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14・pas trop anime
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調月先生の元教え子は音楽関係の仕事に就いてる人が多い。
「先生、マジで怒んなかったもんね~」
「普通厳しく、冷たくビシバシされるもんな」
「愛想無かったけど、冷たいわけじゃ無かった」
「俺、高校の吹奏楽部で怒鳴られた時泣きそうだった。パニックで指動かなくなったし」
「大きな声で叱られると、ペースどころか感情もぐちゃぐちゃになる事ある。メンタルクソ雑魚だと本当に演奏業界向いてないわ。ピアノ嫌いになるもん」
音楽の先生や講師は、普通は間違いをキツく鋭く叱ったり、気が緩んでると怒鳴ったり、厳しいものだ。けれど、それは熱意ゆえ。決して嫌いだからとか、泣かせたいからしているわけではない。
ボクだって音大生の時は背中や腕を引っ叩かれたりした。キツい物言いで詰められもした。
そうやって音楽家のメンタルは鍛えられていくんだろうけど、調月先生の無愛想で淡々とした指導に縋りたくなる時もある。
「先生のお食事のお手伝いしたい~天音君、いいでしょ~?」
「ダメ! 先生のヘルパーはボクだよ! ボクがするのぉ!」
「あっははは! 誰だよデューラーに酒飲ませたの!」
「駄々っ子になっちゃった!」
みんな、今も先生が大好きだ。
大好きだからこそ会いたいし話したい。
でも、お世話はボクの仕事だ。誰にも譲らない。
みんなでご飯を食べる時には昔話として先生の話題がよく上がる。ここに居るみんなの共通点でもあるし。
「ねぇ、デューラーさん。今度うちの会社でCM作るんだけど、よかったらどう?」
「んーー……かんがえとく」
「やった! コレ、私の仕事番号。一ヶ月以内に答え聞かせて!」
「狡いぞ! 天音、俺の楽器店にも来てくれよ。サービスするから!」
「かんがえとく」
場の雰囲気に飲まれたりすると調子に乗って酒を呷ってしまう事もある。
ボクはお酒が強くない。記憶も飛びやすい。
『ガチャ』
「…………あーあ」
「ごめんなさい先生……天音潰しちゃった」
「すみません。調子に乗って飲ませちゃいました」
「……いいよ。いつも苦労かけてるし、偶には楽しくタガ外さないと。君らもありがとう。気を付けて帰りな」
「「せんせぇ~」」
頭がぼーっとする。先生の匂いがする。先生の身体、腕がボクを支えてる。
ソファーにボフンと身体が沈む。
「天音君、水飲もうか」
「ぅいーー……」
水の入ったコップを両腕で挟んで膝をついて見上げてくる先生に差し出される。
受け取ろうとノロノロと手を伸ばす。
『ツルン』
『バシャ!』
「あ! せんせっ、ごめんなさい」
「大丈夫大丈夫。服が濡れただけだから」
力加減を間違えて、コップを受け取り損ねて先生の顔に水をぶちまけてしまった。
先生の服がびしょ濡れになって、白いシャツが透けて肌色が薄らと透けて、そのせいで色っぽい雰囲気が増してしまっている。
「(あっ……)」
「天音君?」
胸元のツンと布越しに主張してる先端が……目に焼き付く。
肌に張り付いた服に身を捩る先生の姿に頭の中の何かがプツリと切れた音がした。
※※※
「…………あったま、いたぁ」
酷い頭痛で目が覚めた。帰った後、ソファーで寝てしまったらしい。
「ご飯、作らないと……」
『ズリ』
「……!?」
起き上がった時に手に妙に生暖かい布の感触があったと思ったら……調月先生が居た。
先生に覆い被さる形で寝ていたボクは慌ててそこから退く。
「っ~~~!!」
先生はスヤスヤと気持ち良さそうに眠っていて起きる気配が無いが、前髪の隙間から見える目元に涙の跡を見つけてしまう。
何がどうしてこうなったのか全く思い出せないけど、これは不味い。非常に不味すぎる。
先生を泣かせてしまうような事をボクはしてしまったんだ!
