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全知全能と無駄な抵抗
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ゴツい、背の高い、顔の怖い、中年の男。筋肉質な肉体に、傷のある面。明らかに、カタギではない。向こうの世界でもそんな人は見て来た筈なのに、僕は同じくらいこの人が恐ろしく見えた。
「久し振りだな」
「あ、はい……お久しぶりです」
男は柚乃の方を見てそう口にした。それに丁寧に対応する柚乃に、僕は珍しさを感じてちょっと笑いそうになった。
「そっちは……まぁ良い。取り敢えず、上がっていけ」
男は僕の方を見て目を細めた後に、事務所の中へと入って行った。
「……あっ」
思い出した。あの人だ。廃工場の外側で人狼みたいなのと戦っていた人だ。やっぱり、同じ事務所の人だったんだ。
「あ、ありがとうございます。あの、お邪魔します。御岳さん」
「おう」
あ、この人が御岳さんだったんだ……御岳相談事務所って言うから、御岳さんがやってる事務所なんだろうとは思ってたけど。
「お邪魔します」
事務所の入り口で待っている男……御岳さんにぺこりと頭を下げて事務所に足を踏み入れた。
「おっ?」
「柚乃ちゃん!?」
ソファに座ってテレビを見ていた二人の少女が顔を伸ばしてこちらを見た。水色の髪の女の子は柚乃を見つけると直ぐに立ち上がって駆け寄り、茜さんは柚乃を見て、次に顔を出来るだけ逸らしている僕の方を見て……
「あぁっ!?」
残念ながら、気付かれた。
「柚乃ちゃん、大丈夫だった!? 怪我とかしてないっ!?」
「う、うん。してない。全然してない。大丈夫だよ」
「おいおい……」
ニヤニヤと笑いながら近付いてくる茜さんに、僕は必死に指を口元に立てた。幸い、柚乃は水色の髪の子に話しかけられていたこちらは見ていない。
「あ、あの、久し振りです。いやぁ、あの時は助けて頂いてありがとうございます!」
「……白々しいなテメェ、なんだそりゃ」
「ちょ、あの、茜さん。ちょっとこっち、カムッ」
「あァ?」
僕は茜さんの袖を掴み、引っ張った。
「おい、バカ引っ張んなッ! 伸びんだろうが袖がッ!」
「ちょい、静かに……!」
僕は茜さんを入り口の方まで何とか引っ張って来ると、何も喋らないでくれと自分の口元に指を立てた。
「ッ、何だよ。分かったっての」
「アレ、僕の妹だから、その……あんまり、前に言ってた僕が君を助けたどうこうみたいな話はしないで欲しい」
「あ? あぁ、そうか……妹にも隠してんだな? この前は姿も消してたもんな」
ば、バレてるー!? 透明化してたし声も変えてたのにぃ!?
「な、何のことかな……?」
「……取り敢えず、隠してるってことで良いんだよな?」
「まぁ、隠してるって言うか、何ていうか、君の勘違いだけど、その、妹に聞かれてもややこしいじゃん?」
僕が必死に弁明すると、茜さんは溜息を吐いた。
「無駄な抵抗は止めろよ……」
無駄な抵抗じゃないから。意味あるから。明言するかしないかって、やっぱり大事だからね! ほぼバレてるとしても、僕は認めないからな!
「ま、分かったよ。お前はただのアイツの兄って認識で居ときゃ良いんだな?」
「うん。あと、不良から僕を助けてくれたことは妹も知ってるから、それは大丈夫」
「なんか、お前が一方的に私に恩がある感じに見えて嫌なんだが?」
「仕方ないじゃん。我慢してよ」
茜さんはぴくぴくと頬を動かし、それから御岳さん達の方を見た。もう、皆座っていて僕らだけ立ち話をしている形になっていた。
「しゃあねぇな。戻るぞ」
「うん、ありがとね」
僕が言うと、茜さんは僕の袖を掴んで引き留めた。
「こっちのセリフだ。ありがとな」
「あはは、何のことかなー」
僕が言うと、茜さんはハッと笑って御岳さん達の方へと戻って行った。
「何話してたんだ」
「いやぁ、この前はありがとうございましたってな? 感謝されちまったぜ」
「……そうか」
御岳さんは僕の方をじっと見ると、何かを察したように頷いた。
「取り敢えず、二人共座れ。依頼主様も待ってるからな」
「あいよ」
「あ、はい。すみません」
正直言ってボロいソファに座り、僕は柚乃と並んで御岳さん達と向かい合う形になった。
「さて……依頼についての報告と、こちらの不手際についての謝罪をさせて貰おうか」
「え?」
御岳さんがそう言うと、柚乃は虚を突かれたような声を上げた。
「俺達のせいで巻き込んでしまったからな。金が欲しいなら渡そう」
「おい、今はあんまり余裕もねぇだろ……」
「金が無くても、賠償の責任はあるだろう。クソみたいな世界に巻き込んで、クソみたいな思いをさせた詫びは……どう考えたって、必要でしかない」
「それは、そうだがよ……」
そう話す二人。水色の髪の女の子は難しそうな顔で黙り込んでいる。
「あ、あのっ、寧ろ私は謝りに来てて……賠償なんて、全然要らないですからっ!」
「そうは言ってもだな……」
「一般の人を巻き込んで命の危険に晒すなんて、絶対許されないことだから……」
重い沈黙が落ちる空間。仕方ないので、僕が鶴の一声を放つことにした。
「まぁ、どっちも謝ってどっちも許したら良いんじゃない? そしたら、どっちが悪いとか無いからさ」
僕がそう言うと、皆がこちらを見て……そして、水色の髪の子が口を開いた。
