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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 10-06
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「ハハハ! いいたい事はよーっく分かるがもはや逡巡している余裕など無いぞ! それにハンドルを握って見たまへ! そんな疑問はロケット花火のように吹き飛ぶ!」
鼻息が荒い利英。思考が加熱しているのだ。
これ以上関わるのは中々にアレなので、風葉は半信半疑ながらも左ハンドルを握ってみた。
瞬間、ぱしん、と火花が走る。レックウの心臓部である制御術式が起動し、車体から流れこむ霊力が風葉の掌中で輝く。
時間にすれば僅かに五秒。しかし、それで全ては終わった。
「あ」
と息をつくよりも先に、風葉は理解していた。
理屈と直感の両方で、レックウの性能、及び運転方法といった全てを。
――今しがたハンドルと手の間で閃いた火花。あれはレックウの操縦方法を、霊力を介して風葉の直接記憶領域へ転写した一部始終だ。さながら、ハードディスクへプログラムをインストールするかのごとくに。
泉を筆頭とした日乃栄高校生徒達の記憶消去と、逆の事を行った訳だ。
「どうだい? 何とかなりそうかな?」
確認してくる冥に、風葉は頷き返す。
「いけます……いきます!」
スカートを翻し、レックウのシートに跳び乗る風葉。途端、レックウに刻まれていたラインの銀色が、見る間に鮮烈な赤色へと書き換えられていく。風葉の固有霊力に合わせて、レックウの術式がアジャストされたのだ。これでもう、風葉はレックウを己の手足のごとく自在に扱える事だろう。
「――」
拡張された自身を試すように、風葉は躊躇なくアクセルを吹かす。轟々とレックウのエンジンが唸りを上げ、マフラーから迸る霊力の残光が間欠泉のごとくに軌跡を刻む。
『……』
そんな風葉の横顔を、巌はじっと見る。
金色に染まる少女の双眸に、迷いは一切無い。
辰巳を救いたいと願う決意と、憑依したフェンリルのもたらす闘争心。それが、風葉を支えているのだ。
危うい。だが、今は頼るしかない――そんな歯痒さを、巌は奥歯で噛み砕く。
『それでは、指令を伝える。ファントム5。日乃栄高校のRフィールドを突破し、オウガのパイロットを連れてすぐに帰投せよ』
「分かりました」
『……なお、可能な限り戦闘は避けるように』
辰巳を助けたら、すぐに逃げて来い。言外に巌はそう言っているのだ。
分かっているのかいないのか、とにかく頷く風葉。犬耳が小さく揺れた。
「さァて! 話もまとまったところで行ってみようかぁ!」
利英は自作転移術式の座標を設定、エンターキーを叩く。
「ポチっとな」
光を増すいびつな円陣は、速やかに風葉とレックウを包み込み――目的の場所、日乃栄高校近郊へと転送した。
鼻息が荒い利英。思考が加熱しているのだ。
これ以上関わるのは中々にアレなので、風葉は半信半疑ながらも左ハンドルを握ってみた。
瞬間、ぱしん、と火花が走る。レックウの心臓部である制御術式が起動し、車体から流れこむ霊力が風葉の掌中で輝く。
時間にすれば僅かに五秒。しかし、それで全ては終わった。
「あ」
と息をつくよりも先に、風葉は理解していた。
理屈と直感の両方で、レックウの性能、及び運転方法といった全てを。
――今しがたハンドルと手の間で閃いた火花。あれはレックウの操縦方法を、霊力を介して風葉の直接記憶領域へ転写した一部始終だ。さながら、ハードディスクへプログラムをインストールするかのごとくに。
泉を筆頭とした日乃栄高校生徒達の記憶消去と、逆の事を行った訳だ。
「どうだい? 何とかなりそうかな?」
確認してくる冥に、風葉は頷き返す。
「いけます……いきます!」
スカートを翻し、レックウのシートに跳び乗る風葉。途端、レックウに刻まれていたラインの銀色が、見る間に鮮烈な赤色へと書き換えられていく。風葉の固有霊力に合わせて、レックウの術式がアジャストされたのだ。これでもう、風葉はレックウを己の手足のごとく自在に扱える事だろう。
「――」
拡張された自身を試すように、風葉は躊躇なくアクセルを吹かす。轟々とレックウのエンジンが唸りを上げ、マフラーから迸る霊力の残光が間欠泉のごとくに軌跡を刻む。
『……』
そんな風葉の横顔を、巌はじっと見る。
金色に染まる少女の双眸に、迷いは一切無い。
辰巳を救いたいと願う決意と、憑依したフェンリルのもたらす闘争心。それが、風葉を支えているのだ。
危うい。だが、今は頼るしかない――そんな歯痒さを、巌は奥歯で噛み砕く。
『それでは、指令を伝える。ファントム5。日乃栄高校のRフィールドを突破し、オウガのパイロットを連れてすぐに帰投せよ』
「分かりました」
『……なお、可能な限り戦闘は避けるように』
辰巳を助けたら、すぐに逃げて来い。言外に巌はそう言っているのだ。
分かっているのかいないのか、とにかく頷く風葉。犬耳が小さく揺れた。
「さァて! 話もまとまったところで行ってみようかぁ!」
利英は自作転移術式の座標を設定、エンターキーを叩く。
「ポチっとな」
光を増すいびつな円陣は、速やかに風葉とレックウを包み込み――目的の場所、日乃栄高校近郊へと転送した。
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