魔界王立幼稚園ひまわり組

まりの

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続・魔界王立幼稚園ひまわり組

47:命がけですよ!

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 大人の部は時間の都合で各自自分でやってということで準備体操は無し。そして練習もなしだったので赤白それぞれの陣営に別れて、その都度代表を決めての競技。まずは男女混合で四十ウル走。早い話約百メートルのかけっこです。
 幼稚園の職員と保護者の方々はそのまま午前の部と同じチーム、その他の参加者は大体人数を合わせるカンジで同じ人数に別れた。午前は進行役を務めていたユーリちゃんも午後は競技に参加するようで、魔王様や私と同じ赤組に入った。
「王子まで赤だなんて、白はあまりに分が悪いではないですか」
 ウリちゃんはそう言うが、こちらから見たら白組はそうそうたるメンバーだ。エイジくんとマファル国王キール様という元勇者の二人、ツツル竜王とメルヒノア様ご夫妻、コゴルの冷女王などは全て白組に入っている。
 こちら赤組は魔王様とユーリちゃん以外ぱっと見目立った戦力が見当たらない。大臣の方々もおいでだがほとんど年配だし、ザラキエルノ様は未知数すぎる。さっちゃんのお兄ちゃんゾフィエル様もだ。
 各組五人ずつ代表を出すということで早速困った。とりあえずの救いはマーム先生が一緒だった事。こういう時は本当に頼りになります先生!
「では出たい方は挙手を」
 マーム先生が声を掛けてくれたが、保護者の皆さんは魔王様達を前にして固まったまま。手を上げたのは魔王様とユーリちゃんだけだった。
「父上が早速出るのですか? 魔王はどっしり構えここぞという時に活躍してください」
「うむ、そうだな」
 ちらっと白組を見ると、向こうでも同じような会話がなされたようで、ウリちゃんは出ない模様。エイジくんが出るみたいだ。
 うーん、これでは決まらない……そう思っていたら突然マーム先生に振られた。
「早くしないと。そうですね、ではココナさん先生がぱぱっと決めてください。」
「おお、それがいい。ココナさん頼むぞ」
 ちょっ……!? 魔王様まで? なんで私がっ?
「いつも小さい子供をまとめている先生ですから、適役かと思いますわ」
「ココナさん、ぜひお願いします」
 ザラキエルノ様とさっちゃんまでっ! というか、その理由だったらマーム先生だっていいじゃないですか~!
 でもさっさと選ばなければ時間が押してくる。白組は既に入場門付近に行き始めた。
「では、ユーリ王子、さんちゃんのパパ、いく君のママ、くみちゃんのパパ、ピコ先生でどうでしょうか」
 足の早そうなメンバーをぱぱっと適当に選んでみました。普通の徒競走なんでひねりも何も無しです。
「では、頑張ってきますね!」
 ユーリちゃんが爽やかに笑って他の面々とともに待機場所へと駆けて行った。
「流石はココナさん。以後の競技もぜひ赤組の纏め役として頼む」
「魔王様、なぜ私が?」
「私はこういうのは苦手でな。いつもウリエノイルに任せてあるから」
「……」
 魔界を仕切る方にそう言われても……私だって得意じゃないですよ。ああ、なんかもうまたとんでもない責任を負わされた気がする……。
『よいよい。ココナちゃん、ワシも応援するから』
「よくないですよ……」
 先代、人のことだと思っていい加減な。というか、応援するだけなんですよね。

「おほほほほ、では四百ウル走の開始ですわ~!」
 ヴェレットのお気楽な笑い声で競技が開始された。
「よーい」
 午後のスタート係は魔王城の影の重鎮、猫耳執事ギリムさんである。大人に混じっちゃうと小さな妖精のメイア先生が見えないので交代。メイア先生には本部席で集計係をお願いしてある。
 パーンという音と共に第一走者スタート。
 白はリレーでアンカーを務めたケンタウロスのたっ君のパパ、赤も同じくくみちゃんのパパ。午前の勝負の親版である。子供も早ければやはり親も早い! 特に周囲に風を起こすほどの速度で走り抜けたくみちゃんパパは物凄かった。百メートルって短すぎたのではという一瞬の勝負。これは五組走ってもあっという間だ。
 赤の第二走者補助職員の猫獣人ピコさんはスタッフ一の俊足だが、対する白はカンちゃんのパパ。三歳児であの早さだったサテュロスのパパはやっぱり早かった。
 その後も第三、第四と試合が超高速で進み、次で最後。
「きゃー! 勇者様―っ! がんばってーっ!」
 白の最終走者はエイジ君だ。てんちゃんの応援が響いている。ってか、白組にはもう一人勇者いるから紛らわしいんだけど。こっちはユーリちゃんなので早くも魔王対勇者の対決である。プチ魔王と元勇者だが……。
 パーン! 同時にいいスタート。なんか一番安定した勝負だ。わあ、エイジくん早っ! フォームがとっても綺麗。そういえば中学の時は陸上部だったって言ってたわね。
「ユーリ、負けるな!」
 あ、魔王様も身を乗り出して久々親馬鹿モード。初めての運動会の時を思い出すね。よちよち走ってたユーリちゃんも手も足も長くなって本当に早くなったね。
 ほぼ同時にゴール。すごく微妙だったがユーリちゃんの勝ち。流石は次期魔王!
 帰ってきたユーリちゃんの頭を撫でながら、魔王様は嬉しそうに仰った。
「転ばずによく走ったな」
「もう、父上。僕もこんなに大きくなったんですから」
 ふふふ。ユーリちゃん、幾つになっても親にとっては子供は子供なんですよ。私にとってもユーリちゃんは永遠に小さい時のまんまの可愛い可愛い姿なんです。

