神影鎧装レツオウガ【小編リマスター版】 #1

横島孝太郎

文字の大きさ
15 / 162
#1 レツオウガ起動

Chapter01 邂逅 02-01

しおりを挟む
 どうして辰巳たつみはそんな眼をしているのか。
 その訳を風葉かざはは聞こうとして、しかし口を噤んだ。
 第三者が風葉に先んじたのだ。
「ほほぉ、お見事お見事。さすがは凪守なぎもり、この程度では小手調べにすらならんという訳ですなぁ」
 ぱんぱん、と聞こえて来る乾いた拍手。耳障りな音源は、当然ながら窓の外。
 辰巳は弾かれたように、風葉はぎくしゃくと、それぞれ横手の窓を見る。
 現れた第三者、鹿島田かしまだ いずみは、すぐに見つかった。
 辰巳に破壊された分枝など意に介さず、未だ虹色の明滅を繰り返している光柱の表面。
 薄ら笑いを浮かべる泉は、そこから辰巳達のいる窓を見上げていたのだ。
 光柱の表面へ、重力に逆らって地面と平行に立ちながら。
「ん、な」
 もはや異能の力を隠そうともしない友人に、名前を呼ぶ事すら忘れてよろよろと後ずさる風葉。
 そんな風葉を庇って一緒に後退しながら、辰巳は左腕の腕時計を泉へ向けて掲げる。
「機密対魔機関凪守、特殊対策即応班『ファントム・ユニット』所属、ファントム4」
 辰巳――もとい、ファントム4の名乗りに応じるかのごとく、ギラリと光る左手首の青石。
 その輝きを突きつけられた泉は、それでもなお笑いを崩さない。
「これはご丁寧にどうも。ワタクシは……そうですねぇ、スペクターとでもお呼び下さい」
 丁寧かつ優雅な一礼を返す泉――もとい、スペクター。
取り憑く悪霊スペクターね……フン」
 つぶやく辰巳。スペクターと名乗る何者かが、名前通りに泉の意識を乗っ取っているのは間違いない。
 ならば、その足元で流動し続けている虹色の光柱は一体何なのか。
 おおむね察しはついているが、それでも辰巳は確認する。
「あえて聞こう。この日乃栄ひのえ高校の霊地から、無断で霊力を引き出しているのはオマエだな」
「えぇ。お察しの通り」
 頷いて、スペクターはまたもや指をぱきりと鳴らす。
 リザードマンの時と同じように盛り上がる虹色は、今度は先端に立っているスペクターごと、ゆっくり窓ガラスを透過していく。
 悪夢、と言うには少々シュール過ぎる光景に、風葉は軽い目眩を覚えた。
「さっきの怪物もそうだけど……窓ガラスって、通り抜けられるものだったっけ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

処理中です...