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二章・領主・ナナ
闇
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ここはエーヴェル王国とタニア王国の国境に接したメルン地方のとある地域。
私が初めて受けた対人戦闘のある依頼の地だ。
過疎が進む地域は魔素の消費量の減少もあって魔獣が増加する。
そのためその地域は加速度的に過疎が進むという。
この地域もかつては人の生活範囲内だったらしいけど、今となっては人が寄り付かない寂れた土地になったようだ。
とはいえ、ここは魔獣が身近にいるという事を除けばそれなりにいいところではないかと思う。
戦略的価値の低さから国境に接しながらも戦争とはほとんど縁がなく、少し足を伸ばせば川も海もあるので水や魚が獲れ、森や林もあるので山菜や動物の肉もとれるのだ。
「こんなもんか…」
購入した農具をズラリと並べる。
まずは雨風を凌げるような小屋を作るべく山へ入った。
拝領したとはいえここに住む義務はないのだけど、今の私は少し違う事をしたい。
特にこれといって目的はないけど、とりあえずこの土地を開墾して人が住めるような環境を作ってみようと思った。
斧を使うのは初めてだけど刃物は刃物。
木を切り、枝を切り、樹皮を剥ぐ。
一本あたり10秒程で丸太を作り、30分も経った頃には一軒分の小屋が建つには充分であろう量が集まった。
「あっ………どうやって運ぼう……。」
しまった、何も考えてなかった。
一本一本持てばなんとかなるか?
(重い…。)
並の人よりは力があるとは思うけど、それでも私の力ではとても骨だった。
ズルズル引き摺りなんとか一本を川辺に運んできたけど、これを後何度も繰り返すかと思うと心がポキンと音を立てた。
(よし、先に畑を沢山作ろう。)
鍬を持ち広大な土地を有意義に使うべく土を耕す。
剣とは大分違うその動作に苦戦しながらも、ただ土を掘った。
一心不乱に耕し続け、あたりはいつしかオレンジ色に染まりつつある。
(そういえばお腹空いたなぁ。)
そう思い顔を上げ、そこで初めてもう夜になりつつある事に気付いた。
「えっ…もう日が沈みそう……。」
王都までは距離がある。
帰れない事はないがもう今日は疲れた。
川魚でも取れるかと考え、鍬を置き私は川へ向かった。
泥だらけの手足を洗い、川に浸かると一日汗をかいた体に冷たさが響く。
(静かだな。)
暫くボーッと川に浸かっていたが、日が完全に沈んでしまっては暗い水中で魚を取るのは難しくなる。
慌てて目を凝らすと、ゆらゆらとたなびく旗のように魚が泳いでいるのが見えた。
一度川から上がり剣を取って再び戻った私は、鞘に納めたままの剣をスルリと魚の腹の下に持って行くと、間髪入れず水から打ち上げた。
水上へと跳ね上げられた魚をパシッとキャッチして私は川を出ようと思ったが、私はここで大事な事に気付く。
「あ、火がないや…。」
少し立ち止まって考えたが、私の手の中でビチビチ動く魚を再び川に戻した。
本当に私は剣以外何も出来ない。
そして、人が苦手な私だが、今確かに寂しさを感じている。
この広い空の下にまるで自分一人しかいないように感じがして、何とも言えない寂しさが押し寄せてくるのだ。
どうにも力が抜け、私は川に大の字で倒れ込んだ。
(あーあ、着替えもないのに。)
だがそんな事はどうでもよかった。
田舎から出てきて環境の変化に疲れたのだろうか。
拠り所にしてた剣が欠けた事で、情緒が安定しなくなったのだろうか。
人を避けてきた自分が、人を頼みにしている事が理解できない。
自分の事がよく分からない。
なんだか疲れて目を閉じると一層の暗闇が視界を覆う。
魔獣や猛獣、暴力などに対する物理的な恐怖とも違う、得体の知れない恐怖を感じる。
別に声を上げるでもなく、表情が変わるでもなかったが、自然と涙が出た。
この闇夜か、私の心か、あるいは両方か、光が欲しい。
そう思った途端、閉じた瞼にボンヤリと淡い光を感じた。
(…!)
