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続・魔界王立幼稚園ひまわり組
53:リレーと虹の滑り台
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ヴェレットも言った通り、泣いても笑ってもこのリレーが最後。
「あの……大丈夫でしょうか、魔王様やウリエノイル様でなくて子ども達」
さっちゃんがリレー競技の出場者の控えている様を見て心配している。
「年長さんがほとんどだし、園児は楽しいだけだと思うよ。多少速いのはみんな通園のルウラで慣れてるし、子持ちのパパが多いから気をつけるよ」
はい、このリレー、実は大人だけが走るのでは無いのです。年少さんのひまわり組と年中のバラ組さんのほとんどは寝ちゃった子もいるのでお城の中で落書き生き物達と待機してるかバルコニーで上から応援してますが、年長のスミレ組さんとバラ組の一部が協力して、選手の背中におぶさってのリレーとなります。そうでないと速すぎて一瞬でリレー競技が終わってしまうので。主に見えないほど早く走っていた面々対策です。
まあ最初の徒競走とほぼ同じメンバーなんですが、補助職員のピコさんに代わって魔王様、あと犬獣人のいく君のところはママからパパに交代。白組はバラ組のウサギ獣人のみみちゃんママとウリちゃんが代わっただけなんですけどね。各チーム五人が園児をおんぶしてバトンを繋ぎます。
そんなわけではじまりました、紅白対抗リレー。
第一走者はいきなり超俊足の白組サテュロスのカンちゃんパパ、赤組は風竜のくみちゃんパパ。よその子ですが流石に子どもをおんぶする姿は慣れたもの。負荷を背負っていても脅威の速さだ。
「わーい!」
喜んでるなぁ、子ども達……他所のお父さんにおんぶされる機会なんてあまりないもんな。しかも速いし。もうほとんど遊園地の乗り物のノリだよね。
両者拮抗したままぐるっと一周して帰ってきた。バトンを上手く渡せるかな?
練習無しだったがほぼ同時に無事渡ったバトン。第二走者白ケンタウルスのたっ君パパ、赤は犬獣人のいく君のパパ。どう考えてもたっ君のところが速いので、いく君パパは軽めの園児を乗せてある。これもいい勝負だよ!
「がんばってー!」
おお、自分の孫の出番でも無いのにザラキエルノ様もノリノリで応援しておいでだ。さっちゃんも身を乗り出して真剣な顔で見てる。
相手より重めの子を背負ってもやっぱり四本足のケンタウルスは早かった。白組がややリードで第三走者にバトンタッチ。ちょっと遅れたがいく君パパも無事バトンを繋いだ。
「せんせー、面白かった! もっと乗ってたかったよ」
いく君パパの背中に乗ってたスミレ組の夢魔のトト君はご機嫌。よかったね、楽しかったね。
赤組の第三走者火竜のさんちゃんパパも頑張ったが、白の猫獣人のビュルネちゃんパパに更に差を広げられて、かなり白組優勢で第四走者エイジ君に早くもバトンが渡る。
「勇者様―! がんばってー!」
てんちゃんの応援の声が響き渡ってますよ。
「大丈夫です、僕がひっくり返しますから」
ユーリちゃんはそう言っているが、やや表情に焦りが見える。エイジ君は元陸上部だし、人間だったと言っても今や魔王様の眷属だ。
さんちゃんパパからバトンを受け取り、ユーリちゃんダッシュ! と思いきや。
あれ? なんか動きが思ったより速くない。エイジ君もだ。最初の徒競走やあの騎馬戦で見せた勢いは何処に行ったってほどの慎重な走りっぷり。とはいえ充分通常の人間にはありえない早さではあるんだけど、魔族的には……。
「あの二人は子どもがおらんというか、自分達がまだ子どもだからな。他所の小さい子を乗せて怪我でもさせたらと心配なんだろう」
魔王様が苦笑いで仰ってる。ああ、そうか。他はパパばっかりだけどあの二人は独身だよね。エイジ君は二十代だけど何百年も生きる魔族にしてみればお子ちゃまと大差ない。ユーリちゃんに至ってはしっかりしててもまだ十五だ。
それでも二人は懸命に走った。二人共将来良いパパになれるよ!