謝って済む話しじゃない!
『天音君って、こんな最低な男だったなんて思わなかった』
先生が、軽蔑するような顔で、声でボクを突き放す姿が容易に想像できる……そんな事は絶対に嫌だ。
けれど、やってしまったものはもうどうにも出来ない。
謝って済む話しじゃなくても、謝らないとういけない。
「……毛布」
ともかく、先生に毛布をかけて朝食を作る。 反省を行動に移さなければ……この前やらかしたばっかなのに。
ボクは何やったんだ!? バカバカ!
先生を傷付けて……ボクは……本当に最低だ。
調月先生に嫌われたら、ボクはきっと生きて行けない。生きる理由がない。先生だけが生き甲斐なんだから……
「先生ごめんなさい。ごめんなさい」
料理中も先生に何度も謝罪をする。
泣かせたのはボクなのに、涙が止まらない。嗚咽が止まらない。
「ひっく、ぅ……うう」
「……おはよう」
「びゃ!!」
いつの間起きたか。先生が毛布に身を包んでボクの背後に立っていた。
「天音君、どうしたんだい? 泣くほど辛い事でもあった?」
「ッ……ぜん、ぜっぜんぜ、ごめんなさい、ごえんなあい……」
「……俺は大丈夫だから……だから、泣かないで」
ボクの涙を拭う為に、ティッシュを咥えて頬にキスをしてくれる。
「ごべんなざい、せ、せぇ」
「……覚えてる?」
「ぅ、ずみばぜん……お、おぼえて、ヒック、なくて」
「…………いいよ。覚えてなくて……大丈夫」
先生はボクを安心させようと優しく微笑む。でも、どこか悲しそうだった。
「グス……ふっ……先生、ご飯」
「……シャワー浴びてくるから……先に食べてて」
「わかり、ました」
ボクも泣き顔をどうにかしないといけない。
先生は許すどうこうじゃなくて、怒ってすらいない。
ボクは何をして調月先生を泣かせたんだろう。
胸が痛い。苦しい。
朝食の味なんて感じられるはずもなく、無言でモクモクと食べ終えた。
「………………先生遅いな」
シャワーはザッと身体を流すくらいで、そこまで時間は……
「(心配だ……転けて倒れてるかもしれない!)」
一気に最悪な想像が脳裏を駆け巡り、ボクは急いでお風呂の戸を開け放つ。
『バン』
「先せッ……ぁ」
人は……自分の最悪の予想が眼前に広がった時、世界から色が抜け落ちるのか。
湯気の籠ったお風呂場の床に力無く横たわり、シャワーに打たれる調月先生の姿に血の気が引いて膝が笑う。
「先生!」
ボクは慌てて裸の先生を抱き上げて、バスタオルで包み込む。
「先生! 先生しっかりして下さい!!」
「ケホッ……ぅう」
「今、救急車呼びますから!」
「ぁー、待って違う……」
「違うって何が!?」
『コツ』
先生がボクの額に自分の額を当ててきた。
先生の顔が近い……が、それ以上に──
「熱い……」
先生の体温が異様に高い。
「……風邪引いた……怠い」
大事に至らなかった事に心底安堵するが、それよりも先生の体調が崩れてしまった事は大問題だ。
絶対ボクが原因だろうし、罪悪感で吐き気がする。
先生の身体から水気を取り、スウェットを着せてベッドまで運んだ後、ボクは氷枕を作って先生の頭の下に敷いた。
「ごめんなさい。ボクのせいで……」
熱を出した先生は辛そうに浅い呼吸を繰り返している。朝食を寝室へ持っていき、ゆっくり食べてもらう。
「……薬を飲んで寝れば治るから……心配しないで」
「無茶言わないでください……心配ですよ」
「はは……ありがとう」
先生がボクを見て弱々しく笑った。
そんな先生を見ているだけで、息が詰まるように苦しくなる。
「少し離れます。家事が終わったら、側に居ますから。待っててください」
「……うん」
今日の家事は少し手抜きになるけど、仕方ない。洗濯物を干し、食器洗いをする間も先生の様子はずっと気になったままだった。