「もし、そこの人、無事か?」
その声に驚いて川から跳ね起きると、そこには闇夜に映える金髪のあの人が立っていた。
私が初めて受けた対人戦闘のある依頼の地だ。
過疎が進む地域は魔素の消費量の減少もあって魔獣が増加する。
そのためその地域は加速度的に過疎が進むという。
この地域もかつては人の生活範囲内だったらしいけど、今となっては人が寄り付かない寂れた土地になったようだ。
とはいえ、ここは魔獣が身近にいるという事を除けばそれなりにいいところではないかと思う。
戦略的価値の低さから国境に接しながらも戦争とはほとんど縁がなく、少し足を伸ばせば川も海もあるので水や魚が獲れ、森や林もあるので山菜や動物の肉もとれるのだ。
「こんなもんか…」
購入した農具をズラリと並べる。
まずは雨風を凌げるような小屋を作るべく山へ入った。
拝領したとはいえここに住む義務はないのだけど、今の私は少し違う事をしたい。
特にこれといって目的はないけど、とりあえずこの土地を開墾して人が住めるような環境を作ってみようと思った。
斧を使うのは初めてだけど刃物は刃物。
木を切り、枝を切り、樹皮を剥ぐ。
一本あたり10秒程で丸太を作り、30分も経った頃には一軒分の小屋が建つには充分であろう量が集まった。
「あっ………どうやって運ぼう……。」
しまった、何も考えてなかった。
一本一本持てばなんとかなるか?
(重い…。)
並の人よりは力があるとは思うけど、それでも私の力ではとても骨だった。
ズルズル引き摺りなんとか一本を川辺に運んできたけど、これを後何度も繰り返すかと思うと心がポキンと音を立てた。
(よし、先に畑を沢山作ろう。)
鍬を持ち広大な土地を有意義に使うべく土を耕す。
剣とは大分違うその動作に苦戦しながらも、ただ土を掘った。
一心不乱に耕し続け、あたりはいつしかオレンジ色に染まりつつある。
(そういえばお腹空いたなぁ。)
そう思い顔を上げ、そこで初めてもう夜になりつつある事に気付いた。
「えっ…もう日が沈みそう……。」
王都までは距離がある。
帰れない事はないがもう今日は疲れた。
川魚でも取れるかと考え、鍬を置き私は川へ向かった。
泥だらけの手足を洗い、川に浸かると一日汗をかいた体に冷たさが響く。
(静かだな。)
暫くボーッと川に浸かっていたが、日が完全に沈んでしまっては暗い水中で魚を取るのは難しくなる。
慌てて目を凝らすと、ゆらゆらとたなびく旗のように魚が泳いでいるのが見えた。
一度川から上がり剣を取って再び戻った私は、鞘に納めたままの剣をスルリと魚の腹の下に持って行くと、間髪入れず水から打ち上げた。
水上へと跳ね上げられた魚をパシッとキャッチして私は川を出ようと思ったが、私はここで大事な事に気付く。
「あ、火がないや…。」
少し立ち止まって考えたが、私の手の中でビチビチ動く魚を再び川に戻した。
本当に私は剣以外何も出来ない。
そして、人が苦手な私だが、今確かに寂しさを感じている。
この広い空の下にまるで自分一人しかいないように感じがして、何とも言えない寂しさが押し寄せてくるのだ。
どうにも力が抜け、私は川に大の字で倒れ込んだ。
(あーあ、着替えもないのに。)
だがそんな事はどうでもよかった。
田舎から出てきて環境の変化に疲れたのだろうか。
拠り所にしてた剣が欠けた事で、情緒が安定しなくなったのだろうか。
人を避けてきた自分が、人を頼みにしている事が理解できない。
自分の事がよく分からない。
なんだか疲れて目を閉じると一層の暗闇が視界を覆う。
魔獣や猛獣、暴力などに対する物理的な恐怖とも違う、得体の知れない恐怖を感じる。
別に声を上げるでもなく、表情が変わるでもなかったが、自然と涙が出た。
この闇夜か、私の心か、あるいは両方か、光が欲しい。
そう思った途端、閉じた瞼にボンヤリと淡い光を感じた。
(…!)
「もし、そこの人、無事か?」
その声に驚いて川から跳ね起きると、そこには闇夜に映える金髪のあの人が立っていた。
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