魔界王立幼稚園ひまわり組

まりの

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続・魔界王立幼稚園ひまわり組

35 :運動会と魔王様

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「わあ! おあにゃ、いっぱーい!」
「キレイだねー!」
 リノちゃんとペルちゃんは大層ご機嫌だが、今日も朝から魔王城は大変な事になっております。
 床にも壁にも花が咲き乱れ、むせ返るような芳香に包まれて……ええ、たぶん、恐らく、いや絶対に魔王様の仕業です。元々クールなお顔で加減をするのが苦手なお方でしたが、最近すっかり感情の動きが具現化するのが当たり前になられましてますます持って迷惑でございます。
 真っ赤に紫に黒……まあリノちゃんの言うように綺麗なんですけども、はっきり言って多少毒々しい花なのは魔界なんで仕方が無い。刺があったり蠢いたり人を襲わない分、いつもより平和です。魔王様はご機嫌麗しいという事なんでしょう。
「余程お幸せなのでしょう。こんなに花が咲いたのは前王妃とのご婚約が決まった時以来ですよ」
 花に埋もれながら執事のギリムさんが、お茶を淹れつつ穏やかに微笑んでますけど、そうですか……以前にも咲かせてたんですね。
「これはきっとまた昨夜も……」
「ウリちゃんストーップ! リノちゃんとペルちゃんいるし」
 私も絶対そうかと思うけど、子供の前ではやめようか。ペルちゃんが昨夜はウチで泊まった事でお察しだよ。さっちゃんが魔王様の所に行ったっきりだもの。
 そうですかー。もうさっちゃんは無事に堕天したというのにねぇ。天界のご両親公認ですし良いのですけどね。お盛ん……などとオバサンな発言は思ってもいたしませんよ。
「早く朝ご飯食べて、幼稚園に行こうね。パパもよ」
「花の香りで折角のお茶の匂いがわかりませんね」
「おあにゃ、食べてりゅみちゃい」
 魔王様の花のおかげで、我が家の台所も使えなかったので朝ご飯をギリムさん達と一緒にいただいてます。私は楽させてもらってウリちゃんもリノちゃんも美味しいお茶や厨房自慢の卵料理で嬉しいのですが、花の香りが強すぎて、パンもお茶も味がよくわかりません。
「まあ、昼頃には花も消えるでしょう。ココナ様、お茶のおかわりを」
 犯人の魔王様は朝寝坊の日みたいで、まだ起きておいででない。ついでの事を言うと、さっちゃんも今日はまだ見かけてません。
 お茶を頂きつつ、今日は幼稚園で何をしようかなぁと考えていたら、ペルちゃんが無邪気に呟いた。
「ママ、ゆうべ魔王様とねんねしたのかな?」
 ごふっ。
「もう、ココナさん」
 ついふき出しそうになったのに、すかさずウリちゃんがハンカチを出してくれました。よく魔王様もこれやってくださいましたが、幼児をもつと身につくスキルのようです。
 それより! 三歳児の問題発言ですよっ!
「ぺ、ペルちゃん?」
「ママねぇ、寂しがりやさんだから一人でねんね出来たのかなって思って」
 あーそういう事か、良かった。ここで驚くなんて自分が酷く穢れた大人な気がしてなりません。子供の言葉に裏は無いんだった。
「ペルルリル君は昨夜先生達と一緒にお泊り出来たでしょう? とっても偉かったですよ。大人だからママも大丈夫だったと思います」
 ウリちゃんがナイスなフォローをしてくれました。
「そっか。そうだよね」
「ちょーちょー。リノ、ペルたんといっちょ、うれちいぉ」
 兄弟がいないのでリノちゃんはご機嫌だし、これからもちょくちょく預かってあげようと思う。何故かリノちゃんとペルちゃんが一緒にお風呂に入るのだけは断固阻止したパパがおりますが、子供が一人増えたところでそうこちらも困りません。ペルちゃんは大人しい本当にいい子だ。
「ご馳走様したら用意してルウラの所までみんなをお迎えに行こうよ」
 幼稚園が花で埋まっていないことを祈りつつ、出勤&登園です。

