ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

文字の大きさ
158 / 189

全知全能とインスタント

しおりを挟む
 目の前でゴーレムになった土の山を見て、紫苑ちゃんは激しく問い詰めて来た。

「詠唱無しで、魔法陣はどこよ!? いや、直接ゴーレムの中に生み出してそれをそのまま式にしたってこと……?」

「ん、正解」

 これはタイパ重視の術だからね。術を発動する魔法陣をそのままゴーレムの中に刻み込む式として流用することで、時間の短縮にもなる上に、無詠唱がしやすいように位相の調整や波長の共鳴が簡略化されている。
 僕にとっても、無詠唱というのは簡単に出来るものじゃない。だけど、この魔術の無詠唱は鼻歌交じりでも出来るくらいなのだ。

「しかも、ただ形を整えただけじゃないわよね……これ」

 席を立って、土のゴーレムをまさぐり倒す紫苑ちゃん。それを見て安堂さんと朝熊さんが眉を顰める。

「お嬢様、お行儀が悪いですよ」

「食事中にお手を汚してはいけませんよ」

 安堂さんに連れ戻されて、朝熊さんに手を拭かれた紫苑ちゃんはむすっとした顔をしたが、また席を立とうとはしなかった。

「やっぱり、ここら辺の魔術っぽくは無いわね。少なくとも、自然に満ちた場所で……魔力に富んだ土が普通にある場所が前提の魔術ね。どこで学んだのよ、こんなの? アフリカの奥地かなんかで代々伝わってる魔術か何かなの?」

「いや……友達から習った」

「どこにこんな魔術使える友達が居るのよ……少なくとも都会じゃあんまり使えないでしょうに、これ」

「大丈夫だよ、石用に最適化されたバージョンとかもあるし」

 後は、対象の素材を問わずに無生物ならゴーレム化出来るっていうありがちな奴もある。ただ、それは汎用性が高い代わりに土版とか石版とかと比べるとコスパが悪いね。

「……都会で、周りの道路がこれになって襲い掛かって来たら怖いわね」

「道路だと……出来るのかな。やってみないと分からないけど」

 アレは石判定で良いのだろうか。アスファルトって何で出来てるんだろう、コンクリートは石だけど石じゃないみたいな感じだよね。半分混ざってるくらいなら、どうなんだろう。性能は下がるけどゴーレム化は出来そうかな。

「そもそも、魔力がちょっと勿体無いよね」

「そうなの? あ、魔力が宿ってる土とか石が前提だものね」

「うん……」

 コンセプトである生成の速度的には変わらないし、言っちゃえば足りない分の魔力を突っ込んでやれば良いんだけど、それをやると普通のゴーレム魔術よりも魔力を食っちゃうのがさっきの超即席ゴーレム化魔術である。タイパは良くても、コスパは悪くなっちゃうのだ。

「ここの土は、なんかちょっと魔力が宿ってたね。アレって、庭の土だよね?」

「そうよ。うちで色々やってるもの。ちょっと漏れ出して馴染んじゃうぶんには仕方ないわ。態々取り除くのも面倒だもの。あ、それとその土は庭の方に戻らせておいてくれるかしら?」

「お嬢様……勝手に庭を抉るのはお止め下さい」

 元に戻すのは自分なんだぞと言いたい訳ではないだろうが、咎めるように安堂さんが言った。紫苑ちゃんはふんと顔を逸らした。
 まぁ、アレくらいの魔力が籠ってるくらいなんてことは無いだろう。籠り過ぎると魔力に依存した植物とかが出来ちゃったりとか、そういうことも起きかねないけど。

「じゃあ、戦闘になったら私が庭の土を大量に出してあげれば良いわね!」

「お嬢様……?」

「いやぁ、折角の庭が荒れちゃうよ。それなら、予め魔力を込めた石でも用意しておくか……最初っからゴーレムを作り上げておいて、それを呼び出す方が良いんじゃないかな」

 安堂さんの表情にすかさず僕が言うと、紫苑ちゃんは動きを止めてこちらを見た。

「それ、採用しましょう。どうせ、本体はそこまで強くないんでしょう? だったら、有事まではゴーレムを作るのに集中して貰った方が良いわよね」

「おぉ……」

 どうなんだろう。僕、ぶっちゃけそんなにインスタントじゃない方のゴーレムは得意じゃないんだよなぁ。

「まぁ、頑張ってみるよ」

「えぇ、頑張りなさい。あ、そういえば、私に命令権を貸せるようには出来るのかしら?」

「ん、勿論」

 僕はゴーレムに命令を下した後、促すように紫苑ちゃんに手を差し出した。

「もう、私に所有権が移ってるの?」

「簡易的に、だけどね。単純にあの人の言うことも聞きなよってしただけ。ちゃんとやるなら、思念の命令だけで動かせるように出来るよ」

 僕はまだハンバーグ食べてるから、今はそこまでしないけどね。

「……お前、食うの遅いぞ」

「ユモンが早いだけだから」

「うるせぇよ。デザートも早く食べたいだろうがッ!」

 僕は溜息を吐き、ユモンを気にすることなくハンバーグを食べ始めた。実際、デザートも気になるけど……あれ、デザートって僕にも出るのかな。出ると良いなぁ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「記録係なんてお荷物はいらない」 勇者パーティを支えてきた青年・ライトは、ダンジョンの最深部に置き去りにされる。 彼のスキル《記録》は、一度通った道を覚えるだけの地味スキル。 戦闘では役立たず、勇者たちからは“足手まとい”扱いだった。 だが死の淵で、スキルは進化する。 《超記録》――受けた魔法や技を記録し、自分も使える力。 そして努力の果てに得たスキル《成長》《進化》が、 《記録》を究極の力《アカシックレコード》へと昇華させる。 仲間を守り、街を救い、ドラゴンと共に飛翔する。 努力の記録が奇跡を生み、やがて―― 勇者も、魔王も凌駕する“最強”へ。

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

処理中です...