かなり差が縮まったが、やっぱり白組リードのままついにエイジ君の手からアンカーのウリちゃんにバトンが今渡った……らしいが詳細はよくわからない。
「ココナさん、いくらなんでもあの子たちは重すぎませんか? やはり私達が出たほうが良かったのでは」
さっちゃんの心配はご尤もだ。観覧者も心配そうに見ている。
「大丈夫よ。あれくらいなら」
アンカーのお二人には特別な園児をおんぶしていただきました。丁度大きさの変わらない双子ちゃんなんで、バラ組の巨人族のだいちゃんとでん君だよ。
双子ちゃんはそれぞれ四十一ゲル(約百二十キロ)くらいある。重さはまあ心配無いだろうけど、身長も八・六ウル(約二メートル十五センチ)あるので、魔王様より少し小さくて細いウリちゃんはほとんど本体が見えない。
最初は私とさっちゃんを背負ってという事になっていたのだが、私達は揃って赤組なので、公平を期す意味で双子ちゃんに協力願ったのだ。それにさっちゃんや私ではあまり負荷にならない。
だが……なんという絵面なんだろうか。特にウリちゃん。でん君の巨大な背中とお尻しか見えないよ。もうこれ、リレーじゃなくてほとんど障害物競走だよね。
とか言ってる間に、魔王様もだいちゃんを背負って走り出された。ああ、やっぱ軽々なんですね。重さを感じないほどスイスイ走って行かれましたよ。ウリちゃんも相当早く走ってるけど、やっぱり魔王様のほうが力は強いみたい。じりじり差が縮まっていく。
コーナを曲がってやっとウリちゃんの顔が見えた。わぁ、とんでもなく真剣な顔してる。重いよね、いつもおんぶしてるリノちゃん七人分以上あるからね。それでもスピードはとんでもなく速いが、魔王様はもうすぐ抜く勢いで走って来られた。魔王様も真剣なお顔だが、いつもとそう変わらないからイマイチわからない。
これ、ちょっとウリちゃんには気の毒過ぎただろうか。でも双子ちゃんに変えると言い出したのは本人だしね。
ああ、もうすぐ抜かれるよぅ! でもゴールはもう目の前だよ!
……あ、私赤組なんだった。
テープをほぼ同時に切った二人。だがやっぱり双子ちゃんでよく見えなかった。
「今のは? どちらでした?」
「うーん、よく見えなかった」
ゴールテープを持っていた補助職員のレーさんとピコさん、それに本部のメイア先生やなぜか助手の夜王様、マーム先生、一番近くで見ていた観客達による協議になっている模様。私もそちらに走った。
「これは判定が難しいですよ」
「同時に見えました」
「ほんの僅か魔王様の方が早かったような」
「いやいや、完全に抜く前にゴールだったのでウリエノイル様のほうが」
うーん、あらゆる角度から見ていた人達にもわからなかった模様。協議は長引きそうだ。
「おとさんとおかさんちがう人、はじめておんぶ。まおーさま、すごい」
「せんせ、すごくはやい、おもしろかった」
魔王様とウリちゃんの背中から降りて駆け寄ってきた巨人の双子ちゃんはご機嫌でニコニコ。そうね、ひまわりさんで入ってきた時からすでに大きかったから、私も抱っこしてあげられなかったし、普段でもご両親以外には無理だよね。それに巨人さん達は動きがゆっくりだから、あんなに速いのは新鮮だったんだね。
「ボクも面白かったよ。たっくんのパパ力持ちではやーい」
「あたしも! 王子様におんぶしてもらったの」
他の子達もとっても嬉しかったみたい。よかったね、いい思い出が出来たね。
せっかく園児は楽しかったんだし、すごく盛り上がったリレーに運動会、ここであまり間を置くとみんなダレちゃうよね。
走り終えた選手も所在なさげに待ってるし、魔王様とウリちゃんは……あ、腰押さえてる。やっぱり重かったんだなぁ。
「もう引き分けでいいんじゃない?」
思わず口を挟んでしまいました。
「最終競技で引き分けですか……」
「だってわからないまま勝敗つけたら後味悪いし。いっそ潔く引き分けで」
そんなわけで決着は着いた模様。
「おほほほほ~! 只今の紅白リレーは同時ゴールということで引き分けになりましたわ~ほほほほっ」
ヴェレットが固唾を飲んで見守っていた観覧者に告げ、わーっという歓声と、おーというやや落胆したような声が同時に上がった。ちょっとがっかりしたのは白組さん陣営だろう。終始リードしていた白組さんには確かに少し気の毒ではあるが、リレーは最終結果で勝敗が決まることだしね。恨みっこなしでいいじゃない。
「まあ良いでしょう。最善の選択かと思います」
「仕方あるまい」
ウリちゃんと魔王様もこの結果に納得してくれたようだ。
「ほほほ、最終集計の結果を発表する前に、参加者の皆さんは中央にお並びくださいませね。おほほほ」
気がつけば日が傾き、すみれ色の空は薄闇が迫る前の赤紫の夕焼け空に変わってた。長かった運動会、やっと終わるね。
ああ、そういえば年少さんと年中さんも迎えに行かなきゃいけないかな。でもまだリノちゃん達は寝てるかな……そう思ってたら、お城の方からきゃーきゃーと楽しげな声が聞こえてきた。
「何?」
「まあ!」
お城の中程のバルコニーから、虹みたいな色とりどりの光が集まって出来たスロープが、すうっとこの広場まで伸びて来てる。滑り台?