ドタバタと家事を済ませて先生の部屋に戻ると先生は布団を被って眠っていた。
解熱剤が効いてるのか、表情はとても穏やかだ。
眠っている先生の前髪を払い、おでこに冷却シートを貼ると僅かに身じろぎをする。その様子に胸の奥がきゅっと締め付けられる。
ああ、胸の内が忙しい。
感情の起伏が激しくなる。どうしていいか分からない。
今の状況を作ったのはボクだ。責任はボクにある。ボクが悪いのに……なのに、先生はいつもボクを許してくれる。それが、たまらなく申し訳なくて、たまらなく嬉しい。
寝返りを打ち、薄らと目を開けた先生が寝惚けてボクの手に擦り寄る。
「すみません。起こしましたか?」
「ううん」
ボクの手が冷たくて気持ちいようで猫みたいにスリスリしてくる。
ずっとこうしていたいけど、もうそろそろお昼を作らないといけない。
名残惜しくも、先生から手を離す。
『クイ』
「!」
先生がボクの袖を咥えてグイグイ引き止めてくる。熱で潤んだ上目遣いでこちらをジッと見つめる赤い顔の先生に心臓を射抜かれる。
「あ、あの、ご飯、作りたいんです」
「………んーー」
グズった子どものような声を出し、首を横に振る先生。
ボクも離れ難いけど……どうすればいい? このまま甘やかす? ダメ、先生の風邪が治らない……なら、この先生を放置する? それもどうなのか…………どうしよう、先生が可愛くて愛おし過ぎる。
どうしたらいいかと悩んでいると、先生はまた袖を咥えたまま眠りについてしまった。
慎重に服を脱いで、先生の元に置いていく。
「(先生……風邪で心細くなってるんだろうな)」
……本当に、なんてことをしてしまったんだろう。寂しい思いまでさせて……後悔が止まらない。
もうボク、二度とお酒飲まない。
(pas trop anime・ 活発になりすぎない)
「先生、マジで怒んなかったもんね~」
「普通厳しく、冷たくビシバシされるもんな」
「愛想無かったけど、冷たいわけじゃ無かった」
「俺、高校の吹奏楽部で怒鳴られた時泣きそうだった。パニックで指動かなくなったし」
「大きな声で叱られると、ペースどころか感情もぐちゃぐちゃになる事ある。メンタルクソ雑魚だと本当に演奏業界向いてないわ。ピアノ嫌いになるもん」
音楽の先生や講師は、普通は間違いをキツく鋭く叱ったり、気が緩んでると怒鳴ったり、厳しいものだ。けれど、それは熱意ゆえ。決して嫌いだからとか、泣かせたいからしているわけではない。
ボクだって音大生の時は背中や腕を引っ叩かれたりした。キツい物言いで詰められもした。
そうやって音楽家のメンタルは鍛えられていくんだろうけど、調月先生の無愛想で淡々とした指導に縋りたくなる時もある。
「先生のお食事のお手伝いしたい~天音君、いいでしょ~?」
「ダメ! 先生のヘルパーはボクだよ! ボクがするのぉ!」
「あっははは! 誰だよデューラーに酒飲ませたの!」
「駄々っ子になっちゃった!」
みんな、今も先生が大好きだ。
大好きだからこそ会いたいし話したい。
でも、お世話はボクの仕事だ。誰にも譲らない。
みんなでご飯を食べる時には昔話として先生の話題がよく上がる。ここに居るみんなの共通点でもあるし。
「ねぇ、デューラーさん。今度うちの会社でCM作るんだけど、よかったらどう?」
「んーー……かんがえとく」
「やった! コレ、私の仕事番号。一ヶ月以内に答え聞かせて!」
「狡いぞ! 天音、俺の楽器店にも来てくれよ。サービスするから!」
「かんがえとく」
場の雰囲気に飲まれたりすると調子に乗って酒を呷ってしまう事もある。
ボクはお酒が強くない。記憶も飛びやすい。
『ガチャ』
「…………あーあ」
「ごめんなさい先生……天音潰しちゃった」
