明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

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最後の恋は神さまとでした

神さまに会いたくて/1

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 *この章は、心霊現象が少しだけ出てきますので、苦手な方はご注意ください。

 足が冷えないように毛布をぐるぐる巻きにして、澄藍は書斎机の椅子に座っていた。パソコンはスリープ状態となっていて、いつも聞いている音楽再生メディアも一時停止。

 彼女は目を閉じて、背筋を伸ばしすぎず曲げすぎず、リラックスした姿勢で深呼吸をゆっくりと何度もしている。

 外から聞こえてくる音。足や手の感触。それらをできるだけ無にして、真っ暗な視界で思い出す。コウから伝授された霊感を磨く方法を――

    *

 ――都会のマンションに住んでいた頃。

 恋愛シミュレーションゲームや小説書きの合間に、澄藍はパソコンの前に座らされていた。コウはキーボードの上を別次元で右に左に行ったり来たりする。

「よし、澄藍、今日は霊感を磨く練習をする」
「うん」

 神である以上、人間の過去など、いくつもの人生をさかのぼれるが、理論派のコウはわざと聞く。

「幽霊を見たことがあるか?」
「ない」

 即答だった。

「そうだ。だから、お前の霊視範囲は特殊だ。通常、幽霊が見える。だが、お前は周波数を高いところに設定してるため、そのすぐ上にいる神様の子供が見えるようになってしまった」
「なるほど」

 澄藍は怖い思いをしないで、スピリチュアルの世界へ入ってしまった、異例中の異例である。だからこそ、偏ってしまっている霊感だった。

 コウ教授から次々に質問をされてゆく。

「霊感で使う脳はどこだ? 答えろ」
「左脳の少し下で、中へちょっと入ったところ」
「まずはそこを意識するために、指先でトントンと叩け」
「よし」

 言われた通り、一人壁を見つめたまま頭を叩いているように、まわりから見えるが、澄藍は至って真面目だった。

「意識が強くなったか?」
「うん」

 クルミ色の瞳は焦点が合わず、どこか遠くを見ているようになった。感覚をいくつも研ぎ澄ます作業。

「そのまま三百六十度3Dで、意識を広げてゆく」
「うん、広げる……」

 あっという間に太陽系を追い越して、人間が行ける限界――宇宙の果て――壁へと一気に迫る。自分の存在が小さく感じ、大きな運命の流れが絶えることなく動いている――言葉で表すなら、森羅万象。

「次は今感じている世界よりも下にしろ」
「下にする……。神界じゃなくて霊界……」

 ちょうど夜空にオーロラが出ている位置から、地上へと降りる真ん中あたりを見るように、ラジオのチューニングを合わせるように、神経を研ぎ澄ます。それを神の目線で受け取ったコウは、パソコンの隣に陣取った。

「よし、それを保ったまま、動画サイトを開け」

 そうっと目を開けて、澄藍は意識を宇宙の真ん中に浮かばせたまま聞き返す。

「動画サイト?」
「心霊スポットに行くつもりか? お前昔、幽霊苦手だっただろう?」

 澄藍は珍しく慌てて、両手を体の前で横にフルフルした。おまけに言葉遣いまでおかしくなる。

「ダメです。ダメです。見えなかったけど、感じるからこそ、逆に正体がわからなくて、怖さ百倍だった」
「そうだろう? そうだろう?」

 電気スタンドを街頭のようにして、コウは寄り掛かった。澄藍は両肩を手のひらで寒さから凍えるように抱く。

「お墓参りに行くと、家族しかいないのに、視線がいっぱいある感じがするんだよね。見られてるって感じ。でも振り返ると誰もいない。それでも、やっぱり見られてる感じ」

 怪談話など聞いたら最後、一人でトイレにも行けないような少女だったのだ。彼女の実家には北側にしか窓がない薄暗く湿気のあり、仏壇と三面鏡、それに加えて黒に近い木目がついたタンスが壁を埋めるように置いてある部屋があった。

 それがトイレの隣だから、彼女の恐怖心はさらに煽られ、高校生になっても、夜中に目が覚めた時は、毛布で背中を覆わないと、そこへ行けないほどだった。

 何の因果か、三十歳を迎える寸前で、霊的なものが見えるようになった、完全に霊媒体質。
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