「わあ、ステキ……!」
巨大な長いその虹の上を、子ども達が滑り降りてくる! 落書き生き物に抱えられてるのはおねむの子かな?
「きゃーい!」
「しゅるしゅるー!」
次々と滑り降りてくる小さな姿に、お父さんやお母さんが駆け寄り抱きしめる。さっちゃんと私もそちらに向かって走ったが、魔王様とウリちゃんのほうが早かった。
「パーパー!」
小さな手を広げて娘がパパに飛びついた。その笑顔も風に靡いた銀色の髪も、何もかもホントそっくりで笑っちゃうくらい。なんて幸せな眺めなんだろう。
ペルちゃんも満面の笑みを浮かべて滑り降りてくる。その下には魔王様が待っておいでだ。金色とバラ色と白で構成されたほわほわの可愛い王子様は大きな胸の中に飛び込んだ。
とっても幸せそうだね。ちゃんと親子になってるね。さっちゃんもその姿を目に焼き付けるようにじっと見て、そして微笑んだ。
夢の様なステキな園児たちの登場に、会場から大きな大きな拍手。中には涙ぐんじゃってる人もいる。
「すごいすごい! これ魔王様が?」
「いや、私ではない。ウリエノイル?」
「わたくしでもございませんが……」
ふふふ、って小さな笑い声が聞こえて振り返ると、各国の王達が集まって笑っていた。小さな夜王様もにっこり笑顔。そういえば虹みたいに丁度七つの色。
ステキなステキな魔法の贈り物だった。
「あの……大丈夫でしょうか、魔王様やウリエノイル様でなくて子ども達」
さっちゃんがリレー競技の出場者の控えている様を見て心配している。
「年長さんがほとんどだし、園児は楽しいだけだと思うよ。多少速いのはみんな通園のルウラで慣れてるし、子持ちのパパが多いから気をつけるよ」
はい、このリレー、実は大人だけが走るのでは無いのです。年少さんのひまわり組と年中のバラ組さんのほとんどは寝ちゃった子もいるのでお城の中で落書き生き物達と待機してるかバルコニーで上から応援してますが、年長のスミレ組さんとバラ組の一部が協力して、選手の背中におぶさってのリレーとなります。そうでないと速すぎて一瞬でリレー競技が終わってしまうので。主に見えないほど早く走っていた面々対策です。
まあ最初の徒競走とほぼ同じメンバーなんですが、補助職員のピコさんに代わって魔王様、あと犬獣人のいく君のところはママからパパに交代。白組はバラ組のウサギ獣人のみみちゃんママとウリちゃんが代わっただけなんですけどね。各チーム五人が園児をおんぶしてバトンを繋ぎます。
そんなわけではじまりました、紅白対抗リレー。
第一走者はいきなり超俊足の白組サテュロスのカンちゃんパパ、赤組は風竜のくみちゃんパパ。よその子ですが流石に子どもをおんぶする姿は慣れたもの。負荷を背負っていても脅威の速さだ。
「わーい!」
喜んでるなぁ、子ども達……他所のお父さんにおんぶされる機会なんてあまりないもんな。しかも速いし。もうほとんど遊園地の乗り物のノリだよね。
両者拮抗したままぐるっと一周して帰ってきた。バトンを上手く渡せるかな?
練習無しだったがほぼ同時に無事渡ったバトン。第二走者白ケンタウルスのたっ君パパ、赤は犬獣人のいく君のパパ。どう考えてもたっ君のところが速いので、いく君パパは軽めの園児を乗せてある。これもいい勝負だよ!
