ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

文字の大きさ
97 / 189

全知全能と神樹の麓

しおりを挟む
 認めたくはなかったが、認めることにした。僕がなんて言い訳をしようと、僕はこの世界を創った神であって、無関係な一般人を装うのはズルいことだった。だから、僕はこの世界でだけは神という称号を受け入れようと思う。

「敬語……使った方が良いかしら?」

「あはは、それは大丈夫」

 にやりと笑って聞いて来たスイに、僕は首を振った。

「でも、凄いなぁ……これが賢者かぁ」

「なにそれ?」

 怪訝な目をするスイに、僕は笑う。

「こうも見事に諭されるとは思ってなかったよ。自分で言うのもなんだけど、怖くは無かったの?」

「少しはね。でも、ここで逆上するような奴じゃないってのは分かってたわ。だって、あんなに不安そうに手を握って来るんだもの」

 その言い方だと、手を握ることが目的だったみたいじゃん。恥ずかしいから止めてよ。

「きっと、心は普通の人間で……優しい子なんだろうって、思ったわ。歳も、見た目通りなんでしょう?」

「そうだけど……そういう君は、見た目通りじゃないの?」

「貴方の世界の基準では、ね」

「知ってるんだ。僕の世界のことも」

 スイは頷き、かなり近付いて来た神樹の方を見た。

「私は賢者よ。そうあるように作られたの。与えられてる知識も、他の使徒より多いわ」

「へぇ……因みに、幾つなの?」

「さぁね。女性に歳のことを聞くのはタブー、なんでしょう?」

「あはは、まぁね」

 こっちでもそうなんだ。いや、賢者のスイだからこそ知ってるってだけなのかな。でも、デリカシーが無い奴だって思われたかもしれない。まぁ、事実無いんだけど。

「ほら、着いたわよ……神樹の麓に」

 スイがそう口にすると同時に、森が消えた。木々の生えない空間がそこには広がっていた。あるのは、中心で凄まじい存在感を放つ神樹と、無造作に並び立つ木造の建築。現代的というには程遠いが、意外にも原始的な雰囲気はそこまで感じなかった。

「……凄いね。神秘的だ」

 巨大な神樹が適度に日の光を遮っているお陰か、美しく木漏れ日が差していた。一日中、ずっと見ていられるような、神秘的で心が落ち着く光景だった。

「建築も、賢者の入れ知恵だったりする?」

「少しはね。ただ、建築に関する知識は余りなかったから……みんなで色々と試行錯誤して、頑張ったのよ」

「へぇ……なんか、良いね」

 僕はその光景を思い浮かべながら、神樹とその麓に作られた里を眺め……あることに気付いた。

「あれ、人は?」

「神樹様の上に居ると思うけど? みんな、暇な時は大体あそこで過ごしてるもの」

 そう言って、スイは神樹の広大な樹冠を指差した。言われてみれば、緑の葉の中に木人が紛れているように……見えなくもない。

「貴方が思う以上に、神樹様は私達にとって凄く大事な存在なのよ。眠る時も神樹様の上で眠るし」

「え、落ちたりしないの?」

 僕が聞くと、スイはにやりと笑い、スイから遠い方の僕の肩を叩いた。

「スイ、何を……へ?」

 枝が、僕の肩を叩いていた。いや、違う。その木の枝のようなものがどこから繋がっているか辿るように追ってみれば、スイのお尻の辺りから伸びていた。

「まさか、尻尾?」

「機能としては全く違うけど、そんな感じね」

 どこかツルツルとした木の枝、のような尻尾。煽るようにこちらを向いてちょろちょろと動いていたので掴んでみると、意外と触り心地はザラザラとしていて、所々に突っかかりというか、層のようなものがあるのを感じた。木の皮に近い感じもあるけど、グリップが凄い手袋みたいな感じもあった。

「あ、あんまり雑に触らないでよ? そこまで強い器官じゃないんだから」

「ごめん。こっち向いてたから、つい」

 僕がそう言うと、尻尾は逃げるように戻って行って、不思議なことにどこかに消えてしまった。

「ねぇ。尻尾、どこに消えたの?」

「……体の中よ。伸び縮みするから、隠しておけるの」

 へぇ、凄い。生命の神秘って感じだ。

「ん、そういえば……木の上で寝るなら、下の建築物は何の為にあるの?」

「大体は蔵よ」

 あ、なるほどね。倉庫なんだ。

「あとは、作業場だったり調理場だったり、そういう感じね。個人の家なんかは無いわよ」

「……そうなんだ」

 不思議な生体だ。

「でも、熱かったり寒かったりしたらどうするの?」

「神樹様がどうとでもしてくれるわよ。あ、でも地下で寝るって人も多いわね。神樹様の手を煩わせたくないって」

「意外と、結構色々してくれるんだね……神樹」

「そうよ。まぁ、正直なところ……使徒とは言いつつも、実体としては共生関係に近いもの。宗教的な意識があるのも事実だけど」

 なんか、客観的に見てるんだね。賢者だからかな。

「……着いた、ね」

 そして、話している間に僕らは神樹まで辿り着いていた。何というか、形容しがたい神秘的なオーラがその樹からは滲み出していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「記録係なんてお荷物はいらない」 勇者パーティを支えてきた青年・ライトは、ダンジョンの最深部に置き去りにされる。 彼のスキル《記録》は、一度通った道を覚えるだけの地味スキル。 戦闘では役立たず、勇者たちからは“足手まとい”扱いだった。 だが死の淵で、スキルは進化する。 《超記録》――受けた魔法や技を記録し、自分も使える力。 そして努力の果てに得たスキル《成長》《進化》が、 《記録》を究極の力《アカシックレコード》へと昇華させる。 仲間を守り、街を救い、ドラゴンと共に飛翔する。 努力の記録が奇跡を生み、やがて―― 勇者も、魔王も凌駕する“最強”へ。

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

処理中です...