「あの、そもそも……貴方は何でここに居るんですか?」
「長男、だから?」
「えっと、一般の方なんですよね?」
「うん」
当然の如く頷いた僕に、女の子は沈黙した。
「久し振りだな」
「あ、はい……お久しぶりです」
男は柚乃の方を見てそう口にした。それに丁寧に対応する柚乃に、僕は珍しさを感じてちょっと笑いそうになった。
「そっちは……まぁ良い。取り敢えず、上がっていけ」
男は僕の方を見て目を細めた後に、事務所の中へと入って行った。
「……あっ」
思い出した。あの人だ。廃工場の外側で人狼みたいなのと戦っていた人だ。やっぱり、同じ事務所の人だったんだ。
「あ、ありがとうございます。あの、お邪魔します。御岳さん」
「おう」
あ、この人が御岳さんだったんだ……御岳相談事務所って言うから、御岳さんがやってる事務所なんだろうとは思ってたけど。
「お邪魔します」
事務所の入り口で待っている男……御岳さんにぺこりと頭を下げて事務所に足を踏み入れた。
「おっ?」
「柚乃ちゃん!?」
ソファに座ってテレビを見ていた二人の少女が顔を伸ばしてこちらを見た。水色の髪の女の子は柚乃を見つけると直ぐに立ち上がって駆け寄り、茜さんは柚乃を見て、次に顔を出来るだけ逸らしている僕の方を見て……
「あぁっ!?」
残念ながら、気付かれた。
「柚乃ちゃん、大丈夫だった!? 怪我とかしてないっ!?」
「う、うん。してない。全然してない。大丈夫だよ」
「おいおい……」
ニヤニヤと笑いながら近付いてくる茜さんに、僕は必死に指を口元に立てた。幸い、柚乃は水色の髪の子に話しかけられていたこちらは見ていない。
「あ、あの、久し振りです。いやぁ、あの時は助けて頂いてありがとうございます!」
「……白々しいなテメェ、なんだそりゃ」
「ちょ、あの、茜さん。ちょっとこっち、カムッ」
「あァ?」
僕は茜さんの袖を掴み、引っ張った。
「おい、バカ引っ張んなッ! 伸びんだろうが袖がッ!」
「ちょい、静かに……!」
僕は茜さんを入り口の方まで何とか引っ張って来ると、何も喋らないでくれと自分の口元に指を立てた。
「ッ、何だよ。分かったっての」
「アレ、僕の妹だから、その……あんまり、前に言ってた僕が君を助けたどうこうみたいな話はしないで欲しい」
「あ? あぁ、そうか……妹にも隠してんだな? この前は姿も消してたもんな」
ば、バレてるー!? 透明化してたし声も変えてたのにぃ!?
「な、何のことかな……?」
「……取り敢えず、隠してるってことで良いんだよな?」
「まぁ、隠してるって言うか、何ていうか、君の勘違いだけど、その、妹に聞かれてもややこしいじゃん?」
僕が必死に弁明すると、茜さんは溜息を吐いた。
「無駄な抵抗は止めろよ……」
無駄な抵抗じゃないから。意味あるから。明言するかしないかって、やっぱり大事だからね! ほぼバレてるとしても、僕は認めないからな!
「ま、分かったよ。お前はただのアイツの兄って認識で居ときゃ良いんだな?」
「うん。あと、不良から僕を助けてくれたことは妹も知ってるから、それは大丈夫」
「なんか、お前が一方的に私に恩がある感じに見えて嫌なんだが?」
「仕方ないじゃん。我慢してよ」
茜さんはぴくぴくと頬を動かし、それから御岳さん達の方を見た。もう、皆座っていて僕らだけ立ち話をしている形になっていた。
「しゃあねぇな。戻るぞ」
「うん、ありがとね」
僕が言うと、茜さんは僕の袖を掴んで引き留めた。
「こっちのセリフだ。ありがとな」
「あはは、何のことかなー」
僕が言うと、茜さんはハッと笑って御岳さん達の方へと戻って行った。
「何話してたんだ」
「いやぁ、この前はありがとうございましたってな? 感謝されちまったぜ」
「……そうか」
御岳さんは僕の方をじっと見ると、何かを察したように頷いた。
「取り敢えず、二人共座れ。依頼主様も待ってるからな」
「あいよ」
「あ、はい。すみません」
正直言ってボロいソファに座り、僕は柚乃と並んで御岳さん達と向かい合う形になった。
「さて……依頼についての報告と、こちらの不手際についての謝罪をさせて貰おうか」
「え?」
御岳さんがそう言うと、柚乃は虚を突かれたような声を上げた。
「俺達のせいで巻き込んでしまったからな。金が欲しいなら渡そう」
「おい、今はあんまり余裕もねぇだろ……」
「金が無くても、賠償の責任はあるだろう。クソみたいな世界に巻き込んで、クソみたいな思いをさせた詫びは……どう考えたって、必要でしかない」
「それは、そうだがよ……」
そう話す二人。水色の髪の女の子は難しそうな顔で黙り込んでいる。
「あ、あのっ、寧ろ私は謝りに来てて……賠償なんて、全然要らないですからっ!」
「そうは言ってもだな……」
「一般の人を巻き込んで命の危険に晒すなんて、絶対許されないことだから……」
重い沈黙が落ちる空間。仕方ないので、僕が鶴の一声を放つことにした。
「まぁ、どっちも謝ってどっちも許したら良いんじゃない? そしたら、どっちが悪いとか無いからさ」
僕がそう言うと、皆がこちらを見て……そして、水色の髪の子が口を開いた。
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「うん」
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