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#1 レツオウガ起動
Chapter02 凪守 01-05
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「……あれ」
そこは、青い金属剥き出しのえらく殺風景な場所であった。
広さはざっと五メートル四方、天井の高さもそれくらいだろうか。サイコロの内側のようなおもむきを見せる壁、床、天井は一面真っ平らで、建材の継ぎ目以外に起伏が見当たらない。
窓も無い。証明も無い。代わりに明かりの役目をしているのは、床の全面をまるまる使って描かれた巨大な白い魔方陣と、そこから壁をケーブルのようにつたう霊力のラインのみだ。
知らない、見慣れない、訳の分からない場所。それでも風葉がそんなにうろたえないのは、真正面に見慣れた人物が立っていたからだ。
「おはよう霧宮さん。そろそろ来ると思ってたよ」
言いつつ、手に提げたビニール袋をガサリと揺らす辰巳。その服装は日乃栄の制服では無く、藍色に緑色のラインが入ったトレーニングウェアである。
「お、はよう、五辻くん」
後ろ手に閉めかけたドアノブを握ったまま、風葉は前と後ろを交互に見回す。
だが何度見ても、前は辰巳がいる見知らぬ部屋で、後ろは自分がいた二○四号室に変わりはなかった。
「えっと、あの、どうなってんのコレ?」
「ああ、瞬間移動の術式――ポータルっていうんだが、それを使って霧宮さんの部屋とここを繋いだのさ」
「あ、なるほど」
ぽふ、と手を叩く風葉。その拍子に二○四号室の扉が閉じ、立て付けの悪い蝶番が金切り声を上げた。
「……いや、だったらさ。事前にそういう説明してよ」
「はっは、ごめんよ。けどこういう用事は早くて手軽な方が良いだろ? カップ麺みたいにさ」
「そりゃあ、まぁ」
一理あるかも……と風葉が口籠もっている間に、辰巳はくるりと振り返る。
「ともあれ行こうか。この桜餅を待ってるヤツもいる事だしさ」
やまと屋で買ったらしい五百円(税込)のビニール袋をぶらぶらさせながら、背後にあった自動ドアへすたすた歩いて行く辰巳。
扉の脇に備え付けてあるパネルを慣れた手つきで操作すると、途端に部屋中を満たしていた霊力光が減衰し、二○四号室の扉も消える。ポータルを切断したのだ。
「よし。んじゃついて来てくれ」
手招きしながら自動ドアを潜る辰巳。
僅か一歩でまたもや踏み入ってしまった非日常の領域に、風葉は軽くため息をついた。
「……お手軽過ぎるのもどうかと思うんだけどね」
そこは、青い金属剥き出しのえらく殺風景な場所であった。
広さはざっと五メートル四方、天井の高さもそれくらいだろうか。サイコロの内側のようなおもむきを見せる壁、床、天井は一面真っ平らで、建材の継ぎ目以外に起伏が見当たらない。
窓も無い。証明も無い。代わりに明かりの役目をしているのは、床の全面をまるまる使って描かれた巨大な白い魔方陣と、そこから壁をケーブルのようにつたう霊力のラインのみだ。
知らない、見慣れない、訳の分からない場所。それでも風葉がそんなにうろたえないのは、真正面に見慣れた人物が立っていたからだ。
「おはよう霧宮さん。そろそろ来ると思ってたよ」
言いつつ、手に提げたビニール袋をガサリと揺らす辰巳。その服装は日乃栄の制服では無く、藍色に緑色のラインが入ったトレーニングウェアである。
「お、はよう、五辻くん」
後ろ手に閉めかけたドアノブを握ったまま、風葉は前と後ろを交互に見回す。
だが何度見ても、前は辰巳がいる見知らぬ部屋で、後ろは自分がいた二○四号室に変わりはなかった。
「えっと、あの、どうなってんのコレ?」
「ああ、瞬間移動の術式――ポータルっていうんだが、それを使って霧宮さんの部屋とここを繋いだのさ」
「あ、なるほど」
ぽふ、と手を叩く風葉。その拍子に二○四号室の扉が閉じ、立て付けの悪い蝶番が金切り声を上げた。
「……いや、だったらさ。事前にそういう説明してよ」
「はっは、ごめんよ。けどこういう用事は早くて手軽な方が良いだろ? カップ麺みたいにさ」
「そりゃあ、まぁ」
一理あるかも……と風葉が口籠もっている間に、辰巳はくるりと振り返る。
「ともあれ行こうか。この桜餅を待ってるヤツもいる事だしさ」
やまと屋で買ったらしい五百円(税込)のビニール袋をぶらぶらさせながら、背後にあった自動ドアへすたすた歩いて行く辰巳。
扉の脇に備え付けてあるパネルを慣れた手つきで操作すると、途端に部屋中を満たしていた霊力光が減衰し、二○四号室の扉も消える。ポータルを切断したのだ。
「よし。んじゃついて来てくれ」
手招きしながら自動ドアを潜る辰巳。
僅か一歩でまたもや踏み入ってしまった非日常の領域に、風葉は軽くため息をついた。
「……お手軽過ぎるのもどうかと思うんだけどね」
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