 午後、どうなることかと心配したがこれは思ったより進行が早そうだ。
「おほほほっ、次はご婦人方による競技。華やかでよろしいですわね、ほほほ」
 ……ヴェレット、初めてなのに司会上手いな。ジラソレの地位も危ういぞ?
 次は女だけで『しゃがんでとんで』。各チーム二十人、十組が二列に整列してその名の通り上を通る棒をしゃがんでかわし、下を通る棒をとんでかわすゲーム。前から順に棒の両端を持って回していくのだ。全組に回ったら終了。
 女性の競技なので勿論私も出ますよ!
「さっちゃん、一緒に組もう」
「は、はい!」
 ザラキエルノ様の体操服と鉢巻は特別なものらしく、神力は漏れないし魔力も跳ね返すが直接触れることは出来ない。流石に密着する団体競技に出ていただくのは他の参加者の命に関わるかもしれないのでパン食い競争や団体でも玉入れなどのあまり害の無さそうなものに出ていただこう。そんなわけで女性だがこの競技は応援席で見ていただく。あ、マーム先生もこの競技は出られません。ラミアは跳べませんから。同じ種族や這う系のお母さん方もです。
「負けないわよ~!」
 メルヒノア様はてんちゃんと白組の列に並んでご機嫌だ。ドレスに流した髪を見慣れているだけに、体操服という格好がとても新鮮。うわー足ながーい。綺麗。でもなんでツインテールに髪を縛ってるんですか、すごく可愛いですけど。百三十八歳ですよね……。
 並べるのに大変な園児と違い、大人は整列もスムーズ。一番前の組が棒を持ってスタンバイ。私とさっちゃんは一番後ろ。つまりアンカーだよ。
「がんばって~!」
「ココナさん、頼んだぞ」
 赤組席のザラキエルノ様や魔王様の応援がちょっと重い。
 この競技はできるだけ前とくっついて、列を短くするのがコツ。棒を持つ人は上を行くときは極力高く、下をくぐる時に低く行くとひっかかりにくいと先に打ち合わせしておいたので、赤組はその通りに並んでいる。ふふふ、勝てる!
「よーい」
 パーン! 女だけのしゃがんでとんでがスタートです!
「しゃーがーんでー」
 まずは背が高めのお母さん方が上。上手くかわせるように声掛けしながら行くのも作戦だ。だが魔界のお母さん方をナメていた。ゲッ、早いっ! 当たったら首が飛びそうっ!
「ひっ!」
 さっちゃんと必死でしゃがむ。何とか棒に当たらずに済んだが、なんか髪の毛にちょぃーんって高速の物が触れた気がする。
 今度は下だ。息つくヒマもなく帰ってくる棒! これも早いに決まってるし!
「とんでぇー」
 もう違うチームの状況なんかわからない。タイミングを計ってかわすのに精一杯。
「きゃっ!」
 さっちゃんが飛べなくて引っかかった。でもすぐに体勢を立てなおして棒が滑っていく。他のお母さんたちも必死に飛んでいる。早くも第二組にバトンタッチして再び上。
「しゃがんでー!」
 あ、目の前のルナちゃんのママの首が飛んだ……スケルトンだからなぁ。同じ組の蔦魔族のお母さんが触手で拾ってくれてるのが見えたが、そんな事を気にしている間もなくしゃがまないと自分の首も飛ぶ。こわっ! この競技何気に怖いいいぃ!
「きゃあっ!」
「いやん!」
 赤組からも悲鳴が聞こえます。そして会場でくすくす笑う男性達の声も。
 何とか慣れてきてスムーズに行くようになってきたが、さっちゃんは既にお疲れの様子。いやぁ、私も相当へばってますよ。多分他の皆も。でも命がけなんでかわし続ける。
「ほほほ~! 各組次がアンカーですわよぉ!」
 ヴェレットの声が聞こえて、飛び終わった私達に棒が回ってきた。
「さ、さっちゃん、行くよ」
「は……い……」
 アンカーなのにヘロヘロの私達は今までで一番遅かっただろう。それでも全力疾走で駆け抜ける。終わったら皆で座ってお終いだ。
「しゃがんでー!」
「とんでー!」
 何とかゴール! って、もう白組座ってるじゃんっ!
「おほほほほ~、白組さんの勝ちですわ。頑張ったご婦人方に拍手~!」
 スミマセン、魔王様。赤組負けてしまいました……。
「まあよい。次の綱引きで勝てばよいのだ」
 まだまだ続きますよね、運動会。私もさっちゃんも第二競技で早くもヘロヘロになってるんですけどね。
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