は、それで剥げますよ」
「あ、前に言っていたヤツですね……考えて、おきます」
俺の場合、化けの皮というか勝手に俺が被せた理想像だ。
「……ふぁぁ……」
「! すみません。ありがとうございました」
「いえいえ……それでは、お休みなさい」
欠伸を殺しきれなくなったデジ一さんを見て、早々に退出した。
自分の部屋へ戻って、夜着に着替えてベッドに横になる。
※※※
翌日の夕刻。部屋に戻るホープさんと鉢合わせた。
自分と全く違うタイプの意見も聞いておきたくて、噛み砕いて伝えたが……ホープさんは首を傾げた。
「すみません。わかりにくかったですよね……」
「ごめん、僕には難しいかも。セリアス様はセリアス様だから」
純粋なホープさんの言葉に彼らしいと頷くと続けてこう言った。
「セリアス様は神様みたいに薄情じゃないし」
「!」
ホープさんの持つ神様への固定観念は、失望の比重が大きいらしい。
そもそも魔王様の存在を知らない齢で、魔王様が御存命の間であったにも関わらず、知らず知らずのうちに庇護下から引き摺り出されている。
孤独の中で理不尽に踏み付けられても、神様は助けてくれなかった。
そんな神様と同じポジションへ魔王様を置くのは、確かにホープさんにとって考えられない事だ。
「でも、ヘルクラスさんみたいに好きの変化系? も、ありだと思う。愛し方はみんな違うから」
「そ、そうですよね」
ホープさんはドキッとするような大人びた事を時折サラリと言ってくる。
「自分の持ってる信仰心が邪魔してるなら、それを利用して背徳感で気持ち良くなっちゃえば?」
「ホープさん……貴方思ったよりすごい発想をお持ちですね」
「え? そう? へへ」
褒められたのが嬉しかったのか、スキップしながら部屋に戻っていくホープさんを見送ってから、俺は深い溜め息を吐き出す。
「(……背徳感か)」
タスクさん、ストールさん、デジィさん、ホープさん……みんなと話して、なんとなくだけど、踏ん切りが付きそう。
俺も寝室で準備をしながら、イメージトレーニングを行う。
いつも甘やかされて、守られてばかりいたから、受け身で保守的な思考に陥っていたかもしれない。
魔王様は、やはり俺の中で一等眩しい太陽だ。けれど、最近は太陽を直視出来る道具も発明されている。
眩しさに尊さばかり押し付けていてはダメだ。目を潰してでもしっかり見つめて、手を取って信仰しなければ。
『コンコンコン』
「ッ……はい」
「ヘル、入ってもいいか?」
「どう、どうぞ」
『…………カチャ』
先日の事があったからか、少し間を置いて恐る恐る扉が開く。
部屋へスッと身を入れる魔王様の姿に……俺の思考は停止した。
「………………」
「…………なんとか……言って欲しいんだが」
「……………………それ」
魔王様は、いつもの凛々しい紺色の正装ではなく、俺が見慣れている……慣れ親しんでいた……エルフの民族衣装を身に纏っていた。
生まれ故郷の森の木々で編む草冠、ゆったりとしたノースリーブの上着、ふんわりと広がる薄い腰巻き……極め付けは、男女問わず履かされるエグいスリットの入った斜めに裾をカットされたロングスカート。
魔王様の生足が……腿が……見え、てる。
足元はサンダルに付属した帯状の布が交差して膝下まで巻かれ、普段はブーツを履く為に露出されない魔王様の御御足が………!!!!
「え? ええ? 魔王様……どう、されたんですか? その姿……」
「……あまりにお前が魔王の私に緊張しているから、エルフに扮してきた。グラスに聞いたら、一日で拵えてくれたんだ」
服飾の仕事に就いている娘のグラスが張り切って作ったらしい。
なんていい仕事をしているんだ。父として鼻が世界樹のように高い。
「だいぶ……恥ずかしい、が、お前に触れられるなら、なんだってするさ」
顔を赤らめながら顔を逸らしている姿を目に焼き付けておく。
「どうだ? ヘル」
「…………素晴らしいと思います」
魔王様の色気に透明感が出ている。違和感にソワソワしている姿も初々しい。
俺の言葉にホッとしながら歩み寄って隣に腰掛ける。
「(……俺の為に、着て下さってるのか。魔王様が、俺だけの為に)」
心酔度がギュンギュン上がっていくのを感じる。
ああ……煌めく無垢な宝石に素手で触れるようなものだ。ここまでしてもらったのに、別の抵抗が生じている。
「……ダメか?」
「ッ!!」
ショボンと涙目になってしまった魔王様に胸が締め付けられる。
俺は咄嗟に魔王様の手を取った。
「ダメじゃないです! 全然、ダメじゃないですし……きょ、今日は、俺が……動きます!!」
「!」
「魔王様、ありがとうございます。とってもお似合いです」
「……良かった」
やっと安堵と喜びでふにゃっと微笑む魔王様に、今が好機とベッドへ押し倒す。
体格差があるにも関わらず、俺の力に何の抵抗もなく従う魔王様。
「……綺麗です」
「気に入ってもらえて嬉しい……ふふ、やっと見てくれたな」
「お手数をおかけしました」
目が合っている。
黄金色の瞳に俺が映っている。
初めてだ。こんな光景は。
「…………魔王様」
「……なんだ?」
「……愛しています」
「私もだ」
魔王様に覆い被さって、キスをする。
……崇拝している対象を組み敷いているのに罪悪感ではなく、ゾクゾクとした興奮が背筋を這う。
迷える子羊が、太陽に影を落とす。
不敬だと、理解しているのに、止められない。
「(魔王様……可愛い)」
化けの皮が剥がれたのは、俺の方だった。
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