「すみません。調子に乗って飲ませちゃいました」
「……いいよ。いつも苦労かけてるし、偶には楽しくタガ外さないと。君らもありがとう。気を付けて帰りな」
「「せんせぇ~」」
頭がぼーっとする。先生の匂いがする。先生の身体、腕がボクを支えてる。
ソファーにボフンと身体が沈む。
「天音君、水飲もうか」
「ぅいーー……」
水の入ったコップを両腕で挟んで膝をついて見上げてくる先生に差し出される。
受け取ろうとノロノロと手を伸ばす。
『ツルン』
『バシャ!』
「あ! せんせっ、ごめんなさい」
「大丈夫大丈夫。服が濡れただけだから」
力加減を間違えて、コップを受け取り損ねて先生の顔に水をぶちまけてしまった。
先生の服がびしょ濡れになって、白いシャツが透けて肌色が薄らと透けて、そのせいで色っぽい雰囲気が増してしまっている。
「(あっ……)」
「天音君?」
胸元のツンと布越しに主張してる先端が……目に焼き付く。
肌に張り付いた服に身を捩る先生の姿に頭の中の何かがプツリと切れた音がした。
※※※
「…………あったま、いたぁ」
酷い頭痛で目が覚めた。帰った後、ソファーで寝てしまったらしい。
「ご飯、作らないと……」
『ズリ』
「……!?」
起き上がった時に手に妙に生暖かい布の感触があったと思ったら……調月先生が居た。
先生に覆い被さる形で寝ていたボクは慌ててそこから退く。
「っ~~~!!」
先生はスヤスヤと気持ち良さそうに眠っていて起きる気配が無いが、前髪の隙間から見える目元に涙の跡を見つけてしまう。
何がどうしてこうなったのか全く思い出せないけど、これは不味い。非常に不味すぎる。
先生を泣かせてしまうような事をボクはしてしまったんだ!
謝って済む話しじゃない!
『天音君って、こんな最低な男だったなんて思わなかった』
先生が、軽蔑するような顔で、声でボクを突き放す姿が容易に想像できる……そんな事は絶対に嫌だ。
けれど、やってしまったものはもうどうにも出来ない。
謝って済む話しじゃなくても、謝らないとういけない。
「……毛布」
ともかく、先生に毛布をかけて朝食を作る。 反省を行動に移さなければ……この前やらかしたばっかなのに。
ボクは何やったんだ!? バカバカ!
先生を傷付けて……ボクは……本当に最低だ。
調月先生に嫌われたら、ボクはきっと生きて行けない。生きる理由がない。先生だけが生き甲斐なんだから……
「先生ごめんなさい。ごめんなさい」
料理中も先生に何度も謝罪をする。
泣かせたのはボクなのに、涙が止まらない。嗚咽が止まらない。
「ひっく、ぅ……うう」
「……おはよう」
「びゃ!!」
いつの間起きたか。先生が毛布に身を包んでボクの背後に立っていた。
「天音君、どうしたんだい? 泣くほど辛い事でもあった?」
「ッ……ぜん、ぜっぜんぜ、ごめんなさい、ごえんなあい……」
「……俺は大丈夫だから……だから、泣かないで」
ボクの涙を拭う為に、ティッシュを咥えて頬にキスをしてくれる。
「ごべんなざい、せ、せぇ」
「……覚えてる?」
「ぅ、ずみばぜん……お、おぼえて、ヒック、なくて」
「…………いいよ。覚えてなくて……大丈夫」
先生はボクを安心させようと優しく微笑む。でも、どこか悲しそうだった。
「グス……ふっ……先生、ご飯」
「……シャワー浴びてくるから……先に食べてて」
「わかり、ました」
ボクも泣き顔をどうにかしないといけない。
先生は許すどうこうじゃなくて、怒ってすらいない。
ボクは何をして調月先生を泣かせたんだろう。
胸が痛い。苦しい。
朝食の味なんて感じられるはずもなく、無言でモクモクと食べ終えた。
「………………先生遅いな」
シャワーはザッと身体を流すくらいで、そこまで時間は……
