明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

文字の大きさ
50 / 967
大人の隠れんぼ=旦那編=

旦那たちの愛を見届けろ/1

しおりを挟む
 妻は知らない。夫たちがペア組んでいて、お互い好きと言って、キスをする。そんなBLなルールがあるとは。ただのかくれんぼだと信じ切っている。

 光命、焉貴、月命、孔明のそれぞれの瞳と脳裏に同じ数字が浮かぶ。

 十六時十二分十六秒。あと一時間十分五十九秒――。
 一組の持ち時間、約十四分十一秒。

 無防備に自分たちの元へ戻ってきた颯茄に、真意を隠すためのニコニコの笑みで、月命は平然と話しかけた。

「それでは、次は颯が鬼です~。僕たちが隠れますから、探してください」

 妻は何も疑わなかった。

(そうだね。さっきは見つかっても、どうしてだかわからないけど、鬼にならなかったからね。だから、今度は自分が鬼だね)

 颯茄は素直にうなずいた。

「はい」

 のんきな妻を置いて、夫たちの中で、駆け引きが密かに始まる。最初から一人ずつ隠れるのではない。相手と一緒にだ。

 しかも、好きと言って、キスをするのである。作業的にするのでは、愛がない。そうなると、自然と言わせる。もしくは伝える。そういうムード作りが必要となる。

 瞬間移動は相手を一緒に連れて行くことができる。妻がカウントし始める時が勝負の時だ。これに出遅れたら、相手に先手を取られてしまう。

 颯茄が大きく息を吸い、

「じゃあ、数えます」

 夫たちに一斉に緊張が走った。男たちの告白とキスタイムの幕開けが迫る。妻の唇が動こうとした。

「い~ち――!」

 誰かが誰かを一緒に連れて、瞬間移動で煙よりも早く消え去った。ポツリ、鬼の妻が一人、玄関ロビーに置き去りになったのだった。

「早っ!」

 見事なまでに総隠れ。妻の驚き声が静かになった玄関ロビーに響き渡った。

 ただのかくれんぼだ。そんなに本気でやることなのかと、何も知らない妻は思い、冷たい風がヒュル~と、深緑のベルベットブーツの前を吹き抜けていった気がした。

 颯茄が姿を消すと、玄関ロビーには誰もいなくなった。だが、一人戻ってきた人がいた。それは張飛だった。これから繰り広げられるであろう愛の争奪戦を尻目に、彼は面白そうに微笑む。

「俺っちは、みんなに伝えてるっすから、誰もパートナーがいないっす」
 
 二百四十センチの背で、つるし雛に手を伸ばし、ポンとボールを投げるように揺らしながら、物思いにふける。

 漆黒の髪を持つ男――孔明とは長い付き合い。友だとずっと思っていたが、いつの間にか愛に変わっていたのだ。帝国一の頭脳を持つ男の罠にはめられたのかもしれない。しかし、悔しいのではなく、心に喜びがほとばしるのだから、あの男の策は芸術に値する。

 この風変わりな結婚にもすぐに馴染めるようにしてくれたのかもしれない。その証拠に、自分は全員に好きと言って、キスまで交わしている。

 あの男は嘘をついている。自分はあの男と話す時はいつもそう身構えている。結果が出てしばらく経つと、やはり嘘なのだ。でもそれがあまりにも鮮やかな手口で、怒るどころか感心するばかりだ。

 あの男はもう一人好きな男がいて、明智の婿養子になったのだ。だから、この隠れんぼの条件を満たしていないのは不自然。あの男のことだ。罠を幾重にも張り巡らせ、他の男たちの愛の言葉もキスもほしいままにしているだろう。それをしていないなど、おかしい限りだ。

 そして、この結婚をスムーズにしてくれている人がもう一人。それは妻の颯茄だ。彼女は最初、自分のことは好きではないと思っていたらしい。それは人伝に聞いた。それなのに、結婚することが決まると、そんな素振りも見せず、きちんと話し、愛する努力をしてくれたのだ。

 彼女は優しい人だから、人より傷つくところが多い。それを守っていきたい、それでいいと思う。守る夫は十人もいる。一人ではない以上、好きな順番というのはどうしても出てくる。それならば、彼女が一番望んでいる人を優先してそばにいるようにして、いざという時は自分が力一杯守るのだ。いつでも動ける場所から見ていて――

 つるしびなのような飾りを弄ぶのをやめて、張飛はあたりを見渡した。

「どこで時間潰しをするっすかね?」 

 地球一個分もある家で、いくらでも隠れるところはある。しかし、妻が見つけづらいところは避けよう。張飛はすうっとロビーから消え去った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...