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全知全能と脆弱
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前へ踏み出したイシの拳が、振るわれる。ゴーレムの体全体が青く光り、その身が全力で後ろに逸らされると、イシの拳は空を切る。
「ッ、行け! カウンターを食らわせろッ!!」
ゴーレムの拳が再び青い光を放つ。今度は、その拳がイシの頭に向かい、魔法陣がイシの顔を覆い尽くした。
「……」
「なぁッ!?」
振るわれる拳を顔面で受け止めたイシ。そのひょろ長い腕が、ゴーレムの腕を掴み、顔から離させると、思い切り後方に投げ飛ばした。
黄金色の斧を持つもう片方の腕は、だらりと下げられたままである。
「き、機能が停止した……投げられただけなんだぞッ!?」
「え、止まったの?」
確かに勢い良く投げられていたが、見た目的にはゴーレムも壊れてはいない。全然、まだ立ち上がって向かって行けそうに見えるんだけど……ゴーレムは、地面に叩き付けられたまま動き出すことは無かった。
「そう、か……」
ラクリオはその様をしばらく眺めた後、項垂れるように頷いた。
「完敗だ」
顔を上げたラクリオは、じっと動かないゴーレムを見ていた。
「何が起きたの……?」
「オラの未熟さを指摘されたんだろうさ。守護神様は、思慮までふけぇんだな」
未熟さ。何のことか分からなかった僕は首を傾げた。
「ゴーレムの内部接続回路……恐らく首辺りに、脆弱な部分があった。打ち所が悪ければ、こうやって地面に叩き付けられるだけで機能停止するんだって教えられたんだな」
「なるほど……」
首回りが脆弱なのって普通なんじゃないのか。いや、ゴーレムだと違うのかな。
「……なぁ、センセイ」
「その呼び名止めてって言ったよね」
僕はゴーレムについての知見は殆ど無いから。寧ろ、ちょっと興味あって君から教わろうとしてるレベルだから。
「オラ、いつかは絶対……守護神様にも勝てるようなゴーレムを作ってやるよ」
「そっか……期待して待ってるよ」
僕が答えると、ラクリオはふっと笑った。
「今回はアンタの勝ちだな」
「まぁ、そうだね。別に僕は何にもしてないようなもんなんだけど」
ラクリオが手をちょいちょいとこまねくと、何かがふわりと飛んできてその手に収まった。それは、青い大きな目を持つ球形のゴーレムのようなものだった。
「今回は前と違ってちゃんとデータは取れたからな……一味違うゴーレムを見せてやるぞ、次は!」
「うん、待ってるよ」
「その余裕そうな顔面もいつかは崩壊させてやるぜ……!」
「あの、僕を殴らせるのは止めてね?」
ゴーレム同士の戦いにおいて、ダイレクトアタックは禁止だからね。
「ま、今日は負けちまったしな……ゴーレムの全て、教えてやるよ」
「さっき負けたとは思えないセリフだね」
「うっせぇな! 文句言うと教えねぇからな!?」
「はいはい、ごめんって」
僕が小さく笑いながら言うと、ラクリオは顔を赤くしたまま作業場の方に歩いて行った。
♦
次の日、僕は机の上で突っ伏していた。理由は眠いからである。昨日はちょっと夜更かしてしまった。ラクリオからゴーレムの授業を受けたり、ソラやスイと話したりしている内に、時間は過ぎ去ってしまっていたのだ。
「よ、宇尾根!」
「ん……」
肩を叩かれた僕は顔を傾けて、突っ伏したままで声の方を見た。
「……黒崎さん、どうしたの?」
「眠そうだなぁって思って、起こしてみた」
「なんでだよ」
僕は小さく溜息を吐き、体を起こし、ついでに背伸びをした。そろそろ、次の授業が迫る頃合いだからだ。
「最近、授業集中してる? いつもよりボーっとしてない?」
「してるかもだけど……良く見てるね」
僕が言うと、黒崎さんはにやりと笑った。
「宇尾根、見てると面白いからね!」
「面白いことある……?」
僕とか仏頂面でボーっとしてるだけだと思うけどね。特に、授業中なんかはその極みだ。
「えぇ、面白いけど? 普通に授業受けてるよりはずっと」
「まぁ、うん……恥ずかしいからあんま見ないでね」
僕はそう断り、通学用のリュックから教材を取り出して机の上に広げた。次は数学である。いやぁ、想像するだけで眠いよ。
「よーし、授業始めんぞ。座れ、お前ら」
「うへ、もう来ちゃった」
黒崎さんは変な声を上げると、手を振って自分の席に帰って行った。僕は幾つかの視線が向けられていることを感じつつ、小さく溜息を吐いた。
「日直、挨拶」
最近、黒崎さんが絡んで来る時に向けられる視線があることに気付き始めた。魔力に関する修業のせいか、それとも幾度かの戦闘を経験したことによる成長なのか、その視線に気付けるようになったのは最近だけど……どうにも、あんまり良い感情が籠められているようには思えないのだった。
「よろしくお願いします」