「(心配だ……転けて倒れてるかもしれない!)」
一気に最悪な想像が脳裏を駆け巡り、ボクは急いでお風呂の戸を開け放つ。
『バン』
「先せッ……ぁ」
人は……自分の最悪の予想が眼前に広がった時、世界から色が抜け落ちるのか。
湯気の籠ったお風呂場の床に力無く横たわり、シャワーに打たれる調月先生の姿に血の気が引いて膝が笑う。
「先生!」
ボクは慌てて裸の先生を抱き上げて、バスタオルで包み込む。
「先生! 先生しっかりして下さい!!」
「ケホッ……ぅう」
「今、救急車呼びますから!」
「ぁー、待って違う……」
「違うって何が!?」
『コツ』
先生がボクの額に自分の額を当ててきた。
先生の顔が近い……が、それ以上に──
「熱い……」
先生の体温が異様に高い。
「……風邪引いた……怠い」
大事に至らなかった事に心底安堵するが、それよりも先生の体調が崩れてしまった事は大問題だ。
絶対ボクが原因だろうし、罪悪感で吐き気がする。
先生の身体から水気を取り、スウェットを着せてベッドまで運んだ後、ボクは氷枕を作って先生の頭の下に敷いた。
「ごめんなさい。ボクのせいで……」
熱を出した先生は辛そうに浅い呼吸を繰り返している。朝食を寝室へ持っていき、ゆっくり食べてもらう。
「……薬を飲んで寝れば治るから……心配しないで」
「無茶言わないでください……心配ですよ」
「はは……ありがとう」
先生がボクを見て弱々しく笑った。
そんな先生を見ているだけで、息が詰まるように苦しくなる。
「少し離れます。家事が終わったら、側に居ますから。待っててください」
「……うん」
今日の家事は少し手抜きになるけど、仕方ない。洗濯物を干し、食器洗いをする間も先生の様子はずっと気になったままだった。
ドタバタと家事を済ませて先生の部屋に戻ると先生は布団を被って眠っていた。
解熱剤が効いてるのか、表情はとても穏やかだ。
眠っている先生の前髪を払い、おでこに冷却シートを貼ると僅かに身じろぎをする。その様子に胸の奥がきゅっと締め付けられる。
ああ、胸の内が忙しい。
感情の起伏が激しくなる。どうしていいか分からない。
今の状況を作ったのはボクだ。責任はボクにある。ボクが悪いのに……なのに、先生はいつもボクを許してくれる。それが、たまらなく申し訳なくて、たまらなく嬉しい。
寝返りを打ち、薄らと目を開けた先生が寝惚けてボクの手に擦り寄る。
「すみません。起こしましたか?」
「ううん」
ボクの手が冷たくて気持ちいようで猫みたいにスリスリしてくる。
ずっとこうしていたいけど、もうそろそろお昼を作らないといけない。
名残惜しくも、先生から手を離す。
『クイ』
「!」
先生がボクの袖を咥えてグイグイ引き止めてくる。熱で潤んだ上目遣いでこちらをジッと見つめる赤い顔の先生に心臓を射抜かれる。
「あ、あの、ご飯、作りたいんです」
「………んーー」
グズった子どものような声を出し、首を横に振る先生。
ボクも離れ難いけど……どうすればいい? このまま甘やかす? ダメ、先生の風邪が治らない……なら、この先生を放置する? それもどうなのか…………どうしよう、先生が可愛くて愛おし過ぎる。
どうしたらいいかと悩んでいると、先生はまた袖を咥えたまま眠りについてしまった。
慎重に服を脱いで、先生の元に置いていく。
「(先生……風邪で心細くなってるんだろうな)」
……本当に、なんてことをしてしまったんだろう。寂しい思いまでさせて……後悔が止まらない。
もうボク、二度とお酒飲まない。
(pas trop anime・ 活発になりすぎない)
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