ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と関係性

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 ショックを受けたような顔をする僕に、茜さんはフッと笑った。

「まぁ、確定って訳でもねぇけどな……九割九分、買収されてるだろうなって感じだ」

「ほぼ確定じゃんか」

「街中で襲って来て、痕跡も余裕で残ってるっつーのに何にも介入してこねぇってのは管理局の立場からして不自然だ。まぁ、確実に協力か不介入の約束はしてるだろうよ」

「逆に捕まえに来ないだけマシって所かな……?」

 流石に表向きに協力は出来ないのかも知れない。他の組織からの見え方を気にしてたり、若しくはここら辺を担当してる偉い人が独断でやってるとか。

「何にしろ、向こうの内情が見えもしねぇ以上はこっちから接触は出来ねぇ訳だ。助けを求めに行って、逆に捕まりましたなんてのはお笑い種にもならねぇ。それに、私らは自分を守る為とはいえだがイリーガルなこともやらかしてるからな……そっちを詰められたら、面倒臭ぇ」

 まぁ、普通に殺してるとか言ってるもんね……どういう処理になるかは、確かに分からない。

「それじゃ、支配者の方は?」

「無理だろうな。あの家はクソだぜ。クソ過ぎて爆発したらしいが、どうなってるのかも良く分からねぇ。だが、癇癪持ちのバケモンみてぇなガキが居るって話は聞いてるぜ」

「話してみたら助けてくれるかもよ?」

「……支配者ってのは、そう簡単な存在じゃないんだぜ。市長か何かだと思ってるんじゃねぇだろうな」

 茜さんは冷えた目で僕を見ている。

「支配者ってのは、ヤクザみてぇなもんだぜ。中には昔気質のヤクザみてえに街の為、人の為って奴も居はするだろうが、大体は力が強いからそこを縄張りにしてるってだけだ。外から来る害虫を追い払ったり、内から湧き出る膿を出したりすることはあるかも知れねえが、それも大抵は自分の為だぜ」

「その、管理局とは相容れてるの?」

「知らねぇが、昔の警察とヤクザみてぇなもんじゃねえのか? 勿論、強いから手を出しづらいってのもあるかも知れねぇが……放っておくと便利だから放っておいてるとこもあるだろうな。勝手にある程度は魔術士を纏めてくれたり、ヤバい奴を勝手に処理してくれたり、正式には出来ないやり方で厄介な奴を消してくれたりな」

「……なるほど」

 だが、と茜さんは続けた。

「今の夜咲家は基本的に何もしてねぇ。支配者にも不干渉のタイプは別に珍しくないしな。だから、管理局としても触れる必要も無い存在だろうよ」

「何もしないなら、支配者は別の人になったりしないの?」

「支配者ってのは、別に投票や大会で決めてる訳じゃないんだぜ? そこら辺の区域で、一番強い奴が自然とそう呼ばれるようになるんだよ。だから、別に誰かが立候補するなんてねぇんだよ」

「……なるほどね」

 飽くまでも地元最強的なノリなのか。だけど、魔術士の世界じゃその個人の強さだけで実際の影響力を得られちゃうって訳だ。

「つっても、表に出てないだけで本当はそいつよりも強かったりなんてのは良くあるんだろうがな。魔術士なんてのは、秘匿主義の奴も多いからよ」

「じゃあ……今は、その夜咲家の人が最強って認められてるから支配者なんだ」

「当たり前だろ。それまでも殆ど支配者だった夜咲家を纏めて吹き飛ばしてんだぜ? それも、ガキがだ」

「なるほど……」

 一応、紫苑ちゃんが暴走して屋敷ごと消し飛ばしたことは表に出てるんだ。まぁ、当たり前か。隠せるようなことじゃないよね。

「それに、前から噂にはなってたらしいからな。夜咲家のガキがヤバいってよ。家の奴が良く自慢してたらしいぜ」

「へぇ」

 我が子可愛さによる自慢なのか、それとも自分のアクセサリーを自慢するような気分なのか……多分、後者なんだろう。

「ま、そういう訳だ。私らが頼れるのは、御岳が呼んでるスーパー助っ人だ。つっても、来るまでにまだ時間がかかる訳だがな」

「すーぱーすけっと……」

「あぁ、魔術学会の奴だぜ」

「なんだっけ、それ」

 僕が言うと、茜さんは眉を顰めた。

「今更そこで惚けても意味ねぇぞ」

「いや、本当になんだっけ……?」

「魔術士の最大の組織だよ。国家にも属さねぇ、最強の組織だ。国ともタイマン張れるような魔術師が何人も居る」

「え、本当に?」

 僕が聞くと、茜さんは笑うことも無く頷いた。

「マジもマジ。大マジだよ」

「えぇ……?」

 僕は首を傾げながら、思い出した。最初に魔術を使った時に全知全能から、そんな名前を聞いた気がする。魔術が隠匿されてるのはこの組織によるもの、みたいなことを言ってた気がする。

「……まぁでも、頼んでみたら良いじゃん。支配者の子に」

「なんでそんなに推してくんだよ!? 今の支配者は相当ヤベェって聞いてるんだよ、話しかけるだけで消し飛ばされるとか、視界に入っただけで殺される、とかな!」

 そんなに言われてるんだ。……いや、でも現実にそれが怒り得る可能性も普通にあったか。話しかけた内容が紫苑ちゃんの精神を揺らがせるものだったりしたら、魔力の暴走で死ぬことも有り得たのかも知れない。視界に入っただけで殺されることは流石に無いだろうけど。

「うーむ……」

「んだよ、もしかして知り合いだったりすんのか? 夜咲家のご令嬢さんとよ」

 僕は、悩んだ末に首を横に振った。

「いや、言ってみただけだよ」

「なんだそら……」

 溜息を吐き、茜さんは再び僕と目を合わせた。

「兎も角だ、私が言いたかったのは……お前の妹は、しっかり守ってやれよ。私らと接触したことがバレりゃ、襲われてもおかしくはねぇ」

「なるほどね、分かったよ」

 頷いた僕に、茜さんはにやりと笑った。

「随分簡単に頷くじゃねえか。一般人、なんだろ?」

「い、いや、あの……」

 茜さんは肩に手を置き、僕の耳元に口を近付けた。

「気ィ付けろよ。そんだけ詰めが甘いと、いつか足元掬われんぜ?」

「ッ……」

 またニヤッと笑うと、茜さんはテーブルの方へと戻って行った。

「……心臓に悪いよ」

 柚乃がファンになる気持ちも、ちょっと分かるかも知れない。普通に、ドキッとしたし。
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