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第一話:サイコキネシスとあの日の約束
戦闘②
しおりを挟む「【管理者権限・時間凍結】!」
時が凍りつき、全ての物が動きを止める。
君司の立ち位置に立ってみると、眼前には随分と絶望的な光景が広がっていた。
一面、大小・形状・材質・様々な瓦礫に覆われて、空なんぞ見えやしない。
蓋天説が正しかったとして、天が砕け落ちたならきっと人類が最期に見る光景はこんな様子なのだろう。
もっと現実的に例えれば、爆破された高層ビルの、足下にいた人間の最期の視界。あるいは土石流の直撃間際か。ここから生き延びろと言うのは少し酷だ。
かといって試しもせずに諦めるのはいただけない。最後まで生き抜くために足掻く気概が欲しいところだ。
「【管理者権限・仕様変更】」
鍵を弓に変える。誰も聞いていない以上、本当はこんな口上言う必要など無いのだが、体裁は整えておきたい。
何より自分のモチベーションが上がる。我ながら似合わないことをしている自覚はあるが、それでも魔法少女には憧れるだろう?
さて、そろそろ時間調整も終わりにしよう。数秒で済む用事に、魔法の出力計算が面倒でいつも同じ時間――三分間止めてしまうのは怠惰だろうか。
手近な――とはいえ引っこ抜かれた家の分遠いのだが――民家の屋根に飛び乗る。
矢をつがえ、弓を引き絞る。
イメージするのは篠突く雨。天を覆う黒々した雨雲に鏑矢を放つ様。劈く音に震え纏まれ水分子。天より降りてこの地に恵みを与え給え。
大量かつ広範囲の的を全てを打ち砕くには、やはりこの技が一等、具合がいい。
張り詰めた弦を限界まで引いて、天に広げた魔法陣へと標準を合わせる。
時間凍結が解ける。それと同時に矢を放った。小気味良い鳴弦の音が周囲に響く。
放たれた矢はたった一本。しかし、だから何だ。
私が管理者。私が法。法律も物理法則も、超常法則も、この世界の法は全て私の支配下。
ふと、蜜柑色の兎を思い出した。
『【悪夢】は君たち人類に遠慮をしない』
『彼らにとって、君たちは食糧だ。果樹に近いかな。君たちが生み出す思考エネルギーを吸収する。でも彼らは自己を保つための糧は必要としないんだ。進化を望まないなら、何も食べなくていい。ただ進化を望むなら思考する生命体の思考エネルギーを必要とする』
『彼らには個体としての意識が、進化するか進化しないかの二択しかない。進化すると決めた個体はそのために活動する。善悪など考えないし、養分を吸い尽くしたら次に進む。ただそれだけなんだ。彼らに生死の概念は無いんだよ。だから遠慮をしない。出来ない。故に共存は不可能だ』
『夢の管理者がすべきは【悪夢】の排除だ。僕は忙しいから、この辺りに住む人間の、夢の管理は君に頼むよ』
『僕は何なのかって?僕は【世界】さ。君たち人類を守り育ててきた。地球そのものさ。お気に入りの生物は他にもいっぱいいるけれど、だからといって盗まれていく君たちをそのままにする気は無いんだよ』
『頑張ってくれたまえ、僕の番犬。番兎、かな?』
この世界を壊さんとする者を、何としても排除する。そのために世界から与えられた権能。それが【管理者権限】。
「【管理者権限・雨乞師】」
空で増幅されて返って来た矢は豪雨のように降り注ぐ。それは瓦礫を一つ残らず砕いた。小石よりも小さな粒に。そう、それこそ砂にするほど。
特に君司の周辺だけは砂埃レベルにまで砕いてやった。
さあ、いつもなら【時間凍結】で時を止めた後に、背後から撲り倒してサッサと済ませるところを、ワザワザ引き延ばしてやってんだ。
弟くんが病んだ理由まで突き止めてくれなきゃ困るぜ、『お兄ちゃん』。
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