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最後の恋は神さまとでした
愛していても/3
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だからと言って、こっちの動揺しているなんて知られたくもないし、知られてたまるかと歯を食いしばって、明引呼は窓の外を見つめたまま言った。
「前からごちゃごちゃしてやがったから、この機会になくしちまえ」
「それでは、失礼」
月命は振り向きもしないで言うと、瞬間移動ですっと消え去った。もうあの男はそばには戻ってこない。他の男と幸せに暮らす。妻も子供たちもいる家で、暖かな家庭を築く。
「どうすることもできねえだろ……」
一人きりの部屋に、明引呼の声が小さくしぼんでいった。
*
それから、約一ヶ月後の、明引呼の家の応接間。訪れた月命は婚約指輪の入った箱を開けて、明引呼に差し出していた。
「てめぇ、結婚して一ヶ月もたたねぇ内に、プロポーズするって、どうなってやがんだ?」
あきれてものが言えないとはこう言うことだ。バイセクシャルの複数婚なんてものをしてから、この男の感覚がどうも狂っていやがる。相変わらず、おかしなことをしてきやがって。
月命は明引呼の心のうちを知ってかしらずか、しれっと言った。
「妻の一人がどなたかを思い出すと、自然と結婚がうまくいくようになっているんです」
「俺が思い出されたってか? っつうか、俺のこと知ってる女なんて、そん中じゃ楽主ぐらいだろ。どうなっていやがる?」
まるで以前知っていたのに、忘れていたみたいな言い方だった。そうなると、元々月命の妻だった楽主じゃない。
「君は知っているんではないんですか? 地球にいる女性――広菜《ひろな》という魂が入っていた肉体を……」
「あれか……」
もう十四年以上も前の古い話だが、兄貴は思い出して、ふっと鼻で笑った。
「知ってっけどよ。オレのことは見えてなかったぜ。しかも、邪神界がいた頃の話だろ? 直接会ってもいねぇぜ」
あれも不思議な出会いだった。
「ですが、君の子供の白と甲は話したことがあるんではないんですか?」
「あいつらはあんだろ。絵書いてもらったとか言って、喜んでたからよ」
「彼女が絵を描いたんですか?」
月命には寝耳に水だった。
「おう。八人ガキがいてよ、そいつらが大きな龍に一緒に乗ってる、平和な絵だったみてえだぜ?」
「おや? 彼女は歌と作詞が得意で、絵はまったくできないとのことでしたが……。あの大きな本棚のどこかにスケッチブックでもあるのでしょうか?」
のらりくらりと話を続けている月命に、明引呼は鋭く突っ込んだ。
「っつうかよ、話元に戻せや。プロポーズはどこに行ったんだよ?」
また失敗しやがって。まともに話が進みやしない。
「彼女が思い出すと、新しい配偶者が増えるんです~。僕もそうやって思い出されて、蓮と結婚したんです。彼は恋愛に鈍感なので、まったく気づいていなかったそうなんです。僕のことを愛していると。ですが、彼女が僕の名前を出した時に、僕のことを愛していると気づいたみたいなんです~」
ディーバさんのおかしな恋愛観は脇へ置いておいて、明引呼は先に話を進めた。
「で、肉体の記憶を使って、オレを思い出したってか?」
「えぇ、ですから、僕は君にプロポーズしにきたんです~」
「ってかよ、あの人間の女なんか何とも思ってないぜ?」
明引呼も多少なりとも関係はあったが、同じチームメイトみたいなものだが、言葉も交わしたことのない付き合いだった。そんな女と結婚するなんざ、どうにも頭がいかれている。
「そちらは彼女も少々頭を抱えていました」
「あぁ?」
戸惑っているのは、お互い様か。
「好きじゃない人を思い出すのが怖い~! 結婚して増えていくことになるから~! どうすれば好きになれるんだ~! だそうです」
