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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 10-04
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『では霧宮風葉。略式ではあるが、君は今からファントム5だ』
立ち上がり、敬礼する巌。先日の緩みぶりからは考えられない、きびきびとした動作である。
少し呆気に取られたが、風葉も一拍遅れで見よう見まねの礼を返した。
『早速だが君にはこれからファントム4の救援に行ってもらう。冥、予備の装備を――』
言いつつ、巌は思考する。
風葉にそう説明こそしたが、彼女に実際の戦闘行動を任せる事態は避けねばなるまい。
フェンリルの力はあくまで借りるだけ、ゴタゴタの収束は周囲に展開中の正規部隊と、何より自分自身がどうにかせねばなるまい。
雷蔵が別行動中なのが痛恨だな――そんなぼやきを口中で噛み潰した矢先、今度は利英が叫んだ。
「持ってくる必要はナッスィング!」
すたーん、と勢い良くエンターキーを叩く利英。
直後、巌が映るモニタの真正面。開けていた床の上に、少しいびつな術式が姿を現した。
コンパスを使わずに書いたような白色の円陣は、どこか天来号の転移室に刻まれていた術式にも似ており――事実、程無くして転移と同じ光が円陣上に満ち溢れた。
ドーム状の形をなす光は、しかし一秒も経たぬうちに爆ぜ割れる。
そうして中から現れたのは、一台のバイクであった。転送されて来たのだ。
白い車体に銀色のラインを刻んだ、小型のオフロード車である。
装甲やらなにやらが追加されてるため、シルエットはどの車種とも似ていない。何かの術式らしき紋様が刻まれたタイヤ、何かのコネクターがついているフロントフォーク、何かの入力装置を横に備えたメーター、等々。
凄まじいチューニングが施されている事が一目で分かる車体に、転移術式の残光が粉雪のごとく降る。流線型のフロントカウルがきらりと光った。
そんなバイクの突然な出現に、え、と呆気に取られる一同。巌ですら何も聞いていないのか、机に手をついて身を乗り出している。
そして利英がそんな一同を気にするはずもなく、スケート選手ばりに華麗な三回転半のスピンを決めた後、ピシィーッとバイクを指差す。
「これが! これこそが! 僕がここ数ヶ月の睡眠時間を返上して創りあげた傑作! 冥が乗れるよう可能な限り小型化し! 合体することでオウガの真の機能をエミュレートし! 単体としての機動力とかなんかも兼ね備えた一品! その名もぉぉぅ――!!」
「レックウだったな。完成していたのか」
「おふぅ! 決め台詞をかっさらうなんて酷いぞ冥!」
テンション右肩上がりな利英を、冥はジト目で睨む。
「当たり前だ。オマエが語り出したら長い」
立ち上がり、敬礼する巌。先日の緩みぶりからは考えられない、きびきびとした動作である。
少し呆気に取られたが、風葉も一拍遅れで見よう見まねの礼を返した。
『早速だが君にはこれからファントム4の救援に行ってもらう。冥、予備の装備を――』
言いつつ、巌は思考する。
風葉にそう説明こそしたが、彼女に実際の戦闘行動を任せる事態は避けねばなるまい。
フェンリルの力はあくまで借りるだけ、ゴタゴタの収束は周囲に展開中の正規部隊と、何より自分自身がどうにかせねばなるまい。
雷蔵が別行動中なのが痛恨だな――そんなぼやきを口中で噛み潰した矢先、今度は利英が叫んだ。
「持ってくる必要はナッスィング!」
すたーん、と勢い良くエンターキーを叩く利英。
直後、巌が映るモニタの真正面。開けていた床の上に、少しいびつな術式が姿を現した。
コンパスを使わずに書いたような白色の円陣は、どこか天来号の転移室に刻まれていた術式にも似ており――事実、程無くして転移と同じ光が円陣上に満ち溢れた。
ドーム状の形をなす光は、しかし一秒も経たぬうちに爆ぜ割れる。
そうして中から現れたのは、一台のバイクであった。転送されて来たのだ。
白い車体に銀色のラインを刻んだ、小型のオフロード車である。
装甲やらなにやらが追加されてるため、シルエットはどの車種とも似ていない。何かの術式らしき紋様が刻まれたタイヤ、何かのコネクターがついているフロントフォーク、何かの入力装置を横に備えたメーター、等々。
凄まじいチューニングが施されている事が一目で分かる車体に、転移術式の残光が粉雪のごとく降る。流線型のフロントカウルがきらりと光った。
そんなバイクの突然な出現に、え、と呆気に取られる一同。巌ですら何も聞いていないのか、机に手をついて身を乗り出している。
そして利英がそんな一同を気にするはずもなく、スケート選手ばりに華麗な三回転半のスピンを決めた後、ピシィーッとバイクを指差す。
「これが! これこそが! 僕がここ数ヶ月の睡眠時間を返上して創りあげた傑作! 冥が乗れるよう可能な限り小型化し! 合体することでオウガの真の機能をエミュレートし! 単体としての機動力とかなんかも兼ね備えた一品! その名もぉぉぅ――!!」
「レックウだったな。完成していたのか」
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「当たり前だ。オマエが語り出したら長い」
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