修行と生活費を稼ぐ為に国営ギルドのお仕事をひたすらこなしていた女剣士は、思わぬ報酬として自分が平定した土地を頂いたので開墾してみることにした

ナポリ

文字の大きさ
30 / 38
二章・領主・ナナ

しおりを挟む
ここはエーヴェル王国とタニア王国の国境に接したメルン地方のとある地域。

私が初めて受けた対人戦闘のある依頼の地だ。

過疎が進む地域は魔素の消費量の減少もあって魔獣が増加する。
そのためその地域は加速度的に過疎が進むという。

この地域もかつては人の生活範囲内だったらしいけど、今となっては人が寄り付かない寂れた土地になったようだ。

とはいえ、ここは魔獣が身近にいるという事を除けばそれなりにいいところではないかと思う。
戦略的価値の低さから国境に接しながらも戦争とはほとんど縁がなく、少し足を伸ばせば川も海もあるので水や魚が獲れ、森や林もあるので山菜や動物の肉もとれるのだ。

「こんなもんか…」

購入した農具をズラリと並べる。
まずは雨風を凌げるような小屋を作るべく山へ入った。

拝領したとはいえここに住む義務はないのだけど、今の私は少し違う事をしたい。
特にこれといって目的はないけど、とりあえずこの土地を開墾して人が住めるような環境を作ってみようと思った。

斧を使うのは初めてだけど刃物は刃物。
木を切り、枝を切り、樹皮を剥ぐ。

一本あたり10秒程で丸太を作り、30分も経った頃には一軒分の小屋が建つには充分であろう量が集まった。

「あっ………どうやって運ぼう……。」

しまった、何も考えてなかった。
一本一本持てばなんとかなるか?

(重い…。)

並の人よりは力があるとは思うけど、それでも私の力ではとても骨だった。
ズルズル引き摺りなんとか一本を川辺に運んできたけど、これを後何度も繰り返すかと思うと心がポキンと音を立てた。


(よし、先に畑を沢山作ろう。)


鍬を持ち広大な土地を有意義に使うべく土を耕す。
剣とは大分違うその動作に苦戦しながらも、ただ土を掘った。
一心不乱に耕し続け、あたりはいつしかオレンジ色に染まりつつある。

(そういえばお腹空いたなぁ。)

そう思い顔を上げ、そこで初めてもう夜になりつつある事に気付いた。

「えっ…もう日が沈みそう……。」

王都までは距離がある。
帰れない事はないがもう今日は疲れた。

川魚でも取れるかと考え、鍬を置き私は川へ向かった。
泥だらけの手足を洗い、川に浸かると一日汗をかいた体に冷たさが響く。

(静かだな。)

暫くボーッと川に浸かっていたが、日が完全に沈んでしまっては暗い水中で魚を取るのは難しくなる。
慌てて目を凝らすと、ゆらゆらとたなびく旗のように魚が泳いでいるのが見えた。

一度川から上がり剣を取って再び戻った私は、鞘に納めたままの剣をスルリと魚の腹の下に持って行くと、間髪入れず水から打ち上げた。

水上へと跳ね上げられた魚をパシッとキャッチして私は川を出ようと思ったが、私はここで大事な事に気付く。

「あ、火がないや…。」

少し立ち止まって考えたが、私の手の中でビチビチ動く魚を再び川に戻した。

本当に私は剣以外何も出来ない。

そして、人が苦手な私だが、今確かに寂しさを感じている。
この広い空の下にまるで自分一人しかいないように感じがして、何とも言えない寂しさが押し寄せてくるのだ。

どうにも力が抜け、私は川に大の字で倒れ込んだ。

(あーあ、着替えもないのに。)

だがそんな事はどうでもよかった。

田舎から出てきて環境の変化に疲れたのだろうか。
拠り所にしてた剣が欠けた事で、情緒が安定しなくなったのだろうか。
人を避けてきた自分が、人を頼みにしている事が理解できない。
自分の事がよく分からない。

なんだか疲れて目を閉じると一層の暗闇が視界を覆う。
魔獣や猛獣、暴力などに対する物理的な恐怖とも違う、得体の知れない恐怖を感じる。

別に声を上げるでもなく、表情が変わるでもなかったが、自然と涙が出た。

この闇夜か、私の心か、あるいは両方か、光が欲しい。
そう思った途端、閉じた瞼にボンヤリと淡い光を感じた。

(…!)

「もし、そこの人、無事か?」


その声に驚いて川から跳ね起きると、そこには闇夜に映える金髪のあの人が立っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

裏切り者達に復讐を…S級ハンターによる最恐育成計画

みっちゃん
ファンタジー
100年前、異世界の扉が開き、ハンターと呼ばれる者達が魔物達と戦う近未来日本 そんな世界で暮らすS級ハンターの 真田優斗(さなだゆうと)は異世界の地にて、仲間に裏切られ、見捨てられた 少女の名はE級ハンターの"ハルナ•ネネ"を拾う。 昔の自分と重なった真田優斗はハルナ•ネネを拾って彼女に問いかける。 「俺達のギルドに入りませんか?」 この物語は最弱のE級が最強のS級になり、裏切った者達に復讐物語である。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...