ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と似合わない指輪

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 帰り着いた僕は、直ぐに自分の部屋に戻った。柚乃は色々と話したそうにしていたけど、僕としては先にやらないといけないことがあったからだ。

「ユモン、起きて」

『んぁ、起きてんぜ』

 引き出しから黄金色の指輪を取り出した。寝起きっぽい返事だったけど、起きてるらしいユモンが宿っている指輪を持って僕は椅子に座り込む。

「紫苑ちゃんに会いに行きたいんだけどさ、案内してくれない?」

『あ? 別に良いけど、何しに行くんだよ』

「んー、ちょっと頼み事って言うか……ね」

『なんだよそれ。まぁ、別に良いけどよ……今からかァ?』

 僕は少し悩んだ末に、頷いた。

「うん、早い方が良いかな」

『しゃあねぇな、分かったぜ。んじゃ、行くかァ』

 僕は黄金色の指輪をそっと嵌めて、再び外に出ようと部屋を出て階段を下りた。

「あ、お兄ちゃん」

「うん、ちょっと出かけないといけなくて」

 話したそうにしていた柚乃への言い訳をしておくようにそう返し、そのまま玄関の方に向かおうとする僕だったが……目敏く、柚乃はそれを指差した。

「ねぇ、それ……そんなの持ってたっけ?」

「ん、あぁ、これ?」

「それ。綺麗だけど……兄貴にはあんまり似合わなくない?」

「あはは、いや僕もそう思うけどさ。貰ったんだよね、友達から。だから一応、付けとこうかなみたいな」

 美しく魅力的な黄金色の指輪。だけど、絶望的に僕には似合っていないだろうと思っていた。実際のところ、似合っていないらしい。うん、分かってたけどね。ほんのちょっとだけショックである。

「へぇ……高そう」

「どうだろうね。今だと、偽物でも綺麗に見えるからなぁ」

 実際、この指輪は本物の黄金って訳じゃないだろう。金みたいな色をして、光沢があるというだけである。本来の姿は魔術書だし。

「ま、とにかくちょっと行ってくるよ」

「行ってら」

 いつもの妹の感じに僕は若干安心しつつ、手を軽く上げて玄関に向かった。が、その途中でお母さんに見つかった。

「アンタ、どこ行くん?」

「ちょっと友達に呼ばれててさ。若干遅くなるかも……だけど、そんなに時間はかからないと思う」

「いや、どっちよ……?」

「えっと、ワンチャン遅くなるけど、多分ご飯までには間に合うと、思う」

 僕がそう答えると、お母さんはふーんと頷いた。

「ま、早く帰ってきんしゃいよ」

「あいあい」

 僕はそう答え、靴を履こうと玄関で屈んで、その肩に手を置かれた。ちょっと体重をかけられたことで、危うく前に倒れそうになったけど、その手が僕を倒れないように抑えてもいた。

「ちょっ、なに?」

「アンタ、それどうしたん?」

「え……? あ、これ?」

「そ」

 クソ、流石は親子だ。どっちも目敏く気付いてきよった。いや、この指輪がクソ目立っているせいか。まぁ、金ピカだし見た目は綺麗だし、そりゃ気付くか。

「これ、友達から貰った奴」

「……アンタにはまだ早いんやない?」

 そんなに!? そんなに似合ってない、僕!?

「わ、分かったよ……外しとくから」

「いや、外さんでも良いんやけどね。その、いっつも付けて歩いたりするのは……」

「ふん」

 僕は鼻を鳴らし、家を出た。いや、別に全く怒っては無いけどね。ただ、怒ったように見せたかっただけである。

「ユモン、やっぱり趣味悪いってよ」

『あ? テメェがガキだから似合わねぇだけだろ?』

「子供の僕が付ける指輪として相応しいデザインにしなかったのが悪いんじゃん?」

『ガキに指輪なんざそもそも似合わねぇけどな』

 失礼だなぁ。似合う人も居るでしょ。僕は、まぁ、似合わないかも知れないけどさ。

「ま、外だと外して歩くからね!」

『別に良いけどよ、風情がねぇな……』

「良いんだよ、風情……」

 僕は前から人が歩いて来たので黙りこくった。そっと指輪を嵌めた手をポケットに隠す。

『なんてね』

『最初っからそれで話しとけば良いだろ』

『風情だよ、風情』

『今否定したばっかりだろ、自分でよぉ……』

 呆れたように言うユモンに、僕は小さく笑った。待てよ、そういえばまだどっちに向かえば良いか聞いてないじゃんか。

『ユモン、案内してよ。何メートル先、左です。みたいな感じで』

『んな細かく把握してねぇよ。あと、今進んでる向きと逆な』

 いや、先に言ってよ。

『無駄に歩いただけじゃん』

『勝手に歩き出すお前が悪いんだろ』

『全く……あ、ていうか高水通りか。本当に逆じゃん』

『だからそう言ってんだろうが』

 前に全知全能に聞いた時に高水通りだとか言ってたのを思い出した。中央区だから、完全にあっちだ。何をやってるんだろう、僕は。

(……ちょっと、緊張してるからかな)

『なんだ、緊張してんのかよ』

『ちょっと、心の声を勝手に聞くの止めてよ』

『お前が念話で勝手に漏らしてるだけな』

 まだ慣れてないんだよ。仕方ないじゃん。

『ま、お願いしに行くわけだからね。緊張もするよ』

『別に、アイツはお前に恩があるだろ? その恩返しだって言えば楽勝だろうぜ。お前が何をお願いする気か知らねぇけどな』

『いや、もうあの件についてはファミレスの奢りで片を付けたつもりだからさ。ほじくり返して恩返しだのって迫るような真似はしたくない』

『そりゃまた誠実なこったな』

 どこか呆れたようにユモンは返した。

『ま、好きにしやがれよ。オレ様もちょっとは手伝ってやる』

 しかし、そこに続けられたユモンの言葉に僕は小さく笑みを浮かべた。
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