ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と話しておくべきこと

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 百体以上のゴブリンを異様なまでの速さで殲滅出来た理由。そんなものは、話せる訳も無い。いや、話しても良いのか……? ドリゥグさんは、信用できる人ってことだし。
 いや、でも街の為を一番に思ってる人なら寧ろ僕のことを利用することもある筈だ。

「まぁ、そこは……企業秘密ってことで」

「そうか」

 ドリゥグさんはそれだけ返すと、視線をアシラの方に戻した。

「それで、巣穴のゴブリンを殲滅した僕らだったんですが……その巣には、数体のホブゴブリンと一体のゴブリンキングが存在していました」

「それと、メイジも居た」

「ふむ……」

 ホブゴブリンにキングにメイジ、予想以上の戦力にドリゥグさんは小さく息を吐いた。

「本格的に、どうやって殲滅したのか気になるところだがな……」

「ゴブリンキングは僕が直接戦いましたが、明らかに戦闘用の鍛錬を積んでいるようでした。他戦力と分断出来た状況と、罠にかけられて居なければ負けていたかも知れません」

「穴だらけにぶっ刺して、毒に侵して無きゃおれらも負けてたかもな」

 キングと戦った二人がそう言うと、ドリゥグさんは頷いた。

「どうやら、本当に真面目なゴブリンの群れのようだな……冷静で勤勉、ただのゴブリンとは思えないな」

「まぁ、飽くまでも他のゴブリンと比べたらだけどな」

 ウィーは持って来ていた袋を机の上にどんと乗せた。

「開けると臭ぇからここで開けんなよ。一応、証拠があった方が良いだろってことで何十体か分のゴブリンの部位を纏めといた」

「助かるんだが、何故か嫌な気分になるな」

 これから人を動かすことになるであろうドリゥグさんにとって、証拠はあって嬉しくとも困ることは無い筈だが、嫌な気分になるというのは共感することが出来た。臭いゴブリンの素材を送られてしかめっ面をしない人は居ないということだ。

「まぁ、直接巣穴を探索して中の規模を確かめた後で……そうだな、積極的に調査して報告してくれたことも含めて報酬を渡そう」

「え~、今じゃねぇのかよ」

「当たり前だろう。確認もせずに話だけで報酬を渡す馬鹿が居るか」

「だから、証拠も持って来たってのによぉ」

 がっくりと項垂れるウィーにアシラは苦笑しながらもフォローする。

「ちゃんと確認して貰ってからの方が、報酬も増えるかも知れないだろう? 殲滅したゴブリンを正確に数えてそれに見合った報酬を渡してくれる筈だから」

「そうかもだけどよぉ……今日酒を呑む予定だったってのに、おれは」

「我慢して。今日は、私が魔術を教えて貰う日」

「いや、違うけどね」

 今日教えるなんて言ってないんだから。

「ほう……ナーシャは治に魔術を習っているのか」

「……お互い、教え合ってるみたいな感じ」

「そうそう。お互い学べるところがあるからね」

 僕らの弁解にドリゥグさんはにやりと笑った。

「まぁ、そうか……実際、魔術の腕はダナウ並みだと言う話もあったしな。事実なんだろう?」

「ダナウさんの実力を僕は知らないんで、何とも言えませんね……」

 それもそうだな、とドリゥグさんは小さく頷いた。

「兎も角、報酬は後でたんまりと渡してやるから待っとけ。話が本当だったなら、それなりに渡してやれる筈だ」

「えぇ、それはありがとうございます。ですが……」

 話が終わろうかという時、アシラは真剣な表情でドリゥグさんを見た。ただ、ここまでは飽くまで前座と言うか……最も重要な情報は話していない訳だ。

「最後に、もう一つだけ話しておくべきことがあります」

 アシラはそう言うと、懐から銀の貝殻を取り出して机に置いた。

「……なんだ、これは?」

「魔道具です。恐らく、通信用のものだとナーシャは判断しました」

「そう。通信用なのは、間違いないと思う」

「それで、これが何だと言うんだ?」

 既に察したように、ドリゥグさんは疲れたような顔で、だが一縷の希望をかけてそう問いかけた。

「ゴブリンの巣穴から見つかりました」

「やっぱりか……」

 重い溜息を吐いたドリゥグさんに、アシラも重く頷く。

「正確には、ゴブリンの巣穴に居たゴブリンメイジが持っていた。死に際に何かをこれに話していたけど……途中で、死んだ」

「どの程度の内容が、この通信用の魔道具の向こう側に伝わったかは不明ということか」

「そもそも、通信の相手が誰で、何について話してたかすらおれらには分っかんねぇしなぁ……ただ、平和な結論には至らなそうだってことだけは察しが付いてるけどよ」

 重い沈黙が支部長室に下りた後、ドリゥグさんが口を開く。

「……魔族、か」

 その考察を、誰も否定することは出来なかった。誰もが、既に同じ結論に至っていたからである。
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