スライムの、のんびり冒険者生活

南柱骨太

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第2章「冒険者で稼ごう!」

第2章・閑話その2「お菓子が食べたい!!」前編

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■まえがき■

 ヤバい、第4章が混乱中(苦笑)。
 これとこっちのエピソードを絡めて、っと‥‥あれ? 想像以上に長くなる?
 んじゃいくつかネタを削って‥‥‥‥ダメだ、次章へのネタつながりが悪くなる。

 と、まぁ(作者が)混乱中(汗)。
 なので取り置きしておいた閑話を放出。
 元々の「どこでも使える一発ネタ」な訳で、ちょっとお話の整合性が合わない部分もありますけど、そこはお見逃しを。


 ま、お楽しみいただけたら幸い。



  +  +  +  +  +



 この世界、調味料はそれなりに揃っているけれど、実は甘味料はほとんど無い。
 故に、お菓子なんて概念も無いし、せいぜいが果物をデザートとするか、果物をジャムにしてパンやクラッカーに塗るくらいだ。
 だからと言って、その程度でガマンするようなシンジではない。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「このお休み、外出したいと思います」
「どこ行くの? 付いて行っちゃダメ?」

 わざわざルイーザに出かけると告げるということは、別行動をしたいという意思の表れであり、それに感付いたルイーザは質問攻め。

「ちょっと大森林の奥地に行くので、ルイを連れて行くのはちょっと危険かもです」
「そうなんだ‥‥? で、目的は?」
「ハチミツを探しに行きます!」
「ハチミツ?‥‥って何?」

 そこからか、とシンジは観念して説明を始める。
 蜂という昆虫が(たぶん)居て、肉食と草食なのが居て、草食の蜂は花の蜜を集める習性があること。そのハチミツは甘くて健康にも良い調味料になること。甘いお菓子が食べたいという魂の欲求を説明した。
 お菓子の説明までしなければならなかったのも、まあ仕方なし。

「ふうん? 面白そうだけど、やっぱり大森林の奥はちょっとなぁ」
「なので1人で行きます。1日だけです、夕方には戻ります」
「わかった、お留守番しとく」
「うん、ごめんね?」

 こうしてルイーザを宥めすかし、シンジは久々に1人で出かけるのであった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 確かに蜂は居たが、スズメバチやアシナガバチのような肉食しか見当たらない。しかしアシナガバチの類だと思っていた中型の蜂は、見知らぬ果物の木に群がっているのを発見する。

「これって、蜜を集めているんじゃない気が‥‥」

 その果物っぽい木の実をかじってみると、若く青臭い桃のような味がした。当然、甘味も薄いけれど、まあこれはこれでといった味わい。
 飛び立った蜂を再び追いかけて巣を突き止めたが、巣もそんなに大きくない。
 しかもハチミツではなく、幼虫に与える果物のジャムのようなものだった。なるほどと納得すると共に、シンジは少々残念である。

「やっぱり、世界が違うし、花の蜜を集める種類は居ないのかな?」

 散々探し回り、諦めて大森林を後にしようとしたところ、森の一角に花の群生が見付かった。森の中では花を咲かせる草木はあまり見当たらなかったので、日照の関係で木々の開けた場所にしか咲いていないのだろう。
 ミツバチが居るならこんな場所だよなと、しばらくシンジは眺めていたのだが、ちゃんと居た。
 ちゃんと形態はミツバチだ。しかしサイズが大きい。
 体長は30センチ以上ある。これで草食とか、シンジは乾いた笑いしか出てこなかった。
 想像してみて欲しい。巨大なミツバチの体躯では小さな花に留まれない。なので地面に降り立って花の蜜を舐めているのだ。なんというインパクト。
 背の高い花には前足を引っ掛け、引っ張り下ろして舐めている。割と器用だ。

「うおっ! 速えぇ!!」

 飛ぶ速さはまさに弾丸。時速にするとどれくらいになるのか、見当もつかないような速さだった。さすがにこれにはシンジも付いて行けない。
 なので大女王グモの糸を試しに、花に群がる大型ミツバチに目印としてこっそりくっ付け、後を追ってみた。これは生前、テレビで見たスズメバチの巣を探す手法を真似てみたものだ。
 いくつかの木の花や草の花を経由して、やっとこさ突き止めた蜂の巣は、見るからに巨大。しかも蜂の数はおそらく数万匹レベルの巨大家族。
 古木の太い幹を何本も丸々と覆った、ミツバチというよりスズメバチみたいな形状の巨大な巣に、頻繁に出入りする働きバチたち。
 きっと内部では大勢の幼虫を育て、若手を育成し、大家族を支える食料を溜め込んでいるのだろう。そう、花の蜜や花粉などである。

