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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 02-03
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「あれ、って」
「ギノア・フリードマン……の、分霊だろうな」
それとなく風葉を背中に庇うよう前に出ながら、辰巳はギノアを鋭く睨む。
なぜ、何のためにギノアは再びやって来たのか。前回のように緊急の幻燈結界が働いていない以上、少なくとも日乃栄の霊地に干渉されてはいない事は確実だ。
ならば狙いは辰巳か、それとも風葉か。
そもそもどうして攻めて来ないのか。鎧装展開術式ですぐさま装備を調えられるとは言え、今の辰巳は丸腰同然である。だというのに、ギノアは未だ動く気配すら見せない。
一体、何のつもりなのか。余裕なのか、それとも何か狙いでもあるのか。
どんなに考えを巡らせても、今は何も分からない。
はっきりしているのは、その存在を放置する理由は微塵も無い、と言う事。
それと、その戦いに非戦闘員を巻き込む訳にはいかない、と言う事だけだ。
だから、辰巳は言い放つ。振り向きもせずに。
「今すぐ幻燈結界と転移術式を開く。学校の方はどうとでも誤魔化すから、霧宮さんは天来号へ避難するんだ。いいね」
言いつつ、辰巳は左腕の腕時計を口元に寄せる。
「こちらファントム4、重要目標であるギノア・フリードマンを発見した。これより接触を試みるが、その前に非戦闘員の収容を願う。場所は日乃栄高校にある学生寮の事務室だ」
『了解。これより転移術式と幻燈結界を展開する』
ファントム・ユニットの誰かでは無い、恐らくは天来号で転送を担当している職員が応えた。
直後、空気がみしりと震える。
まず周囲の景色が色を失い、何もかもが薄墨色の中に沈む。幻燈結界だ。
次いで背後にある事務室の扉が、明らかに自然光では無い輝きを発し始めた。先日風葉の部屋に現れた転移ゲートが、今度はすぐそこの事務室に現れたのだ。
――転移術式を開くには、結びたい二箇所の地点にあらかじめ術式を用意しておく必要がある。その形は状況や術師の技量によって様々だが、基本的にはその地点にある扉を媒介として行われる。組み込みやすいからだ。
そして翠明寮は地下の霊地を管理する都合上、出入り口兼非常用宿舎として、ほぼ全ての扉に転送術式が仕込んであるのだ。老朽化著しいのに中々取り壊されない理由が、ここにある。
「い、五辻くん……」
不安な顔で見上げる風葉だが、辰巳の態度は変わらない。
「早く行け」
言うなり鞄を風葉に放り投げ、辰巳はまっすぐに玄関をすり抜ける。
「、う」
また、何も言えなかった。
自分でも訳の分からない憤りを感じながら、風葉は事務室の扉に飛び込んだ。
「ギノア・フリードマン……の、分霊だろうな」
それとなく風葉を背中に庇うよう前に出ながら、辰巳はギノアを鋭く睨む。
なぜ、何のためにギノアは再びやって来たのか。前回のように緊急の幻燈結界が働いていない以上、少なくとも日乃栄の霊地に干渉されてはいない事は確実だ。
ならば狙いは辰巳か、それとも風葉か。
そもそもどうして攻めて来ないのか。鎧装展開術式ですぐさま装備を調えられるとは言え、今の辰巳は丸腰同然である。だというのに、ギノアは未だ動く気配すら見せない。
一体、何のつもりなのか。余裕なのか、それとも何か狙いでもあるのか。
どんなに考えを巡らせても、今は何も分からない。
はっきりしているのは、その存在を放置する理由は微塵も無い、と言う事。
それと、その戦いに非戦闘員を巻き込む訳にはいかない、と言う事だけだ。
だから、辰巳は言い放つ。振り向きもせずに。
「今すぐ幻燈結界と転移術式を開く。学校の方はどうとでも誤魔化すから、霧宮さんは天来号へ避難するんだ。いいね」
言いつつ、辰巳は左腕の腕時計を口元に寄せる。
「こちらファントム4、重要目標であるギノア・フリードマンを発見した。これより接触を試みるが、その前に非戦闘員の収容を願う。場所は日乃栄高校にある学生寮の事務室だ」
『了解。これより転移術式と幻燈結界を展開する』
ファントム・ユニットの誰かでは無い、恐らくは天来号で転送を担当している職員が応えた。
直後、空気がみしりと震える。
まず周囲の景色が色を失い、何もかもが薄墨色の中に沈む。幻燈結界だ。
次いで背後にある事務室の扉が、明らかに自然光では無い輝きを発し始めた。先日風葉の部屋に現れた転移ゲートが、今度はすぐそこの事務室に現れたのだ。
――転移術式を開くには、結びたい二箇所の地点にあらかじめ術式を用意しておく必要がある。その形は状況や術師の技量によって様々だが、基本的にはその地点にある扉を媒介として行われる。組み込みやすいからだ。
そして翠明寮は地下の霊地を管理する都合上、出入り口兼非常用宿舎として、ほぼ全ての扉に転送術式が仕込んであるのだ。老朽化著しいのに中々取り壊されない理由が、ここにある。
「い、五辻くん……」
不安な顔で見上げる風葉だが、辰巳の態度は変わらない。
「早く行け」
言うなり鞄を風葉に放り投げ、辰巳はまっすぐに玄関をすり抜ける。
「、う」
また、何も言えなかった。
自分でも訳の分からない憤りを感じながら、風葉は事務室の扉に飛び込んだ。
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