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最後の恋は神さまとでした
お前の女に会わせて/2
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コンピュータ制御が主流の神界で、サブの世界である地球に、用のある神さまなどそうそういない。そうなると、今もそばにいるであろう、蓮の友達ということになる。が、彼女の理論だった。
人間としてではなく、大人として、一応妻として、男性神に改めて頭を下げた。
「いつも蓮がお世話になってます」
「いいえ、こちらこそお世話になっています」
次々に、倫礼に直感が降りてきて、言ってもいないことを当て始めた。
「もしかして、名前は焉貴さんですか?」
「えぇ。なぜわかるのですか?」
「前にこんなことがあったんです」
「えぇ」
霊感とはこういうこともあるのだと、倫礼は常日頃思っていた。
「自分が書いてる小説の登場人物の名前を思いつくと、それが……」
しかし、感覚というものは、他の存在に伝えるのは少々難しく、彼女は口ごもってしまった。
「どうかしたのですか?」
「え~っと、前は違う人がこの肉体には入ってたんです」
「えぇ」
江が入っていた時の話をしようとしたが、焉貴から別の質問がきた。
「その方とはどのような関係だったのですか?」
「今は特に関係がありません」
「そうですか」
焉貴はうなずいて、先を促した。
「私の名前がなぜわかったのか教えてください」
倫礼は「はい」と素直にうなずくと、自作の小説に登場させた人物名の話へ戻した。
「その人の姉妹が別の宇宙であとから見つかって、その名前だったんです」
説明をしたが、心の世界照準で話してしまい、意味がよくわからない内容になっていた。
しかし、今日会ったばかりの焉貴でも、彼女の本当に伝えたい意味はすぐに変換できた。
(言葉だけだと不十分だけど、別の次元の宇宙から降りてきたってことね。そう感じるから、その意味)
陛下が上へ上へと開拓している途中で、一番下の世界へ降りて、心をさらに磨こうとする神々はたくさんいて、その中のひとりだったということだ。
おまけの倫礼の霊感の話はそれだけにとどまらず、
「それだけではなくて、その彼氏の苗字とその姉妹の名前になってたんです」
彼女は知らなかったのだ。もしかしてと思い、コウに聞くと、その姉妹は降りた次元で男と運命の出会いをして、女子高校生として神世で暮らしていたのだ。
焉貴は話を要約した。
「結婚後の名前を、会う前に予測していた、ということですか?」
「はい」
蓮で例えれば、最初に会う前に、明智 蓮という名前を、小説の登場人物にしていたという話だ。
おまけの倫礼はよくわかっていた。人間だけで生み出せるものなど何もないのだと。神が手を加えているのだ。だからこそ、日々の感謝は必要なのだと。
それが一回きりなら偶然と過ごすこともできたのだろうが、彼女のまわりでは多発していた。
「こんなことがよくあって、焉貴さんの名前も、以前書いた小説に出てくる人物だったんです」
「えぇ」
「その時、何かを感じたんですけど、結局該当する人は誰も浮かばなかったんです。しかも、ずっとそんなことは忘れてました。今思い出したので、もしかしたらそうなのではと思ったんです」
心の世界とはいつでも必然だった。思い浮かべた人の話が、グッドタイミングでもたらされる。
話したいと相手が願えば、気になるようにできている。それが心でつながっているということなのだろう。肉体が間に入ると、途端に難しくなるようだが。
木々の木漏れ日が、焉貴の黄緑色をした瞳に差し込み、変幻自在な乱反射を生み出す。
「そうですか。モデルの方はいたのですか?」
ふたりの脇を、犬を連れて散歩してゆく人がすれ違ってゆく。
「はい、いました。焉貴さんが知ってるかはわからないんですけど、月主命さんっていう人です」
「そうですか」
決めつけるのはよくないが、焉貴の脳裏にカエルを被って、ニコニコと微笑みながら生徒に大人気の教師が浮かんだ。
「その方はどのようなご職業をされていらっしゃいますか?」
「小学校の歴史の先生です」
「そうですか」
焉貴はナルシスト的な笑みでうなずくと、一旦後ろを歩いていた蓮のそばへ寄った。
