当て馬悪役令息に転生したはずが何故か俺がヒロインに狙われています

ちか

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16話

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 あっと思った次の瞬間にはマリウスは殴られて吹っ飛ばされた。

 殴られたマリウスに気を取られた隙にあっさりと俺は捕まってしまった。不審人物に抱えられたままこちらに向かって走ってくるマティスとルッツと護衛達が見えた。ルッツは驚いた顔をして必死にこちらに向かい、護衛からも必死さが窺えた。しかし、マティスの顔はとてもだった。身振りでは必死にこちらに走ってきているように見えるが、他の人達との熱量が違っているようだった。

 その顔に違和感を覚えた。そんな彼がこちらに近づき「ディートリヒ様!」と叫んだ瞬間だった。

 俺を捕まえている男に向かって何かが突進してきた。その衝撃で男の手が緩み、俺は抜け出すことが出来た。早く逃げなくてはと思っていると、また別の手が俺を捕まえた。しまったと思ったら「何ぐずぐずしてるんだ。逃げるぞ」と声をかけられひっぱられた。そのまま一緒に走り出し、俺の知り合いと判断したのか、ルッツや護衛達の元に連れてきてくれた。

「ディートリヒ様!」

「ご無事ですか?」

「お怪我は?」

「お早く!馬車まで戻りますよ」

 などと矢継ぎ早に言われ、抱き抱えられ馬車に戻ろうとしたら、先程助けてくれた少年が倒れてしまった。俺は慌てて護衛を引き留め、彼も連れて行くと言った。護衛は渋ったが、ここで揉めるよりはと思ったのかもう一人の護衛に指示し意識を失った彼を運んだ。
 
 ちなみに殴られて気絶したマリウスはマティスが背負っていた。

 馬車に戻り、御者に屋敷に戻る指示を出しすぐ様、出発した。来た時同様に護衛一人と従者候補と俺とで馬車に同乗し、さらに今回は助けてくれた少年もそこに追加された。他二人の護衛達は騎馬で帰路へと着いた。

 「お帰りなさいませ」と執事のオイゲンが出迎えてくれたが、すぐにギョッとした顔でこちらを見た。普段滅多に表情を変えないオイゲンの珍しさに苦笑いしつつ、「ただいま」と答えた。

 「ディートリヒ様!一体どうされたのですか?」

 俺達の憔悴した様子、俺の乱れた格好、気を失った従者候補に、見知らぬ少年……

 これらの異変に気づかないものはいない……

「お怪我はありませんか?マティスお前が付いていながら何があった?」

「申し訳ありません」

 俺の怪我を真っ先に心配し、自分の息子には叱責を飛ばしていた。

 主従関係だから仕方ないとは言え、現代日本の感覚のある俺からしたら少し申し訳なさを感じた。

 「とにかくディートリヒ様はお部屋へ。ルッツ、お前も疲れているだろうがディートリヒ様のお世話を頼む。マティスはそのままマリウスを休ませて身だしなみを整えて来い。その後、私と護衛のゴランと共に旦那様の元に何があったか報告にいくぞ」

「「はいわかりました」」

「ゴランもそれで大丈夫ですね?」

「はい。大丈夫です」

「それでその子は?」

 オイゲンがもう一人の護衛のが抱える少年に視線を向けた。

「恩人なんだ!」

 護衛が答える前に俺が答えた。

「だから、オイゲン、彼の手当てをして目が覚めるまで屋敷に置いて欲しいんだ」

 俺はオイゲンに頼んだ。オイゲンは少しの沈黙の後、

「わかりました。ディートリヒ様の恩人でしたか。では丁重におもてなしさせていただきます」

 そういってメイドを呼び、彼を客間へと連れて行くように指示をした。

「では、ディートリヒ様、お部屋に向かいましょう」

「あぁ、ルッツも疲れているのにすまない」

「いえ、一番大変だったのはディートリヒ様ですから」

 彼が客間に連れて行かれるのを見送ったところでようやく俺も部屋へと向かった。


 
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