「がんばってー!」
おお、自分の孫の出番でも無いのにザラキエルノ様もノリノリで応援しておいでだ。さっちゃんも身を乗り出して真剣な顔で見てる。
相手より重めの子を背負ってもやっぱり四本足のケンタウルスは早かった。白組がややリードで第三走者にバトンタッチ。ちょっと遅れたがいく君パパも無事バトンを繋いだ。
「せんせー、面白かった! もっと乗ってたかったよ」
いく君パパの背中に乗ってたスミレ組の夢魔のトト君はご機嫌。よかったね、楽しかったね。
赤組の第三走者火竜のさんちゃんパパも頑張ったが、白の猫獣人のビュルネちゃんパパに更に差を広げられて、かなり白組優勢で第四走者エイジ君に早くもバトンが渡る。
「勇者様―! がんばってー!」
てんちゃんの応援の声が響き渡ってますよ。
「大丈夫です、僕がひっくり返しますから」
ユーリちゃんはそう言っているが、やや表情に焦りが見える。エイジ君は元陸上部だし、人間だったと言っても今や魔王様の眷属だ。
さんちゃんパパからバトンを受け取り、ユーリちゃんダッシュ! と思いきや。
あれ? なんか動きが思ったより速くない。エイジ君もだ。最初の徒競走やあの騎馬戦で見せた勢いは何処に行ったってほどの慎重な走りっぷり。とはいえ充分通常の人間にはありえない早さではあるんだけど、魔族的には……。
「あの二人は子どもがおらんというか、自分達がまだ子どもだからな。他所の小さい子を乗せて怪我でもさせたらと心配なんだろう」
魔王様が苦笑いで仰ってる。ああ、そうか。他はパパばっかりだけどあの二人は独身だよね。エイジ君は二十代だけど何百年も生きる魔族にしてみればお子ちゃまと大差ない。ユーリちゃんに至ってはしっかりしててもまだ十五だ。
それでも二人は懸命に走った。二人共将来良いパパになれるよ!
かなり差が縮まったが、やっぱり白組リードのままついにエイジ君の手からアンカーのウリちゃんにバトンが今渡った……らしいが詳細はよくわからない。
「ココナさん、いくらなんでもあの子たちは重すぎませんか? やはり私達が出たほうが良かったのでは」
さっちゃんの心配はご尤もだ。観覧者も心配そうに見ている。
「大丈夫よ。あれくらいなら」
アンカーのお二人には特別な園児をおんぶしていただきました。丁度大きさの変わらない双子ちゃんなんで、バラ組の巨人族のだいちゃんとでん君だよ。
双子ちゃんはそれぞれ四十一ゲル(約百二十キロ)くらいある。重さはまあ心配無いだろうけど、身長も八・六ウル(約二メートル十五センチ)あるので、魔王様より少し小さくて細いウリちゃんはほとんど本体が見えない。
最初は私とさっちゃんを背負ってという事になっていたのだが、私達は揃って赤組なので、公平を期す意味で双子ちゃんに協力願ったのだ。それにさっちゃんや私ではあまり負荷にならない。
だが……なんという絵面なんだろうか。特にウリちゃん。でん君の巨大な背中とお尻しか見えないよ。もうこれ、リレーじゃなくてほとんど障害物競走だよね。
とか言ってる間に、魔王様もだいちゃんを背負って走り出された。ああ、やっぱ軽々なんですね。重さを感じないほどスイスイ走って行かれましたよ。ウリちゃんも相当早く走ってるけど、やっぱり魔王様のほうが力は強いみたい。じりじり差が縮まっていく。
コーナを曲がってやっとウリちゃんの顔が見えた。わぁ、とんでもなく真剣な顔してる。重いよね、いつもおんぶしてるリノちゃん七人分以上あるからね。それでもスピードはとんでもなく速いが、魔王様はもうすぐ抜く勢いで走って来られた。魔王様も真剣なお顔だが、いつもとそう変わらないからイマイチわからない。
これ、ちょっとウリちゃんには気の毒過ぎただろうか。でも双子ちゃんに変えると言い出したのは本人だしね。
ああ、もうすぐ抜かれるよぅ! でもゴールはもう目の前だよ!