「勘いいね。俺もすごいけどさ。お前の女もすごいね」
「俺に会う前から、あぁだった」
「そう」
盛り上がっているように見えたが、焉貴と蓮のやりとりはとても冷めたものだった。
人間としてではなく、大人として、一応妻として、男性神に改めて頭を下げた。
「いつも蓮がお世話になってます」
「いいえ、こちらこそお世話になっています」
次々に、倫礼に直感が降りてきて、言ってもいないことを当て始めた。
「もしかして、名前は焉貴さんですか?」
「えぇ。なぜわかるのですか?」
「前にこんなことがあったんです」
「えぇ」
霊感とはこういうこともあるのだと、倫礼は常日頃思っていた。
「自分が書いてる小説の登場人物の名前を思いつくと、それが……」
しかし、感覚というものは、他の存在に伝えるのは少々難しく、彼女は口ごもってしまった。
「どうかしたのですか?」
「え~っと、前は違う人がこの肉体には入ってたんです」
「えぇ」
江が入っていた時の話をしようとしたが、焉貴から別の質問がきた。
「その方とはどのような関係だったのですか?」
「今は特に関係がありません」
「そうですか」
焉貴はうなずいて、先を促した。
「私の名前がなぜわかったのか教えてください」
倫礼は「はい」と素直にうなずくと、自作の小説に登場させた人物名の話へ戻した。
「その人の姉妹が別の宇宙であとから見つかって、その名前だったんです」
説明をしたが、心の世界照準で話してしまい、意味がよくわからない内容になっていた。
しかし、今日会ったばかりの焉貴でも、彼女の本当に伝えたい意味はすぐに変換できた。
(言葉だけだと不十分だけど、別の次元の宇宙から降りてきたってことね。そう感じるから、その意味)
陛下が上へ上へと開拓している途中で、一番下の世界へ降りて、心をさらに磨こうとする神々はたくさんいて、その中のひとりだったということだ。
おまけの倫礼の霊感の話はそれだけにとどまらず、
「それだけではなくて、その彼氏の苗字とその姉妹の名前になってたんです」
彼女は知らなかったのだ。もしかしてと思い、コウに聞くと、その姉妹は降りた次元で男と運命の出会いをして、女子高校生として神世で暮らしていたのだ。
焉貴は話を要約した。
「結婚後の名前を、会う前に予測していた、ということですか?」
「はい」
蓮で例えれば、最初に会う前に、明智 蓮という名前を、小説の登場人物にしていたという話だ。
おまけの倫礼はよくわかっていた。人間だけで生み出せるものなど何もないのだと。神が手を加えているのだ。だからこそ、日々の感謝は必要なのだと。
それが一回きりなら偶然と過ごすこともできたのだろうが、彼女のまわりでは多発していた。
「こんなことがよくあって、焉貴さんの名前も、以前書いた小説に出てくる人物だったんです」
「えぇ」
「その時、何かを感じたんですけど、結局該当する人は誰も浮かばなかったんです。しかも、ずっとそんなことは忘れてました。今思い出したので、もしかしたらそうなのではと思ったんです」
心の世界とはいつでも必然だった。思い浮かべた人の話が、グッドタイミングでもたらされる。
話したいと相手が願えば、気になるようにできている。それが心でつながっているということなのだろう。肉体が間に入ると、途端に難しくなるようだが。
木々の木漏れ日が、焉貴の黄緑色をした瞳に差し込み、変幻自在な乱反射を生み出す。
「そうですか。モデルの方はいたのですか?」
ふたりの脇を、犬を連れて散歩してゆく人がすれ違ってゆく。
「はい、いました。焉貴さんが知ってるかはわからないんですけど、月主命さんっていう人です」
「そうですか」
決めつけるのはよくないが、焉貴の脳裏にカエルを被って、ニコニコと微笑みながら生徒に大人気の教師が浮かんだ。
「その方はどのようなご職業をされていらっしゃいますか?」
「小学校の歴史の先生です」
「そうですか」
焉貴はナルシスト的な笑みでうなずくと、一旦後ろを歩いていた蓮のそばへ寄った。
「勘いいね。俺もすごいけどさ。お前の女もすごいね」
「俺に会う前から、あぁだった」
「そう」
盛り上がっているように見えたが、焉貴と蓮のやりとりはとても冷めたものだった。
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