128 / 162
#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 10-05
しおりを挟む
『てか、なんでここに転移術式があるんだ。専用の部屋でなければ使えんはずだぞ』
「HAHAHA! じつはこんなこともあろうかと! 転送室からバイパスを密かに造っておいたのデスよ! べんり!」
『わーすげー。最近転送区画の霊力消費量がおかしいって話は聞いてたが、よもや身内が犯人だったとはなー』
「フッ、そう褒めるな盟友よ! 新たなヒラメキが湧いてしまうではないか!」
『ならそのヒラメキで、いずれ書くだろう始末書の文面を考えてくれるかい』
「それは御免被る」
一点の悪びれもない笑顔でサムズアップする利英。その後頭部を、冥はその辺に散らばっていた書類を丸めて引っぱたく。
「あ痛ぁっ、何すんだ冥!」
「ナンだもナニもあるか、今は時間が押しているんだ。風葉に説明を済ませろ、三十秒で。ほれスタート」
「ひでえや!」
と言いつつ、利英は大した逡巡もなくすらすらと語り始める。
「まぁともかくだ、このバイクの名前はレックウ! ホントはファントム3こと冥の装備なんだけども、何せ今は緊急事態だ! ファントム5の装備を整えてる余裕はないし、しかもRフィールドは組成の都合上、フェンリル持ちの霧宮くん以外は通れない! 故に是非とも霧宮くんの足および武器として活用して頂き、ったい舌噛んだァ!」
「……二十九秒、ギリギリだな。そして腹立たしいが、考えていた事は同じか」
悶絶する利英を背中に、冥は腕時計から風葉に視線を移す。
「まぁ、そういうわけだ。背丈が僕と大体同じなんだから、風葉も問題なく取り回せるはずさ」
頭の上辺りに手をやって身長を目算する冥。実際その手の高さは、風葉の身長より少し高い程度であった。
「う、ん。それは、ありがたいんだけど」
ちら、と風葉はレックウを見る。
そして、ごく当たり前の事をつぶやく。
「私、バイクの免許持ってないよ?」
一瞬。
テンションがダダ上がりだった利英も含めて、男達が全員真顔に戻った。
が、程無くして利英が人差し指を立てる。
「――霧宮くん。いわゆるバイク、すなわち二輪車の動力源は、なんだね?」
「え? それは、ガソリン、ですよね」
「そうだ。翻って、このレックウの動力源は何だと思うね?」
「それは、まぁ。霊力でしょうか」
ぱん、と利英は合掌するように手を叩く。
「そう! その通りだ! つまりレックウは二輪車ではない! 故に免許など無くても割とオッケイなのだよ!」
「ええー」
「HAHAHA! じつはこんなこともあろうかと! 転送室からバイパスを密かに造っておいたのデスよ! べんり!」
『わーすげー。最近転送区画の霊力消費量がおかしいって話は聞いてたが、よもや身内が犯人だったとはなー』
「フッ、そう褒めるな盟友よ! 新たなヒラメキが湧いてしまうではないか!」
『ならそのヒラメキで、いずれ書くだろう始末書の文面を考えてくれるかい』
「それは御免被る」
一点の悪びれもない笑顔でサムズアップする利英。その後頭部を、冥はその辺に散らばっていた書類を丸めて引っぱたく。
「あ痛ぁっ、何すんだ冥!」
「ナンだもナニもあるか、今は時間が押しているんだ。風葉に説明を済ませろ、三十秒で。ほれスタート」
「ひでえや!」
と言いつつ、利英は大した逡巡もなくすらすらと語り始める。
「まぁともかくだ、このバイクの名前はレックウ! ホントはファントム3こと冥の装備なんだけども、何せ今は緊急事態だ! ファントム5の装備を整えてる余裕はないし、しかもRフィールドは組成の都合上、フェンリル持ちの霧宮くん以外は通れない! 故に是非とも霧宮くんの足および武器として活用して頂き、ったい舌噛んだァ!」
「……二十九秒、ギリギリだな。そして腹立たしいが、考えていた事は同じか」
悶絶する利英を背中に、冥は腕時計から風葉に視線を移す。
「まぁ、そういうわけだ。背丈が僕と大体同じなんだから、風葉も問題なく取り回せるはずさ」
頭の上辺りに手をやって身長を目算する冥。実際その手の高さは、風葉の身長より少し高い程度であった。
「う、ん。それは、ありがたいんだけど」
ちら、と風葉はレックウを見る。
そして、ごく当たり前の事をつぶやく。
「私、バイクの免許持ってないよ?」
一瞬。
テンションがダダ上がりだった利英も含めて、男達が全員真顔に戻った。
が、程無くして利英が人差し指を立てる。
「――霧宮くん。いわゆるバイク、すなわち二輪車の動力源は、なんだね?」
「え? それは、ガソリン、ですよね」
「そうだ。翻って、このレックウの動力源は何だと思うね?」
「それは、まぁ。霊力でしょうか」
ぱん、と利英は合掌するように手を叩く。
「そう! その通りだ! つまりレックウは二輪車ではない! 故に免許など無くても割とオッケイなのだよ!」
「ええー」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる