ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と秘密兵器

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 そうしてテーブルに戻って少し話した後、もう話すべきことも無いだろうと訪れた解散の折に、こつこつと階段を降りて来るような音が聞こえた。
 ソファから立ち上がろうとした僕だが、足に力を入れたまま立ち上がりはせずにその音の方に視線を向けた。

「あ……」

 階段から降りて来たのは、白っぽい金色の髪を背中まで伸ばした少女だった。可憐という言葉が似合う少女は、僕らを見ると気まずそうに声を上げる。

「光、悪いな。今は来客中でな」

「で、ですよね。ごめんなさい……上に戻って、待って……」

 あの時、廃工場に居た女の子だ。それに気付いた僕が再び力を抜いてソファに腰を下ろしながら、あの時のことを思い出していると、その少女も何かに気付いたように僕の方を見て目を見開いた。

「見えない人……?」

 呆然と呟いた言葉に、僕は眉を顰めた。気付かれている。あの時の、見えない奴が僕だってことに気付いてるみたいだ。

「あー、光。ちょっと良いか。話がしたくてな?」

「それより、あの時の……! お礼を言わないと、むぐっ!?」

 僕の方に駆け寄ろうとしていた光というらしい少女は、歩いて来た茜さんに口を手で塞がれた。

「ストップ、ストップだ。向こうで話そうぜ」

「んんっ……」

 まるで誘拐されていくように二階に連れ戻されていった少女に、僕は一抹の不安を感じながらも安心していた。茜さんが僕に配慮して口を封じてくれたんだろう。

「あ、あの、あの子は……?」

「あぁ、大丈夫だ。まぁ、うちの居候みたいなもんだな」

「居候……」

 何か良くないことが起きてるんじゃないかと不安げに尋ねた柚乃に、御岳さんは何でもないように答えた。柚乃さんはその答えを反芻するだけで、更に問い詰めるようなことは出来ないみたいだった。

「まぁ、帰ろっか。あんまり長居しても、迷惑だろうからさ」

「うん……そうだよね」

 少しだけ名残惜しそうな顔をした柚乃だったが、僕が立ち上がると一緒に立ち上がった。

「急に押しかけてすみませんでした。また、機会があれば依頼させて貰いますよ」

「す、すみませんでした!」

「いや、良いんだ。お互い、既に謝って許したってことで忘れよう」

「暫くは来ない方が良いとは思うけど、落ち着いたらいつでも来てね?」

 にこっと笑って言う瑞樹さんに、僕はいつ落ち着くのかどうやって判断すれば良いのかと心の中で思ったが、まぁもう来ることも無いだろうからと突っ込みはしなかった。

「はい、またいつか」

「またっ、また会いたいです! その、茜さんにも……」

「ぷふっ、そうよね。茜にもまた会いたがってたって伝えておくね」

 こくこくと頷く柚乃に苦笑いしながら、僕はその事務所を出て行ったのだった。



 帰り道、僕と柚乃は二人でどこかボーっと歩いていた。いや、僕はちょっと襲われるんじゃないかってビビってるけど。

「……やっぱり、不思議な所だったね」

「うーん、そうだね」

 僕の最近行ってる場所の不思議度と比べたら全くなんてことない気もするけど、僕が今まで平凡だと思って生きて来た現代日本にあんな世界が広がっていたと思えば、やっぱり不思議かも知れない。

「ねぇ、お兄ちゃんは……その、なんで、平然としてるの?」

「え?」

「いや、だって普通……あんな、魔法使いの集まりを見たら、もっとこう、あるじゃん」

「そう言われても、別に僕の目の前で魔術を使われた訳でも無いし……まぁ、実際に見て本当なんだろうなぁって思いはしたけど、逆に現実味が無くて何とも言いづらいところはあるよね」

 一応、御岳さん達もしっかりと魔術士がどうこうみたいな明言はあんまりしないようにしてたみたいだし。

「ていうか、外で不用意にこんな話しない方が良いんじゃない?」

「た、確かに……悪い魔法使いに聞かれたら、殺されちゃうかも」

 まぁ、そんな可愛い単語を使ってる時点で聞かれても一般人としか思われ無さそうな気もするけど。ただ、警戒しておくに越したことは無いだろう。茜さんにも、妹を守ってやれと言われてたしね。一応、危険を減らしておく心がけはしておくべきだろう。どうせ、守護の印を付けてるから殺されるなんて有り得ないんだけども。

「……そうだ、茜さんと二人で話してたのは何だったの?」

「げっ」

 聞かれてしまったか。聞かれるかなぁとは思ってたんだけど、まだ言い訳を構築出来ていないんだ。どうしようかな。何ていうべきか。

「あの……あの時、助けてくれてありがとねって話を」

「最初はそうだろうけど、もう一回話してたでしょ」

 うん、そっちも聞いて来るよねぇ……困った。どう誤魔化そうか。

「えっと、アレだよ。うん……秘密」

「えーっ、なにそれ!?」

 秘密兵器、秘密に頼ることにした僕に、柚乃は糾弾するような声を上げた。

「秘密ってなに、茜さんとの秘密の話ってなに!?」

「いや、それはもう秘密だから。言えないよね」

「ずるいっ!?」

 柚乃の言葉に、僕はあははと笑って誤魔化すことにした。いやぁ、早く家に着かないかなぁ!
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