……あ、私赤組なんだった。
テープをほぼ同時に切った二人。だがやっぱり双子ちゃんでよく見えなかった。
「今のは? どちらでした?」
「うーん、よく見えなかった」
ゴールテープを持っていた補助職員のレーさんとピコさん、それに本部のメイア先生やなぜか助手の夜王様、マーム先生、一番近くで見ていた観客達による協議になっている模様。私もそちらに走った。
「これは判定が難しいですよ」
「同時に見えました」
「ほんの僅か魔王様の方が早かったような」
「いやいや、完全に抜く前にゴールだったのでウリエノイル様のほうが」
うーん、あらゆる角度から見ていた人達にもわからなかった模様。協議は長引きそうだ。
「おとさんとおかさんちがう人、はじめておんぶ。まおーさま、すごい」
「せんせ、すごくはやい、おもしろかった」
魔王様とウリちゃんの背中から降りて駆け寄ってきた巨人の双子ちゃんはご機嫌でニコニコ。そうね、ひまわりさんで入ってきた時からすでに大きかったから、私も抱っこしてあげられなかったし、普段でもご両親以外には無理だよね。それに巨人さん達は動きがゆっくりだから、あんなに速いのは新鮮だったんだね。
「ボクも面白かったよ。たっくんのパパ力持ちではやーい」
「あたしも! 王子様におんぶしてもらったの」
他の子達もとっても嬉しかったみたい。よかったね、いい思い出が出来たね。
せっかく園児は楽しかったんだし、すごく盛り上がったリレーに運動会、ここであまり間を置くとみんなダレちゃうよね。
走り終えた選手も所在なさげに待ってるし、魔王様とウリちゃんは……あ、腰押さえてる。やっぱり重かったんだなぁ。
「もう引き分けでいいんじゃない?」
思わず口を挟んでしまいました。
「最終競技で引き分けですか……」
「だってわからないまま勝敗つけたら後味悪いし。いっそ潔く引き分けで」
そんなわけで決着は着いた模様。
「おほほほほ~! 只今の紅白リレーは同時ゴールということで引き分けになりましたわ~ほほほほっ」
ヴェレットが固唾を飲んで見守っていた観覧者に告げ、わーっという歓声と、おーというやや落胆したような声が同時に上がった。ちょっとがっかりしたのは白組さん陣営だろう。終始リードしていた白組さんには確かに少し気の毒ではあるが、リレーは最終結果で勝敗が決まることだしね。恨みっこなしでいいじゃない。
「まあ良いでしょう。最善の選択かと思います」
「仕方あるまい」
ウリちゃんと魔王様もこの結果に納得してくれたようだ。
「ほほほ、最終集計の結果を発表する前に、参加者の皆さんは中央にお並びくださいませね。おほほほ」
気がつけば日が傾き、すみれ色の空は薄闇が迫る前の赤紫の夕焼け空に変わってた。長かった運動会、やっと終わるね。
ああ、そういえば年少さんと年中さんも迎えに行かなきゃいけないかな。でもまだリノちゃん達は寝てるかな……そう思ってたら、お城の方からきゃーきゃーと楽しげな声が聞こえてきた。
「何?」
「まあ!」
お城の中程のバルコニーから、虹みたいな色とりどりの光が集まって出来たスロープが、すうっとこの広場まで伸びて来てる。滑り台?
「わあ、ステキ……!」
巨大な長いその虹の上を、子ども達が滑り降りてくる! 落書き生き物に抱えられてるのはおねむの子かな?
「きゃーい!」
「しゅるしゅるー!」
次々と滑り降りてくる小さな姿に、お父さんやお母さんが駆け寄り抱きしめる。さっちゃんと私もそちらに向かって走ったが、魔王様とウリちゃんのほうが早かった。
「パーパー!」
小さな手を広げて娘がパパに飛びついた。その笑顔も風に靡いた銀色の髪も、何もかもホントそっくりで笑っちゃうくらい。なんて幸せな眺めなんだろう。
ペルちゃんも満面の笑みを浮かべて滑り降りてくる。その下には魔王様が待っておいでだ。金色とバラ色と白で構成されたほわほわの可愛い王子様は大きな胸の中に飛び込んだ。
とっても幸せそうだね。ちゃんと親子になってるね。さっちゃんもその姿を目に焼き付けるようにじっと見て、そして微笑んだ。
夢の様なステキな園児たちの登場に、会場から大きな大きな拍手。中には涙ぐんじゃってる人もいる。
「すごいすごい! これ魔王様が?」
「いや、私ではない。ウリエノイル?」
「わたくしでもございませんが……」
ふふふ、って小さな笑い声が聞こえて振り返ると、各国の王達が集まって笑っていた。小さな夜王様もにっこり笑顔。そういえば虹みたいに丁度七つの色。
ステキなステキな魔法の贈り物だった。
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