 今日も子供達は一人の欠席者も無くニコニコ元気です。
「お花すごいね」
「またまおーたま?」
 ……子供達にまで言われてますね、魔王様。
 幼稚園の中までお花がいっぱいでした……主に教室部分が。ギリムさんの言葉を信じてお給食までに消える事を祈りましょう。
 そんなわけで午前中は比較的無事な園庭部分で、体操やダンス、駆けっこなどをしてのアクティブな保育です。
「せんせっ、見てー!」
 スミレ組の年長さんは随分と縄とびが上手に出来る子が増えてきました。バラ組は跳び箱をやってます。ほとんどの子が上でぽてんとお尻をつくのが、これはこれで可愛いのですが、中には種族的に簡単に飛び越えちゃう子もいます。
「あらあら、羽根を使って飛んじゃ駄目ですね」
 バラ組の鳥獣人のケイ君は跳ねるというより飛んでます。
「こうやるのよ!」
 ぴょーんと美しいフォームで跳び箱を飛んだのは長いお耳と丸い尻尾の可愛い兎族のロロちゃん。流石です。その他、幼児用に小さい跳び箱なので手もつかずに飛び越えてしまう巨人族の双子もいますね。
「てんて、あれやりたいれす」
 ひまわり組のオチビちゃん達は空洞の木を薄切りにしたフラフープで輪っかくぐりをやってたのですが、お兄さんお姉さん達がやっているのに興味津々の様子。
「いいよ、ひまわりさんでやりたい子はこっちおいで」
 体育系はエイジ君、ウリちゃん達男性陣が指導してくれるので安心でお任せできます。補助職員の先生達もいるので私も楽です。リノちゃんがお腹にいる時も、産前産後に少し休んだだけで済んだのはこの体制が出来上がってるからだ。
 子供達を見守りながら、マーム先生とメイア先生が寄って来た。
「今子供達を見ていて思い出したのですが、お遊戯会も終わったし、そろそろ早めに運動会の計画もたてないといけませんね」
「もうそんな時期ですかぁ……」
 この幼稚園の年間の行事で最も盛り上がるのが先のお遊戯会と運動会、そして絵や工作を披露する作品展の三つ。それ以外にも遠足や畑の収穫祭があるのだが、ほとんどの行事が秋に集中している。新入園児を迎えてから丁度落ち着いてきた頃というのと、年間通じて気候の良いドドイルであっても一番安定しているのがこの季節だから……というのは建前で、実際は開園時にやった時期に合わせて毎年やってるからというのが本音である。
 遠足は冬のはじめ、作品展は年長さんがもうすぐ卒園という冬の終わりなので、秋にはあと二つ、運動会と収穫祭が残されている。
 元々がユーリちゃんのために作ったと言っても過言では無いこの幼稚園。日本のような何学期という概念はない。最近は一週間の夏休みと年長さんの卒園式の後、次の入園式までの一週間というやや長い休みは設けるようになったけど、それ以外は国の祭日と週一回のお休みのみ。毎日の平穏な保育の中で、行事を目標にすることで園児も先生達も結束も強まり、やる気も出るのです。
「運動会はある意味一番大きな行事ですからねぇ」
「人数も多くなって運動会も年々盛り上がってきてますし」
「そうですよね。去年はツツルと合同で、その前は市民参加でやりましたが、今年は何かお考えがありますか? ココナ先生」
 マーム先生やメイア先生が話しているのをうんうんと聞いてたら、いきなり振られたのでちょっと焦る。考えと言われてもなぁ……。
「いやぁ、別にこれと言って……というか、何故私に?」
「実質、ココナ先生が園長みたいなものですからね」
 ……園長は魔王様ですけど。運動会で一番張り切られるのも魔王様ですけど。あ、そういえば魔王様と言えば。
「全然関係無いんですけど……いや、関係あるか。魔王様って結婚式は大々的に挙げられるのですかね? メルヒノア様が来月末頃にはと仰ってましたけど、運動会と時期が被りませんか?」
 魔王様はあまり乗り気では無いようだったが。
「別に大々的に式を挙げなくても良いと思うのだ。お互いその……連れ子持ちの二回目なわけだから」
 そう仰っていたが、他の面々、主にお姉様は、魔王たるものが側室でなく正妃として迎えるのであれば、内々にでは済まされない、国中どころか全世界上げて祝わないといけない~! と物凄い規模の大きな事を言っておいでだった。
「そうですよね、魔王様の結婚式ともなると運動会どころでは無いですね。ご存知です? 魔王様が正妃をお迎えになる時は結婚式が三日三晩続くのですよ」
「えっ? 三日三晩っ!?」
 それは知りませんでした! 良かったー! ウリちゃんと結婚しといて! 半日で終わったもんな、結婚式……魔王様が謎の草を生やして下さったおかげで。
「と、とにかく。運動会の中止は避けたいですし、時期をずらすか、何か良い方法を考えないといけませんね」
 と、その場は済まして保育に専念しようと戻った。
「マ……せんせー、みちぇー!」
 話してる間にリノちゃんはすっかり跳び箱が飛べる様になってる! ペルちゃんもさんちゃんもだ。みんなノリノリ。
「運動会の障害物競走にも使えますよ、跳び箱」
「なわとびもだよぉ」
 向こうは向こうで男性陣と子供達が運動会について盛り上がっていた。
 こりゃ、運動会を中止するわけにも延期もキツイな。かといって結婚式の延期というのもなぁ……どうするかなぁ。
 またまた地味に波乱の予感ですよ、これは。
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