僕は日直の言葉に合わせて立ち上がり、頭を下げて、直ぐに席に座った。
「……勘弁して欲しいなぁ」
黒崎さんも、嫌な視線も。どうか、黒崎さんの気まぐれに騙されないで欲しい。僕に構って来るのは多分、いや絶対にその時のノリでしかないんだから。
「ッ、行け! カウンターを食らわせろッ!!」
ゴーレムの拳が再び青い光を放つ。今度は、その拳がイシの頭に向かい、魔法陣がイシの顔を覆い尽くした。
「……」
「なぁッ!?」
振るわれる拳を顔面で受け止めたイシ。そのひょろ長い腕が、ゴーレムの腕を掴み、顔から離させると、思い切り後方に投げ飛ばした。
黄金色の斧を持つもう片方の腕は、だらりと下げられたままである。
「き、機能が停止した……投げられただけなんだぞッ!?」
「え、止まったの?」
確かに勢い良く投げられていたが、見た目的にはゴーレムも壊れてはいない。全然、まだ立ち上がって向かって行けそうに見えるんだけど……ゴーレムは、地面に叩き付けられたまま動き出すことは無かった。
「そう、か……」
ラクリオはその様をしばらく眺めた後、項垂れるように頷いた。
「完敗だ」
顔を上げたラクリオは、じっと動かないゴーレムを見ていた。
「何が起きたの……?」
「オラの未熟さを指摘されたんだろうさ。守護神様は、思慮までふけぇんだな」
未熟さ。何のことか分からなかった僕は首を傾げた。
「ゴーレムの内部接続回路……恐らく首辺りに、脆弱な部分があった。打ち所が悪ければ、こうやって地面に叩き付けられるだけで機能停止するんだって教えられたんだな」
「なるほど……」
首回りが脆弱なのって普通なんじゃないのか。いや、ゴーレムだと違うのかな。
「……なぁ、センセイ」
「その呼び名止めてって言ったよね」
僕はゴーレムについての知見は殆ど無いから。寧ろ、ちょっと興味あって君から教わろうとしてるレベルだから。
「オラ、いつかは絶対……守護神様にも勝てるようなゴーレムを作ってやるよ」
「そっか……期待して待ってるよ」
僕が答えると、ラクリオはふっと笑った。
「今回はアンタの勝ちだな」
「まぁ、そうだね。別に僕は何にもしてないようなもんなんだけど」
ラクリオが手をちょいちょいとこまねくと、何かがふわりと飛んできてその手に収まった。それは、青い大きな目を持つ球形のゴーレムのようなものだった。
「今回は前と違ってちゃんとデータは取れたからな……一味違うゴーレムを見せてやるぞ、次は!」
「うん、待ってるよ」
「その余裕そうな顔面もいつかは崩壊させてやるぜ……!」
「あの、僕を殴らせるのは止めてね?」
ゴーレム同士の戦いにおいて、ダイレクトアタックは禁止だからね。
「ま、今日は負けちまったしな……ゴーレムの全て、教えてやるよ」
「さっき負けたとは思えないセリフだね」
「うっせぇな! 文句言うと教えねぇからな!?」
「はいはい、ごめんって」
僕が小さく笑いながら言うと、ラクリオは顔を赤くしたまま作業場の方に歩いて行った。
♦
次の日、僕は机の上で突っ伏していた。理由は眠いからである。昨日はちょっと夜更かしてしまった。ラクリオからゴーレムの授業を受けたり、ソラやスイと話したりしている内に、時間は過ぎ去ってしまっていたのだ。
「よ、宇尾根!」
「ん……」
肩を叩かれた僕は顔を傾けて、突っ伏したままで声の方を見た。
「……黒崎さん、どうしたの?」
「眠そうだなぁって思って、起こしてみた」
「なんでだよ」
僕は小さく溜息を吐き、体を起こし、ついでに背伸びをした。そろそろ、次の授業が迫る頃合いだからだ。
「最近、授業集中してる? いつもよりボーっとしてない?」
「してるかもだけど……良く見てるね」
僕が言うと、黒崎さんはにやりと笑った。
「宇尾根、見てると面白いからね!」
「面白いことある……?」
僕とか仏頂面でボーっとしてるだけだと思うけどね。特に、授業中なんかはその極みだ。
「えぇ、面白いけど? 普通に授業受けてるよりはずっと」
「まぁ、うん……恥ずかしいからあんま見ないでね」
僕はそう断り、通学用のリュックから教材を取り出して机の上に広げた。次は数学である。いやぁ、想像するだけで眠いよ。
「よーし、授業始めんぞ。座れ、お前ら」
「うへ、もう来ちゃった」
黒崎さんは変な声を上げると、手を振って自分の席に帰って行った。僕は幾つかの視線が向けられていることを感じつつ、小さく溜息を吐いた。
「日直、挨拶」
最近、黒崎さんが絡んで来る時に向けられる視線があることに気付き始めた。魔力に関する修業のせいか、それとも幾度かの戦闘を経験したことによる成長なのか、その視線に気付けるようになったのは最近だけど……どうにも、あんまり良い感情が籠められているようには思えないのだった。
「よろしくお願いします」
僕は日直の言葉に合わせて立ち上がり、頭を下げて、直ぐに席に座った。
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