120 / 967
リレーするキスのパズルピース
罠とR指定/3
しおりを挟む
学校の中庭で、ナンパが行われていた。マゼンダ色の髪の持ち主は振り向きもせず、凛として澄んだ丸みがあり儚げな女性的だが、男の声でこう返してきた。
「僕は女性ではありません。女装をしている小学校教諭です」
女装する教師。
ナンパする教師。
そんな先生たちでも、学校にも保護者にもお咎めなく、仕事ができる平和で優しい世界だった。
焉貴の白のシャツは前かがみになり、ベンチの背もたれに腕を乗せて、紺のデッキシューズは芝生の上で、軽く組まれた。男だと言っているのに、懲りずにおねだりする。
「え~、俺といいことしよう?」
「どのようなことですか?」
顔だけで振り返ったマゼンダ色の髪の持ち主は、月のような綺麗な顔と、邪悪、誘迷という名が似合うヴァイオレットの瞳を持っていた。焉貴は振り返った男のあごに指先を添えて、ナルシスト的に微笑む。
「一緒に、お昼ご飯食べちゃうの」
ムーンストーンのついた指輪をした手が、さりげなくセクハラをしている焉貴の手をつかみ取り、ポイッと投げ捨てた。
「四つ前と言葉は違えど、会話の内容は同じです」
全然、めげない焉貴先生。高い声をわざと低くして、またナルシスト的に微笑んだ。
「そう? じゃあ、こうしちゃう!」
パチンと指先が鳴ると、ベンチの後ろから一気に瞬間移動して、パステルブルーのドレスとガラスのハイヒールを身にまとった男の前――中庭の石畳の上に焉貴はいた。
王女さま――いや一応、王子さまに最敬礼というように、片膝をすっと地面へつけて跪き、右手を斜め上に上げ、華麗に左下へ降ろす動きをともなって、歯が浮く用なセリフを平気でいった。
「月さま、私と結婚していただけませんか?」
二人の左薬指にしているリングが、春の風に優しくなでられてゆくが、月命から真面目にきっちりツッコミがきた。
「僕と君とでは、もう結婚はできませんよ」
山吹色のボブ髪がまるで子供が駄々をこねるように左右に揺れ、月命の結婚指輪をしている手をつかんで、仲良くお散歩みたいにブンブン横にブランコをこぐように揺らした。
「え~? しちゃってよ~」
まだまだ、食い下がっている焉貴。しかも、孔明よりも、甘さダラダラの言い回しと声。女子高生にも負けず劣らず、ハイテンションな高校教師だった。手を握られている月命は振動で声が揺れる。
「なぜ、僕に毎日、こちらでプロポーズするんですか?」
習慣だった。遅めの昼食をとる、男性教師2人の日常。しかも、お姫様にダンスの申し込みをするみたいなプロポーズ。
理由を問われた焉貴は、月命の顔に近づき、自信満々の笑みで、歯が浮くようなセリフを平気でまた言う。
「お前が綺麗だから……」
学校の中庭で男性教諭同士で、堂々の同性愛が展開されていたが、月命は握られていた手の上に自分のそれを乗せて、顔を近づけて、意味ありげに微笑む。
「僕をほめても何も出ませんよ」
焉貴のどこかいってしまっているような山吹色の瞳は下に落とされ、膝の上に置いてある水色の包みのさらに奥を見るようとした。ヴァイオレットの瞳に再び戻ってきて、男の香りが思いっきりする声で、確実に女を落とすように微笑む。
「嘘。男だから出しちゃうでしょ? 射○して」
紺のデッキシューズが石畳の上でくるっと反転すると、パステルブルーのドレスの隣へ、ピンクの細身のズボンは腰掛けた。
「焉貴はいつでも破天荒ですね。そちらの話は生徒には聞かせられません」
置き去りにしてきた弁当箱は、服というオレンジの布を脱がされた状態で、焉貴の手の中にすっと飛んできた。不思議現象が起きているの中で、彼はおかしな話をした。
「お前もそうでしょ? 十四年前はカエルの被り物して、学校きてたけどさ。何で、ここのところ、女装なの?」
教師が被り物をする。それも、問題にならない学校。寛容な世界だった。だが、当の教師の口から出てきた言葉は、これだった。
「十四年前はカエルでした。今は女装なんです~」
わざと言葉を抜かして行った月命に、焉貴先生がきっちり教育指導する。
「お前、言葉抜けすぎてて、変身したみたいになってんだけど……。はい、ほら、ちゃんと補足して」
「僕をモデルにした物語の中で、カエルと女装した男性になったんです~」
ファンタジーの世界をリアルへ持ってきた結果だった。
「それで、まわりの反応はどうなの?」
「こちらで子供たちに会うと、彼らが笑うんです~。『先生、何で男の人なのに女の人の服着てるの? 面白い~』っと言って。生徒たちが笑顔でいることが、僕の何よりの幸せなんです~」
孔明の公演中に、大爆笑しようとしていた生徒は男の先生が女装しているからだったのだ。大人には手厳しい月命だったが、教師の鑑のように子供にはとても優しかった。マゼンダ色の頭に乗っている銀のティアラを、焉貴の指先がトントンと軽く叩いた。
「だからって、趣味でも何でもない女装するって、どうなの?」
「僕は自虐的な性格なのでいいんです~」
女装の小道具が落ちてこないように月命はしながら、さりげなく性癖が春風に舞った。会話が途切れ、遅めの昼食がお弁当のふたを取るという行為を合図にして始まった。
「僕は女性ではありません。女装をしている小学校教諭です」
女装する教師。
ナンパする教師。
