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#1 レツオウガ起動
Chapter01 邂逅 02-02
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「まさか。幻燈結界――この黒い空間の名前なんだが、この中にいる限り、外のモノには何一つ干渉できないのさ。今まで何か触ったりしなかったか?」
端的な辰巳の説明に、あ、と風葉は思い至る。
つい先程、自分も温井先生の身体をすり抜けていたではないか。
「ちなみに幻燈結界に引き込まれなかった連中は、その瞬間に記憶を改変される。今頃二年二組は今までの騒ぎを全部忘れて、普通に授業が始まってるだろうよ」
「あ、そうなんだ。ちょっと安心」
ホッと胸を撫で下ろそうとした風葉は、しかしその手を慌てて止める。
「け、けど何のために? そもそも霊力って何なの?」
「それは霊力が、なんでも出来るパワーソースだからですよ」
疑問に答えたのは、意外にもスペクターの声。丁度窓ガラスの上へ立つ格好になっていた彼女は、そのままひょいと跳び下りた。
ぺたし、と幻燈結界に染まった廊下を踏みしめるサンダル。もう重力に逆らうつもりはないらしいスペクターは、再び侵食した虹色の壁を背後に、改めて二人と対峙する。
「霊力とは、人の持つ想念の力であります。魔力とも言いますな。しかるべき手順さえ踏めば、なんでも出来るのです。比喩でなく、言葉通りにねぇ」
身振り手振りを交えつつ、端的な説明をするスペクター。
十メートルほど離れた位置でそれを見る辰巳は、疑念に眼を細めた。
何の目的でそんな話をするのかは分からないが、内容自体に嘘はない。
例えば、一定値以上の霊力保持者とそれ以外を擬似的な異空間に隔離する幻燈結界。
例えば、事前に設定していた戦闘服を瞬時に転送する鎧装展開術式。
例えば、元あった肉のそれ以上によく動く鋼の左腕、等々。
例を上げればキリが無いが、大雑把に言えば霊力の本質はたった一言で事足りる。
すなわち。霊力とは、幻想で現実を塗り潰せる絵の具なのだ。
だが。
「そのためには必要なものが二つある。一つは、やりたい事にきっちり対応した術式だ」
カンバスへ絵の具を塗るためには、当然ながら筆が必要になる。その筆こそ、辰巳が今言った術式だ。
祝詞、呪文、魔法陣。一般には神秘や秘蹟と呼ばれている、霊力を操る術。それを編纂し、公式の体系として纏め上げたものの総称。それが『術式』だ。
先に上げた鎧装展開システムや、辰巳の左腕といった機械義肢も、元をたどればこうした術式の延長に当たる。
霊力を電気とするなら、術式はそれを原動力とする機械であるとも言える。当然、使用目的によって動くのに足る電力量――もとい、霊力量も変わって来る。
そしてスペクターは、何らかの術式を動かすために、大量の霊力を無断で引き出している。
更に表面の虹色の流動具合から、こうしている今も何らかの術式が組み上げられている公算が高い。
端的な辰巳の説明に、あ、と風葉は思い至る。
つい先程、自分も温井先生の身体をすり抜けていたではないか。
「ちなみに幻燈結界に引き込まれなかった連中は、その瞬間に記憶を改変される。今頃二年二組は今までの騒ぎを全部忘れて、普通に授業が始まってるだろうよ」
「あ、そうなんだ。ちょっと安心」
ホッと胸を撫で下ろそうとした風葉は、しかしその手を慌てて止める。
「け、けど何のために? そもそも霊力って何なの?」
「それは霊力が、なんでも出来るパワーソースだからですよ」
疑問に答えたのは、意外にもスペクターの声。丁度窓ガラスの上へ立つ格好になっていた彼女は、そのままひょいと跳び下りた。
ぺたし、と幻燈結界に染まった廊下を踏みしめるサンダル。もう重力に逆らうつもりはないらしいスペクターは、再び侵食した虹色の壁を背後に、改めて二人と対峙する。
「霊力とは、人の持つ想念の力であります。魔力とも言いますな。しかるべき手順さえ踏めば、なんでも出来るのです。比喩でなく、言葉通りにねぇ」
身振り手振りを交えつつ、端的な説明をするスペクター。
十メートルほど離れた位置でそれを見る辰巳は、疑念に眼を細めた。
何の目的でそんな話をするのかは分からないが、内容自体に嘘はない。
例えば、一定値以上の霊力保持者とそれ以外を擬似的な異空間に隔離する幻燈結界。
例えば、事前に設定していた戦闘服を瞬時に転送する鎧装展開術式。
例えば、元あった肉のそれ以上によく動く鋼の左腕、等々。
例を上げればキリが無いが、大雑把に言えば霊力の本質はたった一言で事足りる。
すなわち。霊力とは、幻想で現実を塗り潰せる絵の具なのだ。
だが。
「そのためには必要なものが二つある。一つは、やりたい事にきっちり対応した術式だ」
カンバスへ絵の具を塗るためには、当然ながら筆が必要になる。その筆こそ、辰巳が今言った術式だ。
祝詞、呪文、魔法陣。一般には神秘や秘蹟と呼ばれている、霊力を操る術。それを編纂し、公式の体系として纏め上げたものの総称。それが『術式』だ。
先に上げた鎧装展開システムや、辰巳の左腕といった機械義肢も、元をたどればこうした術式の延長に当たる。
霊力を電気とするなら、術式はそれを原動力とする機械であるとも言える。当然、使用目的によって動くのに足る電力量――もとい、霊力量も変わって来る。
そしてスペクターは、何らかの術式を動かすために、大量の霊力を無断で引き出している。
更に表面の虹色の流動具合から、こうしている今も何らかの術式が組み上げられている公算が高い。
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