 彼の知っているミツバチよりもかなり大きいが、これがこの世界のミツバチなのだろうと推測。体殻も大きいが、毒針も太く毒性も高いっぽい。2匹か3匹に刺されれば、人間などイチコロだと考えられる。
 毒は嫌だなぁ、と彼が蜜の採取方法について考えながら観察していると、別種らしいひと回りもふた周りも巨大な蜂がその巣に突撃してきた。途端に集まる働きバチたち。巨大蜂に群がり毒針を刺そうと大暴れ。よく見れば働きバチとは違う、ひと回り大きなミツバチも防衛に加わっており、それは兵隊バチなのかも知れない。

「まるでミツバチの巣に狩りに来たスズメバチと、応戦するミツバチみたいだ」

 やはりこの世界でも、こういった関係性はあるのだろう。大きな者が小さな者を食らうのだ。弱肉強食は世の常らしい。
 結局、巨大スズメバチはミツバチの攻撃をものともせず、巣に潜り込んで幼虫だろう肉塊をくわえて飛び去って行った。毒針も通さないほど堅いのか、それともミツバチの毒に耐性があるのかも知れない。
 その分、弱いものは数で補うのだ。何度襲われても、易々とは全滅したりしない。

 しかし、何事にも例外はある。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「‥‥あれは、何だ? オークか?」

 2時間ほど観察を続けていたら、ボロ布を身体中に巻き付けた人型の者が、槍のような棒を持ってミツバチの巣に近付いていく。
 シンジは藪に隠れたまま、先程の巨大スズメバチに敗れて落下したミツバチの死体を、細く長く伸ばした触手でかき集めて食いながら様子を見守っていた。ほろ苦のエビのような味で、これである程度のミツバチの習性とか学習できれば良いな、という程度の行動だ。
 人型は古木に登り、ミツバチの巣を壊し始める。

「あいつの狙いも蜜か!」

 横取りは良くない。
 そんな自分勝手な思惑でシンジは飛び出し、古木に近付くと右手を伸ばして人型を地面に叩き落した。

『何しやがる!』

 言葉からもオークだとわかった。身体に巻き付けているボロ布は、ミツバチの毒針対策のようだ。
 サクッと剣で1撃。オークなど今のシンジの敵にもならないレベル。
 すると仲間だろうオークが数人、近くの藪から飛び出してくる。仲間の仇を取ろうというのか。これもサクサクと仕留めるシンジ。そして吸収。

 ひと仕事終えて気付いたシンジは、周囲をミツバチの群勢に囲まれていた。
 ギチギチと警戒音らしき牙を鳴らし、今にも飛び掛ろうと構えている様子。
 ミツバチはスズメバチを取り囲み、熱で蒸し殺すんだっけか? そう思い出したシンジは、毒で痛いのも熱で暑いのも嫌だな、とかのんきなことを考えていた。
 もっとも、それくらいでシンジを害することは出来ないのだが。
 すると、何事か呼び止める声がした。

『待テ!』

 声の主はひと回り大きなミツバチだった。
 女王バチという訳でもなさそうで、先程の巨大スズメバチにも積極的に攻撃していたことから、兵隊バチとかオスバチとかそういうランクなのだろう。
 ちなみにアリやハチの巣の構成は、ほとんどがメスである。オスは本当に生殖要員で、巣分かれの時に少数生み出されるだけなのだ。これは前世の豆知識。この大型ミツバチたちが同じ習性とは限らないけれど。

『強キ者、用、アルカ?』

 10匹以上、ミツバチを食ったからか、片言だが大ミツバチの言葉がわかった。
 働きバチたちは声を発しないところを見るに、上位の者だけが少し知能が高いのだろう。まずは語り掛け、次に脅すというのは、ミツバチは平和主義なのかも知れない。
 まあ草食だし。おそらくだが無駄な犠牲を出す戦いは好まないのであろう。
 なのでシンジも平和的に会話で臨む。

『蜜が欲しい。巣に被害は与えたくない』
『蜜、与エルホド、多クナイ』
『ならば交換条件がある』
『交換? 条件、何?』

 音で聞くと、大ミツバチはギリギリ、ギュウギュウどこかを鳴らしているだけだが、それだけでも簡単な意思疎通はできるようだ。実際にシンジは言葉として認識出来ている。

『さっきの巨大バチのような、巣を害するものを倒そう。代わりに蜜が欲しい』

 ギュギュ、ギュリギュリと大ミツバチは言葉にならない悩まし気な音を立てて、周囲に集まっていた大型ミツバチ同士で相談しているようで、連れ立って巣に舞い戻った。
 こりゃダメだったか、言葉がちゃんと伝わらなかったかと、シンジが諦めかけたが。

『クロバチ、巣ヲ、壊シタイ。来イ』

 10数匹の兵隊バチを引き連れて、先程の個体が戻ってきて、そう告げた。
 単純なのか、疑うことをしないのか、まあ話が早くてシンジは助かるが。
 先導する兵隊バチの群を追いかけ、シンジは走り出す。手加減はしてくれているようだが、それでもシンジが付いて行くのがやっとの速度だ。ヒトの姿では藪の中を突っ切るのもひと苦労である。
 野次馬なのか、多数の働きバチもシンジたちを追いかけて来ていた。



 ――後編に続く。
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