そんな先生たちでも、学校にも保護者にもお咎めなく、仕事ができる平和で優しい世界だった。
焉貴の白のシャツは前かがみになり、ベンチの背もたれに腕を乗せて、紺のデッキシューズは芝生の上で、軽く組まれた。男だと言っているのに、懲りずにおねだりする。
「え~、俺といいことしよう?」
「どのようなことですか?」
顔だけで振り返ったマゼンダ色の髪の持ち主は、月のような綺麗な顔と、邪悪、誘迷という名が似合うヴァイオレットの瞳を持っていた。焉貴は振り返った男のあごに指先を添えて、ナルシスト的に微笑む。
「一緒に、お昼ご飯食べちゃうの」
ムーンストーンのついた指輪をした手が、さりげなくセクハラをしている焉貴の手をつかみ取り、ポイッと投げ捨てた。
「四つ前と言葉は違えど、会話の内容は同じです」
全然、めげない焉貴先生。高い声をわざと低くして、またナルシスト的に微笑んだ。
「そう? じゃあ、こうしちゃう!」
パチンと指先が鳴ると、ベンチの後ろから一気に瞬間移動して、パステルブルーのドレスとガラスのハイヒールを身にまとった男の前――中庭の石畳の上に焉貴はいた。
王女さま――いや一応、王子さまに最敬礼というように、片膝をすっと地面へつけて跪き、右手を斜め上に上げ、華麗に左下へ降ろす動きをともなって、歯が浮く用なセリフを平気でいった。
「月さま、私と結婚していただけませんか?」
二人の左薬指にしているリングが、春の風に優しくなでられてゆくが、月命から真面目にきっちりツッコミがきた。
「僕と君とでは、もう結婚はできませんよ」
山吹色のボブ髪がまるで子供が駄々をこねるように左右に揺れ、月命の結婚指輪をしている手をつかんで、仲良くお散歩みたいにブンブン横にブランコをこぐように揺らした。
「え~? しちゃってよ~」
まだまだ、食い下がっている焉貴。しかも、孔明よりも、甘さダラダラの言い回しと声。女子高生にも負けず劣らず、ハイテンションな高校教師だった。手を握られている月命は振動で声が揺れる。
「なぜ、僕に毎日、こちらでプロポーズするんですか?」
習慣だった。遅めの昼食をとる、男性教師2人の日常。しかも、お姫様にダンスの申し込みをするみたいなプロポーズ。
理由を問われた焉貴は、月命の顔に近づき、自信満々の笑みで、歯が浮くようなセリフを平気でまた言う。
「お前が綺麗だから……」
学校の中庭で男性教諭同士で、堂々の同性愛が展開されていたが、月命は握られていた手の上に自分のそれを乗せて、顔を近づけて、意味ありげに微笑む。
「僕をほめても何も出ませんよ」
焉貴のどこかいってしまっているような山吹色の瞳は下に落とされ、膝の上に置いてある水色の包みのさらに奥を見るようとした。ヴァイオレットの瞳に再び戻ってきて、男の香りが思いっきりする声で、確実に女を落とすように微笑む。
「嘘。男だから出しちゃうでしょ? 射○して」
紺のデッキシューズが石畳の上でくるっと反転すると、パステルブルーのドレスの隣へ、ピンクの細身のズボンは腰掛けた。
「焉貴はいつでも破天荒ですね。そちらの話は生徒には聞かせられません」
置き去りにしてきた弁当箱は、服というオレンジの布を脱がされた状態で、焉貴の手の中にすっと飛んできた。不思議現象が起きているの中で、彼はおかしな話をした。
「お前もそうでしょ? 十四年前はカエルの被り物して、学校きてたけどさ。何で、ここのところ、女装なの?」
教師が被り物をする。それも、問題にならない学校。寛容な世界だった。だが、当の教師の口から出てきた言葉は、これだった。
「十四年前はカエルでした。今は女装なんです~」
わざと言葉を抜かして行った月命に、焉貴先生がきっちり教育指導する。
「お前、言葉抜けすぎてて、変身したみたいになってんだけど……。はい、ほら、ちゃんと補足して」
「僕をモデルにした物語の中で、カエルと女装した男性になったんです~」
ファンタジーの世界をリアルへ持ってきた結果だった。
「それで、まわりの反応はどうなの?」
「こちらで子供たちに会うと、彼らが笑うんです~。『先生、何で男の人なのに女の人の服着てるの? 面白い~』っと言って。生徒たちが笑顔でいることが、僕の何よりの幸せなんです~」
孔明の公演中に、大爆笑しようとしていた生徒は男の先生が女装しているからだったのだ。大人には手厳しい月命だったが、教師の鑑のように子供にはとても優しかった。マゼンダ色の頭に乗っている銀のティアラを、焉貴の指先がトントンと軽く叩いた。
「だからって、趣味でも何でもない女装するって、どうなの?」
「僕は自虐的な性格なのでいいんです~」
女装の小道具が落ちてこないように月命はしながら、さりげなく性癖が春風に舞った。会話が途切れ、遅めの昼食がお弁当のふたを取るという行為を合図にして始まった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!
奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。
ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。
ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる