ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能とここだけの話

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 それから、別の仕事をしているらしい安堂さんを待っていた僕らだったが、その間に紫苑ちゃんが御岳相談事務所の辺りにを飛ばしてくれた。

「凄いね、そんなこと出来るんだ」

「まぁ、飽くまでも私の縄張りだからね。一応、そこら中に目は飛んでるわよ?」

「そ、そうなんだ……」

 確かに、思えばあの時のカラスが指輪を見つけたのも縄張りを飛び回ってたってことか。

「ただ、常に全ての情報を仕入れてるって訳じゃないわ。目になる使い魔が沢山縄張りの中を飛んでて、好きなタイミングでその目に接続して操作出来るっていうだけよ」

「あ、なるほどね……まぁ、全部と一気に繋がってたら頭爆発しちゃうもんね」

「一応、頑張れば出来ないことも無くは無い……けど、あんまりやりたくはないわ」

「出来るんだ……」

 流石は稀代の天才魔術士、かは知らないけど周りから結構な傑物扱いを受けてるだけはあるね。

「……うん、今のところは問題無さそうね。外から見た感じ、だけど」

「あ、本当? なら良かったよ」

 僕はふっと息を吐き、椅子に深く腰を落とした。流石にさっきの今でいきなり襲われなんてしてないだろうとは思ってたけど、少し安心したのも事実だ。

「朝熊、安堂が来るまで時間がかかるでしょう? 適当に紅茶とお菓子でも持ってきて」

「畏まりました。そちらの二人も紅茶で宜しいでしょうか」

 紫苑ちゃんの要求に、朝熊さんがこちらに問いかけて来たので僕は頷いた。

「あ、はい。大丈夫です。お願いします」

「勿論良いぜ」

「何か食べられないもの等はありますか?」

 僕らは首を振り、完全にお菓子についてはお任せした。僕はアレルギーとかは無いし、ナッツとか出たらあんまり好きじゃないから嫌だけど、こういうとこって出るのかな。なんか、コーヒーとかと飲む印象はあるけど。

「では、少々お待ち下さいませ」

 そうして応接室から去って行った朝熊さん、僕らの間に少しの沈黙が訪れる。

「……行ったかしらね」

「え、うん」

 紫苑ちゃんがにやりと笑ってこちらを見た。

「それじゃ、そろそろ聞かせなさいよ。貴方達の話を」

「僕らの話?」

 首を傾げて聞くと、紫苑ちゃんは頷いた。

「そうよ。私だって少しは話したし、これから協力してやっていく関係な訳でしょう? もう少し、貴方達のことを知りたいと思うのは普通でしょ?」

「まぁ、そうだね……」

「じゃ、話しなさい」

「えぇ……」

 渋るような声を上げると、紫苑ちゃんはジト目で僕を睨んだ。

「何よ、嫌なの?」

「どちらかと言えばね」

 むぅ、と頬を膨らませた紫苑ちゃんに、僕は仕方なしと息を吐く。

「じゃあ、逆に僕らに何が聞きたいの?」

「……治は魔術士なのよね?」

「うん、そうだよ」

「どうやって魔術士になったの?」

 えぇ、どうやってって言われてもなぁ。

「なんか、普通に……独学で?」

「ホントかよ」

 僕がそう言うと、ユモンが真っ先に疑ってきた。お前は疑うなよ。味方だろ。

「それは、凄いけど……本当に?」

「まぁ、本当だね」

 実際のところ、全知全能も僕の力と思えば独学ではある。多分、彼らが想像してるようなのとは全然違う独学だろうけども。

「じゃあ、イカダチは? イカダチも魔術士よね?」

「あ? ま、そうだな。そう思っといてくれて良いぜェ」

「な、何よそれ。意味深じゃない」

「ヒヒッ」

 意味深に笑うユモンに、紫苑ちゃんはまた頬を膨らませた。

「……もう、言いなさいよ! 二人共何を隠してるのよっ! 何者なのよ! 朝熊も退けたんだから良いでしょうッ!?」

 紫苑ちゃんの指に嵌められた銀の指輪。そこに輝く紫色の結晶がその光を急激に強めた。

「おい、落ち着けよ。オレ様は、まぁ……飯の恩もあるし、教えてやっても良いぜ?」

 言いながら、イカダチが僕の方を見た。まさか、教えるのか? 悪魔だって明かすつもり?

「確かにこっちからの恩は大きいが、向こうも真摯に向き合ってくれてんだからな……オレ様の正体くらい、明かす方がフェアだと思わねぇかよ、治」

「そうかも知れない、けど……正体を知るだけでも、紫苑ちゃんが危険になったりしないかな」

「んなもん、今更だろ。ここまで関わっちまったんだ……オレ様は、言うぜ。良いだろ?」

 ユモンの言葉に、僕は迷った末に頷いた。じっとこちらを見ている紫苑ちゃんに、ユモンは立ち上がって己の胸を親指で指した。

「オレ様はユモン。ユモン・イカダチ……」

「ユモン……」

 呆然と反芻する紫苑ちゃんに、にやりと笑いユモンは続ける。


「――――正真正銘の悪魔だぜ。ヒヒヒッ!」


 そうして、遂にその正体を告げたのだった。
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