全てを記憶している月命は、おまけの倫礼の言葉を一字一句間違えずに伝えた。
「霊感に引っ張り回されてるってか?」
「前からごちゃごちゃしてやがったから、この機会になくしちまえ」
「それでは、失礼」
月命は振り向きもしないで言うと、瞬間移動ですっと消え去った。もうあの男はそばには戻ってこない。他の男と幸せに暮らす。妻も子供たちもいる家で、暖かな家庭を築く。
「どうすることもできねえだろ……」
一人きりの部屋に、明引呼の声が小さくしぼんでいった。
*
それから、約一ヶ月後の、明引呼の家の応接間。訪れた月命は婚約指輪の入った箱を開けて、明引呼に差し出していた。
「てめぇ、結婚して一ヶ月もたたねぇ内に、プロポーズするって、どうなってやがんだ?」
あきれてものが言えないとはこう言うことだ。バイセクシャルの複数婚なんてものをしてから、この男の感覚がどうも狂っていやがる。相変わらず、おかしなことをしてきやがって。
月命は明引呼の心のうちを知ってかしらずか、しれっと言った。
「妻の一人がどなたかを思い出すと、自然と結婚がうまくいくようになっているんです」
「俺が思い出されたってか? っつうか、俺のこと知ってる女なんて、そん中じゃ楽主ぐらいだろ。どうなっていやがる?」
まるで以前知っていたのに、忘れていたみたいな言い方だった。そうなると、元々月命の妻だった楽主じゃない。
「君は知っているんではないんですか? 地球にいる女性――広菜《ひろな》という魂が入っていた肉体を……」
「あれか……」
もう十四年以上も前の古い話だが、兄貴は思い出して、ふっと鼻で笑った。
「知ってっけどよ。オレのことは見えてなかったぜ。しかも、邪神界がいた頃の話だろ? 直接会ってもいねぇぜ」
あれも不思議な出会いだった。
「ですが、君の子供の白と甲は話したことがあるんではないんですか?」
「あいつらはあんだろ。絵書いてもらったとか言って、喜んでたからよ」
「彼女が絵を描いたんですか?」
月命には寝耳に水だった。
「おう。八人ガキがいてよ、そいつらが大きな龍に一緒に乗ってる、平和な絵だったみてえだぜ?」
「おや? 彼女は歌と作詞が得意で、絵はまったくできないとのことでしたが……。あの大きな本棚のどこかにスケッチブックでもあるのでしょうか?」
のらりくらりと話を続けている月命に、明引呼は鋭く突っ込んだ。
「っつうかよ、話元に戻せや。プロポーズはどこに行ったんだよ?」
また失敗しやがって。まともに話が進みやしない。
「彼女が思い出すと、新しい配偶者が増えるんです~。僕もそうやって思い出されて、蓮と結婚したんです。彼は恋愛に鈍感なので、まったく気づいていなかったそうなんです。僕のことを愛していると。ですが、彼女が僕の名前を出した時に、僕のことを愛していると気づいたみたいなんです~」
ディーバさんのおかしな恋愛観は脇へ置いておいて、明引呼は先に話を進めた。
「で、肉体の記憶を使って、オレを思い出したってか?」
「えぇ、ですから、僕は君にプロポーズしにきたんです~」
「ってかよ、あの人間の女なんか何とも思ってないぜ?」
明引呼も多少なりとも関係はあったが、同じチームメイトみたいなものだが、言葉も交わしたことのない付き合いだった。そんな女と結婚するなんざ、どうにも頭がいかれている。
「そちらは彼女も少々頭を抱えていました」
「あぁ?」
戸惑っているのは、お互い様か。
「好きじゃない人を思い出すのが怖い~! 結婚して増えていくことになるから~! どうすれば好きになれるんだ~! だそうです」
全てを記憶している月命は、おまけの倫礼の言葉を一字一句間違えずに伝えた。
「霊感に引っ張り回されてるってか?」
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